第六話「剣と魔法」
今日は魔法の使い方を教えてくれるらしい。
魔術書を読むには集中して魔力保つ必要がある。
少しずつ読み進めるうちに基本的なことは、ある程度理解できた。
魔術書によると、魔法の起源は判明していないらしい。
魔法の発動には詠唱が必要で、この魔術書には初級、中級、上級までの魔法が載っていた。
魔法は火、水、土、風、光、闇に分類され、中級から氷や雷といった属性に派生する。
属性に適性がない場合、詠唱しても魔法は発動しない。
ルークによると、ほとんどの魔術師は3属性までしか扱う事ができず、4属性以上使える者は少ないらしい。
「オリバーは、何の属性に適性があるでしょうね」
やっとだ。
やっと魔法が使えるんだ。
「まずは、火属性のフレイムからいきましょう。適性がなければ魔法は発動されません。魔力を練って唱えてみてください」
集中して魔力を体に流し、手を前に突き出して唱える。
「フレイム」
——あれ?
何も出ない。
「うーん、火属性には適性が無いみたいですね。どんどん試しましょ!次は、水属性のウォータラです」
「わかりました」
頼むから出てくれよ。
「ウォータラ」
やっぱり、うんともすんとも言わない。
才能が無いのだろうか。
「まぁまぁ、まだ基本属性は4属性ありますからね」
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その後、土、風、光を試したが、いずれも何も起きなかった。
「あとは闇属性のバウアウトですね…」
これが使えなかったら…。
集中して魔力を練る。
「バウアウト!」
———。
やっぱりだめだ。
せっかくの魔法の世界なのに、魔法が使えないなんて。
そんなのないよな…。
「……だからか」
ルークが何か呟いた気がした。
「オリバー、気を取り直してください。聞いたことはありませんが、初級魔法を使えなくても他の属性の魔法が使えるかもしれません」
聞いたことないか…。
ルークはフォローしてくれているようだけど、何気ない言葉が胸に刺さる。
その後も中級の氷魔法や雷魔法などを頼めしたが全て空振りに終わった。
いつもの天井。
その夜は、自分になら出来ると淡い期待を抱いていたせいか、昼間のことで頭がいっぱいで寝付けなかった。
向こうの部屋でトールとルークが何やら話しているのが聞こえる。
「オリバーは、やっぱりアレなのか?」
「そうですね。オリバーが10歳になるまでは、あなたが剣を教えてあげてください」
剣か…それもいいな。
魔法が使えなくたってトールのように強くなればいいじゃないか。
強くなって、将来は冒険者になるんだ。
気持ちの切り替えは出来た。
明日から頑張ろう。
ーーーーーーーーーーー
「オリバー!!!!起きろぉ!」
トールの雷のような叫び声で目を覚ます。
「 俺が今日から剣を教えてやる。早く顔洗って飯食って外に出てこい!」
朝から元気よすぎだろ。
思わず笑みが溢れる。
切り替えは出来ている。
外に出ると、庭には鍛錬器具や木製のカカシなどが準備してあった。
昨日までは無かったのに、夜中に設置してくれたのだろうか。
「これトールが?」
「まぁな!オリバーには俺の流派を叩き込んでやるからな。とりあえず、剣を振ることから始めるぞ」
そう言うと木剣を渡された。
木剣はこの体には重く感じた。
「握り方はこうだ」
俺の後ろから手を回し、剣を握らせてくれた。
「よし、振ってみろ」
振ってみろって言われてもな。
剣を振るのなんか剣道の授業以来だ。
とりあえず、漫画やアニメでみたように振ってみる。
それっぽくは、なるだろう
「はぁ!」
声を出して思いっきり振る。
木剣は予想以上に重く、全くイメージ通りに振れなかった。
「ハッハッハ!!剣に遊ばれているな。
よし、俺が手本を見せてやる。」
そう言うと、トールは木剣を手に取った。
思わず見惚れてしまうような剣筋だった。
剣を切り込む先に人が見える。
「オリバー!お前は、昔から冒険譚が好きだったからな、冒険者になりたいんだろ」
剣を振りながらトールが尋ねてきた。
確かに、未曾有の危機から人々を救って称えられる、そんな冒険譚に出てくる英雄に憧れていた。
だが、俺が冒険者なりたい理由は他にある。
第二の人生の目標である、多くの友を作ることを達成するためだ。
世界を冒険しながら、世界中に友を作る。
想像しただけでワクワクするじゃないか。
「はい。冒険者なりたいです」
「俺が教える剣は、殺すためではなく、生かすために振るう剣だ。冒険者になるなら、1人でも多くの人を助けなさい。冒険をするだけが冒険者じゃない。それを忘れないように!」
生かすための剣か…。
その日は夕方まで稽古が続いた。
「まぁ初めてならこんなもんだ。これから毎日、剣を振れ。振って振って剣を自分の体の一部にするんだ」
「わ、わかりました…」
息切れしながら返事をする。
夜になるとトールはどこかに出かけた。
魔物退治だろうか?
「オリバー、ちゃんと食べないと大きくなれませんよ」
疲れで食事が喉を通らない。
「僕、猫舌なので冷ましていたんですよ!」
無理やり流し込むと咳き込んでしまった。
「大丈夫ですか」
ルークは、ふふふっと笑いながら心配をしてくれた。
「オリバー、剣術は如何でしたか?」
「始めたばかりで、木剣が重くて。まだまだって感じですね」
「私からのアドバイスとしては、魔法が使えなくても、剣に魔力を流す事は可能です。魔力を常に練り続けながら鍛錬をするといいですよ」
「魔力を練り続けながらですか」
剣に魔力を流して何のメリットがあるんだ?
魔力を練り続けながら、魔術書を読んでいたが、30分が限界だった。
それを剣を振りながらとなると、相当難しい。
とりあえず、明日から試してみるか。
その夜は疲れからか、すぐに寝てしまった。