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「なんば駅集合!」(近鉄)「おけ」(南海)「わかった」(JR)「遅れるなよ」(大阪メトロ)「おまえらこそ」(←恵比寿町駅)

 ひょっとして合流失敗したかも。


 難波駅って複数あるし、ひらがなのなんば駅とでは区別つかないかも。



 難波にあるコスプレ生地を扱う店、『とらや』に直接集合。

 あの子にはそう言ったけど、日本語が伝わっていたか今では不明だ。


 なんせ、LINEの既読はつくが、スタンプしか返ってこない。


『いま向かってます』


 このスタンプが届いてから三十分経っている。

 指時計を確認。シャララと手首のブレスレットがいい音を立てる。


 大阪メトロ、近鉄、JRなど『なんば』と名前がついた駅が多いこの界隈、オタク向けの店やおしゃれな店、高島屋や風俗系と雑多な顔を見せる街。


 シャララとなるアンクレットをつけた右足の代わりに左足を何度かふむ。

 声をかけてくるウザいのは無視だ。飾りベルトもアンクレットもブレスレットも300円ショップで買った。個人的には気に入っている。



 このなんばにてコスプレの生地を裏地レベルで取り揃えてくれる聖地『とらや』はある。

(※現実世界のとらやは既に閉店しました)


 あのふわふわもこもこをいかにタンジローくんにするのか、腕が問われるが、あの子も服飾科らしいからなんとかするだろ。



 しかしいいな。あの子服飾科いけたのか。ぼくはお母さんのやっているのを真似して覚えたけど。

 ひょっとしてあの子の実家、石油王じゃね。いや、ないな。



 古本屋を営む知人が貸してくれた『絵画の冒険者 暁斎』の目録を読む。

 江戸から激動の維新後を生きた天才児暁斎は多作であり、イラストから大作、あるいは着物の裏地まで手がけている。


 現在京都府立総合資料館が保管している『処刑場跡描絵羽織』は見た目ただの紋付黒羽織だが、裏地は凄惨そのもののエログロが描かれる。めちゃくちゃかっこいい。

 これをみせてあげねばならない。きっとびっくりする。



 今更だがあの子、日本語はわかるはずだ。

 だって専門書を普通に読みこなすもの。



 暁斎といえば、最近なら『星落ちて、なお』だな。天才児暁斎の娘を主人公に決して父に追いつけない人の苦悩と絵を介してしか触れ合えない家族の歪さを描く佳作だ。

 最近はオーディオブックになっているのであの子はこちらの方がいいかも。サブスクリプション月額課金制で安い。でもあの子の国の通貨価値わからんしなあ。調べたら金の粒や水、高品質チタン合金の塊やサファイアエメラルドの粒を未だ使っているらしい。



 アルバ首長国連盟だっけ。その辺を地図で指してた。

 Google earthで見せてもらったかんじ綺麗な街なので一度行ってみたい。


 Google alertでアルバ首長国連盟を登録し、関連ニュースを読めるようにしているけど、最強の日本国パスポートでも直接行けない謎の国家で正式な国交はない模様。



 サンダルを履いてかけてくるあの子。

 あ、転んだ。


 サンダル履いてダッシュとかサザエさんか。


 とりあえず助け起こそうとすると全力で嫌がられた。

 その後なんか『ちがうちがう』と手をぶんぶんしている。


 ひょっとして触ったらダメとかそんなのだろうか。

 心臓停止したら助からんぞ。AEDとかどうするのだろ。



 とりあえず落ち着いたようなので店内へ。

 めっちゃあちこち見ていて足取りも軽く、本当に服飾が好きらしい。


 あちこちの作成見本に足を止めて生地を見ているし、珍しい道具の使い方も聞いてくるので返答する。

 しかしこの子、本当に声出さないぞ!?



 周囲の客は遠巻きに僕らをみているが、ショートヘアを模した布とアニメキャラクターの口元を描いたマスクを組み合わせて楽しそうな彼女にやがて同じ空気を感じたのか、


『がんばれ』

『いいのができるように』


 と、無言の応援をいただく。


 ちなみに数は少ないが、彼女のように頭を露出できない国の人向けの衣装もあるので吊るしで買えるならその方がいい。我々は予算の都合上、生地や素材を調べて自作するが。自作するための型紙やスタイルブックもあるし。



 おお。このアニメ、古いのに誰がつくったのだろ。クオリティ高い!

 グイグイひっぱって次に行こうとする彼女、まだだまだ生地を見たいぼく。


 お昼はとあるチーズケーキ屋にした。

 店員さんのダンスパフォーマンス時間に入ったので彼女は驚いていた。

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