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4-10:引き分け、すなわち


真っ暗だ。

真っ暗な空間の中で、ぼんやりと浮かんでいる。

まるで自分だけしか存在しない世界にいるようだ。


ふと、優しい光が当たる。

人の形のようにも見える光が、優しく手招きしていた。

それに惹かれるように真樹は歩き出し……




「ん……」


まどろみから覚める真樹。

リングに仰向けに寝かされていた真樹は、ゆっくりと目を開ける。


「お、やっと起きたね~」

「あれ……私は」


梨花が自分を覗き込む。

あれ、なんで彼女のアイドル服はこんなにボロボロなんだっけ。

ぼんやりした頭で考えていくうちに、だんだんと意識がはハッキリしてきた。

同時に、自分はどうなったのか思い出す。


「あっ、試合は!?」


そうだ、自分はさっきまでリングの上で戦っていたのだ。

沙耶と意地の殴り合い、お互いの手が相手の顔に直撃したところから記憶が飛んでいる。



梨花がくいと視線を促した。

向こうでは、実琴に支えられながら起きる沙耶がいた。


「わたくしは……結局、どうなったのですか」


ゆっくりと起き上がる沙耶もまた、状況が不透明なままの様子だった。

真樹は視線で、何が起きたのかを梨花に訴えてる。

それを見た梨花もまた、ニコニコと笑って答えるのだった。


「ダブルノックアウトによる引き分けだってさ。

いやー、医務室のモニターで見てたけど凄かったねー」


梨花の言葉を待ってたかのように、観客席からも拍手と声援が飛び交う。


「凄かったぞー!!」

「いやはや、久しぶりに熱い戦いだったぜ!!」

「真樹ちゃーーーん!!」

「沙耶様ーーー!!」

「こりゃ、マキサヤでしばらく話題持ってくな!」


会場を包む声援を、真樹と沙耶はなんともいえない表情で聞いていた。

健闘したという満足感と、勝ちに及ばなかった悔しさ。

複雑な想いが渦巻いていた中、立ち上がった実琴が悠々と礼をする。


「梨花様、真樹様。

ありがとうございました。

おかげでとても楽しい試合でしたわ」


下着がチラ見えするくらいボロボロの衣装のままだというのに、優雅さはそのままだ。


「いやー、アタシも久々に頑張っちゃったよー。

どうだったよ、後輩ズは?」


実琴に対して、明るく笑いながら答える梨花。

そのまま、新米たちに対しても感想を促す。

真樹と沙耶も、ようやく立ち上がるのだった。


「悔しいですが、これが今のわたくしの実力ということでしょうね」

「それは私もかな。まだまだ精進あるのみ、だね」


そう言って、真樹は手を差し出した。


決着はついたのだ。

ならばもう、いがみ合う理由なんてない。


「引き分けは残念だったけど、いい試合だった。

またやろうね!」

「ふん、この次はこうは参りませんわ!」


言葉では突っぱねながらも、沙耶もまたニッと笑っていた。

本気で戦えるライバルがいる。

そのことに確かな嬉しさを感じながら、2人はしっかりと手を握り合った。


「いやー、大型新人対決と銘打ったが、こんな結末になるとはな!

ま、試合自体は盛り上がったからよしとするか!」


実況が和やかに笑う。

若き女戦士ヴァルキリー達の、強く美しい絆。

これからも戦いを盛り上げてくれそうな新人たちに、万雷の拍手が送られるのだった。











…だが、ここはヴァルキリーゲームズ。

和やかムードのまま終わるほど甘くはない。


「そういえば、引き分けの場合ってどうなるの?」



真樹のふとした疑問に、会場の空気が一変していく。

梨花も、実琴も、実況も観客達もニヤリと笑う。


何かを期待している空気。

よく知っているはずの、嫌な予感が真樹達を襲う。


「ふふふ、引き分けの場合なぁ。

まず、賞金についてだが」


会場の空気の変化に真樹と沙耶も戸惑う中、実況が解説を始めた。


「賞金は両者に賭けられた金額の平均が、両方に支払われるぜ!

今回は真樹&梨花チームと沙耶&実琴チームの合計を2分した金額がそれぞれに支払われる。

運営的には赤字だが、まぁコロシアムを盛り上げてくれた謝礼だと思ってくれぃ!」


引き分けの場合、賞金はどちらにも平等に支払われる。

この場合は運営にお金がいかないのだが、実況の言う通り健闘した両者への労いの意味がある。


「んで、肝心のペナルティだが……

賭けた方を問わず高い金額を賭けた者達が、両者を好きに出来るぜ!」

「「え"っ!?」」


その言葉に、真樹と沙耶が絶句する。


「今回ならば、賭けたチームを問わず最も高く賭けていた7人が、試合に出た4人ともを好き放題に出来るってことだ!」


賭けた方を問わず、一番お金を賭けていた者達が、どっちも好きに出来る。



『どっちも賞金が貰えるが、どっちもペナルティを受ける』

それが、引き分けになった時のルールなのである。



「「え……え……!?」」


困惑する真樹と沙耶。

つまり2人は、ここで初めてのペナルティを経験することが決まってしまったのだ。


「というわけで、今日の高額組の入場だぜ!」


黒服に案内されて、リングに上がってくる男達。

大金を払い、自分達を弄ぶ権利を手に入れた者達。

その7人の中には、見知った男もいた。


「や、ヤミトさん……」

「やぁ、みんなお疲れ様。

試合、すごく楽しませてもらったよ!

いやぁ、今後がとても楽しみな試合だったねぇ♪」


ある意味この試合の発端となった青年、ヤミトもしっかりとペナルティの権利を獲得していたのだった。

憎たらしいくらいの爽やかな笑顔で上がってくる。


「ところで、この場にいるみんなに提案がある」


何故か実況からマイクを奪い取り、話し出したヤミト。

動画の出演慣れしてるせいか、会場中の注目を浴びても淀みなく喋り出した。

そのまま、彼は悪魔の提案を囁きだす。


「ダブルノックアウトなんて、滅多に見れるものじゃないからね。

せっかくなら、こんな機会でもないと出来ないことを要求しようと思うんだけど、どうかな?」


その言葉を聞いて、ピンときたらしい梨花と実琴がニヤニヤしだす。

意味を理解した観客達の中には、『YEAHHH!!』と叫ぶ者もいた。

いまひとつ分かっていないのは真樹と沙耶だけ。



そして、この男は宣言する。



「真樹ちゃんと沙耶ちゃん、お互いにちゅーしてみようか!!」




……………



「「えええええええええええええええええっ!!?」」


数秒の沈黙の後に、真樹と沙耶は絶叫した。


「ええっ、えの、あの、わ、私と沙耶ちゃんが…」

「なななななあ、何を言い出すのですかぁ!!」


顔を赤くしてあたふたとうろたえまくる真樹と沙耶。

一体全体、どうしてそんな要求をいきなりしてくるのか。


しかし、梨花と実琴は得心がいったようにニヤニヤと笑っていた。


「要するに、女の子同士での絡みを見せつけてみてってこと☆」

「なるほど確かに。普通はダブルKOの時でないと見れないですわね」


敗者が弄ばれるという性質上、通常はどちらか一方のみがリングに残される。

通常の1vs1だったとしたら、女の子同士の絡みはダブルKOで両者がペナルティを受ける状況でないとまず有り得ない。


だからこそ、こんなレアな状況を最大に利用しない手はない。

動画の盛り上げ的にも、とカメラを手にするヤミトは考えていた。


そう、ヤミトは実に投稿者らしい視点で提案してるのだ。

もっとも会場が盛り上がるであろう案を。


「なななな、なんでよりにもよって!!」


とはいえ、沙耶は狼狽しまくりである。

同い年のライバルであり姉妹弟子である相手と、なんでキスをせねばならんのか。


「そりゃ、その方が可愛いだろうなって思ったから♪」

「さすがはヤミト様、女の子を辱める術を心得ておいでですね」


ヤミトは沙耶の抗議をさらりと流し、実琴がそれに追従してしまう。

更には梨花まで乗り気になってしまい、梨花と実琴がそれぞれの後輩の背を押し出した。


「ほれほれさぁさ、いっちょぶちゅっといこうか~♪」

「な、なんで乗り気なんですか梨花さん!?」

「そりゃー、アタシらも通った道ですしおすし☆」


ニコニコ笑顔を崩さない梨花に押される真樹。


「ちょ、実琴!!貴女はどっちの味方なのですか!?」

「今のご主人様は、ペナルティの権利を得た皆さまですわよ、お嬢様☆」


にっこり笑顔で諭す実琴に押される沙耶。


「そら、観念して座りたまえ!」

「潔く、女戦士ヴァルキリーの務めを果たすのですわ!」


梨花と実琴に押され、真樹と沙耶はリング中央に正座で座らされ、向かい合う。

相手が真正面ですぐ近くまで迫る状況に、心臓の高鳴りが止まらない。

不覚にもドキドキする。


まさか、ついさっきまで殴り合っていた相手とキスしなければならないとは。


改めてペナルティとは、女の子に屈辱を与える罰ゲームなのだと実感する。

だが、もしも拒否すれば制裁であろう。

今日は上位クラスのリングで超満員である。

いくら自分達でも、この人数を相手にして無事に済む自信はない。


覚悟を決めるしかなった。


「これが、私達の始まり……お互い、未熟だったね」

「ふん……今は受け入れましょう。

貴女とわたくしが同格であると」



顔を真っ赤にしながらも、なんとか覚悟を決める。

若干震える手でお互いに頬に手を当て、ゆっくりと顔を近づける。


ゆっくりと、ゆっくりと顔を近づけ合って。


そして……




ちゅっ♡



互いの唇が触れた。


「「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」」


観客の男どもは大盛り上がりである。


真樹と沙耶は、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

やがて、ちょっぴり涙ぐんだ沙耶が顔を上げる。


「~~~~っ、見てなさい!

今度戦うときは、あなたが弄ばれる姿を大いに見下ろしてやりますわ!」

「わ、私だって負けないよ!

今度は、ちゃんと決着をつけてやるんだから!」


たかがキスだと思うかもしれない。

だが、さすがにファーストキスをこんな形で晒すことになるとは思わなかった。

この恥辱は忘れない。


顔を赤らめながらも、互いに再戦を誓うのだった。


「にゃはは、イイ感じだねー。

それじゃ、もっと行こうか☆」

「へっ!?」


盛り上がる2人に対し、先輩たちがニヤニヤしながら近づいてきた。

後ろから真樹の肩を、がっちりと固める梨花。

同じように実琴も、主人である沙耶の身体を抱きしめる。


「そりゃもう、この程度でペナルティが終わるなんて思っていませんわよね、お嬢様?」

「み、実琴?ひゃあっ!?」


先輩たちは後輩たちに抱き着いた体勢から、ゆっくりと身体をさすりだす。

艶めかしく、真樹と沙耶の制服を触りだす先輩たち。

肩を抱き、シャツの上からお腹をさすりだし始める。


やがて先輩たちの手は、スカートへと伸びていく。

スカートの裾をゆっくりとめくり上げていく。


「ひゃっ、だ、ダメだよ。男の人も、見てるのに…!」

「そりゃそうでしょ。見せてるんだから」

「な、あ、貴女、主に向かって…!」

実力チカラの無い子は、身体でご奉仕(カラダをつかう)しかないのですよ、お嬢様♪」


まるで示し合わせたかのように、一致団結する先輩コンビ。

後輩たちのペナルティデビューを盛大に盛り上げるべく、2人を辱めるべく動き出す。


「見せて、見せて、魅せつける。

それが、ペナルティを受ける子のお仕事だからねー」

「そんな、ひゃんっ!」


そのまま真樹達は押し出され、互いに抱きしめさせられる。

再び間近になる真樹と沙耶。

互いの身体が触れ合い、制服越しに胸が押しつぶされる。

お互いの吐息が顔に触れあう距離。


「「あ……」」


赤らめる顔が迫った時、真樹と沙耶の中で何かが崩れていく気がした。

そのまま先輩たちに顔を押し出され、もう一度口付けをさせられる。

ただし今度は、じっくりと時間を掛けて唇が触れ合わせて。


「「んんっ、んんん……」」


もう一度の強制キス。

その間にも、梨花と実琴の指が身体に触れていく。


たくし上げられる制服。

ぷにぷにと突かれる肌。


会場中の男達の視線を集めてるのを感じて、ようやく実感が沸いてきた。


あぁ、これから自分達は辱めを受けるんだ。

これまで何度も見てきたはずの舞台に立ってしまったんだ、と。


「「あぁ……ああああああんっ!!」」


()()()()()()()()()()()()()()!』

その意味を深く、深く理解させられるのだった。


というわけで、決着です。

いつから主人公はペナルティを受けないと錯覚していた?なんて。

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