24話 複合魔法
「まず箸の持ち方ってどんな感じなの?」
まずルゥの箸の持ち方を見ないことには始まらないが…
ルゥは箸を右手で持ち、箸をガクッガクッと不器用に動かす。
「持ち方自体は悪くない…が、力の入れ方が悪いのか?」
んー…なんか違和感…なにか見落としている気が済んだよな…
確か…
「ルゥの利き手ってどっちだっけ?」
「ききて?初めて聞く言葉」
利き手の概念ないのか?
いや単純にルゥが知らないだけかもな
「んーと…じゃあ書く時いつもどっちの手で書いてる?」
「左」
ルゥは左手を肘だけ曲げて挙げる
やっぱりか!
なんかペン持ってる時左だったような気がしたんだよ!
ちなみにペンはこの世界では名前が違うのだが、思い出せなかったので少し濁して話したのだ。
なんだっけな名前…というかボールペンは無いんだよな。
あれ結構技術必要だし。基本鉛筆か羽根ペン。
羽根ペンは決して安くは無いが鉛筆を使うのもなぁ…と思っていた愚かな俺は羽根ペンを買ってしまったのだ。
そしてこいつはインクが必要でこぼさないかとわざわざ気をつけて持ち歩くのが嫌になり、無事我が家の鑑賞物となったよ。
今は俺の机の端にちょこんと置いてある。
しかも手紙を書くにしても相手いなかったからね!
話が脱線しまくってんな…
あっ!思い出した!
鉛筆は黒棒と呼ばれてるんだった。
めちゃめちゃ安直な名前だった。
「それで、それがどうかした?」
俺がしばらく無言であったため痺れを切らしたルゥはなにがしたいのかを聞いてきた。
「あぁ、ごめんね。黒棒と同じ手、つまり左手で箸を持ってみて?」
「?」
心底不思議そうな顔をしながら取り敢えず俺の指示に従おうと思ったのか、持ち手を変えて箸を持つと——
「おぉ…おぉおお!!!」
ルゥはカチカチと上手に箸を動かしてみせた。
持ち手を変えた瞬間に出来るのはおかしい…生粋の左手使いぐらいしか考えつかないが…
「やったね!ルゥ!」
「やりました。私」
箸をカチカチと動かしながら笑顔とドヤ顔を同時に行い右手をこちらに差し出した。
なんだ?
「いえい、ピース」
ピースをしてきた。
この世界たまに日本語じゃ無い地球の言葉を使ったりする。
不思議なのだ。そもそもこの世界の人々が日本語で喋っている時点で。
しかし考えても迷宮入りするだけなので、ありがたく今の状況を受け入れるしか無い。
ルゥがご飯を食べている間、俺は何をしていたかというとボーッとしていた。
この世界スマホとかが無いからやる事が無いとボーッとする以外の選択肢が限られてくるのだ。
スマホといえば
転生してから3ヶ月間、スマホがない生活が非常に苦痛であった。前はやることがない時、隙間時間は大体スマホをいじっていた。こっちの世界に来たらそもそもスマホがないのでポケットの中が空いておりかなり不安だった。しかも当初文字も読めないため本が読めなかったし、暇な時間にすることもなく本当に苦痛だった。
今でこそなんともないが、不安で暇でどうしようもなかった俺が見つけたものこそが…!
睡眠なのだ
「リュウカ。食べないの?ご飯」
「私はルゥが魔法を使ってるのを見ながら食べようかなって」
「ふぅん」
ルゥが食べ終え、俺たちは再び学校にやってきた。
校門から右に行き、道なりに進んで硬い土で埋められた緑のないグラウンドまで辿り着く。
ここは魔法練習用の専用グラウンド。
ちなみに校門から左に行くと芝生に満ちた広場が広がっている。
そっちは俺の絶好の睡眠スペースだ。
専用グラウンドの魔法を使っていいラインまで歩くと、俺はそこにレジャーシートにかたどった使わなくなったカーペットを敷く。
そこに座り込み弁当を出して俺は飯を食べ始めた。
「なんか上手くいかなかったら教えてね〜」
「ん」
ルゥはテクテクと俺から離れある程度離れると目を瞑った。
そして…
ゴオオォォォ!!!!
ルウの頭上斜め前の位置に燃えたぎる火の玉が発生した。
大きさは推定…30…40…50…だんだんと大きくなっていってる…!
火球が2m級まで大きくなると熱波がこちらにまで押し寄せてきた…多分ここら辺から大きさが変化しなくなってしまうのだろう。
「よしっ!やる!!」
ルゥがそう叫ぶと火球の形がみるみる変わっていく
火球は竜巻のような形に姿を変える。
熱波がこちらまで押し寄せてこなくなったため熱を横方向に飛ばすことは無くなったが、今度は上方向に逃げてしまっている。
「ルゥ!!そのまま上を丸く閉じるんだ!!」
「むぅぅぅぅ!!!ダメ!!出来ないっ!!」
「風の形を変えるんだ!火球の周りをぐるぐる循環するように風を吹かせるんだ!」
「やってみる!!」
火球は一旦元の無秩序に炎を出す状態に戻ると、次第に立ち昇る炎が横に揺らぎだした。
立ち昇る炎が消えたかと思うと火球は丸みを帯び始め、どんどんと球体に近づく。
しばらく待つこともなく、完全な球体の火球が出来上がった。
おぉ…!!
「すげ…!!」
思わず息が溢れる
美しいその火球を見て誰が息を溢さずにいれようか?
その火球はまるで太陽のようで、辺りを一心に照らしつける。
ただ、まだルゥはその火球を大きくするという目標を達成していないためか、
「まだまだぁ!」
火球を大きくし始める。
しかし——
「キャッ!」
今までが上手く行きすぎていたのか、急に物凄い熱波を叩きつけたかと思うと一瞬にして消え去った。
ふむ、どうやらこのやり方は火球を安定させるには向いているが、大きくさせるという点では向いていないらしい。
となると…
「魔力切れ…」
まずい!!
今にも倒れそうなぐらいフラフラしているルゥの元へ駆け寄り、支えてやる。
「眠い…」
今にも寝そうなルゥを抱き抱えてカーペットに寝かしつけてやる。
「お疲れ様。一旦休みな」
先程の火球の改善点を考えながら、のんびりと弁当を食べ始めた。




