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6-4:焔の王羅

「いきなり出たぞー、茜の必殺技!!

焔の覇氣を纏って鎧にする、焔の王羅オーラの力だ!!」


水上のリングに立つ美人秘書が、文字通り燃えている。

その衝撃の光景にも関わらず、実況の言葉に会場は大盛り上がりだ。


焔の王羅を纏った茜が、手の平の指を揃えてびしっと構えを取る。

戦闘態勢が整った相手に対して、真樹も改めて身構える。


「さぁ行くよー!!ハイィィヤァァ!!」


茜は気合の入った掛け声とともに、焔を纏ったまま猛突進。

爆発力のこもった足で地を蹴り、猛スピードで真樹へと向かっていき、先手必勝とばかりに拳を振るう。


「ハイイィィヤァァァッ!!」

「っ……熱っ!?」


焔を纏った掌底が真樹を襲う。

近づかれただけで確かに感じた熱に、真樹は思わず後ろへと飛びのいた。


いくら覇氣で身体を強化しているとはいえ、さすがに燃える相手と戦ったことはない。

この焔をいきなり殴る度胸は無かった。


「ハイッ、ハイッ、ハアアアッ!!」


一度掌底を放った茜は、そのまま流れるような連撃を繰り出していく。

両手から次々と掌底が放たれていく。


恐らくベースになっているのは、中国拳法の八卦掌だろう。

手の平を実戦的な武器に仕上げ、八卦の名を冠する通り変幻自在な攻めを得意とする武術だ。


これに焔の覇氣が加わり、まるで炎が生き物になったかのような怒涛の攻めが真樹を襲う。


「ハイッ、ヤッ、ヤッ!!」

「くっ……松葉……」

「ハァイヤァァ!!」


攻撃が通るとしたら、恐らくは覇氣の光弾を打ち出す『松葉破』だろう。

だが、真樹がそれを放とうとすると、それより早く茜が近づいてくる。

松葉破を打つには、覇氣を練り上げるのに集中する時間が必要だ。

時間にすれば1秒にも満たないほんの一瞬。

だが、その一瞬すらも許さない連撃が真樹に迫る。


「っつ……あっつ!」


防御した真樹の腕に茜の掌が触れて、真樹は思わず呻く。

熱した鉄でも押し付けられたかのように錯覚する。

ヒリヒリとする腕をなんとか振るい、茜の攻撃を捌く。

だが、いつまでも防御することは出来ないだろう。


なんとか逃げるしかない。

真樹はステップで距離を取りつつ、必死で勝機を探す。

しかし茜もすぐ後を追い、ひたすらに攻撃を繰り出す。


「ハイッ、ハッ、ハァァッ、イヤァァッ!!」


試合開始から激しく動きっぱなしだというのに、未だ途切れることなく繰り出される攻撃。

まるで止まったら死ぬとでも言いたげなほど、猪突猛進の攻め一辺倒。


(凄い……相手に攻撃させないように、ひたすら攻撃してくる…!

先の先ってやつかな?

とにかく隙が見出せない…!)


恐らくは八極拳の概念も取り入れてるのだろう。

至近距離での攻めを得意とする、超攻撃的な拳法だ。

実際に茜は、掌底を打ち込むたびに強烈に踏み込み、時折腕や肘の攻撃も織り交ぜてきている。

炎を纏った身体が、まさしく全身凶器となっているのだ。


対して真樹は、熱さでまともに反撃も出来ない。

恐らくは、同じように覇氣を纏わなくては、まともに戦うことも出来ないだろう。



(あと……)


「ハイィヤアアアアアアアッ!!」



(((うるせぇっ!!)))


観客達の心が見事に一致するのだった。


感情が昂ると、掛け声がデカくやかましくなるのが茜という女戦士ヴァルキリーの特徴。

昨年最もコロシアムを騒がせた……いや、『騒がしくした』選手なのだ。


それでも、実力者であることは変わらない。

王羅という、裏の世界でも限られた者しか使うことが出来ない技を身に着けているのだから。


「さぁさぁ、一気に行くよぉ!!セイヤアア!!」


エンジンが更に暖まってきたのか、更に気合を入れる茜。

気付けば真樹は、プール端に追い詰められていた。


「ハアァッ!!」

「うわっ!?」


どこぉんっ!!


茜は力を込めて、勢いよく踏み込む。

するとなんと、踏みつけた場所が爆発した。

地を爆発させるほどの震脚に、リングが揺れる。


その揺れに、真樹はぐらついてしまう。

この至近距離の攻防で、致命的な隙を作ってしまう。


「ハァァァッ、打ち上がれ、虎花火!!」


どかああああんっ!!!


「うわああああああっ!?」


茜の掌底から爆発が放たれた。

強烈な掌底の突き上げに、焔の覇氣による爆発が加わったのだ。

真樹は、まるで打ち上げ花火のように、爆発力で空高く打ち上げられてしまう。


「出たーー!!

茜嬢の必殺技、虎花火!!

大会の開始を告げるド派手な祝砲となるのかー!!」


実況の言葉と観客席の歓声が下から聞こえる。

全身に熱を感じながらも、なんとか空中で体勢を整る真樹。


空中に吹き飛ばされるのは初めてじゃない。

沙耶との戦いでぶっ飛ばされて以来、梨花との特訓でも空中で受け身を取る訓練は積んできた。

このまま体勢を整えて着地できる自信はある。


だが、今回はそれではマズイ。

これは完全に場外。

このままプールに落ちたら負けだ。


(ヤバイヤバイ!!

いきなり本番になるけど、修行中だったアレをやるしか…!)


だが、言い換えれば、落ちなければ負けはない。


なんとか空中で姿勢を整える。

足を下にして、空中でも蹴れる体勢にして……


「舞空!!」


空を蹴った。


足から覇氣を放出して、空を蹴り移動する技。

かつて梨花や実琴がやっていたような空中ダッシュを、真樹も体得していたのだ。


蹴った勢いで、リング上空に戻ってくる。

更にここで終わらない。


今は空の上。

茜の拳の、射程外。


「松葉破!!!」


覇氣を練り上げるだけの時間は十分に取れた。

真樹は頭上から、覇氣を練り上げた光弾を放つ。


「んぎょわーーーっ!?」


油断してたのだろうか、それとも防御が苦手なのか。

茜は頭に光弾をまともに食らってしまう。

げんこつで殴られたかのように、頭を抱えてゴロゴロと転がっていた。


その隙に、真樹はリングになんとか着地する。

両手両足でしっかりとリングの地を踏んだ。

会場のモニターに、着地した真樹の尻が映し出されたのを見て、観客席から歓声が上がる。


「打ち上げられた真樹、戻ってきたー!!

虎花火失敗!!

猫が華麗に舞い戻ってきたぞ!!」

「さっき打ち上げないで、そのままプールに打ち込んじゃえば勝ちだったのにね~」

「はっはっは、そこは派手好きな彼女のポリシーが許さないだろうさ!」


実況と解説の梨花の会話が聞こえる中、真樹は息を整えていく。


「ぐっ……!」


しかし、全身から脱力感を感じる。

ふらついてしまい、あやうく膝をつくところだった。


(1発やっただけでこの疲れか……多用は出来ないね)


先程の空中ダッシュ、舞空。

これは予想以上に、体力の消費が激しかった。

覇氣の放出が出来る真樹であるが、この技は段違いに難しい技だ。


そもそも、自身を反動で動かすためには、人一人吹き飛ばすほどの威力のある覇氣を放出しないといけないのだ。

手の平から光弾を飛ばす松葉破とはレベルが違う。

1発撃っただけでも、全身から力が抜けるほどの覇氣を放出しなければならないのだ。

これを連発しながら戦った梨花や実琴は、どれだけ高いところにいるのか。


このヴァルキリーゲームズにいると痛感する。

覇氣使いとしても武術家としても、自分はまだまだだと。


「あったた……

へぇ……やるじゃん!」


目の前の相手もそうだ。

さっきまで痛そうに転がり回っていたのに、今はけろりとした表情で立ち上がってきた。

王羅の使い方といい、覇氣使いとしては自分より高い次元にいる人物。


「でも、それならまだ、終わるまで攻めるまで!!」


再び焔を纏った茜が迫る。


(このままじゃ打つ手なし……危険だけどやるしかない!)


まともに戦っても勝ち目はない。


だからといって、諦める理由にはならない。

憧れの人に追いつくという目標を、簡単に諦めてなるものか。



真樹はもう一度ステップで距離を取っていく。

プール端へ追い詰められてしまうが、逃げる傍らで再び覇氣を右手に集中する。

真樹の手から光が溢れ、松葉破を打てるだけの覇氣を練り上げことは出来た。


「ハイヤアアアッ!!」

「……そこっ!!」


それを放つことなく右手に覇氣を溜めたまま、迫ってくる茜に向かって拳を振るう。

突進してくる焔の秘書に向かって、光る右手を打ち込んだ。


ぱぁぁんっ!!


「なっ…!?」


破裂音と共に、焔の王羅の中に真樹の右手が入っていく。

傍から見たら、茜の炎の中に自分から手を突っ込んでいったように見えるだろう。


だが、真樹はさっきの空中での攻撃で確信を得ていた。

焔の王羅を纏っていた茜に、自分の松葉破が直撃していたのを見ていた。


自分の覇氣は、茜の覇氣に対抗できる。

覇氣同士なら対抗できるという、ある意味予想通りというわけだ。


ならば、溢れるほどの覇氣を右手に押しとどめたままならば…!


見よう見真似の、覇氣の纏い。

光を纏った拳が、茜の身体に迫る。

そして……



「てぃっ!!」

「んなちょっ!?」


茜は思わず悲鳴を上げる。

自分が今、どんな格好なのか。


真樹の手が、茜の水着を掴んでいたのだ。

二つの見事な谷間の間にある紐を、がっちりと掴んでいる。

このまま引けば、とんでもないところを晒すことになる。

ポロリの危機!!


その一瞬の怯みで、焔が弱まったのを真樹は見逃さなかった。

熱いのも承知で茜を引き込みつつ、そのまま後ろに寝転がる。

更に、そのまま思いっきり蹴り上げた!


「竹林投げ!!」

「んぎゃあああああっ!?」


茜が自分に覆いかぶさるように引き倒し、竹の如く勢いよく蹴り上げる。

そのまま、頭を超えて後ろへと放り投げていく。

股間への強烈な蹴りを加えた巴投げであった。


「ああっ、ああああああっ!!?」


放り投げられた茜は気が付いた、今自分がどんな状況か。

真樹は追い詰められてプール端にいた。

そこで後ろに投げ飛ばされればどうなるか。


「あわああああああああああああああああっ!!?」


あわれ、茜はそのままの勢いで、騒がしくプールへと放り込まれたのだった。


ばっしゃああああああああああん!!!


燃える女は、水しぶきも派手に散らすのだった。


「決まったぁぁ!!

大・逆・転!!

猫耳闘士・真樹が、炎の秘書を見事にプールに放り込みました!!

リングアウトにより、真樹の勝利だぁぁ!!!」


わああああっと歓声が上がる。

会場のモニターにも、息を切らす猫耳少女の姿が映し出された。


「はぁ……はぁ……疲れた」


ビキニの女子校生はその身体を見られることも承知で、ごろんとリングに寝転がった。

今までで一番疲れる試合だったが、なんとか勝ちを拾えた。


はぁはぁと息を整えつつ、猫耳の水着少女は落っこちたお姉さんを眺める。


「わぶっ、ちょっ、あたしはかなづちなんだってば!!

誰かーーー、たずげでーーー!!!」


プールで溺れかけてもなお騒がしい赤秘書。


さすがにこれを放っておくのは不憫だ。

真樹は思わず助けようとプールに入ろうとして……


「プールに入ったからペナルティ、とか無いですよね?」


不安そうに確認を取るのだった。


『さすがにそんな冷める真似はしないよ~』という梨花の言葉を聞いてから、真樹はプールに飛び込む。

溺れる秘書を助ける猫耳少女という微笑ましい光景がモニターに映るのだった。


ゲームセンターでも、なんか妙に声が響く格ゲーキャラって、いるよね?

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