35話 屋根裏秘密基地
朝、目が覚めると隣にルゥがすやすやと寝ていた
……………あぁ
そういえば昨晩は一緒に寝たな
勿論同意の上で
一瞬美少女を誘拐した犯罪者になっちまったかと思ったぞ
動く気配に気がついたのか、ルゥは瞼をパチリと開けると矢継ぎ早に顔に水をぶっかける
「え!?ちょっどうしたの!?」
「実は夢なんじゃないかって、でも、本当で…うれしい」
目を覚ますために水をかけたのか
俺無理だな寝起き数秒で水浴びるの
「昨日のことも夢じゃないよね?」
昨日…なんか言ったけか?
「ほら…同棲…」
………確かに、なんかそんなようなことを言った気がするぞ…
「いや…うん……よしっ。一緒に住もう!ルゥもルゥのお母さんもちゃんと話が出来るようになるまで私が責任もつよ」
一度寄りかかった船だ。それが泥船だったら不安しかないだろう
「んじゃあまずは…」
ルゥと住む上で初めにする事は…
「天井をぶち抜こう」
ルゥの思いっきりな顰めっ面が見えた気がした
作業としては、扉の前に立って部屋の四隅の左奥の天井をぶち抜き、梯子を部屋と天井の要にすることにした
自分の家だが、子供のする事なので許してくれるだろう
「じゃあルゥ、ここを風魔法でスパーンと切っちゃって〜」
ルゥは躊躇いつつも、俺の書いた印に沿って綺麗に天井を切断してくれた
意外と硬そうな木目の天井は綺麗に切れ、床にガコンッと落ちた
「まな板にするかぁ…」
俺の呟きにルゥの頭上には[??]が浮かんでいた
ベットをずらしてルゥに肩車をしてもらい、俺はなんとか屋根裏の内情を見ることができた
天井裏は暗く、炎魔法で辺りを照らすと
大量のネズミと大量の何かがいた
「ーー〜〜っっっっ!!!!〜〜っ!!」
声にならない絶叫
制御が効かない俺の体
耐え切れず身を崩すルゥ
「むりむりむりむりむりむりむりむりむり!!!!!!!ぜったいむりむり!!!」
ルゥに抱きついて泣きべそを描きながらネズミを怖がる成人男性
俺はネズミは無理なんだよ本当にっ!!
ルゥの口から「かわいい」なんて言葉が聞こえた気がしたが、恐らく大丈夫?とか言ってたんだと思う
「なにがいたの?」
ルゥは極めて冷静に問いかける
「ね…ネズミが…うじゃうじゃ…いやぁっ!」
「ねずみ?」とルゥは俺をよしよしと撫でた後、風魔法を使って人1人分跳躍して屋根裏を覗き見た
「マママだね。ねずみの方が可愛いかも」
ネズミに嫌悪感が溢れないのか、ネズミの大群を見て極めて冷静に状況を説明する
この世界はネズミがマママとかいう名前になるのね
「屋根裏広い。暗くて落ち着く」
「ねぇねぇ!あいつ追い出すバルサンみたいなのないの!?」
俺は布団に蹲って叫び聞く
「動物は魔石を置くと消えていく」
へぇ……地球にもないかなぁ?魔石。何億円でも俺は買い占めちゃうぞ!
「ねぇ!一旦この部屋から出ない!?私もう耐えられないんだけど!」
俺たちは烈火の如く速さで部屋もとい家から飛び出した
ネズミの脅威が消え、落ち着きを取り戻した俺はあることに気づく
「ねぇルゥ?もしかして部屋にネズミ蔓延して私の食料根こそぎ奪われない?」
ルゥは弱ったような声を出す俺から不安を拭うように、ぎゅっと俺の手を握る
「私が守る」
なんの解決にもならないが、その底知れない自信に感化されて思考停止という形でネズミを受け流すことにした
「じゃあ、ルゥのお家にいってケジメと荷物整理しよっか」
学校の登校時間はとうに過ぎており、街を見ても生徒らしき姿は見当たらなかった
…いた。なんか走ってら
あれ?あの人屋上にいた人っぽくね?
お寝坊さんなんだな
ルゥは母親との会話を考えているのか、遠い目をして俺の握る手を頼りに歩いている
学校とは反対方向に歩いていき、生徒のいない街並みを堪能しつつ、ルゥの家の前まで着いてしまった
ノックしても反応がなかったため家に入ると、リビングには昨日のままの姿で固まっている女性がいた
それを無視してルゥの部屋に入り、物品整理を始める
荷物の取捨選択が大方決まり荷物を2人で持ち出すと、最後にリビングへと足を向ける
「お母さん」
女性はゆっくりとルゥの方へと振り返る
そのぐしゃぐしゃの表情は微かな希望の光がちらつくような錯覚を見ていることを物語っている
「私はお母さんを母親だとは思わない。私は家を出ていくから。バイバイ」
またも俺は彼女の顔を、表情を見ることなく家を出て行った
来た道を戻る最中、ルゥは浮かない顔をしており、ああやってピシャリと言ったもののやはり少し悲しいようだ
「よく頑張った。偉いぞ」
荷篭を床に置き、前方から片腕をルゥの背中に回して抱きしめてやると、もう片方の手で頭を撫でてやった
俺の部屋の前に立つ
ゆっくりと、扉を開ける
頭だけを部屋に恐る恐る入れ込むと……
意外にも部屋の景色は何も変わらず、机に一切れのメモが残されてあった
〈1階にネズミが侵入し、マミリルが怖がったためネズミを駆除し、浄化をかけておきました。間接的とはいえ不干渉の約束に反します。次干渉したらあなたの居場所は無いと思ってください〉
「…私と真逆…?」
「そう思ってたけど…もしかしたら優しいかも知れない。…天井ぶち抜いてもお咎めなしだし、たった1つの約束を破っても許してくれたし、なにより聖魔法:浄化、これでネズミの心配が無くなったんだ」
「リュウカ…変」
変か変じゃ無いかと言われたら確実に変だが、あの母親を想像するとかなり優しい気がする
それに、俺は1つ情報を得たからだ
「うちの母親は聖職者。もしくはだった」
慈愛溢るるべき聖職者がなぜこんな風になってしまったのか。これは謎が満ち溢れてますねぇ
ま、調べる由もないので未来の自分に預けるとしよう
まずルゥが屋根裏を確認して生命がいないことを確認すると、次に俺が登り、俺のために一度下がったルゥが次に登った
因みに梯子は設置しないことにした
ルゥは魔法で容易に行けるし、俺はルゥの部屋に行くことがないからだ
プライバシー観念もある。自らのプライバシーは考えていない
壁に小さい風穴を開け、簡易版通気口を作成し、そこに被らないように物を設置していく
ルゥの部屋には光を灯す魔法具があったため拝借させてもらい、天井に付ける
ルゥの寝床は布団に決め、低棚を設置して中に本を詰め込んでいく
その中に1つ、開ける所が見つからない箱があり、揺らすとじゃらじゃらと金属と金属が擦れ合う音がした
不思議な箱を耳元でシェイクしてるとルゥが近づいて来た
「それは貯金箱の魔法具。いつかのために魔石を売って集めてた」
これが貯金箱ねぇとルゥに手渡すと、ルゥは魔力を込めたのか、その箱の上部が変形して中が見えるようになった
「ぎょうさん入ってら」
中身を覗いて驚いた俺は自分の貯金と比較して全く敵わないことに気づいた
多分小銭1つとっても価値が違うのだろう
明らかに俺の溜めている小銭よりも高価そうなそれを見て、なぜだか俺はやる気に溢れかえった
お金欲しい!!




