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4-7:きゅーそネコをかむ☆

「そんじゃ、お手並み拝見かな~。

来なよ、お嬢様!」


リングに上がった沙耶を見て、なんと梨花が手招きして挑発した。

この光景に、ミト・コロシアムのファンがどよめく。

これまでもコロシアムの看板を背負ってきたアイドルではあるが、最弱キャラというイメージも強い梨花。

そんな☆リリカ☆が、期待の大型新人相手に、真っ向から迎え撃つような行動を取ったのだ。

珍しいなんてものではない。


「では、遠慮なく!」


その挑発にあえて乗った沙耶は、ダッシュして梨花に迫る。


虎月乱こげつらん!!」

(ほほう、これは真樹ちゃんの……柳流しに近いかな?)


勢いよく飛び出した沙耶からの初手は、連続攻撃。

右手、左手、右足、左足、左手、右足……

拳と蹴りが鋭く次々と繰り出されていく。

なるほど、同門なだけはある。


ただ、出してくる技は真樹とは微妙に異なるようだ。

どの手、どの足を出すのかは、人によって得意なものが違うということだろうか。


梨花は沙耶の手足を払い、防ぎながらちょっとずつ後退する。

その最中も、沙耶の攻撃のスピードや威力を観察していた。

なるほど確かに、真樹と互角と言えるだろう。

お互いが戦ったらいい勝負になりそうだ。


とはいえ、自分も最近は真樹と訓練していた身である。

どれ、少しは反撃をしてみようかと考えていると……


月鼠払つきねずばらい!」

「ほほぅ!」


突如として、沙耶の一際鋭い右回し蹴りが炸裂した。

梨花は思わず両腕でガードする。

今の攻撃は小柄な梨花の頭をまっすぐ捉えていた。

防御しなければ顔に直撃をもらっていただろう。

なるほど、遠慮はしないということか。


「いいね、思い切りのいい子は好きだよ~♪」


ニヤリと笑う梨花だが、そこで沙耶の攻撃は止まらない。

再び拳が飛んでくる。

ちりっと髪に掠り、梨花のツインテールを形作っていたリボンの片方が、はらりと取れてしまう。

片側の髪がほどけた梨花はさらにバックステップしつつ逃げるが、沙耶の連撃はまだ止まらない。


そうこうするうちに、リングの隅に追いやられてしまった。


「追い詰めましたわ、お覚悟!」


リング端に追い詰められた最弱アイドル。

沙耶はこのまま決めるつもりでいる。

このまま連撃で押しきってみせる、そう意気込んでいた。


「いや~、そうはいかないんだわ。

窮鼠猫を噛むってね☆」


だが、その瞬間にニコリと笑った梨花はなんと、リングの角にあるポールに飛び乗った。

まったく後ろを見ていなかったのに、突如宙返りジャンプし、見事に飛び乗ってみせたのだ。

更に、ポールを踏んでそのままもう一度ジャンプ。

飛んだ先は……



「ほい、ふぇに~っくす♪」



沙耶の頭の上。



とんと優しく着地し、しかも片足だけで乗っかっている。

おまけにもう片方を上げ、腕を翼の形振り上げてポーズまで決めている。

スカートの中が丸見えだろうとお構いなしの、華麗なポーズ決めだった。


「くっ、ふざけないでください!」

「おっと」


お立ち台にされた沙耶が怒って頭上を手で払う。


「ほい、ほい♪」


だが、梨花は器用に沙耶の攻撃を避けながら、彼女の頭上で踊り続ける。


「あぁもう!!人の頭を何だと思ってますの!!」


しびれを切らした沙耶が、両手で梨花の足を掴もうと己の頭上に手を伸ばした。

その瞬間……


「いいのかにゃ、そんなに手を上げて」

「……え!?」


目の前に梨花がいた。

それを理解するのに反応が遅れて、思わず沙耶は固まってしまう。


ほんの一瞬前まで、彼女は自分の頭上にいたはずだ。

確かに頭に重みを感じてたはずだ。


なのに、いま目の前に梨花がいる。

瞬間移動したとしか思えない、速すぎる移動。


沙耶は両手を上に上げたまま、完全に無防備な姿を梨花に晒してしまう。


「てぃっ♪」


そのまま梨花の手刀が、切り上げるように沙耶を襲う。

沙耶はなんとか身体を逸らして回避しようとしたが、コスチュームに掠ってしまう。

その結果……


「くっ……!」


スパっとシャツのボタンがはずれてしまい、はだけてしまった。

シャツが開けたところから、黒のブラジャーがチラ見えするのだった。

観客席から『おおぅ♡』と声が上がる。


「真樹ちゃんがさっき辱められてたから、このくらいはね~♪」


梨花は笑いながら、少し距離を取る。

ついでに、沙耶の胸が真樹と同じくらいイイ物を持っていることを確認する梨花。


対する沙耶の方はコスチュームを直す素振りは見せない。

下着を見られることによって多少顔を赤らめているが、戦闘態勢は崩していない。


「いいね~。

パンチラ上等、服裂け上等。

そのくらいでいちいち怯むような、安い女の子じゃないってわけだ♪」

「ふん、わたくしをそんじょそこらの女と一緒にして欲しくありませんわね」


感心したように頷く梨花に対し、沙耶は警戒は解かないまま堂々と答える。

彼女はまだ、戦士として死んでない。

恥ずかしがるのは負けてからの話、この程度の辱めで怯むような安い女ではない。

周りの男達が盛り上がっていたとしても、戦いへの集中を乱さないでいた。


「うんうん。そんじゃ……どこまで辱めに耐えられるかな~♪」


そんな沙耶の様子が楽しかったのか、梨花の笑顔の雰囲気が変わる。

さきほどまでのニコニコ笑顔とは違う、妖艶さを感じさせる笑み。

獲物を狙う狩人を思わせる目と、徹底的に嬲ってやろうと笑う口。


「いやー、このゲームに長くいるとね、自然とできるようになるんだよねー。

女の子を弱らせる術ってやつをさ☆」


梨花の動きがゆらりと怪しくなる。

必要以上に相手を傷つけることを推奨していないこのゲーム。

長く活躍している選手ほど、『いかに相手の戦意を削ぐか』という技術は自然と磨かれていくのだ。


「ところで、この位置関係、どう思う?」


梨花の唐突な質問に、沙耶はきょとんとなる。


先程までは沙耶がリング端に追い詰めていたはずだ。

だが、梨花は沙耶の頭を踏んで移動している。

つまり……


「…しまっ!」


状況に気付きヒヤリとする沙耶に対し、ニヤリと笑う梨花。

そう、今やリングのコーナーに追い込まれているのは沙耶の方。


「さーて、シードフェスティバル、いくよ~♪

あーたたたたたたた!!!」


ここに来て、梨花は初めて技らしい技を出す。

梨花が連続で繰り出すのは、両手の人差し指で突く指突。


だが、その回数が尋常ではなく多い。


ととととととっ、と、まるでマシンガンで撃たれてるかのように指の弾が襲い掛かる。

真樹や沙耶の連続攻撃とは比べ物にならない、恐ろしいほどのスピードの連撃。

手が何本にも増えているかのように錯覚する、広範囲に面で襲い掛かる指の数々。


「くっ……っ……あんっ!」


幸い一発一発は大した痛みではない。

沙耶はなんとか防御の構えを取るが、梨花はお構いなしに連続指突を繰り出していく。

腕、脚、拳と次々と指で突かれ、じわじわと痛みが蓄積していく。

おまけにちゃっかりと、胸までつついてくるのだからタチが悪い。


そうこうするうちに、沙耶は完全にリングコーナーに追い込まれてしまっていた。


「そこだーっ☆」


ひときわキラリと目が輝いた梨花が、トドメを刺すべく沙耶に迫る。

今度は指ではなく、手を伸ばしてくる。

完全にトドメを差しに来た攻撃に、びくりとなる沙耶。


「はい、ゴメンなさいね~♪」


直後。

ほんわかした声と共に、沙耶は何者かが自分の腕に触れたのを感じた。

そして、そのまま一人の影が飛び込んでくる。


「てぃっ!」

「ほぎゃーーっ!」


リングに飛び込んできた者、実琴は綺麗に梨花へ飛び蹴りをかます。

リングコーナーに追い込まれていた沙耶を見かねて、実琴は腕に触れてバトンタッチし、そのまま飛び入りしたのだった。

実琴からのキックを食らった梨花はわざとらしく吹っ飛び、実琴と沙耶から距離を取る。


「うふふ、やはりお嬢様では少々荷が重かったでしょうか」

「むぅ……」

「いやいやー、アタシのリボンを片方落とすんだから、結構やれるほうでしょ」


体勢を立て直した梨花は、素直に沙耶を称賛する。

あの実琴が主と認める娘である。

今後が楽しみな逸材には違いない。


「ちなみに☆リリカ☆様、今お嬢様に何をしようとしました?」

「いや-、ブラがお留守だったので、指で引っ掛けてやろうかと☆」


観客席からも『あぁ……』と残念そうな声が聞こえた。

にこやかに笑ったまま答える梨花に、さすがの沙耶も胸を隠す。


追い込まれた沙耶は腕で防御に集中するあまり、胸元がガラ空きになっていた。

なので指でブラを剥ぎ取ってやろうとしていたのである。

実にいやらしい攻撃を仕掛けようとしていたのだ。

実琴としても、さすがに主の危機を見過ごせる状況ではなかったのである。


「さてお嬢様、申し訳ありませんがココから先は、どうかワタクシ目にお任せくださいな」

「ぐっ……悔しいですが、任せましょう」

「はい♡」


沙耶は素直に引き下がった。

あの梨花という人物は、実琴のライバルというだけあって、まだまだ底が知れない。

実琴の実力を知っている沙耶は、今のままでは勝てないと判断したのだ。

はだけたシャツを戻しながら、沙耶はリングを降りる。


これでひとまず、コロシアムが出した条件は達成した。

あとはどちらが強いか、決着をつけるのみ。


リングに残っているのはコロシアムの先輩同士。

お互い笑顔のまま、闘志を高めていく。


「さーて、それじゃ久しぶりにライバル対決といきますかー☆」

「うふふ、お遊びはここまで、ですわね♪」


にこやかに笑う2人だが、その目はギラギラと燃えていたのだった。


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