9.オレたちは第一世代型に乗っている-自分の機体には触ることが出来ない-
全44話予定です
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エルミダス港を出てから何週間経っただろう。カズとレイリアの姿はレイドライバーが収納されているデッキにあった。
「レイリア、前にも言った通り、オレたちは第一世代型に乗っている。つまりコアユニットが存在してるんだ。そして彼女たちは人間だ、その意味わかるよな?」
カズはレイリアに言って聞かせる。
「食事と排泄、でしょ? そしてそれは自分の機体には触ることが出来ない、と?」
――そう、チトセには、すぐそこにいる彼女には話す事も触れることも出来ないんだ。
カズはそう思ったのだが、
「そうだ、そしてオレたちはレイドライバーの整備が出来るのは分かるよな?」
悔しがっていても始まらない。今は当面、話を進めるのが先決だ。時間は待ってはくれないのだから。
「うん、一通りは教練で習ったし、ヤマニさんからも教えてもらったよ」
「そうだ、そしてこの船もそうだが、レイドライバーの整備が出来る人間は数名しか乗っていないんだ。しかもその整備士はヤマニさんではない」
それは自分たちで整備を、サブプロセッサーとコアユニットに関する整備をしなければならない事を意味している。
「そうだよね、ヤマニさんはアルカテイルにいるんだもんね。それであたしはカズの機体をやればいい?」
レイリアにもその意図は伝わったようだ。食事と排泄の世話をしないといけない。それをお互いにやろうという事なのだ。
「ああ、その通りだ。こればかりはやって来なかったから分からない事もあるだろう。これを付けてするといい」
そう言ってカズはレイリアにある物を渡した。
それはインカムである。
「これって……ゼロゼロと話が出来るの?」
――おっ、察しがいいねぇ。
「その通り、彼女はオレと一緒でこの研究の第一人者だ。だから分からない事があれば彼女に聞くといい」
「分かったよ」
そう言ってインカムを耳に付ける。インカムは、昔はヘッドフォンの片耳を外したものという、かなり大掛かりなものであったが、今はカナル型が殆どである。トランスミッターも小型化が進み、今ではイヤホンから小さいマイクが伸びているだけに過ぎない。それをレイリアは耳にセットした。
「オレはあとでやるから、先にやっておいて。人払いはしておくから。で、終わったら部屋にいるから呼んでくれるかな?」
そう言いながらその場を去ろうとする。
「あのっ」
という問いに[ん?]と返すカズに、
「コアユニットへのアクセスは認められているの?」
恐る恐る聞く。その答えは、
「オレ以外なら大丈夫、だよ。その辺りの事もゼロゼロから聞くといいよ」
カズはあくまで平常を保ったつもりだった。
「そう……」
それ以上の言葉にならない。
――レイリアは気が付いているのだろう。
カズはそう思う。だからこそ、成長したレイリアだからこそ彼に聞いてこないのだ、と。
「心配かい?」
逆にカズがそう尋ねると、
「本音は、ね。でも大丈夫、あたしだって役に立たないと」
そう気張っては見るものの本音はカズに指示を仰ぎたい、そんな顔をしている。
「残念ながら、さっきも言ったけど自分の機体には手を入れられないんだ、よろしく頼むよ」
「あのっ」
少しの間のあと、
「伝言は……ダメなんだよね、せめて元気だ、と伝えるのはいい?」
「あぁ、いいよ。そのくらいなら何も言われないだろう」
――本当はチトセに会って話がしたいんだが、こればかりはな。
カズはそんな事を考えながらその場をあとにした。
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