18話 代償
ジタバタと必死に這いあがろうとする。
「———!!!」
声が…出な…
あ…
死……
「おい!お前!大丈夫かっ!?」
少し低い声が聞こえ、腕を誰かに掴まれた感覚がする。
そのまま腕を引かれて水面から顔を出す。
「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…あの…うっ…ありがとうございます…はぁ…はぁ…」
目の前には銀髪の立ち姿が凛々しい少女がいた。
恐らくこの子が助けてくれたのだろう。
「銭湯で溺れるなんて普通ないぞ。一体何があったんだ?」
「左足を痛めてしまって…」
少女の手を取り立ちあがろうとした時、左足の痛みに耐えきれず少女に倒れ込んでしまった。
「おい、まだ座ってた方がいいんじゃないか?」
結構な勢いで倒れ込んだつもりが、少女は全くぶれずに俺の体を支えてくれた。
「ありがとうございます。体幹お強いんですね。なにか運動されてるんですか?」
「おっ!分かるか!?私は騎士に憧れていてな…毎日修行に励んでいるのだ。」
待ってました!とでも言わんばかりにはちきれんばかりの笑顔を見せる。
よほど騎士に誇りを持っているのだろう。
「かっこいいですね!」
「かっこいい…ふふん…」
かっこいいと言う言葉を噛み締めながらにやけていた。
この子分かりやすいなぁ〜
「あぁ、だが私には魔法適性があってな…騎士になることを反対されているのだ。」
さっきに笑顔から一転、少し俯いてから作り笑いをする。
助けてもらったお礼だ。何か助けになってあげたいな…
「では、魔法騎士になってみては?」
「…ん?なんだそれは。」
おぉやはり、魔法騎士の概念はこの世界にはないようだ。
「武器に魔法をかけて強化したり、魔法で防御力を高めたり、武器がなくなっても戦えるようになります。」
「それは凄いのか?」
いまいちピンときていないようだ。
なにか例えを…そうだっ!
「…よし立てるな…私のこの手を剣に見立ててください。」
「ふむ」
右手を湯に入れ、引き上げてまだ水が腕にまとわりついてる間に…
思いっきり振る!!
ビシャァと水の斬撃が発生する。
「水の斬撃でこうやって間合いにいない敵も攻撃できます。私は非力なのであまり強くないですけど…」
「聞いたことがあるぞ!水は石をも破壊しうると…!ではその硬さで身を守ると…!!」
少女は目をキラキラとさせながら妄想にふける。
「もし仮に他の方より力が劣っていてもその方より強くなることが十分可能だといえます。」
「ありがとう!君のおかげで私は最高の騎士になれそうだ!こうしてはいられない!修行だ!」
少女は俺の手を握りぶんぶんと上下に振ると、その勢いのまま走り去ってった。
あ、転んだ
しばらく別の湯の下の床が平らなところでぬくぬくしていると——
「おやぁ?その様子は左足のツボを押したんですねぇ」
アズサ姉さんに再び出会った。
「ん〜…少しまずいですねぇ…」
…えっ!?
少し困ったような顔をした後、俺を湯船から拾い上げたかと思うとお姫様抱っこをされた。
いや困ってるのはこっちだよ!なんでいきなり!?というかまずいって…なにがだ?
アズサ姉さんの腕から離れようと暴れようとするも——
あれっ?体が言う事をきかない…
「あそこのツボを押すと魔力の経路の回復は確かに早くなるんですけど…体の機能が狂うんですよねぇ」
なんだか頭がぼーっとしてきたような…
「よいしょっと…ほんとは湯船に髪をつけたらいけないんですけどねぇ…」
ん…気持ちいい…
アズサ姉さんはどこかに俺を置いたようだ。
頭がだんだんと冴えてくる…
ここ…水風呂じゃん…
「今回は体が熱暴走するだけで済みましたけど…次どうなるのか分からないので、もう、触らないでくださいねぇ」
俺は今水風呂に頭まで浸かっており、顔だけが出ている状態であった。
なのに寒いという感覚では無く少し冷たいぐらいであった。これは俺の体が異常に熱を発しているかららしい。
「はい…気を付けます…」
「かなり深くまで押しましたねぇ。治るまでだいたい…」
「冷たっ」
なんだ?急に水風呂が寒くなってきたぞ?
「流石ですねぇ。もう治りましたか。」
治ったのか…?取り敢えず寒いから出よっと
風呂から出た俺は先輩と合流した。
そしてそのまま家路に着きベットに腰掛ける。
「なんだか今日はとてもスッキリしてるな」
暗がりに1人肩の軽さにそう呟く。
さぁ、もう寝よう




