6-8:島に舞う水着美少女達
それからの戦いの日々は、怒涛のように過ぎていった。
「かかったな、ヘルバース……なっ!?」
「桜花砲!!」
「ごふぇああぃ!?」
ピンクのキャップを裏被りしたボーイッシュな女の子、四葉。
彼女もまた覇氣使いであり、真樹に強く対抗心を抱いていたのだった。
だが、実際に戦ってみれば、技の練度は真樹には遠く及ばない。
四葉が覇氣による氣弾を放つ前に、懐に飛び込んだ真樹がお得意の腹パンをかます。
キャップと同じピンクの水着を着た褐色の身体は、呆気なく吹っ飛ばされそのままプールに落ちていった。
「四葉ちゃんリングアウト!
WINNER、真樹ー!!
これで3連勝だ!猫耳闘士、快進撃!!」
「ふぅ……よしっ!
1日二試合でも、なんとかなるね」
午前中に一戦した後だったが、この調子なら問題なく戦えるだろう。
「イカすヒップ!!」
「汚ねぇケツを向けるんじゃありませんわ!!
龍月脚!!」
「ぎにゃああああっ!!」
時を同じくして別のリングにて。
紐のような際どい水着をつけたガラの悪い女・斉藤は、高くジャンプすると沙耶に向かってヒップドロップを狙う。
しかし、沙耶はそのケツを絶妙なタイミングで蹴り返すのだった。
臀部に強烈な足跡をつけられたまま、斉藤もまたプールに突き落とされる。
「WINNER、沙耶!!
新たにやってきた月光王女、途中参加で乗り込んでくるだけの自信はあるということか!
あっという間に3連勝!!」
「おーっほっほっほ!当然ですわ!
今年のMVPは、わたくしがいただきますわよ!!」
ゴージャスな金色の水着を着て、狐耳を身につけた沙耶は、リング上で高笑いである。
その様子はモニターにも映され、中継を受けて島の皆にも見られていくのだった。
真樹と沙耶が10連勝を目指しているという噂は、あっという間に島中に伝わっていた。
最終日にお互いに10戦目で戦う約束をした2人は、それまでに9勝を狙うつもりでいる。
それを面白く思わない女戦士達が、次々と真樹と沙耶に挑戦していったのだ。
真樹と沙耶に追従するように、連勝を上げる者もいた。
「おらあぁっ!!」
「ちょーっ、足掴むなって、はにゃー!!」
また別のリングにて、大山もまた着実に勝利を重ねていた。
対戦相手は何故か、梨花とそっくりなツインテールの女の子、六華。
梨花の物とは色違いの黄色いワンピース水着を着た六華を、ジャイアントスイングでプールに放り込んだ。
なんでも他人の真似が得意らしい彼女は、梨花に憧れてヴァルキリーゲームズに参加してるらしい。
もっとも、どうも最弱な彼女のことしか知らないらしく、呆気なく勝敗はついた。
「へっ、梨花先輩に憧れて真似してるなら、あの人のホントの強さを知ってからにしやがれ」
「WINNER、大山ァ!
順調に2勝目を上げたぁ!!」
3人の10代美少女達の快進撃が、ヤクシマ・コロシアムを沸かしていくのだった。
水着美女たちの戦いで大会が盛り上がっていくその一方で、このゲームの闇の部分も露わになっていく。
「うわひゃあああっ!?」
「おいコラ、それは、はぁぁんっ!!」
「やぁーん♡」
戦いが起きるたび、勝者が生まれるならば敗者も生まれるのも道理。
そしてここでは、敗者は文字通り身体を晒すことになる。
試合のたびに島のあちこちで、水着を剥ぎ取られた女性達の悲鳴が上がる。
その度に観客達の歓声と、数多のシャッター音がコロシアムに鳴り響く。
高額な賞金を手に入れる者がいるのと対照的に、恥辱を受ける者達も多数生まれるのだ。
もっとも、そのくらいで怯むような殊勝な者は、そもそもアドバンスクラスに上がってこないのだが。
「あーっはっはっは!!
今日こそあたしが最強だって証明してやるわー!!
リベンジよ、リベンジ!!」
「元気どすなぁ、ホテルで一晩中男の相手してはったんやろ?
そのまま戦いに舞い戻ってくるなんて、さすが体力バカと言われるだけはありますなぁ」
「だぁれが体力バカよ!
ちょっと遅れは取ったけど、この程度で諦める茜様じゃないわー!」
ゼブラ柄の水着に着替えた茜が、再びコロシアムの舞台へと上がってくる。
燃える赤秘書もまた実力者。
続く試合で勝利を重ねていくのだった。
もっとも…
「ちょいな♪」
「んなぁーー!?
手を触れずに投げるとかアリー!?」
白黒のまだら模様の水着を着たはんなりお姉さん・西織の呼吸投げで、またプールに放り投げられる茜。
真樹達のように連勝、とはいかないようだ。
恥辱を受けようと何度も戦いに挑む者がいる一方、その身を大事にしている者もいる。
身体を晒すリスクを抑えるべく、なるべく戦わないようにしている者もいる。
そんな消極的な選手の中にも注目選手がいる。
「葵ちゃーん、せっかくの夜九祭なのに、戦わないなんて勿体ないじゃーん」
「葵ちゃんの戦う姿が見たくてこの島に来たのにさぁー」
「…………はぁ」
ここはリゾート地。
夏場ということもあって海水浴場が開放されている。
このビーチは女戦士達も息抜きがてら遊びに来ることが出来るし、そこへ観客である男達が声を掛けるのも別に禁止されてるわけじゃない。
現に浜辺にはビーチバレーのネットが設立され、男女仲良く楽しんでる者達もいるくらいだ。
そんなビーチに設置されたパラソルの下で、ノートPCを叩く葵の姿があった。
葵に近づく男達はナンパを仕掛けてくる。
彼らからすれば、戦いに出ずにずっと画面と睨み合っている眼鏡美女というのはあまりにも勿体ない逸材。
お近づきになりたいのだろうが、当の葵はそっけない。
「生憎、私がこの島に来た名目は休暇ですので。
必要がなければ試合に出る気はありません」
「だったらさぁー、せめて俺たちと遊ぼうぜー」
そう言って男が葵の腕へ手を伸ばそうとした瞬間…
びしっ!!
「「うおっ!?」」
2人の男の喉元に、手が突きつけられた。
爪で喉元を掻き切ることも出来そうな位置だ。
「同意なく女戦士に触れるのはご法度です。
海に沈められたいですか?」
ヴァルキリーゲームズは、れっきとした裏社会のゲーム。
オイタをすれば、文字通りに沈められかねない。
冷たい目つきのまま睨まれては、さしもの男達も黙るしかない。
葵はそのまま画面に目を戻したが、そこで『あっ…』と声が漏れる。
「…貴方達のせいでドン勝を逃しました。これは訴訟ものですね」
「って、ゲームしてたのかよっ!?」
「陰キャゲーマー眼鏡美女……いえっ、なんでもありません!!」
むしろ葵に好感を持つナンパ男達だったが、冷たい目線に何も言えなくなってしまう。
結局、ドリンクを奢らされる男達がいたのだった。
戦いと恥辱と休息と。
そんな日々が続いていく。
「うぅ……やっぱり、とんでもない映像だよね、コレ」
「にゃはは、まーある意味ヤクシマの醍醐味だからねー♪」
4日目の夕方。
試合を終えてホテルに戻ってきた真樹と梨花は、ロビーに流れている映像に目を向ける。
島にいる女戦士達の姿を映した写真が、スライドショー形式で流れるこの映像。
コロシアムで戦う勇壮な姿や、ビーチで戯れる可愛らしい姿なども映るのだが、もっぱら多いのはやはりペナルティを受けた時の姿。
すなわち、水着を剥ぎ取られ裸体を晒し、男達に弄ばれている時の姿である。
淫靡な姿が晒されてしまうという、この祭ならではの罰ゲーム。
当然ながら、一度でも敗北すればこの恥辱を受けることになるわけで。
戦いが行われるたびに被害者は増えていくわけで。
映像に映る写真は、日に日に肌色率が高くなっていくのだった。
そんな映像がこのホテルのロビーはおろか、コロシアムのスクリーンや街頭ビジョン、果ては移動に使う自動バスの中でまで流れるのだから、この祭の間は嫌でも目につく。
つくづくここは淫靡な島であると象徴するかのように。
「ま、アレがあるおかげで真樹ちゃんも大山ちゃんも目立ってるわけだけどね。
もちろん沙耶お嬢様も」
「…期待されているってわけですね」
「色々な意味でね♡」
日に日に裸の女性の写真が増えていくということは、逆を言えばまだ裸を晒していない水着姿の女性が少数派になり、却って目立つようになるということだ。
未だ戦いに負けていない強者が、カラダを晒す時が来るのか。
それとも最後まで水着を脱ぐことはないのか。
勝利を重ねていく少女達には、着実に注目が集まっていくのだった。
「だからこそ引き下がれない、でしょ?」
「はい!ここまで来て、負けるつもりはありません!」
男達の下衆な期待を打ち破ってこそ、賞金と栄誉を受けるに値する。
ヴァルキリーゲームズに挑む者の原則は、最初からずっと変わっていない。
そういうものだと分かった上で挑んでいるのだ。
このくらいで尻込みするようでは、チャンピオンになどなれはしない。
気合を入れ直した真樹は、更なる勝利を求めてリングへと向かうのだった。
それからも、真樹と沙耶、大山の快進撃は続いていく。
「白樺旋風!!」
「あーーれーー!?」
「馬月踏!!」
「んぐほぉー!?」
リングの上で水着美少女達の放つ技が、年上の美女達の身体を捉える。
強烈な攻撃によってプールに突き落とされていく。
「真樹、西織姐さんを撃破ー!!
ついに来たぜ、9連勝!!
10勝の大台が見えてきたぜ!!」
6日目の午後。
はんなりお姉さんを文字通り蹴落としたことで、真樹は9連勝を上げた。
「そして朗報だぜ真樹ちゃん!
リング2でも沙耶お嬢様が勝ったようだ!
これにてどちらも9連勝!
お互いの約束のバトルが実現できるぜ!!」
「「「YEAHHHH!!」」」
実況の言葉に会場が盛り上がる。
今やすっかり注目の的となった真樹と沙耶。
2人の連勝記録はついに9勝で並んだ。
10勝目を賭けたバトルの実現が決まったのだ。
リングに佇む真樹は、ぐっと握った自分の拳を見る。
ここまで戦ってきて、自分が確かに強くなった実感はある。
だが、それは相手も同じはず。
間違いなく熾烈な戦いになるだろう。
だが、お互いに望んでいるはずだ。
今度は1対1で、きっちりと決着をつけることを。
時を同じくして、ラウンジに座る葵に声をかける人物がいた。
「よぉ、約束通り5連勝を上げてきたぜ」
「お見事です……と言いたいところですが。
なんで7連勝もしているんですか」
大山はカラカラと笑いながら、しかし闘志を隠さずに葵に向かい合う。
大山もまた注目選手ということで、対戦の申し込みが次々と来ていたのだ。
さすがに真樹達ほどのペースではないが、それでもこの6日の間に7勝を上げていた。
葵からすれば、わざわざ当初の目標よりも多い勝利を上げる必要性が分からなかった。
「ま、勝負を申し込まれたら受けるようにしてたんでね。
試合を通して、アタイなりに強くなったって実感が欲しかったのさ」
大山もまた注目選手。
真樹と同じミトからやってきた女戦士となれば、手合わせを望む者は次々と現れる。
それらを返り討ちにするうちに、気付けば7勝を上げていたのだった。
「それに、アンタはこれまで一回も試合をしてないからな。
表のプロレスだったら臆病者とか煽ってたところだが…
アンタは全然隙を見せないからな」
葵はこの祭が始まってから一度も戦っていない。
コロシアムに現れたのも、初日の開会式くらいのものだ。
それ以降はホテルやビーチでバカンスしているか、試合受付をしているかのどちらかだ。
大山は試合をする傍らで葵についての情報を集めていたのだが、成果は芳しくない。
だが一度だけ、葵がナンパしてきた男達をあしらう瞬間を見ることができた。
その時に、自信に見合う強さを秘めていると直感したのだ。
「それなりに手応えは掴めたんでな。
約束通りアタイの挑戦、受けてもらうぜ?」
「…いいでしょう。
ですが、後悔しないでくださいね」
葵は立ち上がり、眼鏡をくぃっと上げる。
試合は成立、ここで初めて葵の参戦が実現した。
最終日を迎えようとしているこの時にはもう、スライドショーの写真は凄まじい肌色率。
後からこの島にやってきた者を含めると、30名ほどいる女戦士。
その中で未だカラダを晒していないのは、運営に専念する梨花と実琴を除けば、たった4人。
真樹、沙耶、大山、そして葵だけであった。
そんな彼女達の直接対決となれば、嫌でも注目は高まるというものだ。
いくつもの因縁を抱えて、夜九祭は最終日を迎えようとしていたのだった。
新年度ですね!
就業規定の変更で、テレワーク時間が変わるという憂き目を見た筆者です。
まぁ、連載1年を迎えても変わらずマイペースに続けていきますので、引き続きよろしくお願いします。




