6-11:バナナの上の美少女達
「もう真樹さん、なんであんなところですっ転ぶんですの!?」
「いやもう、完全に油断……って、沙耶ちゃんこそ、受け止めきれなかったじゃん!」
「わたくしだって、ここまで体力が無くなってるとは……
あぁもう、悔しいですわ!
まさかこんな決着の仕方なんて、カッコ悪くて死にそうですわ!」
「私だって悔しいよ!
勝負がつかないどころか、こんな形でまた引き分けなんて…!」
プールに浮かんだまま、言い争いを始める真樹と沙耶。
プライドの高い沙耶はもちろん、普段は大人しい真樹も珍しく悔しさを顔に出していた。
お互いに真剣だったからこそ、悔しいのだ。
まさか、ライバル同士の宿命の対決が、足を滑らせてのリングアウトという間抜けな結果に終わってしまうとは。
しばらくはやいやいと言い合っていた2人であったが、コツコツとリングの上に足音が響くのが聞こえてリングを見上げる。
そこには、見覚えのある人物が立っているのだった。
「いやー、仲良きことは美しき事だねー」
ニヤニヤしながらリングの上に立つのは、憎たらしいほどのイケメン。
青いメッシュの入った髪を揺らした青年が、実に楽しそうに見下ろしていた。
「ヤミトさん…」
「いやー、予想以上の結果でびっくりしてるよ。
やっぱり2人とも、『持ってる』よねー」
そこまで言われてハッとなる。
ようやく気がついた、自分達はこの男に乗せられたということに。
この男からすれば、真樹と沙耶はまさに飯のタネ。
2人の注目が高まれば高まるほど、美味しい想いが出来る。
真樹、もしくは沙耶が最大限に注目を浴びるような試合を作り出し、その試合でペナルティの権利を獲得すれば。
カメラ片手に若い子とお楽しみできる上に、投稿用の動画まで特等席で撮れてしまう。
注目選手の艶姿を目の前で撮ることが出来れば、V.G.Hubで大注目間違いなしだろう。
彼は、真樹と沙耶がチャンピオンに憧れて、あるいはそれを超えようとしている気持ちをよく知っている。
そして、お互いが強くライバル視していることもよく知っている。
その気持ちを煽り、利用し、互いに真剣に戦う状況を目指すよう仕向けた。
この祭の参加者の中で、2人がずば抜けて実力があることを見抜き、夜九祭の最終日という最も注目が集まる試合になるように導いた。
その結果はどうだ。
ほとんどの参加者は真樹や沙耶の手によって敗北を喫し、彼を含む男共にカラダを晒すことになった。
そして、お互いが最高の舞台で真剣に戦った結果、またしても引き分けとなってしまった。
観客からすれば、ダブルノックアウトというのは大変美味しい状況だ。
なんせ2人分のお楽しみが出来るのだから。
既にリングの上に乗っているということは、彼は今回の試合でも、しっかりとペナルティの権利を獲得してるということだろう。
真樹達の脳裏に、1日目の彼の言葉がよみがえる。
『彼女達を蹴散らしていって、どっちも勝ち続けていけたら……
最後の10戦目で、互いにぶつかるっていうのは?』
この言葉に、自分達は見事に乗せられてしまっていた。
たった一言で、この状況を導いた男なのだ。
恐るべき慧眼で、彼が最も得をする状況を生み出したのだ。
それは同時に、自分達が最も辱められる形になってしまうことを意味するのだが。
空恐ろしくなってきた真樹と沙耶は、思わず互いに抱き合ってヤミトを見上げてしまう。
そんな震える女子2人をあざ笑うかのように、徐々に水着の男達がリング上に集まってくる。
この試合に大金をつぎ込み、真樹と沙耶を弄ぶ権利を手に入れた男達が、下衆な笑みを隠さずに見下ろしていた。
「いやー、予想外の結末だったが、試合としては盛り上がったから良しとするぜ!
さて、先に賞金の方を発表しとくぜ」
呆然とする女戦士達を放ったまま、プールサイドからマイクを使って実況が煽る。
ヴァルキリーゲームズでは、引き分けならば、どちらも平等に賞金が貰える。
観客が賭けた全ての賞金を互いに山分けとなる。
「両者の合計を2で割って、と……
なんと、1218万6000燕!
さすが大トリだけあって、みんな気前がいいな!
喜べ、2人とも1200万の女子校生にランクアップだぜー!!」
「「YEAHHHHHHHHHHHHHHHH!!!」」
実況の煽りに、観客席からも歓声が上がる。
大注目の試合なだけあって、観客達は気合を入れて賭けをしていた。
こんな大舞台で、大人気の若手を好きに出来るとなれば、この夏最大の思い出になるに違いない。
恐らく、数百万をポンとつぎ込んだ者も多数いるのだろう。
真樹も沙耶も、過去最高の賞金を受け取れることになる。
「もちろん、これを受け取るためには、ペナルティを受けてもらわなきゃいけないがな!」
引き分けは、どちらも賞金がもらえるが、どちらもペナルティを受けるのがルール。
今リングの上にいる男達は、この熾烈な賭けに勝った男達。
何がなんでも、真樹や沙耶を弄んでやりたいと大金を突っ込んだ者達だ。
ぐへへとニヤつく男達を前に、真樹と沙耶はひっと短い悲鳴を上げて抱きしめ合う。
そんな2人を優しく宥めるかのように、悪魔は語りかけるのだった。
「さーて、もちろん珍しいダブルノックアウトなわけだから……
こんな状況ならではのことを要求しようと思うんだけど、いいかな?」
にこやかに、ヤミトは提案するのだった。
「こ、これはまた…なんでこんなことを…」
「さ、沙耶ちゃん揺らさないで。落ちる…!」
プールの上に、黄色く膨らんだ物体。
その上に跨る水着の女子校生2人。
真樹と沙耶は、ゆらゆらと揺れるバナナボートの上に、向かい合って乗っていた。
ゆらりとそり曲がった楕円形のモノから落ちそうになって、思わず抱き合ってしまう。
一体どこから持ってきたのか、ヤミトはボートに一緒に乗るように提案したのだった。
下衆な空気に流されるままに2人で乗ってみたのだが、意外とバランスを取るのが難しい。
結局は互いに密着し合わなければ、乗っていることすら難しいくらいであった。
「いやー、バナナに跨る女子校生達って、いいよね?」
「「FOOOOOOOOOOOOOO!!」」
観客達が何故盛り上がるのかイマイチ理解できないまま、必死にバランスを保ちながらプールの上に浮かぶ真樹と沙耶。
目の前には、プールに落ちて一緒に濡れたライバルがいる。
雫を滴らせながら、向かい合って密着し合っていることに、なんだかドキドキを隠せない。
「もちろん、これだけじゃないのは分かってるよね?」
ニコニコとしながらカメラを構えるヤミトが言う。
きっと、以前と同じことを要求するつもりだろう。
「それじゃー、まずは一発ぶちゅっと行こうか?」
やっぱり…
またしても女同士のキスを見せつけろということだろう。
仲良しライバル同士のキスというのは、すっかり真樹と沙耶の代名詞になっている。
観客も皆、それを期待しているのが感じ取れた。
互いに密着しあっているせいで気持ちが高ぶっているのだろうか。
それとも、さすがに2回目だからか。
覚悟を決めるのは早かった。
「い、行くよ…?」
「し、仕方ありませんわね。さっさと済ませますわよ!」
お互い顔を赤らめながらも、ゆっくりと顔を近づけていく。
ちゅっ。
見せつけるように口付けをしたが、これだけでは終わらない。
終わらせてくれないというのは、前回で嫌というほど思い知っている。
「「ん……ちゅっ…むふ…ちぅ…」」
互いに舌を絡ませながら、お互いを求め合うようにキスをする。
ディープに口付けをかわしあうのだった。
「「「おぉ……」」」
艶かしい女同士の絡みが、会場の男達の視線を釘付けにする。
観客達が前のめりになって、自分達に注目しているのを肌で感じ取っていた。
「「ん……はぁん……ちゅっ…」」
「いやー、すっかり抵抗なくなった感じ?」
キスを続ける真樹達に、リング上にいる男の1人がヤジを飛ばす。
無論、抵抗がないわけではない。
力を競い合うライバルなのに、こんな恋慕してるかのような行為をしなくてはいけないなんて…
そう思ってはいるものの、以前ほどの抵抗感は感じないのも確かだった。
相手が一番のライバルにして親友であることも、理由なのかもしれない。
「それじゃー、もっと激しく行くかい?」
「ほらほら、ここでのペナルティは水着剥ぎだぜぇ?」
「どっちが相手の水着を取れるかなぁ?」
リングの上から、下衆な提案が聞こえてくる。
もちろん覚悟はしていた。
キスだけで終わらせてくれるわけがない。
このヤクシマ・コロシアムでの敗者は、水着を剥ぎ取られて身体を晒すのが宿命。
自分達もそういった目に合わなければ、このペナルティは終わらせてもらえないだろう。
キスを終えて顔を離した真樹は、自分と抱き合っている相手の身体を見る。
ゴージャスな金色ビキニに包まれた肢体は、ただの女子校生ではないぞと発育で主張していた。
もっともそれは真樹も同じ。
むしろ今でもなお成長を続けており、胸のサイズはそろそろ90になろうかとしているのだ。
そんな女子校生離れした肉体を守る防具が、布一枚しかない。
今更ながら、随分と無防備な格好で戦ってきたものである。
だが、ここで引き下がれない。
真樹はゆっくりと沙耶の水着ブラへと手を伸ばす。
考えることは同じであろう、沙耶もまた真樹の水着へ手を伸ばした。
むにゅっとした感触が指を伝わり、お互いの指が水着にかかった。
しかし、いずれ脱がされる宿命だとしても、たやすく晒したくないのも確か。
もう片方の腕で自分の胸を押さえつけた。
お互いに水着を脱がせようとブラを引っ張りながら、自分の水着を押さえつける。
せめて晒すのは相手より後に。
その気持ちに、いつの間にか手に力が入ってしまう。
「……負けるわけにはいきませんわ!
先に辱めを受けるのは貴女でしてよ?」
「沙耶ちゃんこそ、押さえるのに必死じゃないの…?」
いつの間にか、本気で水着を脱がし合うキャットファイトの様相を呈してきた。
バナナボート上でぐぐぐと互いに譲らぬまま、水着を引き合う2人。
ゆらゆらと揺れながらも互いに力比べをしていることは観客達にも伝わり、突如始まった延長戦を興味深そうに眺めていた。
しかし……
ぐらっ!
「わっ!?」
「きゃっ!?」
お互い、腕に力を込めすぎたのだろうか。
バランスを崩してしまい、バナナボートがひっくり返ってしまった。
そのまま2人も、呆気なくプールへと落っこちてしまうのだった。
「「……ぷはっ!」」
慌てて水上から顔を出す。
そこで見たものは、下衆な笑みを浮かべていくリング上の男達。
観客席にいる男達も、カメラを構えるのが見えた。
そこで、自分の身体が何かすーすーするのを感じた。
風が肌を撫でる感覚が、身体全体で感じ取れるのだ。
自分達の手には、さっきまで引き合っていた相手の水着。
バナナボートから落っこちた拍子に、お互い引っ張られてしまったらしい。
そこまでいけば、何があったか思考が追い付くわけで。
自分達の身体が今、どうなっているのか理解できたわけで。
「「………きゃあああああああああああっ!!」」
「「「「YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!」」」」
たとえ晒すのが定めだったとしても、いざ実際に晒す恥辱に耐えられるかは別なわけで。
少女達の悲鳴と男共の大歓声、そして数多のシャッター音が響く中、夜九島の最後の夜は更けていくのであった。




