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8-15:黒い首輪、赤い首輪

さぁぁっ、とシャワーが流れる音が響く。

真樹と大山は俯いたまま、熱いお湯に当てられていた。


ここは、イズモ・コロシアムに併設されている大浴場。

ヴァルキリーゲームズの施設ではお馴染みの、女戦士ヴァルキリー専用の温泉施設である。


広々とした大浴場には現在、真樹と大山しかいない。



真樹は鏡に映った自分の姿を見る。

身体には男達に触られた手跡が残り、だいぶ洗い落したとはいえ、顔や身体にはマジックペンで書かれた落書きがある。


負けた者は惨めで淫らな姿を晒してしまう。

そういうゲームだと分かってはいても、やはり受けた恥辱は若い娘たちに重くのしかかる。


「はぁ…………」


真樹のため息が漏れる。


決定的な黒星。

それが今回、真樹が味わった屈辱。


そして、それを嘲笑うかのように行われた、人生3度目のペナルティタイム。

今回のペナルティで受けた屈辱は、今までの比ではない。

まさしく調教といわんばかりの勢いであった。


まず、カグヤを始めとした女性にも弄ばれた衝撃は大きかった。

ヴァルキリーゲームズにはごく稀に女性客がいることは知っていたが、まさか弄ぶ側でペナルティに参加する女性がいるとは思わなかったのだ。


しかも、女戦士ヴァルキリーであるカグヤが、勝利者特権でペナルティに乱入する形になった。

目隠しをされ手枷をつけられて身動き取れない自分に対し、口付けし、服の中をまさぐり尽くしてくるとは。

女性だからこその手つきで、真樹の弱いところを的確に弄り倒してきたのだ。


更に、目隠しを取ってみて分かったことだが、他にも女性の参加者がいた。

なんと香澄や裕といった者達まで参加していたのだ。

今やヤミトの側近ともいえる裕に、1戦目で倒した相手である香澄。

彼女達もまた真樹を辱めるべく、その手で積極的に攻めてきたのだ。

観客達が見ている前で、いろんな玩具で責め立てられたのは忘れられそうにない。


もちろん女性陣だけでなく、ヤミトをはじめとした男達もセットである。

男女混合の客による責め立てという、未知の世界を味わうことになってしまった。


「なんか、やばかったな…………」

「うん…………」


隣でシャワーを浴びていた大山に生返事で答える。

大山の方も元気がなさそうだ。


あの後、結局大山も連れてこられた。

お預けの権利によって先延ばしとなっていた大山のペナルティは、結局『次の試合のペナルティへの追加参加』という屁理屈に近い形で、真樹と一緒に執行されることになった。


真樹の傍に連れてこられた大山の囚人服も捲り上げられ、真樹と大山は揃って辱められることになってしまった。

戦士として更なる成長を求めて挑んだ天命戦だったが、結果的には2人とも別の意味でセイチョウさせられてしまう結果となってしまったのだ。


「私……変わっちゃったのかな……」


真樹は己の手を見ながらぽつりとつぶやく。

今回のペナルティで何よりも重かったのは、カグヤから受けた言葉。



『真樹ちゃん、実は貴女って、とってもエッチなのね♡』



今まで見て見ぬ振りをしてきた、自身の心。

戦いが好きだからなのではなく、ペナルティという淫らな世界に興味があったから、このゲームに参加し続けたのではないか、という指摘。


実力を以て反論したかったが、今日は完敗。

それどころか、ペナルティでの辱めに、どこか快感を感じてしまったという事実があった。



純粋に戦士として戦ってきたつもりだったが、それは自分の虚栄だったのではないか。



そんな疑問が、どろりと黒ずんで真樹の心にへばりついてしまったのだ。



「うふふ、悩んでるわねぇ~」


突如聞こえた声に真樹達はびくりとする。

振り返ると、彼女達を辱めた張本人ともいえるカグヤがいた。

浴場なので当然と言えば当然なのだが、綺麗に整ったカラダを惜しげもなく見せつけてくる。


「お邪魔するね~」

「うほっ、やっぱ真樹ちゃんと大山ちゃんのカラダすごいねー」


カグヤの後ろには、裕と香澄の姿もあった。

彼女達もある意味ではペナルティの参加者なので、身を清めるために来たということだろう。


「心配しなくても、温泉でまで貴女達を虐めたりしないから大丈夫よ~」


警戒する真樹達に対し、カグヤはニコニコとしながら別のシャワー席に座った。

邪な気配は微塵も見せず、ただ優し気なお姉さんの雰囲気に戻っていた。


「男達がいないところで辱めても、あんまり意味ないものね~♡」


一瞬だけ、痴女の顔を見せるのだったが。

やはり油断できない先輩である。




身体を洗い終えて、真樹達は揃って湯船につかる。

だだっ広い浴槽には、5人でも余裕で浸かることが出来た。


ただ、真樹と大山は他の3人から少し距離を取って浸かっていた。

いつまたその手が自分たちのカラダに向くか分かったものではない。


そんな2人の少女の様子に苦笑しつつ、カグヤは問いかける。


「改めて2人とも、天命戦お疲れ様。

戦績は残念だったけど、いい経験にはなったんじゃない?」

「…………そう、だな」


カグヤの言葉に、大山はかろうじて応える。

確かに、得難い経験ではあっただろう。

いいか悪いかは別として、だが。


「くすくす、大丈夫よ。

私や霧子ちゃん相手にあそこまで戦えたんだもの。

ちゃんと女戦士ヴァルキリーとしての力を見せることが出来てるわ。

……まぁ、それ以外の姿の方が、強烈だったかもしれないけどね」

「うぅ……」


カグヤの笑顔に、真樹は俯いて湯船に沈む。


今回の遠征、間違いなく女戦士ヴァルキリーとして戦った時間よりも、敗者としてのペナルティを受けていた時間の方が強烈だった。

観客達にも、強い戦士としてというより、エッチな女の子として見られてしまっただろう。


「あら?

もしかして、自分は実はエッチな女の子だったのかなって悩んでる?」

「うっ……」

「あっはは、まー真樹ちゃん真面目そうだもんねー」


真樹の悩みを的確に見抜いてくる裕の言葉に怯む真樹。

そんな真樹の様子を、香澄もニヤニヤと笑って見ていた。


「アンタらは平気だったのか、その……」

「まーウチはエッチなの平気だし。むしろ今日は楽しかったしね~♡」


大山の疑問に、香澄は笑って答える。

裕の方も動揺する素振りは見せず、余裕そうである。

まるで自分が痴女であると認めてしまっているような…

同年代の女戦士ヴァルキリーなのに、どこか振り切ってしまってる香澄と裕の様子に、大山は困惑を隠せない。


「うふふ、せいぜい悩んでみるといいわ。

女戦士ヴァルキリーなら皆、ほぼ必ず通る道だからね」


先輩として、カグヤは優しく諭す。

敗者は辱めを受けるというこの闘技場と、どう向き合っていくのか。

それは女戦士ヴァルキリーに課せられた永遠の課題。


真樹と大山は、ただ頷くことしか出来ないのだった。




身体も温まったことだしと、談笑もそこそこに皆で浴場を出た。

タオルを身体に巻いて、更衣室内をうろつく真樹達。

ドライヤーで髪を乾かしたり、軟膏で肌のケアをしたり。

女の子として、最低限の身だしなみは整えようとする。


「ん……?」


そして、衣装籠の中を覗いた時、真樹は違和感を感じた。

籠の中には、自分の替えの服と下着があるはずだ。

しかし、見慣れない物が一緒に入っていたのだ。


「…………えっ!?」


取り出してみたそれは、首輪だった。

黒光りする革製の首輪が、真樹の衣装籠から出てきたのだ。


ふと横を見ると、大山の籠にも同じものが入っていたらしい。

取り出した大山も、呆然としたままだ。


「うふふ、それは私からのプレゼントよ♡」


困惑する2人の元へ、ニコニコとするカグヤが近づいてくる。

タオルだけ巻いた艶っぽい姿で、邪な表情をにじませている。


「ヴァルキリーゲームズのコロシアムには、大抵ラブホテルが併設されているのは知ってるわよね?

これはそこで使う物なのよ」


顔を赤らめながら、最強の痴女は解説する。


「その首輪をつけることは、男達に遊んでくださいっていう合図なの。

それを付けてホテルに行けば、また沢山の男達がお相手してくれるわよ♡」

「「いぃっ!?」」


その言葉に、真樹と大山は思わず顔を真っ赤に染める。


確かに、女戦士ヴァルキリーの中には、そういうことに参加して金を稼ぐ者もいると聞く。

また、戦いを諦めてソッチ方面へ転向してしまう女性がいるというのも聞いたことがある。


この首輪は、そんな雌としての証。

『男達に弄ばれることを許可する女』であると知らせるサインなのだ。


「な、なんでそんなものを!?」

「うふふ、もしかしたら興味あるのかもって♡」


なんてものを渡してくるんだ、このひとはぁ…!


真樹と大山が固まってしまったのを見て、カグヤはくすくすと笑い続けるのだった。


しかし、真樹がふと横を見ると、とんでもないものが目に入った。


それぞれ私服に着替えた、裕と香澄。

その2人が、首輪を身に付けていたのである。


ただし、真樹達が持っている黒い首輪ではなく、赤い首輪だ。


「ゆ、裕ちゃん、香澄ちゃん…それは……」

「あ、これ?

こっちの赤い首輪は『予約済み』の首輪だよ」


裕は特に気にした風もなく答えた。

まるでこれをつけるのが当然だとでも言わんばかりである。


「赤い首輪はね、特定のお客さんが『予約』すると渡されるの。

お客さんによるご指名ってワケ。

今日はこの後、ウチらはラブホテルでこのお客さんと一晩過ごしてこようと思ってさ」

「まぁ、予約は女戦士ヴァルキリー側の同意が無いと出来ないけど。

ボクが予約を許す人なんて、一人しかないけどね~♡」


香澄と裕は、この赤い首輪をつけることをむしろ誇らしく思ってるようにも見えた。


無差別に客の相手をする黒い首輪に対し、特定の人物による予約制の証となる赤い首輪。

どうやら天命戦でのペナルティの熱気に充てられた誰かが、彼女達に『予約』を申し入れたようだ。


そして裕の言葉から、彼女達を『予約』しているのが誰かも想像が付いた。

青メッシュのイケメンの顔がちらつく。


「こ、この後って、これからってことか!?」

「そだよー。なんのために身体洗ったと思ってるのさ~♪」


大山の驚く声に、香澄はまた笑って答える。

真樹と大山は、自分たちを辱めたライバルたちの行動に驚くしかない。


男と連れ添ってラブホテルに行く。

裕も香澄も、そのことに一切の躊躇が無いらしい。

女子大生の裕はともかく、香澄もまだ学生のはずなのだが…


何せ裏社会である。

多少の道理を捻じ曲げて通せるところはあるのだろう。



そして、真樹達が恐れていた一言が飛んでくる。



「うふふ、せっかくなら真樹ちゃん達も、雌豚体験、しちゃう?」

「「ひっ!?」」


満面の笑顔をしたカグヤが迫ってくる。


一緒にラブホテルへ来ないか、男達に乱されに行かないか、というお誘い。



もし、このまま首輪をつけて連れてかれたら、どうなってしまうのだろうか…?



あまりの出来事にぐるぐると思考が巡り、身体が震える。

困惑と恐怖と、ほんの少しの好奇心が身体を巡り、完全に固まってしまう。


そんな2人へ、最強の痴女が迫ろうとして…………



「はい、そこまでにしときなって~」



気の抜けた可愛らしい声が聞こえる。

だが、その声はとても聞き馴染みのある声だった。


「梨花さん!?」

「よっ、真樹ちゃん大山ちゃん、元気だったかね~?」


ミト・コロシアムの小柄な先輩が、いつの間にか来ていたのだった。


「カグヤち~ん、さすがにちょっとやりすぎだよ~。

女戦士ヴァルキリーの意志は蔑ろにしちゃダメだよ~?」

「うふふ、ざ~んねん。

まぁ、疲れてるでしょうし、今日のところは見逃してあげるわ」


呆れ気味の梨花に対し、カグヤは笑顔のまま返すのだった。


分が悪くなったのか、さっさと巫女服へと着替えていくカグヤ。

だが、彼女の首には黒い首輪がついていたのだった。


「今日はこのあと、私もラブホテルの方に泊まるから。

宿の方には戻らないから、真樹ちゃん達はゆっくり休むといいわ。

なんなら梨花ちゃんも部屋使っていいわよ?」

「そうしようかな~?

急いで来たから部屋取らずに来ちゃったしね~」


カグヤの提案に、梨花は呆れ気味に返事する。

なんにせよ、ここで引率役の交代が成立したようだった。


「うふふ、その首輪は差し上げるわ。

その気になったら使ってみてね。

それじゃあね~♡」


真樹達の手に握られた首輪を指差したカグヤは、そのまま悠々と去っていく。


「それではボク達も失礼するよ、真樹ちゃん大山ちゃん。またいずれ」

「今度会うときは負けないからねー!」


真樹達へのリベンジを誓いながら、裕と香澄も去っていく。

それだけならば、戦いを終えて互いに健闘を称えあうライバル同士の姿なのだが…

彼女らの首に付いている赤い首輪が、状況の異質さを物語っていた。


3人の痴女が去っていき、後に残った真樹と大山は盛大にため息をつく。


「はああぁぁぁ…………助かりました、梨花さん」

「いやー、様子見に来て正解だったかね?」

「マジで危なかった……完全にペース飲まれてたからな……」


頼れる先輩の登場に、真樹と大山は心から安堵する。

そんな2人の様子に梨花も苦笑するのだった。


「カグヤちゃんはああやって、どんどん女の子を堕落させちゃうから。

しっかり心を強く持ってないと、あっという間に飲み込まれちゃうからね~」


梨花の忠告をこれほど重く感じたこともない。

ひとまず、流れでラブホに連れ込まれずに済んで、心底ホッとする真樹達であった。





真樹達はそのまま梨花に連れられて、コロシアムを出て宿へと向かっていった。

地下道から地上へと出て、町の一角にある宿にチェックインする。

ラブホテルではない、普通の宿だ。


「ここは表の人も使う普通のホテルだから、安心して寝られるからね」


部屋に到着したところで梨花からその言葉を聞いて、安心したのかどっと疲れが出てきた。


「眠ぃ……」

「私も……」


無理もない。

天命戦での戦いとペナルティで、既にへとへとなのだ。


(……そういえば、神氣のこと、カグヤさんに聞けなかった、な……)


大浴場で聞くチャンスはあったのに、それを聞くことも頭から抜けていた。

それほどまでに、心身ともに疲れてしまっているのだ。


「まぁ、諸々の話は明日にしよっか」

「はい……」

「おぉ……」


梨花への返事もそこそこに、部屋の中に用意されていたベッドへ。

真樹と大山は着替えることもせず、倒れるように転がり込む。

弾力のあるマットレスの心地よさから、そのまま眠りへと落ちていく。


「おやすみ~♪」


梨花の言葉を聞いたのを最後に、真樹の意識は途絶えたのだった。


お待たせしました、天命戦後のエピソードです。

8章がこれで終わるかと思ったか?

いや、もうちょっとだけ続くんじゃ!

…はい、戦闘後エピソードが予想より長くなりそうでした。

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