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異なる世界のソリチュード  作者: 人見知り颯良
第一章 『成長の片鱗編』
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第四話「静かな夜」

 外でゲラゲラと笑い声がする。

 デリンジャという男が灯りを持って行ってしまったため、何も見えない。


 今は夜なのか?

 朝が来れば、こいつらは村を焼きに行く。

 どうすればいいんだ。

 脱走……いや、絶対に無理だ。

 もし、ここを出られたとしても、この体ではすぐに追いつかれる。


 第二の人生は奴隷暮らし?

 悪い冗談だ。

 神様は、そんなに俺のことが憎いのか。

 いや。この状況も前世のことだって全部、自分のせいだ。


 途方に暮れていた時、外の雰囲気が明らかに変わった。


「助げてくれぇぇ」


 激しい叫び声が闇の中に広がる。


 なんだ?

 何が起きた?

 

 「あ゛ぁ ぁ ! 」


バンッ!とドアを開け誰かが逃げ込んできたようだ。

 誰だ?


 「ここか?何も見えねぇな」

「退いてください。ーーー」


 火とは違う、月明かりのような光が広がる。

 

 目の前には、汗だらけの腰を抜かしたデリンジャがいた。

 

 「た、助けてくれぇ!お、お、おい坊主、俺はお前に何もしてないよな。な!腹を空かした、お前にパンを食わせてやったし。お前からも何とかいってくれよ!」


 なんだ、こいつの焦り様は。

 何が起きているんだ。


 「オリバー!!!無事だったか!本当に良かった」


 そこにはルークとトールの姿があった。

 2人の顔を見た途端、涙が滲み出た。


 「なんで…」

 「心配しましたよ。さぁ帰りましょ」

 「っと、その前に」


トールが持っていた剣を振り上げた。

 やばい、全身の毛が逆立つほどの殺気だ。

 俺にもわかる、デリンジャを殺す気だ。


「待って!その人の言ってることは本当だよ!

  たぶん、悪い人じゃない」

「本当か?」

「うん…」

「そうか」


 そう言うと、トールは振り上げた剣をデリンジャに目掛けて振り下ろした。


 寸止めだ。

 デリンジャは失禁しながら気絶している。


 「ハッハッハ!びびっただろオリバー!」


いつものトールに戻った。

 初めて、あのようなトールを見た。


 「オリバーすぐに出してあげますね。トール開けてください」

「へいへい」


軽く返事をすると、トールは鉄格子を素手でこじ開けた。


 何て腕力だ。

 普通の人間じゃ絶対に無理だ。


 「さぁ帰りますよ!お話は家で聞きますね」


トールに抱えられて牢屋から出た。

 地下の入り口から星が見える。

 

 「トール、オリバーに見せないようにしてください」

「わかってる」


 そう言うと大きな手で、あの時のように俺の目を塞いだ。

トールの剣を見て大体の察しはついていた。

 やっぱり、この世界での最初の光景。

 あれも夢じゃなかったんだ。


 「おーい!ここまでやっといて、どこに行くんだ?」


あいつの声だ、デリンジャを殴り飛ばした、多分こいつらのボス。


 「ルーク、オリバーを頼む」


 「小便に行ってる間に、よくもまぁここまで荒らせたもんだ。やっぱり、そこら辺のクズを集めただけじゃダメだな。何者だお前ら」

「この子の親だ!お前はダルフォンの手の者か?」

「ダルフォン?何の話だ?まぁいい。おまぇ」


キン!


 瞬きをした瞬間だった。

 トールと男が剣を押し付けあっている。


 「っぶねぇ」


 男は後ろに下がり距離を取る。


「ほぉ、今のを防ぐか。素人ではないな」


トールはこの距離を一瞬で移動したのか?

 30mはあるぞ。


 「この人数をやっただけあって強いな。後ろの奴も出来ると見た。それなら…」


男は、ボソボソと呟いている。


「俺は、天飆流のダグラス・エルヴィン。1人の剣士として、お前に決闘を申し込む」


天飆流?何を言い出すんだこいつは。

 

「いいだろう。その決闘、受けて立とう」


悪党に名乗る名などない、とか言うところじゃないのか。

しかし本当に大丈夫なのか?

 

 「焔雷轟剣流、トール・アクスヴィア」

 

 静かな夜だ。

 心臓の音だけが聞こえる。


 パキッ。

木が軋む音が鳴った瞬間、ダグラスが先に動いた。


 速い!

 ダグラスの湾曲した剣をトールが受け止める。

 

「ルーク!!!」


 トールが叫んだ瞬間、俺の前が光った。

 何だ?

 ルークが何かしたのか?


 「くそ、これならどぅだぁぁ!」


 ダグラスが袖から出した短剣を、腕ごと切り落とすトール。


「覚悟しろ」


俺がおかしいのか、トールの動きがほとんど見えなかった。

 静寂が訪れた。

 時が止まったかのようにダグラスは動かない。

 トールが血がついた剣を振り納刀するとダグラスの首が落ちた。

 

 「ーーー・ーーー」


 ルークが何か言った。

 目の前が暗くなる。


 また…これか…。

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