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4-5:真樹&梨花VS沙耶&実琴

「レディィィス、アァァンド、ジェントルメェェェン!!

今日のノービスクラスは、ホントにスペシャルな試合だぜ!!

ここまでコロシアムを沸かせ続けてきたあの子に、王坂オーサカからの挑戦状だ!

しかも、タッグマッチ!!

いつもの2倍の熱気でお送りするぜぇ!!」

「「うおおおおおぉぉぉぉっ!!!」」


コロシアムで実況が吠える中、熱気溢れる叫びが会場に響く。

狭い地下コロシアムだというのに、観客達がぎゅうぎゅう詰めの超満員。

久しぶりに大盛り上がりのリングで、実況の気合もヒートアップ中である。


これまでも真樹の試合は人気はあったものの、大山戦以降の試合はここまで盛り上がっていなかった。

単純に、真樹がクラスに似合わない強さを見せつけてきたからだ。

真樹相手では、ノービスクラスの女戦士ヴァルキリーではまず歯が立たない。

その予想は実際に正しく、ここまで真樹がほぼ一方的に勝ち続けてきたのだ。


『どちらが負けるか』予想するのは容易という意味では盛り上がっていた。

真樹と対決する哀れな子羊に、いったいいくら賭ければペナルティの権利が手に入るのか。

リングの中に、男達の欲望に塗れた視線が集まる試合が続いていたのだ。


しかしこれは逆に言えば、真樹の対戦相手側に賭ける人の方が多くなってしまうということでもある。

そっちの方が、『女の子とたわむれることが出来るかもしれない』という賭け甲斐が出来てしまうからだ。

実際、真樹の賞金額は大山戦の時が最高額で、それ以降は更新できなかった。


そして、ペナルティへの期待が高くなったことで、肝心の試合についてもそこまで盛り上がらなくなってしまっている。

『どうせ勝つだろ……』という空気が蔓延してしまっては、試合が盛り上がらないのだ。

そうなると、観客側の気分も下がり気味というもの。

結果的に、観客が賭ける金額というのも下がり気味になってしまうのだ。


強すぎる。勝利確定。有利な状況での戦い。

そんな状況は、実は女戦士ヴァルキリーにとってはメリットが少ないのだ。


リスクを負ってこそ女戦士ヴァルキリー

勝つか負けるか分からない。

そんな試合を制してこそ、称賛と賞金を得るに値するのである。


そして、今日はそんな試合になる予感がする。

試合カードが発表された時から、観客側も、運営側も、2人の若き女戦士ヴァルキリーへと注目していった。


大型新人対決と銘打たれたこの試合。

『50万の女子校生』と呼ばれた真樹と沙耶の直接対決。

両者のファンがミト・コロシアムに押し掛ける事態となった。


しかも、どちらもコロシアムの先輩をパートナーに加えたタッグマッチである。

その先輩同士も、かつてコロシアムを沸かせた因縁の対決である。

古参のファンからも注目が集まり、さらに人が押し掛ける事態に。


ノービスクラスの狭い会場では収容しきれないと判断したミト・コロシアムの運営は急遽、空いていた上位クラスのリングを使うことを決定した。

すなわち、アドバンスクラス用のリングである。

これまでと同様ロープで囲まれたリングであるが、さらにステージが広くなっている。


そして、リングを囲む観客席は更に大きくなっている。

地下施設であることを忘れそうな、300人は入れるコロシアム。

ここに、欲望を持った観客達がこぞって集まったのきていた。

こそこそ訪れるべき裏社会であることすら忘れそうな、凄まじい盛り上がりを見せていたのだった。



そんなステージ脇の控えで、真樹達は出番を待つ。

だが、真樹の横にいる梨花は浮かない表情だ。


「はぁーー……」

「やる気ないですね、梨花さん」

「んまー、正直乗り気じゃないけどね~」


結局、梨花は乗り気でないままである。



公園でヤミトが提案した内容に、当初梨花はかなり渋っていた。

最弱キャラという立場に甘んじていた梨花である。

本気を見せること自体、あまり乗り気ではないのだ。


だが、真樹と沙耶がやる気満々になってしまい、期待に満ちた眼差しを向けられて、断れる雰囲気ではなくなってしまった。

沙耶はともかく、ミト・コロシアムのスター候補である真樹がやる気になっているのに水を差してしまうのは、運営側としては憚られる。

おまけに実琴から、『アナタは身体だけでなく、器も小さいままなのですか?』と挑発までされてしまう。

それで結局、運営へ上申してみるという言質を取られてしまったのである。


別のコロシアムに所属する選手との対決になるので、色々な審査やら手続きやらで面倒になるかと思われたのだが。

その後、あっという間に試合が組まれることになった。

梨花が睨んだ通り、最も話題になるマッチになる。

ミト、オーサカ共に、コロシアム側に断る理由が無かったのだ。


どちらで試合を行うかは少し揉めたようだが、舞台はミト・コロシアム側になる。

沙耶と実琴は、遠征という形でこちらに来ることになった。


彼女たちは今、反対側の通路で出番を待っているはずだ。


「ま、こないだ言った通り、やるからには仕事はこなすから♪」


アイドルの顔になって、ようやく闘志を見せてきた梨花。

しかし、真樹は決して油断しない。


頭の中で、先日聞かされた内容を反芻する。




『真樹ちゃん、悪いけどアタシは勝つ気は無いからね~』

『えっ!?』


試合をすることが決まった直後のことだ。

突然の言葉に真樹は絶句。

傍にいた大山も憤る。


『おいおい、梨花先輩!

さすがに試合に出るってなって、やる気無しは無いんじゃないっすか!』

『はいはい、落ち着いて。

別にわざと負けるとも言ってないでしょ』


抑えるようにと手でジェスチャーをしながら、真樹と大山を諭すように話す。


『ま、アタシにはアタシなりの理由があって、最弱キャラってイメージを持ってもらってるんだわ。

さすがにそれを今更吹っ飛ばしたくないわけよ』


梨花が最弱キャラを演じているのにはいくつか理由がある。

その中で大きいのは、女戦士ヴァルキリーというものが舐められないようにするためだ。

以前にも起きたことだが、欲望渦巻くこのゲームでは時折、オイタをしようとする男というのが現れる。

その際に、狙われやすい状況をわざと作っているのだ。


女戦士ヴァルキリーとは、普通には手を出すことが出来ない女である。

そのことを見せつけるための、裏社会としてのラインを担っているのである。

とはいえ、それはただの梨花個人の美学でしかない。


『ただ、真樹ちゃんを応援したいってのもあるからね~。

本気でチャンピオンを目指してるってのは知ってるし、それをアタシの都合で引っ張るのも違うと思う。

だから、アタシなりのやり方で行くよ』


梨花個人の美学があるように、真樹にも夢がある。

その足を引っ張ってしまっては意味がない。

このゲームに挑む者にはそれぞれに理由があるし、それぞれの意志は尊重されるべき。


お互いの意志が異なる時、敵同士ならぶつかればいい。

だが味方ならば、お互いの信念を曲げずに済む折衷案が必要だ。

梨花はその辺も既に考えていた。


『今回は、タッグのうち1人ずつがリングに上がって戦うバトンタッチ方式。

交代のタイミングは自由で、回数制限は特になし。

状況に応じて交代していくってわけね。

いつも通り3カウントのダウンをしたら、その者は脱落となりパートナーと強制交代。

両名とも脱落したタッグが負けだよ』


改めて、タッグマッチのルールを説明する。

2人とも倒れた方が負け、実にシンプルだ。

ただし、今回はクラス昇格のための条件を揃えるというサブルールがある。


『で、改めて確認しておくけど、クラス昇格のためには上位クラスの人と戦う必要がある。

必ずしも勝つ必要はないんだけど、上位クラスと張り合えるだけの力があるって見せつけないといけないんだよね。

つまり、試合の間に真樹ちゃんは短時間であっても、あの実琴とやり合わなくちゃならないわけだ』


もしもクラスを上げることを狙うなら、ただ勝利するだけでなく、課せられた条件をクリアしないといけない。

その条件が、上位クラスである実琴との対決。

交代が自由であるものの、ある程度は真樹VS実琴という時間を作らなくてはいけないという縛りがある。


それは、あのお嬢様にしてもそうだけどね~と梨花が続ける。

同じように、沙耶から見れば上位クラスである梨花と戦う時間が必要だ。

どこかで梨花VS沙耶の時間を作らなくてはいけない。


それが、両コロシアムの運営が試合をするにあたって課した条件だ。

先輩同士の対決、後輩同士の対決だけで終わらせてはいけないという、ちょっとした縛りがある。


『ただねぇ、正直なところを言えば、今の真樹ちゃんがあの腹黒メイドとやり合うのは難しいと考えてる』


梨花は、かつての実琴との戦いを思い出して唸る。


『そんなに、強いんですか?』

『んー、強いっていうか、相性悪そうだな~って感じ?

たぶん、サシで戦ったら勝てないだろうなって思う』

『マジか、そこまで言わせるんスか』


大山の疑問に対し、顔をしかめながら梨花は答えた。

真樹は戦うことに乗り気だが、梨花は正直厳しいと考えていた。


実琴はエキスパートクラスへと上がっている、それだけの実力がある。

真樹もそこにいけるだけの力を秘めていそうではあるのだが、その実力を出し切れるかはまだ未知数なのだ。

その前に、実琴にあっさりとやられる可能性の方が高い。

彼女の戦闘スタイルを知っている梨花は、真樹では相性が悪そうだと考えている。


『というわけで、ある程度の時間戦って満足したら、アタシに交代しなさい。

アタシが責任持って、ヤツを引きずりおろすから♪』


いつもの笑顔を見せて、梨花は実琴を倒すと宣言。

勝つ気はないと言っているが、負ける気も毛頭ないようだ。


『ま、最低でもヤツと引き分けるとこまでは持って行ってあげる。

けど、それ以上のことになったら、アタシは手を抜く。

あのお嬢様には、疲れたからとか言って適当にやられるから♪』


おいおい、と大山は顔を曇らせるが、梨花は知らん顔。


『だから、最後は真樹ちゃんVS沙耶ちゃんの構図になると思う。

そこまで持っていくのがアタシの仕事。

そっから先は、同門同士のガチンコで戦ってもらうよ』


今回の主役は、あくまでも真樹と沙耶だ。

そのお膳立てをするのが今回の仕事だと考えている。

そこから先は、勝つか負けるかは後輩同士の対決に委ねる。

それが、梨花が考えた折衷案だったのだ。


『一応確認するけど、どうする?

向こうは同門の覇氣使いに、更に上級クラスにいる搦手の使い手。

これに対し、明確に手を抜くアイドルと組んでのタッグマッチ。

辞退するなら今のうちだよ?』


真樹は実質、ハンデマッチを背負うことになる。

それでも挑むのかという梨花の質問。


だが、答えは分かり切っていた。


『やります』

『だーと思った♪』


期待通りの答えをして、梨花は満足げに笑う。

ある意味期待を裏切らない真樹に、大山も呆れる。


『本気かよ、真樹』

『ここで退いても、沙耶ちゃん達とはいずれ必ずぶつかるし。

それに、梨花さんが手を抜いたとしても、相手がずっと強大だとしても、引く気は無いです。

私は、チャンピオンを目指しているんだから』


そこは譲れない、譲りたくない一線。

一番上に立つためには、勝ち続ける以外に無い。

たとえハンデを背負ったとしても、諦める理由にはならない。


『それに……私は梨花さんと組んでみるの、楽しみなんです。

梨花さんが、戦うことの楽しさを思い出してもらえるように、私は全力で行きますから!』


真樹は笑顔で答える。

梨花の本気が見れるかもしれないという期待。

仲間と一緒に戦うという、初めての経験。

真樹にとっては、試合が楽しみだという気持ちの方が断然強い。


どこまでもバトル大好きな真樹の物言いに、思わずぽかんとなってしまう梨花、

だが、すぐに笑顔を浮かべる。


『や~れやれ。

そこまで熱くなられちゃ、しょうがない。

お姉さんもひと肌脱ぎますかね~♪』







「それじゃあ呼ぶぜ!

ミト・コロシアムのナンバーワン・ルーキー!!

猫耳闘士・真樹ィィィ!!

パートナーはコロシアムの顔、最弱キャラがまさかの下剋上!?

アイドル・☆リリカ☆だ!!」


会場の通路から、ミト・コロシアム側の女戦士ヴァルキリー達が現れる。

猫耳セーラー服の真樹と、アイドル服に身を包んだ梨花がやってきた。


「真樹ちゃああああん!!!」

「頑張れよ、ミトのニューヒロイン!!」

「腹パン、腹パン!!」

「スパッツ、スパッツ!!」

「☆リ・リ・カ☆ちゃああん、FOOOOOOO!!!」

「おいおい、最弱キャラ背負って真樹ちゃん戦うのかよっ!?」

「久々に☆リリカ☆ちゃんの本気、見せとくれー!!」


毎度ながら下衆な意図を含みながらも、今回はミトのファンは真樹と梨花を純粋に応援している者が多い。

今日の試合はミトとオーサカの対決でもあるのだ。


不思議なもので、普段はコロシアム内の女の子が負ける姿を期待する観客達であるが、他のコロシアムの者を含めた交流試合となると、他所からやってきた子には負けて欲しくないという想いが強くなる。

自分達が手に入れたい女戦士ヴァルキリーが、余所者に負ける姿は見たくないというから純粋に応援するという、奇妙な連帯感が生まれるのである。



「対するは、オーサカ・コロシアムのナンバーワン・ルーキー!!

月光王女・沙耶ァァァ!!

お嬢様のパートナーはお付きのメイドさん、主従セットで登場だ!

月影従者シャドウメイド・実琴ーー!!」

「おーっほっほっほっほ!!」


実況の煽りに合わせて堂々と高笑いしながら、今回の挑戦者がやってきた。

お嬢様とその従者が、コロシアムに姿を現した。


今日のもう一人の主役である沙耶は、真樹と同様、学生服をモチーフにしたコスチュームを身に着けている。

白いワイシャツに赤いチェック柄のスカート。

真樹と互角だと主張する胸元には、黄色のラインが入った赤のネクタイがある。

スカートから見える足は、黒のタイツで覆われていた。

彼女も、スカートの中対策はしているということだろう。


お嬢様に付き従う実琴のコスチュームは、やはりメイド服。

ただし、スカートは短くなり、綺麗な脚が見えるようになっている。

月が描かれたフリフリのエプロンがスカートに掛かり、カチューシャにもレースがマシマシ。

明覇原アキハバラで見掛けるメイド喫茶のコスチュームに近いだろうか。

先日見た普段の服がクラシックスタイルなら、こちらは『萌えスタイル』のメイド服である。


「沙耶お嬢様ぁぁぁぁ!!!」

「沙耶様、お美しいですーー!!!」

「ミトのあの猫耳と同門らしいな!!」

「実琴さーん、今日も始末しちゃってくださーーい!!」

「まさか☆リリカ☆と実琴の対決がまた見れるとはのー」


観客達の連帯感が生まれているのは、オーサカ側も同じこと。

沙耶達を応援するため、はるばるミトへとやってきた観客が多数。

会場はすっかり、ミト対オーサカの雰囲気が形作られている。


そんな熱気に当てられながら、4人はリングの上に上がる。


「おっほほほ、さぁいよいよ雌雄を決するときですわ!」

「ノリノリだね、沙耶ちゃん」

「当然っ!!

いくら同門の貴女といえど、わたくしの前には跪くのみ!

覚悟はよろしくて?」

「負けない覚悟は出来てるよ。

それに……正直楽しみで仕方がなかった!」


さっそく真樹と沙耶が火花を散らしている。

真樹が笑顔を向けてきたことを見て、沙耶もまた不敵に笑う。

戦う理由はお互いあれど、今はただこの試合が楽しみで仕方ない。


後輩同士が向き合っている中、先輩同士もまたリングでのトークを始める。


「やれやれ、若い子は血気盛んで羨ましいね~♪」

「あら、ワタクシはまだ若いつもりですが、アナタはもうお年寄りのつもりですか?」

「いや~、そういう挑発は、目の前にいる若人という現実を見てないようで痛々しいよ実琴クン。

まーでも、後輩にカッコいいとこ見せたいと思うくらいにはなったかな」

「可愛い、の間違いではありませんか。

あられもない姿を見せるのは得意ですもんね」

「否定はしないけど、それはキミも似たようなもんだからね、メイドさん☆」


お互いニコニコとしながらも、相手に負ける気はさらさらない。

久しぶりの対決にも関わらず、挑発による掛け合いは実にスムーズに行われる。

かつてライバル同士と持て囃されたのを思い出し、急速に闘志が高まっていく梨花と実琴。

こちらもこちらでやる気は十分高まっているのだった。


「それじゃあ、そろそろBETの時間だ!!

レギュレーションはTOP7!

最低金額は10000エンな!

真樹と沙耶のアドバンスクラス昇格が掛かってるのと、タッグマッチってことで人数も賞金もちょい多めだぜ!

負けた方の2人分お楽しみできるからな!

張り切って選んでくれ!!」


今回のレギュレーションには、ノービスクラスの試合としては異例の措置がとられている。

賭けの最低金額もそうだが、ペナルティに参加する人数が増えているのだ。

負けた組には、7人の観客が襲い掛かることになる。


タッグマッチということは、ペナルティでは負けた側の女の子を2人まとめて好き放題出来る。

実にお得である。


「さらにお得情報を付け加えてやろう!!

ご存じの通り『50万の女子校生』と言われてる2人!

そんなイケイケな2人だが、勝てなければ辱めを受けるのみ!

今回の戦いで、どっちかは確実に"初めて"を経験することになるからな!!

こんな機会は二度とないかもしれねぇ、あの子たちが欲しけりゃガツンとぶっこんでくれよ!!」

「「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」


実況お馴染みの、男達の欲望を燃え上がらせる煽りである。

かつての大山戦の時と同様、観客達が大いに盛り上がる。

真樹と沙耶の2人は、未だ純潔を保った新米同士。

それが失われるかもしれないともなれば、俄然この場で彼女たちを味わいたいという者は多くなるだろう。


会場を取り巻く欲望が大きいほど、金は大きく動く。

皆の欲望が盛り上がるほど、賞金が大きくなるシステムなのだ。

ならば最大限に煽るのが実況の仕事である。


「そうだ。

タッグのどっちが先鋒になるか、今のうちに聞いとくぜ。

両チーム、先に戦うのはどっちだい?」


今回は1人ずつリングに上がる方式である。

試合開始時、どちらが先にリングにいるかは重要だ。


「私が」

「ワタクシが参ります」


この点は、お互い事前に決めてあった。

名乗りを上げたのは真樹と実琴。


「お嬢様の晴れ舞台の前に、露払いするのはメイドの役目ですので」

「こっちは願ったり叶ったりだけどね」


早くも強者とぶつかれることに、ワクワクを隠せない真樹。

クラス昇格のためにも、どの道このメイドさんと戦う必要があるから万々歳だ。


「実琴~、分かってると思うけど」

「分かっていますわ、万事お任せくださいませ」

「「?」」


なぜか梨花が軽く実琴に声を掛けた。

それに対し、実琴もニコニコと笑顔を浮かべながら一礼する。

どこか含みのあるやり取りに、真樹と沙耶が疑問符を浮かべる。

だが、それを気にしている時間はなさそうだ。


「さぁBETが出揃ったようだぜ……うおぉぉっ!?

これはビビった、ノービスクラスでここまで出るか!

これはどっちに転んでもスーパーな記録が生まれるなとだけ言っておく!」


実況は、端末に表示された金額を見て驚きの声を上げる。

真樹達が勝っても、沙耶達が勝っても、記録的な金額になる。

少なくとも、どちらかに偏るような賞金はしていないというのは、実況の態度から見て取れた。


いよいよ試合開始が近づいてくる。

梨花と沙耶はリングを降り、真樹と実琴だけがリングに残された。


真樹は呼吸を集中させる。

覇氣を身体中に巡らせ、試合開始に備える。


対する実琴はニコニコと微笑むのみ。

どこまで余裕な態度は、強者としての存在感を示していた。



「それじゃあ始めるぜ!

大型新人タッグマッチ!!

レディィィィーーッ!!

ゴーーーーッ!!!」


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