表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/106

8-7:生意気巫女のシメ方

「来ないなら、こっちから行っちゃうよ~♪」


余裕綽々な香澄は、軽くステップを踏むと真樹に向かってダッシュ!

綺麗なカーブをかけながら、真樹へと走ってくる。


「みこサンバプレース!!」


今にもぶつかりそうだと思ったその瞬間。

香澄は軽やかに飛び上がり、そのまま腹から突っ込んできた。

綺麗なフライングプレスをかけてきたのだ。


素早く鮮やかな体当たりを、真樹は咄嗟に避けた。

香澄はびたーんと地面に突っ伏したが、その衝撃も何とも思わないのかすぐさま起き上がる。

地面を転がり衣装が砂だらけになるのも構わず、香澄の顔からは笑顔が零れていく。


「もうイケズ~♡

でも、こういうのは嫌いじゃないよ~♡」


にこやかに笑いながら、再び香澄は真樹の元へと走っていく。

まるで想い人に飛び掛かる恋人かのように、ためらいなく飛びついてくる。


ひゅんっという音と共に飛び上がり、どこぉぉんという音が地面に響く。

軽やかに飛んでは、ド派手な体当たりで攻撃をしてくる香澄。

彼女の戦い方のベースとなっているのは、メキシカンプロレスとも言われるルチャ・リブレだろうか。

しかし、やたらと空中へと飛び上がり派手な飛び技ばかり使ってくるが。

曲芸師かと思うほどぐるぐると回転したと思えば、全身を使って真樹を捉えようと、飛び込み技を次々と繰り出してくる。


真樹としては食らってやる道理は無いので、ただひたすらに避けまくっていた。

そのたびに香澄は派手に地面に身体を打ち付けているはずなのだが、香澄自身は平然と起き上がっては、次のムーブへと移る。

香澄自身が鋼の覇氣で身体を強化しているので、痛みは全く気にしていないようなのだ。


(飛び込んでくるだけじゃ、話にならないね…!

といっても、こっちも避けるしかないけど…!)


相手の攻撃を避け続けることは出来るが、このままでは泥試合だ。

この後も連戦を控えているのに、ここで体力を削られるわけにはいかない。


(やれるか……?

いや、やらなきゃ…!)


香澄の防御力相手に普通の覇氣では通用しないのは、さっきの攻撃でも分かっていたこと。

おそらく、覇氣の塊である松葉破を打ち込んでも効果は薄いだろう。


それ以上の力。

裕と戦っていた時に偶然出せた、神氣を使っていくしかない。


覇氣を腕に集中させる。

光が真樹の腕に集まっていく。

真樹の両腕は光に包まれていき、鎧のように真樹の腕に纏わっていく。

これで、羽衣・松葉破が出来上がった。


(くっ……硬い…!)


だが、以前神氣を使ったときは、もっと衣のような優しい姿をイメージしていたはずだ。

戦いながら、飛び掛かる相手を避けながらでは、どうしても集中しきれない。

つい力んでしまった腕には、輝く覇氣の光が纏わっていた。


「仕方ない…!!」


それでも、香澄が迫ってくる以上はやるしかない!


飛び掛かってくる香澄に、真樹は正面から挑んだ。

強烈に踏み込み、向かってくる腹に拳を上げる。


「松葉・月桂樹砲!!

うおおおおおおおおおおおおっ!!」


光り輝く右腕による迎撃腹パンが、香澄のお腹を捉える!

強烈なアッパーが、どぐぅっと音を立てて腹にめり込んでいった!



…………が。



「にひぃ~……捕まえた♡」

「うわっ!?」



まるで何事も無かったかのように、にんまりと笑った。


恍惚とした表情の香澄は、そのまま真樹の顔をへと手を伸ばす。

真樹の頬を怪しく撫でる香澄は、腹筋で受け止めた身体を、そのまま真樹の身体に絡みつかせていった。


殴られたはずの身体を真樹の身体に寄せ、足も絡ませていく。

更に、腕で真樹の首を絞めると、そのままどんっと倒れ込んだ。

女同士の身体を、どこかいやらしく絡めあったまま、真樹のことを絞め上げる体勢になっていたのだ。


「うぐっ……!」

「あぁ……真樹ちゃんやっぱかわいいなぁ~。

もっと絡もうよ~。すりすりしようよ~♡」


「「「うひょーーーーーーー!!!」」」


しっかりと首絞め体勢になっているというのに、そのうえ頬擦りまでしてくる。

女の子同士の身体の絡みに、観客席は大盛り上がりだ。


単なるダメージ以上に何か危険な予感が、真樹の中を駆け巡る。


だが、流石にこのまま大人しくしてるわけにはいかない。


「っとに、もうっ!!」

「おぉー?」


首を絞める香澄の腕を、真樹は思いっきり握った。

そのまま腕力で力任せに持ち、香澄の腕を自分の首からどかしていく。

久しぶりに、馬鹿力ぶりを見せつける真樹。


掴まれた香澄は痛みは感じてないものの、さすがに力任せに絞めを解かれたことには驚いてた。


「あだっ!」


真樹は続けて、足に絡んでる香澄の脚を蹴飛ばした。

自由になった真樹はすぐさまジャンプで飛んで、香澄と距離を取る。


「あーんっ、逃げちゃダメ~~♡」

「はぁ……はぁ……!」


息を整える真樹とは対照的に、蹴っ飛ばされた香澄はけろりと立ち上がった。

かなりの力で握ったために、香澄の腕には手跡が痛々しく残ってる。

しかし、それに痛がる様子もなく、再び体を揺らしてファイトポーズを取る。


「んふっ、まだまだ元気だよねー?

もっともっとやろうよー。熱ーいぶつかり合いしようぜ~?」


腰を揺らしながら挑発する香澄の言葉に、真樹の中で熱いものが溢れてくる。

言動はふざけているが、彼女は確かに強い。


正確に言えば、硬い。


向こうの攻撃を凌げる自信はある。

もし制限時間があって、逃げ回るだけでいいのであれば耐えきる自信はある。


だが、ここはどちらかが倒れるまで決着がつかない闘技場。

時間無制限の試合では、相手を打ち倒す以外に勝ちはない。


だというのに、相手は底知れない防御力を持ち、今もなお余裕の表情。

対して、こちらは神氣を放つのも不安定。

相手の耐久力を超える攻撃を打ち込めるかは微妙だ。


分かってはいたが、このままではジリ貧である。

この場ですぐ神氣を使いこなすような覚醒が起きればよいのだろうが、そう都合よくもいかない。


(神氣以外の対抗策……あるといえば、あるかな)


だが、それ以外の手段が、ある。

真樹がヴァルキリーゲームズに来る前から学んでいた技の中に、使えそうな技がある。


ただし、これは危険な技ゆえに、今まで訓練以外で人に使ったことはない。

万が一のことがあれば、相手の命に関わる。


(でも、このまま何も出来ずに負けるのは嫌だ…!)


同じ女子校生とはいえ、相手が女戦士ヴァルキリーとして超人の域にいると信じて。


「そうだね……まだ見せたことのない私、見せてあげる。

掛かっておいでよ!」


覚悟を決めた真樹は、手招きをして挑発する。

珍しい猫耳娘の方からのお誘いに、サンバ巫女はすぐさま乗った。


「それじゃー、攻めちゃうよ~♡。

簡単にイッちゃダメなんだからー!」


再び香澄が飛ぶ。

覇氣の力を使った大ジャンプ!

超人的な跳躍力を発揮した香澄は、天井のライトをバックにして、真樹の元へ飛び込んでくる。


華麗なフライングプレス!

それも、ただ体当たりするだけではない。

広げた両手は、真樹を掴もうとしていた。

完全に動きを封じるつもりで、真樹へと飛び掛かってくる。


「……ここだっ!!」


真樹はあえて、香澄へ向かって飛んでいった!

自身も大ジャンプをして、真下から香澄の攻撃を迎え撃つ。


いや、厳密には真下ではなかった。

微妙に位置をずらし、空中で交差するその瞬間。

真樹は香澄の首に腕をかけ、更に香澄の肩ごと頭を押さえる。

空中ヘッドロックである。


「うぐっ!?」

「おぉぉっ!!」


どこぉん!!


首を締められた体勢のまま、香澄は真樹と共に地面に落下した。

砂埃の中に、真樹の胸に押さえつけられた香澄の姿が映る。


「逃がさない!蔦締め!!」

「ぐ……はっ……!」


そのまま真樹は、香澄の後ろから腕で首を締める。

俗にいう、裸締めである。

思いっきり気管を絞められ、さすがにもがく香澄。


「うっ……ぐ……!」

「うおおぉぉっ!!」


覇氣使いは、身体中に氣を巡らせることで身体を強化する。

しかし、巡らせるものは覇氣のみにあらず。

血流やら、酸素やら。

そもそも人体に必要なものが身体を巡らなければ、身体は動かない。


真樹がとった対抗策は、絞め技で相手の意識を落とすこと。

打撃がほとんど効かないのであれば、力の巡りそのものを止めてしまえないか。


絞め技使いに、あえて締め技で対抗したのだった。


「おぉっ、んぉぉ…!」

「落ちろぉぉっ!!」


香澄のもがきに、真樹は必死で押さえつけた。

真樹の胸が、腕が、身体が、きつく香澄の顔を締め上げていく。

腕でしっかりと絞められた香澄の意識が、段々と遠のいていく。


「んへぇ……」


やがて、香澄は力無く意識を手放した。


絞め技による意識落とし。

柔道の技のひとつをアレンジした絞め技で、見事に落としたのだった。


万一のことがあれば命を奪いかねない危険な技。

だが、今の真樹に出来る対抗策はこれしかなかった。


真樹が力を抜くと、香澄はどさりと力無くフィールドに倒れ込んだ。


「香澄ちゃん、意識飛んだかー!?

ダメだ、倒れてる!

カウント入ります!!」


実況兼レフェリーが、香澄をダウンと判定した。


「3!2!1!」


観客席の皆にもすぐに分かった。








普段の香澄ならば、何気なく起き上がってきそうなのに、してこない。

香澄は今、確かにダウンしているのだと。


そのままカウントは、無慈悲に進んでいった。


「0!!

WINNER、真樹ぃぃぃぃぃっ!!」

「「うおおおおおおおおおおっ!!」」


実況の宣言に、観客席から歓声が上がる。

勝敗は決した、真樹の勝ちだ!


その真樹は、勝利を実感する間もなく、すぐさま香澄に駆け寄った。

柔術の絞め技は、下手をすれば相手の命を奪いかねない代物だ。

元々あまり自信の無い絞め技でトドメを刺したのである。

万が一、後遺症が残ったり、死んでしまうようなことがあっては大問題。


「香澄ちゃん、だいじょう……」


香澄に近づいた真樹は、思わず足を止めた。

そこには……




「うぇへ、うぇへへ……」


香澄は、鼻血を垂らしながら気絶していた。

何やら、嬉しそうな表情で。


「全然平気そうだぜ……

どうやら締められる苦しみと、真樹の胸に顔を埋めた快感で、気持ちよすぎてイッちまったみたいだな!」

「何それっ!?」


実況の言葉に、真樹は唖然となる。

思わず胸を押さえる動作をしてしまう猫耳娘であった。


確かに、首を締めている間、真樹は自分の胸を香澄の後頭部に押し付けていたことになる。

あろうことか、香澄は真樹の胸を堪能しまくっていたようだ。


おまけに、痛いの苦しいの大好きガールである彼女は、首を締められる苦しみさえも、悦びに変えてしまっていたらしい。

それが限界突破してしまった結果、気絶してしまっただけのようだ。


「はぁ……」


思わずため息が漏れてしまう。

試合には勝利したのには間違いないが、結局自分の力は最後まで彼女には通用していなかった。


天命戦の第1戦を無事に勝利したものの、この勝ちを素直に喜べない真樹であった。


大変お待たせしてしまいました。

なかなか難産な回でしたが、なんとか書き上げられました。


仕事の忙殺ぶりと体調不良が続いてましたが、ようやく調子が戻ってきた感はあるかも?

引き続き、お楽しみいただければ幸いです。


【追記】

いつもお読みいただきありがとうございます。

年末でなかなか執筆が進まず、また更新が遅くなりそうです。

あと…………

すまぬ、ポケモンやらせてくれぇ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ