8-5:イズモ式ペナルティ
イズモ・コロシアムは古代のコロッセオを思わせる石造りの闘技場になっている。
その壁には、数々の戦いで出来たであろう傷跡が残されていた。
そんなコロシアムの壁に、人型をした穴が2つ。
派手に殴り飛ばされ、壁にめり込むほどの勢いでぶつかった大山の跡が、コロシアムでの超人的な戦いを物語っていた。
トドメの一撃で壁に埋め込まれた大山だったが、スタッフの黒服たちのおかげで無事に引っ張り出された。
身も砕けそうな一撃であったろうが、そこは超人である女戦士。
先ほどまで気を失っていた大山も今は目を覚まして、今はリングの地面に寝転がっていた。
「へっ、完敗か……」
観客たちがニヤつく顔で見守る中、敗北を痛感した大山はため息をつく。
「けど、ここまでやられるといっそ清々しいぜ。
アンタが、アタイが憧れた強さのままでよ」
大山は立ち上がると、マスクを脱いで素顔を晒し、霧子に向き合った。
悔しさ半分、憧れの人と戦えた喜び半分といったところか。
少し歪んでいるものの、大山は確かに笑っていた。
「あっはっは!
この裏社会で、そんなに青春真っ盛りな台詞が吐けるなんてね!
大したもんだ、アンタはこっちでやってける素質があるよ!」
大山の言葉が面白かったのか、霧子は腰に手を当てて豪快に笑う。
グローブを脱いだ手で、大山の肩をバシバシと叩くのだった。
「……けど、いつまでその青さを保ってられるかねぇ?」
だが、突如として霧子の声のトーンが変わる。
大山を肩に抱いたまま、ニヤリと笑う。
「ここのペナルティは、激しいぜ?
しっかり自分を保ってないと、すぐに雌へと調教されちまうからね」
「う……」
大山が顔を赤くしていくのを、霧子はニヤニヤしながら見つめていた。
ヴァルキリーゲームズでは、敗者にはもう一仕事待っている。
その女体を、大金を賭けた観客に弄ばれてしまうのだ。
えっちなオシオキをされるたびに、ソッチの道へと足を踏み入れてしまう者がいるのも事実。
ミトの若手の中にも、ヤクシマで出会った女戦士達の中にも、何度もペナルティを食らううちに、淫らな快楽に溺れてしまった者がいる。
大抵はラブホテルに連れ込まれて、男達のお相手をするような娘になってしまったのだ。
大山もペナルティを経験済みで、もう綺麗な身体では無いが、軽々しく身体を差し出すような女になったつもりもない。
今は、まだ。
「さぁて、お楽しみの前に賞金発表だな。
まずは勝者、霧子ちゃんには~、512万燕!!
まーまーの金額だな、さすがはエキスパート。
しっかり固定ファンが付いてやがるぜ」
「こんなオバさんが欲しいなんて、物好きの多いことだねぇ」
ちなみに、今回の最低金額は1万である。
エキスパートクラスの霧子がいるため、試合の観覧料も少しだけ割高だ。
突然開催された天命戦、くじによるランダム選出による試合。
観客たちも懐が無限でもない限り、出せる金額にも限度はあるだろうが、それでもこの賞金額である。
霧子に貢いでいると言っていいほど、入れ込んでる固定ファンがいるのだろう。
そこはさすがベテランといったところか。
「そして、残念ながら没収となる大山の金額だが……すげぇぞ?」
端末を見ながら話す実況の男は、そこで一度言葉を区切った。
「大山ちゃんに賭けられた金額、2648万燕!」
「「「「FOOOOOOOOOOOOOOOO!!」」」」
いきなりとんでもない金額が明かされ、観客席からも驚きの歓声が上がる。
なんせ、真樹がヤクシマで得た賞金総額を上回るほどの額だ。
「くはは、やっぱり大山が負けると期待した奴らが多かったが……
アドバンスでもこの金額だ!
それだけ大山のカラダ目当ての奴らが多いってことだな!」
この試合、大山が負けると予想した者は多かったろう。
だが、ただ負けそうだからというだけでは、この額にはまずならない。
負けた大山に手を出せる権利、彼女を弄んでやることが出来るのは、最も高い金額を賭けた上位5人だけ。
彼女に手を出すなら、『今!』と考えた男が多数いたということだろう。
それだけ、大山のことを『手を出したい女』と見ている男がいるということでもあるのだが。
「さぁて、覚悟はいいか?」
「…え?」
いつもならばスタッフの黒服達に連れられてきた観客たちが敗者を取り囲むのだが、今回はなぜかその黒服たちが大山を取り囲んだ。
困惑を隠せない大山に、霧子が何かに気付いた様子で声を上げる。
「あぁ、ここのペナルティのこと、聞いてないのかい?
なら、せめてもの慈悲だ」
霧子はそう言って、黒服から一枚の布を受け取った。
黒くて長い布を見せながら、大山へと迫っていく。
「うちが着けてやるよ。
目隠しと、拘束具をさ」
「あ、あれは……」
観客席にいた真樹は、少し怯えた様子でコロシアムで行われている光景を見ていた。
大山を黒服たちが取り囲んだと思ったら、天井から鎖がじゃらりと降ってきた。
その鎖の先には手枷がついていたのだ。
霧子の手によって黒い布で目隠しをされた大山は、両手を枷で繋がれ、そのまま鎖が引き上げられた。
大山は腕を宙づりにされた状態で、無理やり立たせられたのだ。
さすがに視界を覆われている上、腕が拘束されているのは怖いのだろうか。
スクリーンに映る大山の顔は、口元だけでも不安そうなのが分かった。
ちなみに、真樹の隣で試合を観戦していたヤミトはここにいない。
しっかりと大金をつぎ込み、ペナルティの権利を獲得していたのだった。
彼をはじめとした、今回ペナルティの権利を手に入れた男達がリングへと入場してきたのが見えた。
目隠し拘束状態の大山を、好き放題出来るという5人の男達だ。
しかもそれだけではない。
一人の黒服が、なにやら色々な荷物が乗った荷台を転がしながら一緒に入ってきた。
「くくく、怖いかい?」
「大丈夫、すぐに気持ちよくなれるからさぁ」
大山を取り囲む男達は、ニヤニヤとしながら大山に声を掛けた。
手を拘束されているレスラーは、びくりと震えるのみ。
一人の男が荷台に乗っていたモノを手に取った。
そして……
すぱあぁんっ!!
「はひいぃぃっ!?」
鞭で大山の尻を盛大に叩いたのだった。
すぱあんっ、すぱあぁんっ!!
「んあぁっ、あぅっ、んああっ!?」
鞭を打ち付けるたびに、大山は喘ぎ声をあげて身体を揺らす。
そのたびに、むちむちの尻とたゆんとした胸が揺れていく。
「これじゃあまるで……」
「そう、拷問体験よ♡」
いつの間にか、真樹の傍にはニコニコ顔のカグヤがいた。
「ここのペナルティは見ての通り、拷問を模したものなの。
負けた子は目隠しと拘束具をつけられるのが決まり。
そして、道具もアリアリのお楽しみが出来るってわけ♡」
ヴァルキリーゲームズでは元々、敗者は身体を弄ばれるのが絶対のルール。
ペナルティから逃げたり、抵抗することは重大なルール違反である。
だがこのイズモ・コロシアムでは、物理的に逃げられなくされてしまうのだ。
抵抗も口答えも出来ないまま、権利を獲得した観客たちになぶられなくてはならない。
「目隠しされて、動けなくされて……
そんな女の子を痛ぶり回す。
うふふ、ゾクゾクしてこない?」
カグヤはその妖艶な笑みを真樹に向ける。
「言ったでしょ?
とっても刺激的なところだって♡」
ペナルティが元から淫らで非道なルールではあるのだが…
このイズモ・コロシアムでは一歩突き抜けていると感じる真樹であった。
まさか、物理的に刺激的だとは思わなかったのだ。
「心配しなくても、あの荷台に並ぶアイテムは所謂プレイ用だから。
その辺のオトナのお店で買えるようなものばかりよ。
本当に怪我させちゃったら大変だものね♡
それに、女戦士ならばあの程度の痛み、全然平気でしょ?」
カグヤは笑顔のまま補足する。
殴り殴られが日常の女戦士からすれば、こうやって殴られるのもまた、修行の一環に出来てしまうのだ。
とはいえ、自ら進んで殴られに行きたいわけではないのだが……
すぱああぁんっ!
「あぐぅぅっ!」
鞭の音と共に、大山の悲鳴がコロシアムに響く。
そんな彼女の様子を、観客席の男達は歓声や罵声交じりに観戦していく。
敗者が惨めに痛めつけられる姿が、ここでは最高のエンターテイメントなのだ。
「ミトとは、全然違うんですね……」
同じ『辱める』といっても、身体を触られるのがメインであるミトのコロシアムとは随分と趣が異なる。
ミト・コロシアムがヴァルキリーゲームズ界隈では若い団体というのは知っていたが、老舗のコロシアムはより刺激を求める傾向が強くなってしまうらしい。
「でもね、ここに所属してるヴァルキリーは、アレをされることを覚悟してる。
どういう意味か、分かるかしら?」
カグヤの質問の意味は、真樹でもさすがに分かる。
このイズモ・コロシアムに普段から挑んでいるのは、『負けたら拷問』ということが分かった上で挑んでいる女性ばかり。
「よーするに、ここの子達はみんなドMばっかりなの。
生半可な刺激じゃ満足できないような子ばかりね♡」
カグヤが飛び切りの笑顔で、端的に説明してみせたのだった。
あんまりな言い分に、真樹も思わず口をつぐんでしまう。
「そしてそれは、ペナルティだけじゃなくてバトルでもそうよ。
試合での霧子ちゃんの動きは見てたでしょ?」
そういえば、と真樹は大山たちの試合を思い返す。
霧子は大山の拳を顔面に食らったというのに、まるでダメージが無いようだった。
ただ単に頑丈というだけではない。
ペナルティも含めて、普段から痛めつけられることをちゃんと覚悟できている者。
むしろ、痛みすらも喜びに変えられるような者でないと、このコロシアムでは生き残れない。
「霧子ちゃん以外にも、このコロシアムに来る子はしぶとい子が多いからね。
あの娘さんなんかも、ここに通ってるってくらいだから、相当かもしれないわ」
霧子の娘である香澄も、このイズモ所属の女戦士。
この後、戦う可能性は十分にある。
「くすくす、真樹ちゃんのパンチは強烈だけど…
ここの子達に通用するかしらね?」
なるほど、より力をつける場としてカグヤが選んだだけはある。
この天命戦で勝ち上がるには、より強力な攻撃を放てる者でないといけない。
自分がこの先も戦っていけるか測るという意味では、確かに有意義な戦いになるだろう。
「ひぃっ、んあああっ!?」
リングに大山の喘ぎが響き渡る。
先ほどまで鞭で叩かれ、衣装もボロボロにされてしまった大山だが、男達は我慢できなくなったのか、彼女の胸や尻を触りだしていた。
鞭で叩かれて身体中がヒリヒリと痛む中、急に優しく触られたとしたら、逆にかなりの刺激になるのだろう。
身動き出来ない大山は、よだれを垂らしながら喘いでいた。
(私も負けたら、あんな風に…)
思考が弱気になりかけたところで首を振る。
負けた時のことを想像していては、勝負には勝てない。
勝つ姿を想像しなくては!
今度は自分が戦う番なのだ、仲間の仇は必ず取る、と真樹は気合を入れ直していく。
だが、ペナルティを受ける大山から、視線を外すことはしないのだった。
そんな真樹の様子を、カグヤは怪しく微笑みながら見つめているのだった。
ごーもん☆ごーもん☆
全年齢版は8000PV突破、感謝!




