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7-4:風纏う刃

「猫耳闘士、覚悟っ!」


風侍・裕が刃を構える。

木刀に集まる風がぎゅんぎゅんと唸り、今にも暴発しそうなほど暴れる台風のような刃。

暴風を纏う薙刀を、大きく振りかぶった。


「でぇぇぇいっ!!」

「くっ…!」


ぶぉんっと振るった薙刀は、それだけで凄まじい風圧を生み出していく。

避けるために後退した真樹も、突風で身体が少し浮いてしまった。

ついでに、裂けたスカートが大いに翻る。


「まだまだっ……羽衣・松葉破!」


出し惜しみしている場合じゃない。

真樹は両手に力を集約させ、拳に光を纏わせる。


「はあああぁぁっ!!」


一か八か、覇氣同士のぶつかり合いに賭ける!

真樹はそのまま、風纏う薙刀へ殴りかかっていった。


裕の覇氣で形作られた刃。

身体から放出した覇氣を纏わせる力という意味では、王羅と同じだ。

ならば、対抗できるのは自身の覇氣しかないだろう。


光溢れる拳が、光を纏う刃に触れる。




どこおおぉんっ!



強大な覇氣同士のぶつかり合いにより、リング上に突風が吹き荒れる。

強大なエネルギーのぶつかり合いは、沙耶との対決をはじめ、これまでにも何度か起きてきたこと。


だが、それを知っている観客ですら驚く光景が起こる。


「なっ…!」

「ボクの気持ちは、そんな生半可なものじゃないんだよっ!」


驚愕に満ちた真樹の顔と、気迫に満ちた裕の顔。

対照的な2人の姿を見た観客たちも、何が起こったか気づいて驚く。



真樹の羽衣が消し飛ばされたのだ。



薙刀に振り払われ、真樹の身体が吹っ飛ばされる。

その際に、纏っていた光が消えてしまっていたのだ。


一方、裕の薙刀には未だ覇氣の光が纏われている。

ぎゅんぎゅん唸る暴風が、剣先に纏われているままだった。


この場にいる誰もが気づく。


真樹の覇氣が打ち負けた。

覇氣のぶつかり合いで、真樹が完全に押し負けたのだと。


「だああああぁぁっ!!」


裕は更に、風の薙刀を大きく振るう。

剣先の光が大きくなり、風纏う刃が真樹を襲う!

とっさに防御の構えを取った真樹へ、暴風の塊が叩きこまれる。


「うわああぁっ!?」


腕にぶつかった瞬間、爆発のような突風が巻き起こる!

真樹は宙へと放り上げられ、リングから吹っ飛ばされてしまった。


ヴァルキリーゲームズでは何度も経験した、空中への吹き飛ばし。

真樹はなんとか体勢を整えようとする。

だが、空中で無防備な姿になっているのを見逃すほど、女戦士ヴァルキリーは甘くない。


「これで決める!!風龍滅牙ふうりゅうめつが!!」


裕は勝負を決めるべく、大技を繰り出す。

真樹のいる空中に向かって薙刀を構え、大きく突きを繰り出した。

その瞬間、木刀の刃に纏っていた覇氣が、数多の光となって真樹へと飛んでいく。


「くっ…!」


空中で腕を組み、防御の構えをする真樹。

だが、裕の武器から放たれた無数の光は、まさしく風の刃。

まるで無数のレーザーが、真樹へ向かって飛んでいくようだった。


ずささささっ!!


無数の刃は次々と真樹の身体を掠めていき、肌を傷つけ、服を引き裂いていく。

スカートやシャツはおろか、スパッツまでもぴりぴりと少しずつ切り刻まれ、真樹の白い下着がチラ見えし始めている。


(強い…!

この風に対抗するには……!)


格好を気にしている場合ではない。

風の刃を受けながら、真樹は必死に勝つための思考を巡らせる。

だが……


「これでっ、トドメ!」

「うわっ……!?」


裕の攻撃は、まだ終わってない。

空中へ飛び上がった裕が、真樹のすぐそばまで迫ってきていた。


「だああああっ!!」

「うわあああああああぁっ!?」


大きく振りかぶった薙刀を、真樹に向かって叩きつけた。

回避は、間に合わない。



どこぉぉんっ!



真樹はそのまま、リング外の床へと叩き落とされた。


「裕の強烈な一撃を食らってしまった!

真樹、暴風に弾き飛ばされてしまったぞ!!」


会場中の者が、叩き落された真樹に注目する。


リングの外の床に寝転がるのは、仰向けに倒れこんだ猫耳少女。

コスチュームの制服も切り刻まれ、白いブラもパンツもチラ見させている少女が転がっていた。


「なんてえっちい姿だ!!

猫耳闘士、このまま晒し者で終わるのか!?」


実況の煽りにも、真樹は動く様子がない。

真樹の色っぽい姿に、コロシアム中が注目している。

観客からも、期待の眼差しで身を乗り出している者がいる。


「動けないか!?

カウント取るぞ!?

すり……」


実況がカウントを取ろうとした、その時だった。





「ふふ……」




真樹の笑い声が聞こえる。



「凄いなぁ……世の中には、本当に強い人がいっぱいだ……」


猫耳少女は、ゆらりと起き上がった。

そのまま、ゆっくりと立ち上がっていく。


「な、なんだっ…?」


着地した裕は、思わず足を止めてしまう。

今まで優勢だったはずなのに、真樹の異様な気配に怯んでしまう。


何か様子が変だ。

先ほどまでの可憐な少女とは違う、異質な気迫を感じるのだ。


立ち上がっても、まだ俯いたままの真樹の顔からは、表情が伺えない。


「……だけど、負けない。負けたくない…」


猫耳少女が、ぽつり、ぽつりとつぶやく。


「もっと強く、もっと強く……!」


呟きながら、ゆっくりと顔を上げた。




その顔は、無。




笑顔とも違う、怒りとも違う。

あえて言うならば、真剣そのもの。


ただひたすらに、目の前の相手に勝つ。

それだけの思考になっている真樹の顔からは、何も読み取れない。


まるで抜き身の刀のような、異質な迫力を醸し出している。


「そう、もっと強く、全身に……うん、今ならやれる」


ぶつぶつと呟きながら拳を握り直した真樹は、ゆっくりとリングへ足を進める。

ボロボロの衣装を見られていることも意に介さず、倒すべき相手を真っ直ぐに見据えている。



そして、発した。 



神氣しんき羽衣はごろも



その一言と共に、真樹の全身から光が溢れ出すのだった。


真っ白い光に包まれていく真樹。

その光を全身に纏い、輝きを放ちながらリングへ歩いていく姿に、会場中が固唾を飲んで注目する。



ふと、観客の誰かが呟いた。


「……まるで女神」と。

今回、ちょっと短くなってしまいました。

キリのいいところで切ろうとしたら、ここしか無かった……

1ページの文字数が安定しない系作者です。

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