第一話「ウホスと大森林ンディパヤ 突然の旅立ち」
ここはムンムンムラムラ大陸最北東の大森林『ンディパヤ』
そのンディパヤには、ギガントゴリラという群れを成す種族が住んでいた。
そんなギガントゴリラの一匹『ウホス』は族長である『ウホホホホホリオン』に呼び出されていた。
「ウホ!ウホホ、ウホ!!」
突然の宣言はウホスを驚かすには十分だった。
「ウホ!?」
思わず反論するが、ウホホホホホリオンは聞く耳を持たない。
その内他のギガントゴリラ達も集まりだし、ウホスにめがけて糞やメガロバナナの皮を投げる者まで現れた。
ウホスはそんな状況にも冷静で、ため息をついた後族長に言われたとおりに群れから離れていった。
そんなウホスの背中を心配そうに見つめるまなざしが二つあった。
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ウホスは特にあてもなく森をひたすらに西へと進む。
すると遠くの方から巨大な何かが歩いているのか、小さく地響きがする。
ウホスは好奇心からその地響きの方向へと歩みを進める。
地響きの方向へと進んでいくと、当然地響きはより強くなっていく。
しかし、一向にその地響きの主は現れない。
地響きはウホスの歩みを少し困難にする程度には大きくなっていた。
このレベルの地響きならば、いい加減その主が見えてもいいころだとウホスは考えるが、相変わらず地響きの主は見えない。
ウホスはてっきり強大な生物なのだと思っていたが、このンディパヤでは自分達ギガントゴリラ以上に大きい生物には出会ったことがない。
ギガントゴリラは平均で全長3mm程の大きさで、一番大きい族長でも目測3.5mm程の大きさだと思いにふける。
族長の足音は、今ウホスが感じている地響きレベルの物では無い。
となると、必然的に3.5mm以上の大きさの生物で、体積も大きく、自分が見たことが無い生物なのだと考えていた。
しかし、そんなウホスの考えは次第に見えた地響きの主を確認したときに打ち砕かれる。
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「はあ~どっせい! どっせい!」
全身汗まみれで、視界に移る中で一番の大きさを誇る大樹にひたすらに掌を押し付けているその主はとても楽しそうだった。
同時にウホスは困惑した。
目の前に移るのは明らかに人間という種族で、まずこのンディパヤには生息していない種族だった。
しかし、この人間、人間にしては余りにも体が肥大化しているな……。
ウホスはその人間を暫く観察する事にした。
「ふうー……やはりつっぱり稽古は気持ちいいでござるなあ」
人間が何かを言っている。
くそっ、こんな事ならもっと人間の学問について学んでおけばよかった。
いくらこんな辺境の森に人間が来る確立など限りなく0に近いからと油断していた。
そんな事を考えている内に、気付くと人間がこちらの方をじっと見て固まっていた。
ウホスは余りの興味に気付かぬうちに、体が前のめりになって木々に隠れていた体が丸見えになっていたのだ。
人間はギガントゴリラであるウホスの大きさに驚いているのか、額から汗が流れていた。
「ウ、ウホ」
ウホスは気さくに挨拶した。
「は、はは、どうもでござる」
良かった、気さくな挨拶のおかげで敵意は持たれて無い様だ。
ウホスはひとまずその人間と交流を図ることにした。
これが関取である『しおむすび君』との出会いだった。