14話 魔法使いの適性は…ある
俺たちは魔樹海の手前まで来た。
え?魔力切れのトラウマ?
ないない
え?熊に追われるトラウマ?
あれぐらいでへこたれる俺じゃないって
魔樹海に少し入り、座れるぐらいの手頃の石の近くで先輩は本を広げた
適度に土肌が見える程度に雑草が生えており、時たま吹く風に煽られてサラサラとそよぐ。高いまばらに生える木々からの木漏れ日が森の涼しげな空気を引き立てる。
心地よい。初めに来た時と違い、森の自然に目を向けることができる。
1人と2人では違うものだと感心していると——
「よし、じゃあ読み上げるよ?魔法使いになる上で、まず初めに鑑定レベルを上げましょう…上げ方は周りのものをどれか1つ意識してじっくりと観察しましょう…ふむ」
先輩はそびえ立つ木を眺めたり触れたりし始めた。
一方で俺はそこに落ちていた石を手に取り、じっくり眺めた。見るじゃなくて観る…だっけ?
石〈そこそこ固め、白に近い薄茶色、ゴツゴツとした形で表面はザラザラ〉
石だ。なんと言おうとこれは石だ。石石石いしいしいしししししい
[称号 覗く者を手に入れました]
脳内を支配したこの言葉にハッとした。あれ?どうしていたんだ俺
「称号…うん。これが頭に響けば成功か。桐生、そっちはどうだい」
「こっちも問題ないです」
「うん、いい感じじゃないかな。次は自分自身に鑑定をかけてみましょう『鑑定』と。発動しないのであればそこでやめましょう。あなたに才能はありません、が成功したのならあなたの名前が見えるはずです。」
やってみよう
えーっと…自分に向けて…『鑑定』!
おっ成功したっぽいな
眼前には白い縁で型取られた黒い板が出現し…本当にただ出現しただけのようで何も書かれていない。
触れてみようとすると触れることができ、横から見ようとすると見えなくなる…2次元的な板であった。更に後ろからは触れることができないようで、近づけた指が黒い板を通り抜けていった。
どうやら他人のものを見ることはできない。先輩も黒い板が現れたらしいが、それらしきものを発見することは叶わなかった。
「うん、成功した。桐生そっちは…大丈夫だね」
先輩の呼びかけに親指を天に立てて返した。
「続き行くぞ。鑑定レベル1では何もできないのでレベル2にしましょう。上げ方はそれぞれ別のものを10個、先ほどのように観察しましょう。」
よし、葉葉葉はははは土土土つちつちつちつ木木木きききき雲雲くもくも蜘蛛蜘蛛くもくも…
うわっ蜘蛛いる!
…そういえば人に鑑定したらどうなるんだろ。気になってきたからにはしょうがない。先輩には犠牲になってもらおう
『鑑定』っと
黒い板にランドウ・モスワイデ・オルトという文字が出てきたと同時に頭にガンガンと痛みが押し寄せてきた。
うわっ結構激しい頭痛だ。人に鑑定したペナルティとか?
「…桐生、今僕に鑑定した?」
「なぜバレたし」
「この本には鑑定レベルを1から2に上げるうえで最も早く上げる方法は人を鑑定することだが、耐え難い頭痛が襲ってくるから推奨しないって。後相手に不快感を与えるから気づいたよ。頭痛大丈夫?」
これをしただけでレベル上がるの?やった〜
「はい、まぁ…大丈夫ですかね。」
「それは本当かい?なら僕もやってみよう。不快感はそこまでじゃ無いから安心してくれ。」
先輩は我慢強い性格であるし、多分大丈夫であろうという判断のもと、これに応じた。
「鑑定」
先輩の声と同時に不快感が頭から足まで伸びてゆく
うっ…まるで暖房の風が直に当たる教室で異様に時間の経過が遅い授業の残り10分の時みたいな不快感…
こたえるな〜下手したら頭痛より嫌かも——
「っ!うっぅ~~~~~~!!あがっ」
顔色がどんどん青ざめていったかと思うと声にならない声をあげた。
そしてジタバタと体をうねらせ悶えている。
「ちょっ先輩!大丈夫ですか!」
しばらく悶えていたと思ったら体の力がふっと抜けたのか止まってガクッとうつ伏せに倒れてしまった。
「先輩っ!」
俺はすぐさま先輩の体を仰向けにして胸、口に耳を近づけて先輩の無事を確認する——
よかった…幸いどちらも問題ない。ただ気を失っているだけだ。
取り敢えず先輩が起きるまで鑑定レベル2の実力でも見よう。3に上げる方法知らんし
俺は自分に向けて再度鑑定を行なった。
すると今度は黒い板に自分の名前、HP、MPが書かれてあり、どうやらうちの鑑定は成長してくれたようだ。鑑定板にあったSPはまだ出ない子らしくここには載っていなかった。
あれ?MP減ってる…
というもののこのHP、MP表示、ざっくりとしか分からず文字の下にバーがあるのだが、このぐらい減った。しか分からない。
あ、そうだ。外部はどうなのだろう。
そこら辺にある石ころでいーや。『鑑定』っと
黒い板の文字が上から下へ消されると同時に別の文字が付け足される
…黒板みたいだな…
新たに書き換えられた板には赤蛙石のみ書かれていた。そう、その文字のみ
…まぁ情報は増えましたし?どうせ二重鑑定とか出来るんでしょうよ。そうでしょうよ。
文字の書かれている部分に触れ、再度『鑑定』と囁く。
結果的に二重鑑定に成功した。ただ…
出てきたのは石の一文字のみ…
三重鑑定しても出てきたのは石。
腹立つな
そこで1つ、人1人に対して鑑定できる対象は1つだけなのだろうか。二つ同時に出来ないのだろうか。
という疑問が生まれた。
その疑問を解消すべく、俺は黒い板を背にもう一度鑑定を自分にかけた。
鑑定板が二つ出来るのではないかという魂胆の元後ろを振り返るとそこに黒い板はなく、…まぁ失敗に終わった。
「そんな簡単なわけないよな」
嘆いてばかりでは始まらない。そう思い鑑定板をチラリと見るとMPバーが空になっていた。
まずいっ!眠気が来る!!
そう悟った直後、強烈な眠気が容赦なく襲いかかってくる。
そうだ!おばあちゃんが言ってた!眠くなったら運動しなさいって!
しかし、スクワットをするも抵抗虚しくうつ伏せに倒れ込んだ。それでも俺はおばあちゃんを信じるぞ!




