表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/106

4-1:昇格の話と、覇氣体得の話

「困った……」


真樹と大山の試合から数週間。


事務室で仕事を続ける梨花は、がくりと頭を抱える。

目下の問題は、驚異の新人のコトだ。



真樹が連勝中なのだ。



残る新人であった(モモ)(ヒカリ)とも対戦したのだが、易々と撃破。

ならばと他のノービスクラスの者もぶつけても、あっさりと撃破。

一番まともに戦えたのが大山だけ、という有様だ。

ミト・コロシアムの中でも史上最速のペースで、連勝記録を伸ばしている。


まぁ、低クラス帯なんてこんなものかもしれないが、ここはチャンピオンを擁するミト・コロシアムである。

上位陣の実力は他のコロシアムにも劣らない自信はあるが、低~中クラスの層の薄さが露呈してきた。


一応は規定に則ってノービスクラスで戦わせているが、これは早くも昇格させねばならないだろう。

この連勝っぷりからして、上に行く資格は既にある。


しかし、クラスを昇格する際には、上位の者と試合をする必要がある。

上のクラスで戦っていけることを示さないといけないのだ。

が……


「正直、アドバンスクラスでも真樹ちゃん止められる気がしないんだよなぁ……」


実際にこの数週間を一緒に過ごして、それは確信している。

彼女の実力はまだ、こんなものじゃない。

恐らくはもうひとつ上、エキスパートクラスまで行っても大丈夫だろう。

そこまでは彼女のイージーモードが続いてしまう。


だが、一足飛びにさせるわけにはいかない。

コロシアムのルール上、何戦かはアドバンスクラスで戦ってもらいたい。

そうでないと、コロシアムの威厳が失われてしまうからだ。


このゲームの選手は、『普通には手を出せない女性』と思わせないといけない。

それは、トップクラスはもちろんのこと、低クラス帯の者も含まれる。

余計なトラブルを抱えないためにも、参加者全員が『只者でない』と思わせたい。


「だからこそ、本当は実力が拮抗してる子をぶつけたいんだけどなぁ……」


ヴァルキリーゲームズの賭けを成立させるためにも、同じレベルの実力者同士でぶつかるのが理想だ。

お互いが本気でぶつかり合っている姿を見せつけるのが望ましい。

試合も盛り上がるし、賭けも偏ることはないので運営的にもありがたい。

そして、熱い試合で盛り上がった中で、鮮烈なクラス昇格を演出したい。


しかし、ノービスとアドバンスクラスの中で、真樹と互角に戦える女戦士ヴァルキリーが今、ミト・コロシアムの中にはいないのだ。


「あーー、誰か真樹ちゃんと同レベルの新人とか転がってないかなーー?」


梨花はひとり、事務所で虚空を仰ぐのだった。





そんな先輩の悩みなど露知らず、2人の若き女戦士(ヴァルキリー)はとある場所で戦っていた。

いや、戦っているというよりは、片方がいなされているというべきか。


町から外れた小高い土地に、小さな自然公園がある。

わずかな遊具があるのみの閑散とした敷地。

周囲を森で覆われており、階段下に通りが見える。

地面は芝生に覆われており、運動には向いていた。


そんな場所で、2人の娘が戦っていた。

どちらも私服姿ではあるが、なぜか2人ともミニスカートで。


「ていっ、せいっ!」

「はいっ!」

「おわぁぁっ!?」


大柄な女子、大山が真樹に掴みかかる。

それに対し、もう一人の女子校生・真樹はそれを軽々といなし、投げ飛ばした。

派手にスカートを翻しながら、大山は地面に叩きつけられた。


「くっそー、まだまだ遠いのか」

「あはは、でもビックリしたよ。

ホントにこんな短期間で覇氣を使えるようになるなんて!」

「ホントに、『使えるようになっただけ』だけどな……」


ミト・コロシアムの覇氣特訓倶楽部が結成されてから数週間。

当初の目的であった、大山の覇氣習得は既に達成されていた。


大山はもともと身体の出来はよかった。

覇氣の感覚を掴めさえすれば、体得は出来るだろうとは考えられていた。

実際、梨花が課した修行のおかげで、覇氣の体得自体は驚くほどあっさりと達成された。

現在は、覇氣を巡らせて身体を強化する技術を実際に使いこなせるよう、組手形式で馴染ませている最中だ。


「あんな修行の形があったなんてね……」

「アタイもまさかあんな目に会うとは思わなかったよ……」


覇氣の体得の経緯を思い出して、2人とも顔を赤くする。

ヴァルキリーゲームズに参加する以上、覚悟は決めていたはずだが、どうやら試合以外でも恥ずかしい目に会うのは確定だったらしい。






『覇氣っていうのは命の力。

自分の中にある力を引き出す闘法なんだよね』


この公園に初めて3人で来た際、梨花はこう説明した。


『あぁ、普通の人間には脳のリミッターがついてるとかいう、あれか?』

『そうそう。それと、氣の巡りとかも含めてかな。

人間の身体の中は氣というものが巡っているの。

この巡りを加速させたり、身体の一部に集中させることで、身体の内側から強化することが出来たりするんだよ』


梨花は軽く拳を振るう。

その速度は、かつてビギナークラスで戦った時とは比べ物にならないほど速い。


『氣の巡りを自分の意思で、身体中のどこへでも精密に、かつ爆発的に動かす技術。

それが覇氣の基本ね。

これが出来れば、真樹ちゃんみたいに細腕でもゴリゴリの怪力を引き出したり出来るわけ』


真樹のことをチラリと見てから、梨花は説明を続ける。


『もちろん、普通の人がやったら氣の巡りに身体がついてこなくて、逆に身体を壊すけどね。

大山ちゃんはだいぶ鍛えてるみたいだし、いけるっしょ』

『どうすりゃいい?』


大山が前のめりになって聞いてくるのを見て、にこりと笑う梨花。

真樹はその笑顔になんだか嫌な予感を覚えたが、大山は気付いていない。


『とにかくまずは氣を感じ取れるようにならないとね。

というわけで…………まずは脱ごうか?』

『はああっ!!!?』


驚く大山にすかさず接近した梨花は、いやらしい手つきで大山の身体に触れる。


『まーまー、そのためにこうやって人里離れた公園に来たんだからさ。

ほれ、下着は勘弁してあげるから』

『はぁん、ああああああっ!!!』


抵抗する間もなく、梨花は大山の服に手を掛ける。

あっという間に服を脱がされてしまった。

上下お揃いの水色の下着姿にされてモジモジする大山に、梨花はさらに追い打ちをかける。


『はい、これもつけてね~♪』

『め、目隠し!?』


背後に回った梨花が、慣れた手つきで大山の目に布を巻き付けた。

こんな屋外で、下着姿で目隠しされる。

どんな羞恥プレイだというのか。


『大丈夫、アタシもこの修行で覇氣を身に着けたから☆』


にこやかに言う梨花に、『ホントかよ……』と内心突っ込みを入れる真樹と大山。

だが、梨花はそのまま修行内容を説明する。


『いい?目隠しして、下着姿の今!

アタシの気配を掴んでみなさい。

アタシの腕なり脚なり掴んで、投げ飛ばせたから成功だよ☆』

『お、おう……』


目隠しをして相手の気配を感じ取る訓練だろうか。

確かに修行っぽい内容ではある。


『ちなみに、アタシと真樹ちゃんの方からはちょいちょい突っつくからね』

『はぁっ!?』

『真樹ちゃんは大山ちゃんに掴まれないように身体を指で突っつくこと。

胸だったら2点、それ以外なら1点。

大山ちゃんに掴まれたら0点に逆戻りね。

真樹ちゃんはアタシより点数を多く稼ぐこと。

でないと罰ゲームね!』

『ひぇっ……!』


真樹の口からちょっとした悲鳴が漏れる。

梨花のことだ、罰ゲームの内容がとんでもないことになりかねない。

大山には悪いが、ここは素直に従った方がよさそうだ。


『あと、この公園。

普段は人が来ないとはいえ、周りに人は住んでるわけだから……

人が通りかかる可能性もゼロじゃないからね』

『はああああっ!!?』


大山は絶叫する。

こんな状況を人に見られたら、どう思われるか。

考えたくもない。


『というわけで、恥ずかし~い姿を見られたくなかったら、早いとこアタシを捕まえてごらんね~♪』

『うおおぉぉっ!!!』


そんなわけで、梨花を追い回す時間が始まった。


羞恥で身体が熱くなったせいか、それとも視界が塞がれているせいか。

驚くほど身体の感覚が鋭敏になっている。

僅かな時間で、梨花と真樹の気配を感じ取れるようになっていた。

真樹達が近づくと、その方向へと身体を向けて構える。

時には大山の方から、真樹や梨花へと掴みかかる場面も出てきた。


だが、まだ遅い。


大山の腕をかわし、真樹と梨花が指でちょんと身体を突っついていく。

脇腹だったり、お尻だったり。


『ひゃあん!』


身体を触れられるたび、大山は可愛い悲鳴を上げる。

それに同情しながらも、真樹もまた真剣に大山に向き合う。

なんせ梨花は、以前とはまるで違う速さで移動しているのだ。

やはりビギナークラスの時はかなり手加減していたのだろう。


ひゅんっと風の音が聞こえるような速度で大山に接近しては、ちょんっと身体に触れる。

間違いなく、覇氣を使った身体能力で移動していた。

つつく先が腕や脚が多いのはせめてもの情けなのだろう。


真樹もまた、覇氣を使いつつ大山の腕をかわしながら、彼女の身体に触れていく。


(傍から見たら、ただの苛めだよね……)


そんなことを考えていた中……


『り、梨花さん!ひ、人が……』

『いっ!?』


真樹は、木々の向こうに人の気配を感じ取った。

顔を向けると、遠くから男性が歩いているのが見えたのだ。

地域住民だろうか。

この公園の傍を通る可能性は高い。


周囲が森で囲まれているとはいえ、入り口となる階段から見上げれば、公園の全容は見えるだろう。

もしも気付かれれば、大山の格好も、それを取り囲む自分達の姿も丸見えだ。


『ありゃりゃ、このままだと見られちゃうk』

『うおああああああっ!!!』


梨花の煽りに、大山が吠える。

羞恥心か、意地か。

身体の中を、熱いものが巡り回るのを感じた。

その瞬間、大山はこれまでとは明らかに違う勢いで梨花に向かっていった。


梨花が言い終える前に、見事に確保!

梨花の腕を掴んで、そのまま捻ったのだ。


『あだっ、あだだだっ…!!

…はい、合格!

真樹ちゃん、服、服!』

『は、はい…!』


梨花はそのまま手を上げてギブアップのジェスチャー。

これでこの特訓はクリアとなった。

とりあえず目隠しを取って、真樹が持ってきた服を雑に着こむ。

ちなみに、結局男は通らなかった。


『あ、アンタなぁ…!』

『にひひ。

でもさっき、今までで一番パワーとスピードが出たっしょ?』


梨花の言葉に、大山はむっとしながらも、確かに手応えを感じていた。

火事場の馬鹿力というか、羞恥の馬鹿力というか。

だが、確かに自分の意識以上の力が出せたのだ。


『焦りや危機感を感じた時、人は本能で力を解放できる。

まずは、その解放を実体験した方が早いと思ってね~♪

真樹ちゃん、さっきの大山ちゃんの動きは、間違いなく覇氣の力によるものだったでしょ?』

『は、はい……少なくとも、私と戦った時よりずっと速い動きになっていました』

『あれが……覇氣……』


真樹の言葉に、大山はじっと自分の手を見る。

身体を巡る熱い感覚、確かに感じた爆発的な力。

傍から見たら馬鹿馬鹿しい修行ではあったが、確かに効果はあったことに感動を覚える大山。

その様子を見て梨花は笑う。


『そんじゃ、実際に覇氣を感じ取れたことだし、今度は自在に引き出せるように頑張ってみようか!』




そんなわけで、驚くべきスピードで覇氣を体得していく大山。

真樹と共に、この公園で修行するのが日常になりつつあった。

真樹としても、日に日に強くなる大山の相手になることは、よい訓練になっていた。


もっとも、梨花が出す課題には、羞恥を煽るものも多数あったのだが。


ちなみに、現在の修行法は、『ミニスカート状態での手合わせ』だ。

覇氣全開状態の真樹を投げ飛ばせるようになるのが課題だ。

真樹の方も、投げ技でなら反撃して構わない。


そして、スカートの中にスパッツやブルマ等を履くのは禁止されている。

投げられたりすれば、スカートの中の下着は丸見えのまま放られることになるだろう。

負ければあられもない姿で寝っ転がることになるわけだ。


人通りの無い公園といえど、屋外でミニスカートのまま戦うには羞恥心があるだろう。

『だから真剣になれる』という梨花の謎理屈のもと、取っ組み合う日々が続いている。

実際に効果があるのだから仕方ない。


「ま、まぁ人が通ることは滅多にねぇし。

さぁ、もう一度だ!」

「うん、分かった!さぁ、かかってこい!」


衣服を整えた2人の娘は再び向き合う。

確かな修行の手応えを感じながら。



しかし、いくら町はずれの公園だろうと、人がいないわけではない。

ごくたまにだが、公園の横を人が通る。

その時は組手を中断しているし、もしも目が合えば軽く会釈くらいはしている。

それでも、少しずつ噂になっていった。



『可愛いミニスカート女子達が、公園で殴り合っている』



そんな噂が、ひっそりと流れ始めていた。

そして、そんな噂を耳ざとく聞きつける男というのも、また現れるのだった。


というわけで、4章開始です。

ここまで来たら、日常でもえっちな描写を増やしてもいいかな、なんて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ