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2-2:綾VSライ

「さーて、今日の試合はビギナークラス!!

ヤンキーギャル・綾 VS ビッグレディ・ライ!!

新人女戦士(ヴァルキリー)の綾、ビギナークラスの壁と言われるライを突破できるのか!」


ロープに囲まれたリングに2人の女戦士ヴァルキリーが立つと、会場から歓声が上がる。

数十人の観客達の熱狂がリングを包んだ。


「心配しなくても、さらっとひき肉にしてやんよ。

せいぜい男どもに美味しく喰われてくれや」

「言うわねぇぇん、潰したるわぁぁん!!」


闘争心を隠そうともしない2人がお互い罵倒し合う。


その綾のコスチュームは、なんと特攻服。

メタリックカラーで丈の長いジャケットとズボン。

サラシではなくスポーツブラを惜しげなく見せるスタイルだった。


(やっぱりヤンキーじゃん)


なお、背中には可愛らしい猫の刺繍が描かれており、その下に亜婦呂出衣輝アフロディーテと書かれていた。

何故に猫なのか、何故にアフロディーテなのかは本人のみぞ知る。


一方、ライの方はまさかの水着。

ワンピースタイプのスカートがついているタイプだが、スカートのヒラヒラ部分だけが紺色で、ボディは肌色に近いベージュカラー。

だが、彼女の風船のように膨らんだ体がコスチュームをぱっつぱつにしており、特大サイズの肉の塊がいるような印象を与える。

太い手足と相まって、何とも言えない滑稽さを感じさせた。


「さぁBET開始だ!

今回のレギュレーションはTOP5、最低金額は2000エンだ!

ノービスクラスへの昇格が掛かってるから、賞金がちょっと上がってるぜぃ!」


実況が観客に呼びかけ、皆がそれぞれに端末を操作しだす。

ヴァルキリーゲームズでは、クラスが高いほど基本的な賭け金が上がっていく。

賞金額が増えていくのも自然なことだ。


「さぁさぁ、BETが完了したようだぜ。

詳細は試合後に明かすが、だーいぶ偏ったな!

まぁ、みんなの予想通り、綾の方が大人気だ!

もし綾が勝ったら、なかなかいい金額が動くぜ?」


実況が手元の端末を見ながら叫び、その内容にわぁっと歓声が上がる。


ある意味当然と言えた。

態度は悪くとも、綾は美少女だ。

口は悪くて生意気だが見た目はモデル並みのギャルと、ぶくぶくとした身体という言葉がぴったりのレディ。

どちらに「手を出したいか」と言われたら、自然と偏るのは目に見えていた。


「んまぁぁぁっ、見る目が無い人達ねぇぇん!!」

「そう言うなって。

つまりは綾が負けると思ってる人の方が大半だってことなんだからよ!」

「あらぁぁ、それもそうねぇぇん!」

「けっ」


実況はうまいこと言い換えている。

単純なのかライはあっさりと気分を良くし、その様子に綾は呆れ気味に毒づく。

ともかく、これで試合の準備は整った。


「それじゃあ始めるぜ?

瞬きすんなよー?

レディーーーーー……!」



実況の合図と共に、2人が構えを取る。

何故かいつもよりもレディの間を溜めた。

そして……




「ゴーーーーーッ!!!」




どこぉぉぉっ!!!




「がはっ!!?」




実況がゴーサインを出した、その瞬間。

綾が吹っ飛ばされて、ロープで跳ね返ってきた。

かなりの勢いで伸びたロープの反動でリングに戻され、そのまま倒れ込んでしまう。


リングには、さっきまで綾がいた場所にライが立っている。

腕を伸ばして手を開いた体勢のままでいた。


「掌底…?

いや、張り手!?」


真樹はすぐに、ライの技の正体に気付いた。

その巨体からは想像も出来ないスピードで一気に詰め寄り、張り手で突き飛ばしたのだ。


まるで相撲。

それもスポーツとしてではなく、実戦的な技に磨き上げた重量感のある張り手。

太い腕で突き飛ばされては、ギャルの身体ではひとたまりもない。


「おおっとぉ、早くも綾がダウン!!

カウント入ります!!」


倒れ込んだ綾はまったく動かない。

恐らくは腹にまともに入ったのだろう。

その衝撃で、完全に気を失っているようだ。


「3!2!1!!」


無慈悲なカウントが続く。

だが、綾は何の反応もない。

そして……


「0!!

WINNER、ライーーー!!

圧勝!!

あまりにも圧勝です!!!」

「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」



割れんばかりの歓声がリングに響く。


今回の試合、綾に賭けた人は多い。

つまり、綾が負けたことを喜ぶ人は多い。

同時に、ライが勝ったことを喜ぶ人は多い。

大多数の観客が、この結果を喜んでいる。


「うおっほほおおおぉおぉぉおぉぉん!!!!」


声援と拍手が鳴りやまない。

大喝采の中でライはそれに応えるように雄叫びを上げるのだった。


「いやっはっはっは、予想通りだったねぇ!

ここまで見事に噛ませになるとはねー♪」


からからと梨花は笑う。

あまりにも予想通り過ぎて、もはや笑えて仕方ないという。


真樹から見ても、綾は女戦士ヴァルキリーとしての実力はそう高くはないだろうと思っていた。

トレーニング施設で会った時に見た身体つきが、武術家のそれとは思えなかったからだ。


大方、綾はケンカで成り上がってきたタイプの人物なのだろう。

それがひょんなことから、このヴァルキリーゲームズのことを知り、挑戦してみた。

そんなところだろう。


それに、彼女は真樹やライのことを最初から見下していた。

梨花が手加減してたことも気付いていない様子だった。

相手を見下す心持ちは、自分の慢心に繋がる。

この結果は順当だろうとは思った。



(でも、明らかに実力差があったよね?

それなのに、こんな試合でコロシアムが成り立つの?)


真樹の中に疑問が浮かぶ。

裏社会とはいえ仮にも興行、熱い試合が無ければ観客は興醒めだ。

一方的な展開になるような試合は、普通ならば避けるはず。

にも関わらず、明らかに勝負が見えている試合を組んだのは何故だ?


その理由は、すぐに分かることになった。


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