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異なる世界のソリチュード  作者: 人見知り颯良
第一章 『成長の片鱗編』
9/9

第七話「成長の片鱗」

 剣を振り始めて2年になる。

7歳になった今でも魔法は使えない。

 その間、魔力を剣に流す訓練は毎日続けた。

 その甲斐もあって、最初は30分しか持たなかったのが、半日は続けられるようになっていた。

 

 だが、まだわからない。

 魔力を剣に流して、剣が軽くなるわけでもない。

 ルークに何度聞いても、「さぁて、何ででしょうね」と誤魔化される。


 俺が魔法を使えたなら、アニメや漫画にあるような「ファイアソード」とか「サンダースラッシュ」とか、剣に纏わせて技を出せたかもしれないな。


 ここ最近で分かった事といえば、この世界の剣術は

 天飆流、極天流、天威流、破魔一剣流、護国剣流の5大流派に分かれているということ。


 破魔一剣流、護国剣流は、5大流派の中で最も歴史があり、各大陸の王国に仕える者は殆どが、何方かの流派を修めているのだとか。

 天飆流、極天流、天威流の3流派は十天帝が作った流派らしく、歴史が浅いが冒険者から人気らしい。 

 やっぱり、創始者が優れているところには人が集まるものなのか?

 

 天飆流は見たことがある。

 俺を誘拐した盗賊団のリーダーが使ってたやつだ。

 剣とは別に短剣を使ってたようだが、そういう流派なのか?


 気になるのはトールの流派だ。

 焔雷轟剣流だったか、名前がかっこいいから覚えている。

 5大流派以外にも流派はあるのか?

 

 「そういえばトールの焔雷轟剣流は、どれくらいの人が使っているんですか?」


稽古中に聞いてみた。


 「俺を含めると2人だな。でも、これからオリバーに教えるから、3人になるな!」


ガッハッハと笑いながら、訳のわからないことを言っている。

 

 「もう1人いるんですか?」

「俺の剣の師匠だ」


 あーなるほど、まぁそうだよな。

 って、この流派大丈夫なのか?

 流派存続の危機を丸投げされた気分なんだが。

 

 「オリバーは、運がいいな、焔雷轟剣流を受け継ぐことができて。俺は他の流派の剣士と何度も戦った事があるが一度も負けたことがないぞ。どうだ、嬉しいだろ!」


それはトールが強いだけなのでは?

 このガタイに、あの速さだ。

 普通の人間なら流派関係なしに勝てるはずがない。


 「う、嬉しいです」


俺は、はにかみ笑いでそう答えた。


 「まぁ教えるのは、もう少し大きくなってからだけどな!」


頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。


 大丈夫なのか、本当に…。



___________________



 朝からルークが何やら準備をしている。


 「オリバー、村の外で魔法を見せてあげますよ。準備してください」


突然だった。

 村の外に出たのは誘拐された時以来だ。


 最近は一日中、剣を振って本を読む、このルーティンだけで充実していたため、外の世界のことなんか考えたこともなかった。


 そうか村の外に出るのか。

 目が覚めたようだった。



 歩きながら外の世界の妄想をしていると、この世界に来てから、まだ友達がいないことに気がついてしまった。


 「そういえば、どうしてこの村には僕以外に子供がいないんですか?」

  

 歩きながら聞いてみた。

 

 「この国では、オリバーくらいの歳になると15歳まで首都にある学校に行くことになるんですよ。学校で習うような事は、私が全て教えられますからね。オリバーは安心して剣術の訓練に励んでくださいね」


学校か…この世界にもあるのか。

学校なら友達も出来そうなのに。



「いきなり魔法を見せるなんて何があったのですか?」 

「そろそろ、魔力を武器に流す理由を教えてあげようと思いましてね」

「ついに、教えてくれる気になったんですか!」


 嬉しさで胸が躍る。

 2年間続けた、魔力を練り続け流す練習。

 この意味がやっとわかるんだ。


 村からは、以外にすんなりと出ることが出来たが、何故か悪いことをした気分になった。

 

 村の外を道なりに進む。

 あたりは見渡す限り、ずーっと奥まで草原が広がっている。

 15分ほど歩いただろうか、村はもう見えない。

 

 「ここら辺にしますかね」


ルークの足が止まった。 


 考えてみると、魔法を見るのなんて初めてじゃないか?

 魔法に関しての本を読んでいたのもあってか、すっかり見た気になっていた。


 「それじゃあ、見ていてくださいね」


ルークは、そう言って腕を前に突き出した。


 「フレイム」


熱波が肌を撫でる。

 詠唱と同時に炎の玉が出現した。


 これが魔法か…。

 想像していた通り、いや…それ以上だ。

 アニメや漫画で見た世界が目の前にある。


 「まだいきますよ。ディスピア」


 ルークがそう唱えると一瞬にして炎の玉が目の前から消えた。

 

 「ストップス」


立て続けに詠唱するルーク。

 

 「どうです?動けないでしょ。その状態で魔力を練ってみてください」


言われた通り魔力を練る。

 魔力が体中に行き渡る。


 あれ?

 消えていたはずの炎の玉が見える。

 体も動く。


 「これが魔力抵抗という技術です。私が今使ったのは闇魔法の派生である隠蔽する魔法ディスピアと硬直させるストップス。

 どちらも中級ですが、戦闘の中で物や相手に作用させることができます」



魔力抵抗?

 ディスピアとストップスは魔術書で見たことはあった。

 

 「こういった魔法は体に魔力を流す事で防ぐことができます。これが魔力抵抗ですね。魔力量によっては、上級以上の魔法も防げるようになりますよ」


 ルークの前から炎の玉が消えた。

 魔力を練っても見えない。


なるほど。

 だからトールは、ある程度魔力が扱えるやつには幻惑魔法みたいなデバフ魔法は関係ないと言っていたのか」


 「オリバーは魔力を剣に流して、どれくらい維持できるようになりましたか?」

「剣を振りながらだと、まだ半日ほどです」

「半日!?」


なんだ、何で驚いているんだ。

 普通の人はもっと長く持続できるのか。

 やっぱり俺、魔法も使えないし魔力に関する才能0って事なのか。


 「ご、ごほん、なるほど半日ですか。よく鍛錬していますね。素晴らしいです」


よかった。

 呆れられたかと思った。

 

 「オリバーがずっと知りたがっていた、武器に魔力を流す理由も魔力抵抗が関係しています。魔法の中には武器を錆びさせたり、溶かしたりするものがあります。

そういった魔法に対処するためにも戦闘の際は常に自分と武器に魔力を流し続けなければいけません」


 なるほど、剣を扱う上では必須級の技術だな。


 「そうだったんですね」

「魔力を流し続ける理由は、もう一つあってですね、魔力量を増やす練習にもなるんですよ!」

 

 魔力量が上がったところで、魔法が使えない俺には…。


ルークは魔法の話になると、いつも以上に楽しそうに話す。

 魔法が好きなんだろうか。


 その日、初めて目にした魔法。

 ルークが羨ましい。


 俺もそのうち、使えるようにならないかな。

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