30話 女子会
「パルツは後で部屋に持って行くわね」
そういうと、シイナの母親は玄関の目の前にある階段を登って去っていった
シイナの家はなんというか、貴族家みたいで俺の知見では話にならないほどであった
玄関先には吹き抜けの大広間、そこの中央に鎮座する巨大な階段、豪華なシャンデリア…
本当に同じ街の住民なのだろうか、ただただ吐息が漏れるばかりだ
「私の部屋は2階奥に2部屋あるの。ついてきて!」
シイナは階段を駆けて左に向かっていった
「…ルゥは部屋二つ持ってる?」
同じく隣でただ呆然としていたルゥにゆっくりと振り向いて問いかけると同じくルゥもこちらにゆっくりと振り向き
「持ってるわけない」
と答える
「だよなぁ…」
シイナが向かっていった部屋にゆっくりと、粗相のないように向かっていった
「ねぇシイナ。部屋って2つもいる?」
【あっちの世界では2はちゃんと別言語を介しています!ではっ!】
「もちろん!こっちはベットがあって、こっちはおもちゃとか…本とかっ!」
いや、一部屋で事足りるだろ…なんてツッコミは心の中に秘めつつ、シイナの案内により、娯楽部屋の方に入りーー
「って…部屋もデk…大きいのね」
俺の部屋4つ分はあるな…
部屋の中央にある低い机を囲うように、後からやってきた執事らしき初老の男性が持ってきた座布団に座り込む
その机は流石に常識的なサイズで、丁度良いサイズであった
執事が部屋を去っていった頃
「私!2人のお家のこと聞きたい!」
正座で座っていたシイナが身を乗り上げる
「えと、まず私から話すね」
というかこの3人の中でやっぱ俺だけなのね。あぐらかくの
ルゥもあぐらかと思ったが、流石にあぐらはしないらしい
俺も正座するか
…苦手だしいいや
「私のお家は見ての通りなんだけど、私の家族は私含めて5人と1匹いるの」
「姉ちゃんと妹かな?」
「半分正解!」
「兄ちゃんと弟かな?」
「半分正解!」
「兄ちゃんと妹かな?」
「ぶぶー!」
凄いな俺全部外した
「正解はお姉ちゃんと弟くんでした!2人は?」
最初に話したのはルゥだ
「私は姉だけ」
次に俺だ
「行方不明の兄と身元不明の弟がいるよ」
「んん!?どうゆうこと!?」
「なんかヤバそう」
「いや、行方不明っつっても家にいる痕跡はあってここ2年間1度も会ってない兄と母親が存在を秘匿してるっぽい弟がいるだけだよ」
先輩が俺の前に姿を現さない理由が正直よくわからない
ただ一つ分かることがあるとするならば、それは…
先輩が俺のことを避けている
この間、先輩がいる事を察知して部屋に突撃したことがある
しかし、先輩は窓から逃げたようで、扉を開けた頃にはもぬけの殻となっていた
そして弟は、家に帰った時、たまに扉を開けてこちらの様子を確認しに来ることがあり、それが何回も確認されたため、弟だと認識した
因みに母親とは1度も…いや、極たまに廊下とか街で見かけるわ
「闇…深……………」
「なんか聞いちゃってごめんね?」
「いやいや全然全然、全くもって気にしてないから」
「でも凄いよね。私たちの家族はそんなのはないよ、ね?ルゥ」
「うん…」
暗い表情で俯いていたルゥは2人の視線に気づいたか、なんでもない、と一蹴した
しばらく、少し気まずい沈黙が部屋全体に広がると、その空気を断ち切るように外部から動きが見えた
「シイナ〜〜!!パルツ焼けたわよ〜!!どっち〜?」
「こっちこっち」
静寂の打破を感喜するかのように明るい顔でシイナは扉を開ける
入ってきたのはシイナの母親と執事の2人で母親はパルツの入った皿を、執事は紅茶の入ったティーポットと3つのティーカップを乗せた盆を持っていた
パルムはシイナの母親自らが作ってくれたようだ
サクサクとした食感に加えて、噛めば溢れるこのクッキー特有のエキス。不味いはずがなかった
さらに紅茶
よく分からんがうまい
「ルゥ、リュウカちゃん。私、2人とおままごとがしたいな…だめ…かな?」
「私は構わない」
「私もいいよ〜…何年ぶりだろ」
下手したら20年ぶりかもしれんな
誰とやってたかなんて記憶は微塵もないがな
その言葉を待ってました!とでも言わんばかりに、部屋の隅へと駆けてカゴを掴み、その勢いのまま戻ってきた
いそいそとカゴから物を出し、床に設置していく
「2人とも〜!こっちこっち〜!!」
設置物をポンポンと叩き、促してくる
「私がママ役をやるから、ルゥはパパ役、リュウカちゃんは息子役ね!」
いや娘役じゃないんかい
…やり易いっちゃあやり易いけども
「おままごとも終わりのお時間がやって参りました!」
小1時間、息子役から愚弟役、犬役まで…あれ?男役しかやってない…
とにかく、シイナの無茶振りに付き合ったこのおままごとはどうやら終わるらしい
大人になるにつれて形成されていった恥や常識なんてものはこの2年間で捨ててきた
大人1人と子供2人inおままごととかいう終わっている字面も今ではなんの抵抗もないのだ!
「おままごとの次といえば〜?そうっ!恋愛話だよねっ!」
ふむ、恋愛か
BLと百合を両立出来るこの俺に恋愛か
うん
「ない」
「私はいらない」
俺に続いてルゥもばっさり切り捨てる
しかし、そんなものはお構いなしかシイナは自分の思いを恥ずかしそうに語り出した
「私、実は気になってる人がいるの…誰か分かる…?」
知らん
この街に住まう男1人すら知らん
我2年学校ぼっちぞ
と言うのは流石に可哀想なため会話を続けれるよう言葉を絞り出すことにした
「えーと…学校の子かな?」
「うん、去年同じクラスでね、今年も同じになっちゃったの!」
キャーっと顔を手で隠すも、赤面は手から溢れている
今ほぼ全部言ったな…
「えーと…どんな子なのかな?」
「うんとね!髪で顔を隠してるんだけどね…?ときどき見える顔がカッコいいの!それでね?優しくて強くて…もう最高なの!」
「…ルゥこれ聴くの何回目?」
言い慣れてそうな台詞だったのでルゥにこそっと聞いて見ると
「50超えたあたりで数えるのやめた」
と予測していたものの俺は驚愕してしまった
えー…長髪で?クラスメイトね…申し訳ないけど抽象的すぎてまるで分からん
「その…優しい所と強い所はいつ知ったのかな?」
「私が教科書を落っことしちゃったときにね?拾ってくれたの!それでね?他のクラスの子と教室で喧嘩しててね、張り倒したの!」
うーん…こりゃピンクの色眼鏡が掛かってんな。まるで当てにならん
いや、当てになっても分からんが
「私分かんないや。ルゥは分かった?」
「私男1人も知らない」
お前俺と同類かよ…




