12話 頬をぶつ
手がジンジンと痛む。パーはグーより痛いんだな
「いたっ!何すんのよ!」
「——れ」
「は?」
「親に謝れつってんだよ!このド腐れ野郎!!」
あーあーみんな黙ってこっちを見ている。なんでこんなにも脳みそだけは冷静なんだろう。
「はぁ?私は子として当然のことを言ったまででしょう?というかいきなりなんなの?あなた関係ないでしょ!」
「ーっ!子として当然…だと?ふざけんのも大概にしろ!てめーの親御さんはてめーを作るために生まれてきてねーよ!思い上がんな!!」
「ふえっ何よっ…ひっく…この…うえぇぇーん!うっ…ひっく…う…う…」
怒鳴られたことがないのか知らないが相当こたえたのであろうか。そのキチガイ少女はわんわんと泣き出した。
あの言葉を聞いて感情を、そして体を制御することができなかった。
…俺は早くにして親父を亡くしている。だから親を貶した彼女をどうしても許すことができなかった。
ビンタをしただけマシなものだ。昔だったら容赦なくぶん殴っていただろう。
大泣きをしているキチガイ少女。
女の子を泣かせた精神的には大人の俺。
俺に対して「ほぉ」と関心を向けるトロ爺と呼ばれている爺さん。
その隣で「暴力を振るったのは後で反省会に持ち込むとして、よくやった」と親指を立ててジェスチャーを送る先輩。
トロ爺の陰でビクビクして今にも泣き出しそうなおしゃれな少女。ありゃ俺のこと怖がってんな
そして、今の一件に意を介さず、運命を感じたのか「お名前は何?」「えーあたしは…」とキャッキャキャッキャと2人だけの世界に没入している乙女たち。
何この集団…もう最悪だよ
おしゃれな少女が「トロ爺ぃ…」と震えた声で一言発してくれたおかげで皆んなはっとして動き始めたが、それまでの女の子のくぐもった鳴き声がただ鳴り響いているあの状況は酷い有様であっただろう。
その後、キチガイ少女を慰めているトロ爺の「帰って良いぞ」という声に従い、俺と先輩は学校からそそくさと去っていった。




