表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/106

7-3:真樹VS裕

真樹と裕の試合は、その日の夜にさっそく行われることとなった。

急な試合の追加にも対応できたのは、さすが裏社会の闘技場というべきか。


ミト・コロシアム、アドバンスクラスのリングには、多くの観客が詰めかけてきている。

そのほとんどは、真樹に注目している男達だ。


「レディース、アァンド、ジェントルメェェン!

ミト・コロシアムのアドバンスクラス!

急遽決まったスーパーマッチ、若き火花を散らす戦いが始まるぜ!」

「「YEAAAAAHHHHHHHHHHHHH!!」」


大盛り上がりの観客席を、真樹はリング袖から見ていた。

男達に交じって、数名の女性客が混じっているのも見えた。

端の方の席には、大山と梨花もいる。


観客の多さを見ると、自分が注目選手になったんだということを実感する。

たとえ大半が、自分のカラダ狙いな者達だとしても。

女戦士ヴァルキリーとして着実に成長している証なのは間違いないのだから。


「それじゃあ、今日の選手入場だぜ!

まずは、ミトが誇るニューヒロイン!

1200万の女子校生!!『猫耳闘士』真樹ィィィィ!」

「「「FOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」」」


実況の煽り文句と共に真樹が入場すると、観客席からは歓声が上がる。


「真樹ちゃーーーーん!!」

「仔猫ちゃーーーーん!!」

「ダブルピース期待!!」

「なんかセーラー服なの久しぶりな気がする」

「それでもポロリ期待!」


観客からの言葉に下衆な意味が含まれるのも、もはや慣れたものである。

ヤクシマで思いっきり裸を晒してしまった以上、真樹の敗北を期待する者は増えてしまっただろう。


だが、そんな欲に塗れた期待を打ち破ってこそ女戦士ヴァルキリー

猫耳をつけた女の子から戦士の顔となった真樹は、ロープをくぐってリングに上がった。


「対するは、魔境グンマからやってきた美少女侍!

薙刀を振るうみどりの隊士!

凪侍かぜざむらい』裕ーーーー!」


反対側の入場口から、今夜の対戦相手・裕が姿を現した。


「あれが、グンマで話題になった新人か!」

「あー、木刀の薙刀なのにめちゃ強って噂の!」

「俺、こないだ軍魔に行ったけど知らねーぞ」

「武者修行であちこち行ってたんだと。V.G.Hubで探したら、一番最近の試合は姜都キョウトだった」

「負けたことないから、ペナルティシーンがないのか。どうりでV.G.Hubで注目浴びなかったわけだ」


歓声に交じって、裕についての情報が飛び交う。

真樹という注目株とぶつかることによって、ようやく日の目を見た隠れた新米。


そんな裕のコスチュームは、若草色をした和装の隊服だ。

まるで時代劇の真戦組しんせんぐみを思わせる、侍のような衣装。

真夏だというのに、身体つきを隠せる着物の上に、だんだら模様の緑の羽織を身に着けている。

ポニーテールに縛った深緑の髪が揺れ、でこには額宛てがキラリと輝く。

堂々と歩く凛とした立ち振る舞いから、少女というより美少年剣士のような印象が強かった。


「よろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」


リングに上がった裕が深々と礼をするのを見て、真樹も礼を返す。

試合前の礼など、まるで御前試合。

欲望塗れの闘技場にしては異質な光景であった。

それがまた、彼女たちの特別感を醸し出すことになるのだが。


「さぁさぁ、またまた若い子がやってきたぜ!

レギュレーションはTOP5!

どうやら裕ちゃんもまた10代の女子大生らしいぞ!

負けなしの若き少女達を楽しみたいなら、張り切って賭けてくれぃ!」


実況の合図と共にBETが始まり、観客たちは好みの選手にお金を賭けていく。

より正確に言えば、負けてほしい方にだ。


若手トップクラスの実力者である真樹と、未だ未知数の点が多い武器使いの裕。

どちらが負けるか、そしてどれだけ金を掛ければ手を出せるか、観客たちも頭を悩ませていた。



さて、リング上にいる真樹はといえば、かなり落ち着いていた。

実況の煽りにも慣れたもので、カラダを狙われていると思っても、身体が緊張するようなことはなくなっている。


自分は既にペナルティを受けた経験がある。

もしも負けても、弄ばれる覚悟は出来ている。

今更、欲望に満ちた目で見られるくらいは平気だ。


ふと、目の前の相手はどうなんだろう、と気になった。

何せ彼女は、幼馴染の男に気に入られたくて女戦士ヴァルキリーになった女子である。

想い人以外にも身体を狙われることは承知しているはずなのだが、彼女は観客たちの視線に対し、何を思っているのだろうか。


なお、当のヤミトもしっかり観客席にいることは確認できた。

悔しいが、あの青メッシュは嫌でも目立つ。



そうこうするうちに、賭けは出揃ったようだ。

退出者なし、観客席にいる全員がどちらかにBETを入れたようだ。


「やはり若い子は人気だなぁ。

こんな突発試合だろうと、みんな金を出してくれるぜ。

2人とも、どうやら男どものお眼鏡には適ったようだぜ?」


実況がうんうんと頷く。

男達の欲望が、コロシアムのお金を動かしていくのだ。

大金が動くということは、それだけ観客の欲望を刺激したということ。


真樹も裕も、観客の欲を刺激する美少女であったことの証明でもある。


そして、その2人のどちらかは、この試合の後でカラダを弄ばれてしまう。

どちらが恥辱を受けるかは、戦って決めるのみ。


いよいよ試合が始まる。


「すぅぅぅ…………」

「こぉぉぉ…………」


真樹と裕は互いに向かい合い、呼吸を整える。

いつでも戦い始められる体勢になったことを見て、実況もゴングを準備した。


「よぉし、それじゃあさっそく始めるぜ!!

突発、新米対決!!

レディーーーーーッ、ゴーーーーーッ!!」


開始の合図と共に、裕は薙刀を振りかぶって真樹へと向かっていった。

真樹は警戒して、すぐに後ろへと下がっていく。

その場に裕の薙刀が振るわれていった。


ぶぉんっと音がするほど、鋭い横薙ぎ。

いくら木刀でも、まともに食らったら怪我は免れないだろう。

試合前に見た演舞とは比べ物にならない勢いで薙刀が振るわれる。


(やっぱりリーチはあるよね……!)


真樹としてはいつものように懐に飛び込みたいところだが、薙刀の間合いは思った以上に広い。

迂闊に飛び込もうものなら、あえなく武器でぶっ叩かれることになるだろう。

まだまだ試合は序盤、ダメージ覚悟で突っ込むリスクを負うには早い。


試合は裕の優勢で進んでいくが、真樹は華麗なステップで避け続ける。

今までもこうして、攻撃をかわしながら相手のことを観察して、勝ち筋を見出してきた。


いつも通りだ。

見るだけで見つからないなら、攻撃を仕掛けて弱点を見つけ出す。

相手の長いリーチにも、対抗策はある。


「松葉破!」


真樹は右手に覇氣を溜めて、氣弾を放った。

丸い光が光弾となって裕へと向かっていく。


その裕は薙刀を構えると、くるくると風車のように回していった。

素早い回転で盾のようになった薙刀に、真樹の氣弾はあっさりと弾かれてしまう。


「やっぱり、貴女も覇氣を使えるんだね」


真樹は確認するように聞いた。

裕は何も答えないが、ニッと笑う笑顔がその返事と受け取る。


裕の動きを見て分かった。

彼女もまた当然のように、覇氣による身体強化を体得している。

そんな状態で振るわれた薙刀は、木刀といえど並の人間ならば一撃で葬るぐらいは出来るだろう。


やはり覇氣使い同志、超人同士の対決になる。


「やるね。それじゃ、こんなのはどう?」


短く言葉を発すると、裕は動きを変えた。


今度は薙ぎの勢いでそのまま回転、遠心力を込めた回転斬りを振るう。

かと思えば、急に引いては突きを繰り出す。

伸びきったかと思えば、裕の方が前にステップで飛び出し、また勢いをつけて薙ぎ払う。

ひゅんっと振るえば、その勢いを殺すことなく次への動きへと繋がっていく。

まるで躍るかのような見事な技の連携で、次々と攻撃を繰り出していく。


薙刀をまるで手足のように自在に振り回しながら、着実に真樹へと詰め寄っていく。

素手の真樹では、うまく間合いを取ることが出来ないでいた。


「そこっ!」


突如として、裕の狙いが真樹の足元になった。

脛打ちかと思われたが、狙いは足の外側ではない。

すっと、真樹の股下へと木製の刃を入れる。


「つっ!」


ぺしりと、右足の内側、くるぶしに木刀が当たった。

ちょっとした痛みで怯んだ隙に、裕は立て続けに薙刀を薙ぎ、左足のくるぶしにも当てた。


両足を股の内側から叩かれ、足を少し開いてしまう格好になる真樹。


(…まずいっ!)


裕の狙いが分かり、真樹は即座にバックステップ!

同時に裕は、思いっきり薙刀を斬り上げた!


裕は真樹の足を開けさせ、股間を打ち上げるつもりだったのだ。

間一髪、真樹はそれに勘づいて避ける!


だが、完全に避けたとは言い切れなかった。

真樹のコスチュームであるセーラー服が、プリーツスカートの裾が、ぴっと引っかかってしまったのだ。


びりっ!


避けようとする真樹の動きと、斬り上げる薙刀の力に耐えられず、スカートの裾は綺麗に破けてしまった。

真樹のスカートは、正面が綺麗に裂けた格好になってしまう。

大ダメージは免れた真樹だが、綺麗な三角に裂けたスカートから、はらりと下半身が露わになった。

その光景に、観客の男達も『おぉ…っ』と前のめりになる。


「へへっ、スパッツ履いててよかったね」

「ホントだね…」


お互い距離を取って仕切り直しとなったタイミング。

裕の挑発めいたセリフに、真樹は素直に返した。


安全のため、コスチュームのひとつとして水色ラインの入ったスパッツを身につけていたことに、初めて本気で感謝した。


なるほど、グンマ・コロシアムは怪我人が多いと聞くが、それ以上にコスチューム破壊も多そうだ。

武器によって服が裂けたりするのは日常茶飯事なのかもしれない。

チラリズム主義の男には人気があるのでは、と邪推してしまう。


裕はそんな、ある意味で女性にとって危険な場所で戦い抜いてきたのだ。

なるほど、いつでもその身を晒す覚悟は出来ている。

女戦士ヴァルキリーとしての覚悟は持っているということか。


その裕は、真樹が怯まないのを見て新たに構えを変える。


「それじゃ、もっと引き裂いてあげるよ!」


裕はくるりと薙刀を回すと、氣を練り直す。


「轟け、風刃!」


裕が気合を入れると、その手から緑色の光が溢れていく。

覇氣が目に見える光となって溢れていく。


そしてその氣を、握った手を通じて武器に流し込んでいく。


「これは……!」


真樹も、驚きのあまり目を見開いた。


裕の薙刀が光を纏う。

裕の手から溢れる緑色の光が木刀集まり、やがてぐるぐると回っていく。


同時に、ひゅぅおぉと風が吹く。


地下だというのに、確かに感じる風。

それが、裕の薙刀の先に向かっていくのだった。


やがて、目に見えて変化が訪れる。

光の筋が、まるで視認できる風となるように、すっと集まっていく。

そして、いくつもの光の筋が、ぐるぐると勢いよく回転しながら、裕の薙刀に集っていくのだった。


その光景を見ていた真樹は直感する。

あれは風だと。

まるで小さな台風、勢いよく回る風を纏っていたのだった。


「風の王羅オーラ…」


思わず真樹も呟いてしまう。

なるほど、裕が隠れた大型新人というのも本当らしい。


真樹が苦戦している覇氣の纏い、王羅オーラの発動を、武器に対してやってみせたのだから。


やがて、剣先が光で溢れた薙刀が完成した。

木刀の刃からは強風が生まれ続け、リング上に突風が吹き荒れる。

まるで嵐そのものを纏わせたかのような、風で暴れまわる薙刀が生まれていたのだった。


「さぁ、ここからが本番だよっ!」


凛とした構えに、確かな笑みと敵意を乗せた顔を見せる裕。

和装をはためかせ、風を纏う隊士が、武器を構え直すのだった。


最近仕事が佳境を迎えてて、結構急ぎ足で執筆してます。

あぁ、早くPCを買い替えたい…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ