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細かいラッキーは見つけられるかどうかが重要

「と、いうわけで。レオニールさんに伝えてもらっていいですか?フォーリスが、精霊種の件について協力を申し出に来た、と。」

「・・・本気でそれが通じると思ってんのか?」


現在地は駐留軍の詰め所の前。

僕は宿を出てそのままここにやってきた。準備なんてなにもしていない。

いつもどおりの旅人丸出しのラフな感じだ。


「ええ、思っていますよ。僕はあくまでレオニールさん個人に会いに来たわけですし。」

「詰め所まで押し掛けといてその理論が通る分けねえだろうが!」


ピリピリしてるなぁ。まあ仕方ないか。

お互い知らない顔でもないし。

というのも、詰め所の門番をしていたのは、この前仲介所で絡んできた獣人の一人だったのだ。


「あはは、そう怒らないで下さいよ。まあもちろん、駐留軍の力だけで今回の問題を解決できるなら余計なお世話だとは思いますけどね。」

「ぐっ、てめえ、喧嘩売ってんのかぁ!?」

「まさか。本当にただお手伝いを申し出に来ただけですよ。純粋な厚意です。」


まあ、その厚意の対象はミレイユだけど。


「それで、精霊種の尻尾は掴めたんですか?」

「・・・部外者に話せることなんて無い。シャクシャラの民でもない旅人にはなおのこと、な。」


苦々しい顔でそう言う獣人の男性。ふむ、やっぱりうまく行ってないみたいだ。


「ま、当たり前ですよね。」

「わかったなら帰れ。俺達だって暇じゃないんだ。」

「じゃあ個人的な言伝をお願いします。今日の夜、この前の酒場で待っている、と。忙しいとは思いますが、決して損はさせないとも。」


一方的に要求を伝える。

そもそも仕事の真っ最中である今、すぐに会えるとは思っていない。


僕の失礼な態度に、男性は流石に腹を立てた様子だったけど、しばらく無言で考え込んだ後に一度大きく溜め息をついて頷いた。


「・・・チッ、冷やかしだったら承知しねえぞ?」

「わかっていますよ。」

「俺の権限では一方的に伝えることしかできねえ。書面で伝えるだけ伝えてやるが、レオニール隊長が答えてくれるかまでは知らねえぞ。」


思ったよりスムーズに決まる。やはり、彼らとて現状を打破できる一手を求めている、ということだろう。


「十分です。面倒なこと頼んですみません。」

「まったくだ。上手く行ったら酒でも奢れよ。完全に俺の業務の範囲外なんだからな。」


それはそうだ。そもそもこの人が門番をしていたのはただの偶然だし。

本来は事務仕事をしている人にお願いする予定だったけど、それだと凄く時間かかりそうだったし、これは幸運だ。


多分、レオニールさんなら僕たちの協力の申し出を無視することはない。

問題だったのは、その申し出がいつ届くかの方だし。


「事態が解決したら、いくらでも。じゃあ、よろしくお願いしますね。」

「さっさと帰れ。門番が仲良く部外者と話してるだけでも問題なんだよ。」


おっと、それは申し訳ない。

目的は果たした。僕はまだやることがある。


もう一度お礼を言ってその場を去る。


次の目的地は、転移貿易施設だ。




薬の素材は、基本的に流通していない。

それはこの前のレオニールさんとの会話で確認している。

特に、上位元素の適性に依存しない汎用性の高い素材は流通が厳しく制限される傾向にある。

やはり世界は僕に厳しい・・・


いやまあそうしないと、知識さえあれば危険な薬を誰でも作れちゃうからね。


で、シャクシャラに来る前は商人ギルドの身分証を利用してそういう素材を買ってたけど・・・

今僕が持っているミスリルの身分証では、素材そのものは買えない。それは色々買い物をして確認した。

それなりに危険な薬そのものを買うことはできるらしいけど。


もっとも、素材があっても器材がないからどうしようもないんだけど。

例えばカプセル剤や液体薬剤は、巧人種ドワーフの異常な技術力によって作られた器材がないと造れない。まあ、多分買うことはできるけどすぐには用意できない。


さて、じゃあ何をしに転移貿易施設に来たかと言うと。


本来、薬の素材としては使われないような普通の植物を買いに来た。

今回のお目当ては、植生の関係上シャクシャラ周辺には無いけど、あるとこにはいくらでもあるし食用にもなる植物。


でも、そういうものだって組み合わせ次第で薬効を得る。というか、薬の基本は組み合わせだし。民間療法レベルの効果にはなるけど、それだってバカにできたものじゃない。


転移貿易施設にある関係上、値段は高いけど売ってはいることは確認した。


ということで。もったいぶっても仕方がないのでさっさと買って帰る。


・・・それにしても今後、擬似悪魔化やそのほかの戦闘強化薬を作るためにも器材は揃えないといけないなぁ。

そのためには、転移倉庫のサービスを使えるだけの資金が必要になるからしばらく先になるけど。


そんなことを考えながら、目的の物を探していたら。


「・・・ん、これは・・・?」


少し、面白い物を見つけた。

それは、売店の壁にたくさんかかっている派手な剣。


「宝剣デュランダル・レプリカ・・・?」


なにこれ?店頭に凄く適当に置かれてる剣とは思えないほど大袈裟な名前だ。


「すいませーん、これなんですか?」


好奇心を強く刺激され、僕はお店の人に聞いてみる。


「え、ああこれかい?これは遠方の魔導遺跡で出土した武器、のレプリカさ。オリジナルは凄まじい切れ味と絶対に壊れない頑丈さを持つ剣だったそうだけど。」

「ほほう。」

「このレプリカは非常に固いけど切れ味の全くないなまくらでね。鈍器としてはそれなりに優秀だけど、重量がないから威力が出ない。」

「ふむふむ。」

「今じゃこれは、ほとんどお土産用品だね。見た目が派手だから子供に人気なんだ。」


へぇ・・・

面白そうだけど、今は要らないかな。絶対壊れない武器なら既に持っている。

ヒルダ用の武器にならないかと思ったけど・・・そもそも威力がほしいのではなく、繊細な調整ができる切れ味の鋭い武器が欲しいわけだし。


「一応、ミスリルと同じくらい魔力との親和性が高いから主武装として使う人もいる。杖代わりってことだね。」

「へぇ・・・ていうか、意外と安いですね。」

「魔力との親和性が高いから転移コストが安いんだよ。」


普通の武器と比べたら若干高いけど、まあちょっと高級なお土産って感じだ。


「うーん、今は要らないけど、もしかしたらまた買いに来るかもしれないです。」


魔力との親和性が高いなら、なにか使い道があるかもしれない。ヒルダか、それこそミレイユとかなら扱えるかも。

ただまあ、こんなかさばるものを買っていくとヒルダに呆れた目で見られそうだから今日はいいや。


「あはは、まあまず売り切れることはないから気が向いたらまたきてくれよ。」

「そうします。とりあえず、それとそれを・・・」


少し話しすぎた。僕は必要な素材と、そのほか使えそうな物を買って宿に戻ることにする。


そういえば、戦意高揚と戦意抑制の上位互換もあるんだけど・・・やっぱりここでも素材は揃わないか。

そのことに、少しだけ残念な気持ちになった。




なんかもう今日はあちこちに行ってる。

しかも、これで終わりじゃない。この後、例の酒場でレオニールさんを待たなきゃいけないからね。


もう大分日も落ちてきた。

この後、状況によっては夜中に動く必要もあるかもしれないけど・・・まあ、ヒルダの体力なら平気でしょ。


むしろ問題は僕だなぁ。

簡単な強壮薬が作れる素材はあるけど・・・体にあまり良くない・・・っていうかぶっちゃけアウトナンバーなんだよなぁ。


まあ、作るだけ作っておいて必要だったら使おう。


さて、部屋に戻って夜の準備をするとしよう。


・・・今度はちゃんとノックをしないとね。

ちょっとサブタイトルでもつけようかと考えてます。


現在のタイトルが30秒くらいで適当に考えた物なので、せっかくだからThe・なろうって感じのをつけたいです。


思い付くかはわかんないですが

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