10話 マキメ・フユナ
「いらっしゃいませ。何をされて行かれますか?」
今日は昨日と比べてギルトの役員が倍以上いる気がする…
「鑑定をとおもいまして」
「かしこまりました。今空いている部屋は…げ…ギザか…そちらのお客様も鑑定を?」
ギザという部屋には誰かやばいやつでもいるのか?
…あぁ居たわ。あのヘンタイメガネ
取り敢えずこちらに尋ねて来たので「いいえ」と答えておいた。
「でしたらギザでも大丈夫ですね」
あぁロリコンメガネだったか
先輩に「外で待っててくれ」と言われたので地図の近くのベンチに腰掛け、ギルド内をぼんやり眺めることにした。
…ずいぶん時間かかってるな。…いやこんなもんか
「今日は子供がいるな…というか全体的に若い人が多い…?」
「そうよ。昨日は卒徒式だったからね。役員も準備とか片付けとかに動員されたのよ」
「おわっ」
声漏れてた!?もしかして…びっくりしたぁ〜
後ろから抱きついて来たのは看護してくれたお姉さんで、肩からお腹ぐらいに手をつたって交差させて上から顔を覗かせて来た。
髪がしゅるしゅると落ちてきて髪の根元である彼女の美人さとあいまってまるで天国でも見ているかのようであった。
それから俺のとなりに座り、俺の体と彼女の体が密着した。わお!
「またまた参上。リュウカちゃんびっくりした時は女の子なんだからそんな声出しちゃ駄目でしょ。男手ひとつで育てられたのかもしれないけど、男っぽく聞こえちゃうわよ。」
「すみません」
ふむ、咄嗟に声が出ると男っぽくなるところは優先的に変えていったほうがいいな。ボロが出て面倒になったら困るし…まぁ俺男だけど!
「謝らなくていいわよ。あ、そうそうこれリュウカちゃんのお金じゃないかしら?」
手に持っていたであろう3枚のコインを見せてきた。
…また落としたのか…俺のポケット穴でも空いてんのか?ポケットに手を突っ込むと今日手に入れたコイン3枚すら無くなっていた。
…よく見たらこれポケットじゃない!ポケットこっちだ!これただの飾りだ!
萎えるわ〜
「はい、それ私のです。ありがとうございます…ちなみにどこにあったのですか?」
「これね、くーちゃん…昨日見せた私のペットのことね…がこーやって体内でぐるぐるさせてたのよ。くーちゃん昨日はリュウカちゃん以外と会ってないしもしかしたらっておもってね。」
彼女は手を頭の上で重ねて円を作っていた。
…想像したらシュールだな。キューッ!!!とか言いながら高速回転してるんだろうな。
「あと、私に敬語は使わなくていいのよ?」
「はい、分かりました」
「分かった。じゃない?」
「あ…わ、わかった」
精神的には同じぐらいの年齢とはいえ、年上には反射的に敬語を使ってしまうな。これも直したほうがいい…かな?
酔った時とかはむしろ敬語出ないのになぁ…
そういえば、昔みりんの匂いで酔ってちょうどその時にクソ上司から電話がかかってきたことがあったな…「うるせぇクソ野郎」とだけ酔った勢いに任せて言っちゃってそのまま電話切ったっけか。翌日とんでもなく怒鳴られたなぁ
…思い出したらイライラしてきたぞ?
「別に敬語を使ったていいのよ!?」
彼女は俺がいきなり怒ったような表情を浮かべたため困惑しているようだ。申し訳ない。
「あ、いえ、なんでも…ないよ。」
途中で無理やり変えたせいで変な言葉になってしまった。
「そう?ならいいのだけど」
彼女はいまいちピンときていないようであった。
「おーい。終わったよー。」
先輩がこちらに向かって手を振りながら近づいてきた。
「えーっと…こちらの方は一体…」
「この人はね…名前聞いてないな。名前聞いていい?」
「マキメ・フユナ。マキ教師、フユナ教師とよく呼ばれているわ。以後、お見知り置きを」
ベンチから立って一回転をしてペコッと頭を下げた。
その美しい所作に見惚れていると——
「マキメ・フユナ!?」
突然先輩がフユナ先生の名を叫んだ。
「どうしたんですか?」「私の名前がどうかしたの?」
「い、いえ、な、なんでも、ない…です。」
3人の間にしばらくの間気まずい空気が漂う。
「…お腹が空いてきたわ。今からご飯にとでも思うのだけれど、あなたたちはもう食べた?」
現状を打開しようとしたのか、はたまたただお腹が空いただけなのか、フユナ先生はそう俺たちに尋ねた。
む、飯か…あまりいいイメージがなぁ…でもお腹空いてるしなぁ…
「それ、いらない心配かもしれない」と先輩に言われたので、ものは試しと行ってみることにした。
食堂のシステムは、調理場の隣に少し厚みのある、切符のような食券が入れてあるかごが幾つかあり、その中から自分が食べたい品の紙をもっていくそうだ。そして、その持ってきた紙と料金を調理場の人に渡して文字のついた紙を受け取り、その文字が呼ばれるまで待つといったシステムのようだ。
食券には食物の名前しか書いてないので、値段詐称とかはできないな。
「2人とも、お金は私が出すけど何がいい?」
「え!いいんdっ…いいの?」
「ええ、いいわよ。」
「ありがとう!うーんと…じゃあ1番安い定食とにほ——」「おい桐生、わかっていると思うけど君、今子供だからね。」
やべっ完全に忘れてたわ…
「リュウカちゃんは定食ね。ええっとそっちの君は何君?」
「み…オルトと申します」
「ミオルト君ね」
「訂正させてください。私の名はオルトと申します」
「オルト君ね。君は何が食べたいの?」
「ありがとうございます。リュウカのものと同じものをお願いします。」
ということで朝食を奢ってもらうこととなったのだが
一体何が出るんだろう。
一昨日みたいに不味くないといいな。




