41話 実質的始業式
「あぁ〜…やっと終わったよ…ほんとにさ…」
長い長いペナルティだった
ほんとに長い……
「いやさっ!長すぎない!?もう学年変わったよ!?」
「どうしたの」
空いた天井から少女が深い青色の髪を下に揺らして顔を出す
「ごめん独り言。気にしないで」
少女…ルゥは無言のまま顔を引っ込める
デスペナルティを覚えているだろうか
あれのせいで前ステータスにデバフがかかり、おおよそ10分の1と言ったところだ
ただでさえ落ちこぼれレベルで魔力体力のない俺がさらに10分の1になるとどうなるか分かるだろうか…?
あんまり変わらなかった!
実はそれが1番ショックなことで、魔法はルゥに全部頼ったし体力は…学校の往復でへばるのは少々辛かったがそれ以外は特に問題なしだったのだ
とはいえ、あまりの魔力の低さに教師から学科変更の打診を受けたのは記憶に新しい
「授業中に魔力切れで倒れるとか世話ないだろ」と言われた時は背筋が凍ったよ
駄菓子、菓子!
10分の1での魔力量増量はそれ即ちデバフ解除時に10倍へと変貌するっ!
どんなピンチもチャンスにしてこそ人間ってものだろう!
ほら!現に今!体内の魔力量が一気に上昇している感覚が……
………
あれ?
……しない……けど…!
魔力の総量は増えている…はず!
「リュウカ。時間。そろそろ」
「あぁうん。急いで支度するね」
そういえば今日は学年が上がって初日だ
クラス替えもあるため大事をとっていつもより早く出て合流する算段となっている
「…クラス、一緒だといいね」
身支度をとっくに終わらせて天井から音もなく飛び降りたルゥに向かって話しかける
「不安はない」
「え?どうして?」
クラスが離れてもいつでも会えるからいいだなんて悲しいことは言わないよね?
「私たちは惹かれ合う運命だから…導かれ合う2人はまさに…運命共同体?」
………
「準備出来たし行こっか」
「ひぃ…ひぃ…!歩くの辛いよぉ。助けてぇ」
「……さっき無視したこと忘れてないから」
プイッとそっぽを向いて先を歩いていく
「ごめんよぉ〜。あとでなでなでしてあげるから許してよぉ」
「…今して」
ふっと体が軽くなり、普通に歩けるようになったのでルゥの頭を歩きながらよしよししてやる
結局毎日頼っちゃったな。風魔法
毎日自力で学校まで行こうとしていたのだが、最後の最後にルゥの魔法に頼ってしまっていたのだ。そして今も
それにしてもどうゆう原理なんだろうか
体を軽くしたり跳躍力を上げるなんてもはや重力魔法だ
……ん?なんか違和感…俺は勘違いをしていたのか?
「ねぇルゥ。いつも思うんだけどこの風魔法とっても便利だよね」
俺は手を頭に乗せたまま続ける
「風魔法…かどうかは分からないけど、便利」
「分からないの?」
「うん。自分で作ったから…」
「そっか。自分で作ったんだ」
「うん」
「へぇ………って…はぇ?え?自分で作った!?」
「うん」
待ってこの子だとしたら…
「天才すぎないっ!!??」
元から強いなぁ…強すぎるなぁとは思っていたけれどっ!
まさかそこまで才能の塊とは夢にも思わなかったよ
びっくらぽんですわ
「ルゥ〜!リュウカちゃ〜ん!おはよ〜う!!」
ルゥの才能に感心していたら、遠くの方からシイナが手を振って走り近づいてきた
気がついたら周りは学生で溢れており、俺たちは学校の門が目視できる距離まで近づいていた
「おはようシイナ。よく分かったね。こんな人混みの中の私たちをさ」
「ヨユーだったよ!2人ともすっごく目立ってたから!」
目立っていた…か…
うん…知ってた
ルゥが魔力の出力を上げたおかげで出来た走るよりも早く歩く女児2人。目立たない筈もなく
子供になってから羞恥心は薄れたせいか余り気にしていなかったのだが…まぁ目立つわな
「クラス一緒だといいね!」
「うん…そうだね!」
とりあえず話は訓練場…いわゆる体育館での出来事からだ
校門を潜って出た先に『剣技学科と魔法学科の四年生はこちら』と書かれた看板が設置されており、クラス替えの興奮が冷めやまぬままの生徒たちが集まった
同学年ってこんなにいたんだ…
200はいるな
各々が誰と一緒〜などとはしゃいでおり、教師が設置された台に乗っても静かになることはなくますます盛りを見せていった
もちろん俺たちは話してるぜ?
優等生だからな
「黙れっ!!!」
台の上に立った縁色の男性教師が激しく叫んだため、生徒たちは皆萎縮し訓練場は一瞬で静寂の限りを尽くした
俺も当然黙った。怖いし
優等生だかr
「新学年早々、こんなタイミングの悪い時に呼び出されてさぞかしご立腹だろう。だが黙れ。お前らが生きるか死ぬかは私達次第だと悟れ」
「恐縮ですが…あなたたち僕たちを殺さない筈です。だって殺意がない…」
すっと手を上げた少年は臆するという言葉を辞書に持ち合わせていないらしい
いや、自殺願望者かもしれん
「カカカ!優秀だなぁ。だがな、お前も黙れ。お前らの大半は一生会わんと思うが人を殺すのに殺意が必要ない生物もいる。知っているか?人間も訓練を重ねれば出来るんだよ」
「では…貴方も出来ると言うことで…?」
このスーサイドボーイ怯まないなぁ
「……今その話をしているのではない。黙れ」
流石に引き際は弁えているのか、納得いかずとも身を引いた
うーむ…その返答は可能とも不可能ともとれるなぁ…ちょい不可能よりかな?
「ルゥはどう思う?」
俺はルゥにしか聞こえないぐらいの小声で話しかける
「…多分出来る…」
「そこっ!俺に聞こえる声で話すな」
台の上に立った男性教師がこちらを睨みつけてくる
ひえぇ〜!!殺意すごいよぉ!!なんで聞こえんのよぉ!!
「じゃあ、聞こえなければいい…?」
ルゥは俺とルゥとシイナを囲むぐらいの大きさの魔法陣を組む
なんでルゥも反抗するのぉ!
そこは波立てちゃあかんでしょうがぁ!
「子供の頃考えた魔法。これでこちらの会話が聞こえることはない」
独学魔法1つだけじゃないのね。天才すぎ
「あいつ、めちゃくちゃ強い。睨まれた時に殺意を感じなかった。それも一切」
じゃあさっきのは殺意じゃなかったってこと?
凄み?
「カカカ!面白い!自分で考えたのか!?魔法陣がなってない。ぐちゃぐちゃだ」
ミシッ パリンッッ
魔法陣に亀裂が走ったかと思うとガラスのように砕け散った
魔法行使の阻害ってこんな感じなんだな…
「俺に阻害されないレベルのものを持ってこい」
今のところ生徒と争っている姿しか無いが…この教師大丈夫か?
「話がズレにズレたなっ!申し訳ない。君たち四年生からは!新たな授業が追加される。そう…その名はーー」
訓練場にしばらくの静寂が流れる
しかし私語を始めるものは先ほどの牽制があってか現れない
そして台に乗った教師が目をカッと開くと後ろの壁に大段幕が流れてきた
「魔気統合だぁぁっっ!!!!」
「まきとうごう?」「なんだそれ」「まき…」「とう…ごう?」
さすがの生徒達もこれにはザワつきを見せるが、しばらくしないうちにまた静かになる
「魔気統合とはっ!この学校を飛び立つ時に1人前に戦える人間になるための超!実技演習!普段の授業とは異なり他の授業と同様に組み込まれるものではないっ!」
「えぇと…具体的にはどのような…?」
スーサイドボーイもう一回いったぁぁぁ!!!
先ほどの牽制というものをまるで知りません!
これは好感持てますね
「いい質問だっ!言語の授業があるだろう?あれは決まった日、決まった時間にやるものだろう。それとは異なると言うことだ。夏季休業に近いものと考えればいい!そうだな…直近で言うとだな…己の武器探しに1月…といったところか」
武器?
ここには魔法学科もいると言うのに、武器の話?
あぁ、文理と同じようにこれも分かれるのか
早計だな
「武器…それは剣技学科のみのお話という事で、魔法学科には別の演習があるのですか?」
俺の心を代弁してくれている!?
ありがとうスーサイドボーイ…君のことは可能な限り忘れないよ…
「カカカ!甘いな!甘すぎる!殺意やらなんやらを自慢していた男がそれとは!甘すぎるな!」
パァァンッッ!!
カカカ教師が手を叩く
「せっかくだ!甘すぎるお前らに教えてやろう」
「例えばだ。杖を持った魔法使いと剣を持った戦士が狭い教室で戦ったらどうなる!?」
間髪入れずに話を続ける
「答えは単純。魔法使いが瞬殺される。では、剣を持った魔法使いと剣を持った戦士が同じ条件下で戦えばどうなる?」
「答えは単純。せめぎ合いにはならずに魔法使いが死ぬ。大半の魔法使いは魔法に時間を割くから剣勝負では勝てぬのは明白だ!」
「意味がないじゃ無いか。そう思っただろう?そう!全く持って意味がないのだ!」
「…呆れてものも言えませんよ」
「まぁ話は最後まで聞きたまえ。ただの剣同士の戦いでは意味がないという話だ」
「何を言いたいのかがさっぱり分かりません。そもそも、それは狭い空間での話。限定した話ではないのですか!?」
「最後まで聞けといっておろうに。広い空間だろうと間合いに入り込まれれば話は変わらん。十分か?話を続けさせて貰うぞ。お前ら!一度や二度は聞いたことがあるだろう!名前の付いた剣を!」
なんだかワクワクしてきた…!
やっと異世界らしくなって来た…!
「魔法学科のお前ら!お前らは皆魔剣を引き抜く才能があるのだっ!」
魔剣!!!!




