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10-10:危険なお誘い

雅との試合を終えた、その夜。

姜都(キョウト)の街の一角にある旅館、その一室に真樹と梨花はいた。

真樹の方がまだ、裏社会特有の宿泊施設に対して躊躇していることに対する梨花の配慮で、2人は表社会にある普通の宿に泊まっていたのだ。

はるばる姜都(キョウト)までやってきたのだから、せっかくならば『和』を堪能しようぜという梨花の発案の元、風情のある旅館に泊まることとなった。


久しぶりに畳のある部屋で寝泊りすることになり、真樹もなんだか感慨深くなっている。

部屋での食事も終え、あとは寝るだけとなった頃…


「にひひ、さっそく真樹ちゃんは話題になっているようだねぇ~♪」


温泉浴衣に身を包み、ノートPCでのんびりと裏社会の情報を眺めていた梨花は、今日の試合結果を受けた各所の反応にニヤニヤとしていた。

まったりと過ごしていた真樹も、その話に興味を惹かれる。


今日の試合のこと、とりわけ真樹のエキスパート昇格のことは、早くも話題になっているようだ。

超新星の猫娘、元マスタークラスを下してエキスパート昇格!

そんな話題で持ちきりのようだ。


「まー雅ちゃんっていうレアキャラが出てきたり、制裁も起きたりしたし…

話題になるなっていう方が無理だよね~」

「あ、あはは……」


真樹としては、ただ必死に戦っただけなのだが……

いろんな巡り合わせがあってか、真樹は自然と裏社会の注目を集めていってしまう。

いやはや、確かに美少女ではあるが、彼女は話題を集める才能というか、注目される星の下に生まれてきたのかもしれない。

アイドル路線で活動している梨花としては、ちょっと羨ましい限りだ。


「…おや?

真樹ちゃん、どうやら目立つのは真樹ちゃんの一人勝ち、というわけにはいかないようだよ?」


V.G.Hubを中心に、裏社会の情報を眺めていた梨花が口にする。

梨花はここ数日、自分のライブの準備のために、あまり情報収集に回れていなかったのだ。

ここ数日の間にあったことを改めて見直してみたところ、とある話題が流れていたことに気が付いた。


真樹とほぼ同時期、というかこの数日の間にも、エキスパートクラス昇格を果たした若手達がいるという話が流れていたのだ。

場所はイズモ・コロシアム、そして……グンマ・コロシアム。


「もしかして…!?」


真樹は目を輝かせる。


梨花がV.G.Hubで見ていたのは、つい昨日行われた試合の動画。

その説明欄に書かれていたのは、グンマ・コロシアムでのタッグ戦について。

この試合の勝利で、裕が、そして大山が、エキスパートクラスに昇格したということが載っていたのだった。




時間は少し遡る。

真樹がキョウト・コロシアムで試合を行う前日。


まるで和風な天守の内装を模した、豪華絢爛な場内。

畳が敷かれているという、一風変わったリング。


グンマ・コロシアムは、この国の伝統文化である『和』の要素を取り入れた施設なのだ。

オーナーの意向で、和風の城での闘いを再現するという謎のコンセプトで作られている。

そのためか、試合の場となるリングも、和装の部屋を丸ごと模したような光景だ。


そんな、和装のリングの中で、裕と大山のコンビが戦っている。

相手となるのは、このコロシアムに所属している、エキスパートクラスの先輩たちだ。


「受けてみなさい、自分の、ムチを、ほらっ!!」


この和風な世界観のリングに似つかわしくない、黒レザーのボンデージな衣装をした金髪美女が、得物である鞭を振るう。

ショッキングピンクのやたら濃い色彩の鞭が、対戦相手に向かって振るわれる。


その相手は、これまた和風なリングに似つかわしくない、ピチピチのプロレス衣装を着た大山だ。

いつもの赤いコスチュームであるマスクレスラーは、向かってきた鞭を受け止め、自身の腕に巻きつけた。


「あいにく、鞭で叩かれるのは初めてじゃねぇんだよっ!」


自らの腕に巻きつけた鞭を力任せに引っ張る。

予想外の動きに相手の鞭使いは反応が遅れ、鞭ごと身体を引っ張られてしまう。


強引に引き寄せられて無防備な姿の相手を、大山は見逃さない。

引き寄せた相手の顔面を掴む!


「ファイアァァクラッシャー!!」

「がっ……!!」


掴んだ相手の顔を、強引に床に叩きつけた!

燃える手を使ったフェイス・クラッシャーをお見舞いする!

いくら畳といえど、怪力で頭から叩きつけられたら、その衝撃は厳しいものになるだろう。


相手の鞭使いは、そのまま気絶してしまった。


「決まったあああぁぁ!!

大山の強烈な一撃で、リップ選手ダウン!!

武器使い相手に、素手で戦うこの漢気!

裕がミトから連れてきたレスラー、恐るべきパワーだ!」


この日、大山は裕とタッグを組んでの昇格戦に挑んでいた。

エキスパートクラスの先輩たち相手に、タッグマッチで試合を行っていたのだ。


ただし、今回の試合は、かつて真樹や沙耶達が挑んだのとは少々ルールが異なる。

和装の部屋を模したリングに、両チームのメンバーが同時に入り、4人一斉に入り乱れて戦うチームバトル方式なのだ。

チームメンバー同士で連携をしたりといったことも、もちろん可能。

武器使いが多いこのグンマ・コロシアムでは、興行として特に見せ場を作りやすいルールとして人気があるのだ。


裕がタッグ相手として大山を連れてきた当初、周りの反応は冷ややかなものだった。

武器で溢れるこの館に、素手で挑もうという者がいようとは、と。


しかし、大山とてただの娘ではない。

覇氣を習得し、炎を操り、そして恵まれた体躯をした、今年の注目の新人の一人。

武者修行を経て、先輩たちに挑めると確信した裕が、肩を並べて戦うにふさわしいとして連れてきた女なのだ。


タッグマッチでは互いの連携をどう崩すかが肝要。

試合が始まってすぐ、大山と裕は即座に一人一殺の構えを取った。

先輩2人の連携を崩し、1対1の状況へと持ち込んだのだ。


無論、相手の先輩達とてエキスパートクラスの熟練者。

1対1に持ち込まれたからといって、そこで怯むような女達ではない。

1対1ならば勝てるだろうと甘く考えた若手を仕置きしてやろうと、互いに待ち構えた。


「へっ、甘く見られたもんだぜ…!」


だが、そんな油断を見逃すような大山ではなかった。

修行で覇氣を鍛え直し、更に頑丈な身体を手に入れた大山は、相手を追い詰めていく。

強烈な一撃を以て、相手の片割れを撃破することに成功したのだ。


そしてほぼ同時に、裕の方も決着を見せていた。


「風月斬!!」


薙刀に風を纏わせ、強烈な振り上げが相手のヌンチャク使いを襲う。

その一発で、相手の得物であるヌンチャクが、真ん中の鎖からパキンと叩き切られてしまった。


「なっ……!?」

「これで終わり!風龍滅牙ふうりゅうめつが!!」


再び薙刀を振るうと、先の木刀に纏っていた風が、まるで龍となって相手に襲い掛かっていく!


「うわああああああああっ!!!?」


武器を失い無防備となった相手に、風の龍たちは容赦なく襲い掛かっていく。

強烈な勢いで吹っ飛ばされたヌンチャク使いは、そのまま壁に叩きつけられて気絶してしまった。

ついでに、着用していた拳法着も無残に引き裂かれ、肌を大きく露出したまま倒れ込んでしまった。


「おわーーっ、敷島(シキジマ)選手もぶっ飛ばされた!!

これで先輩チーム、両方ダウンしたぞ!?」

「ふふふ、ボクの修行の成果は見せられたかな、先輩?」


薙刀を構えた裕は、まだ余裕を残している。

だが、相手の選手は起き上がる様子を見せなかった。


そして、カウントが始まっていく。


「3・2・1……0!!

けっちゃあああく!!

裕・大山ペアの勝利!!

見事タッグマッチを制した美少女コンビ!!

間違いなくこれはエキスパートに上がれるでしょう!」


世間ではピース5と持て囃されている、噂の若手の女戦士(ヴァルキリー)

しかし彼女達は、戦士としての実力も確かであると証明したのだった。


大山と裕のペアは4600万(エン)の賞金を山分けし、帰路に付くことになったのだった。







さて、V.G.Hubで映像が収められているのは、試合とその後のペナルティのことだけ。

だが、物語は試合の後に、人知れず動いていたのだ。


試合後。

コロシアムを後にして、軍魔(グンマ)の町を歩いていく大山と裕。

エキスパートクラスに正式に昇格となったことも伝えられ、めでたいことには違いない。

だが、大山の表情はいま一つ晴れないでいた。


「浮かない顔してどうしたのー?

せっかくエキスパートに上がれたんだよ?」

「そう言うお前もだろ、ここで満足してねえのは」

「あはは……流石に分かるかぁ」


隣で歩く裕も明るく振舞っているが、彼女も満足してないのは明らかだ。

戦績としては上々だが、どこか消化不良気味に感じていた。


「っつーか、エキスパートクラスって、マジでピンキリなんだな…」


少し前に霧子と戦った大山としては、今回の試合に少々物足りなさを感じていた。

相手は確かに実力者なのだろうが、本気で化け物じみた強さを持つ者達を間近で見てきたがために、同じラインに立ったという実感は薄い。


何より、大山と裕が共通の目標としている相手…真樹に対しては、これでは足りない。

向こうも明日、エキスパート昇格を賭けて試合をするそうだ。


恐らく、彼女はすぐに上がってくる。


イズモ・コロシアムで見せた、進化した覇氣…神氣。

カグヤと戦った時は暴走気味だったが、真樹は里帰りの最中に、何か手掛かりを手にしたようだった。

その力を、明日の試合で存分に見せつけてくるのではないか、という予感があった。


そして、そんな真樹に追いつくためには、今のままでは足りないのも痛感していた。

神氣使いに対抗するには、もっと根本的に何かが足りないと大山は感じていた。

恐らくは、隣にいる裕も同じだろう。


「やぁ、お疲れ」

「にひひ、エキスパート昇格おめでとーねー」


そうこうするうちに、町の中にある小さなホテルへと戻ってきた。

今回の遠征のため、少し長めの滞在期間を取った町のホテル。


しかし、今日はそこで大山達を待ち構えている者達がいた。

オレンジの髪を揺らす少女・香澄と、青メッシュの髪をした憎たらしいほどのイケメン・ヤミトだ。


「あれ香澄ちゃん、キミもこっちに来てたの?」

「えへへ、ライバルの調子はどうかなって、会いに来ちゃった☆

ウチもエキスパートに昇格したからねー」

「お、そうなのか?

とりあえずおめでとう」


地元イズモにいるはずの香澄は、どういうわけか遥々軍魔(グンマ)まで来たようだ。

裕とも親交があるようだし、大山とも接点はある。

そんな彼女だが、どうやら自分達よりも一足早く昇格を成し遂げたようだ。

イズモ・コロシアムで戦い続けてきた香澄もまた戦績を上げており、つい昨日エキスパート昇格を果たしたばかりだ。


「ふふ、キミもヤミト君に会いに来たのかい?」

「えへへぇ……まぁ、実際ヤミト君のおかげで強くなれたしぃ?

ちょっとお礼くらいはしよっかなって♡」


言うや否や、香澄はヤミトの腕に絡みつく。

堂々と胸さえ押し付けてる始末だ。


「はは、それでわざわざこっちにまで会いに来てくれるとはねぇ」

「あーん、ボクだってお礼したいのにさぁ~!」


それを見た裕だが怒る素振りもなく、自身もヤミトの腕に絡みつく。

イケメンにゾッコンな感じで絡む2人。


ちょっとだけ疎外感を感じる大山だが、香澄の言葉に引っ掛かりを覚える。

(この男のおかげ……?)


「そういや、お前らは夜何してんだ?

アタイはこのホテルだけど、お前ら違うところ泊ってるだろ?」


大山は今回の遠征では、事前に自分で決めたホテルに泊っている。

ここ数日は試合や練習の後、このホテルの前まで裕と一緒に歩いてくるのが恒例になっていたが、そのあと裕が何をしているのかは知らない。

地元民である裕やヤミトとは、夜は別行動を取っているのだ。


「ありゃ、大山ちゃん。

もしかしてまだ、誘われてないの?」


香澄は意外だとばかりに聞く。


「大山ちゃんの意思は尊重したいからね。

こっちから誘うのはどうかなーって思ってたんだ」


香澄がきょとんとした顔をしてるところを、ヤミトが答える。

裕が夜な夜なヤミトに会いに行ってるのは知っているが、大山とはこの前のミトの公園で会って以来なのだ。


今まであまり気にしてなかったが、もしかして裕はその間に何か特訓でもしてるんだろうか?

興味を引かれた大山はつい、聞いてしまう。


「一体、何やってんだ?」

「うふふ、秘密特訓だよ♡」


大山の質問に、香澄が意味深そうに言う。

ニヤニヤとする香澄から裕へ視線を映すと、裕もまたニコニコと笑っていた。


「やだなー、ボクがヤミト君にホテルへ誘われてすることなんて、決まってるじゃないかー♡」


そして、顔を赤らめながらぶっ込むのだった。


あまりの堂々としたカミングアウト。

その意味が、大山には分かってしまう。


「……てめっ、ラブホ……!?

お前ら、んなことして……!?」

「あはは、顔真っ赤にしちゃって、可愛い♡」


あまりにあっけらかんと告げられる事実に衝撃を受け、大山も顔を赤らめてしまう。

タッグパートナーが夜な夜な男に抱かれに行ってました、とは。

思わず固まってしまう大山を、香澄は楽しそうにからかう。


「けど実際、ヤミト君と一緒に濃密な時間を過ごしたことで、ウチも強くなれたからねー」

「……は?」

「にひひ、ウチがエキスパートに上がる力をくれたのは、ヤミト君ってコト♡

多分、裕ちゃんも同じなんじゃない?」


香澄の言葉に大山は大きく混乱する。

裕も香澄も、この男と濃密な夜を過ごした経験があるということ。

そしてその結果、昇格戦も余裕に勝てるほどの力に繋がっているらしい。


間違いなくエロいことをするという予想と、実際に強くなっているらしい現実。

それがラブホテルという単語と繋がらなくて、大山は困惑しっぱなしだ。


「うーむ……実際に味わってみるのが一番早いんだけどなぁ~」


香澄は残念そうに言う。

だが、それはこの男と一晩過ごすという意味だろう。

流石に自分の身体を、そんな安売りする気は無い。


とはいえ、この男は神氣のことも何か知っているようだ。

真樹をはじめ、この先へと戦い抜くために強くなるヒントは得られるのではないか。

そんな誘惑も頭の中でチラついてきた。


しかし、よりにもよってこの男に借りを作るのは……


「じゃあ、こういうのはどう?

ヤミト君の凄さ、少しだけ体験してみるってのは」

「え"っ!?」


大山が悶々としているのを見て、裕は見計らってたかのように言い出す。

思わぬ提案に、大山は思わず頓狂な声を上げる。


「エロいことじゃなくて、バトルの方でさ」


ニコリと笑う裕が、そこにいた。


「つまり、実際にヤミト君と戦ってみない?

ボクや香澄ちゃんがなんでヤミト君を頼りにしてるか、実体験してみたらどうかな?」


提案自体は、しごく真っ当だった。

この男がそれなりに戦えるらしいというのは聞いている。

だが、実際にヤミトが戦っている場面は、今まで一度も見たことがない。


「おいおい、あんまり勝手に戦わせないでくれよ。

僕だってタダで戦いたくはないよ、僕にメリットがある形じゃないとね~」


ヤミトは意外にも乗り気ではない。


「それじゃあ、これは~?」


そんなヤミトに応えるように、裕はカバンからある物を取り出した。

それは、赤い首輪。

女戦士(ヴァルキリー)がラブホテルで戯れる際、特定の客相手に予約されたという証。

決められた者だけをお相手する、雌の証だ。


「ヤミト君と戦って、その強さに『参った』って思うなら……

これ付けて一緒に一晩過ごしてもらうってのはどう?

逆に大山ちゃんがヤミト君に勝てるんだったら、たぶんボクや香澄ちゃんでも勝てないからさ」

「いっ……!?」


とんでもない提案をしてきやがった…!

顔を赤らめて怯む大山へ、裕は迫っていく。


「どうする?

挑戦しちゃう?」


言葉少ないながらに圧を発しながら、裕は大山へ顔を近づける。


「…………」


大山はちらりとヤミトの方を見る。

正直、この男の力は未知数だ。


悔しいが、顔がいい美青年なのは間違いない。

ただ、彼はどちらかといえば線は細い方だ。

身体を鍛えてるとしても、よくてアイドルやモデルをやれそうな、スラリとした体型の男だ。

お世辞にもマッチョとはいえず、パッと見では戦えるような男には見えない。


だが、ここ数日を共にしたことで、裕の強さは段々と分かってきた。

そんな彼女が、ここまで自信満々でいるとは。



この男は、そんなに強いのか?




……その興味の方が、勝ってしまった。



「…いいぜ。

いずれそのすました顔に一発かましてやりてぇと思ってたところだ」

「やれやれ……」


ばしりと手を合わせて気合を入れる大山を見て、ヤミトは肩をすくめる。

やる気満々な女の子を蔑ろにする趣味はない。


「それじゃあ、どこか迷惑にならない場所に行こうか。

僕もお気に入りの場所があるんだ。

そこで勝負といこう」


裕と香澄を腕に絡めたまま、ヤミトは悠々と歩いていく。

そのあとを追って、大山もまた移動するのだった。



ヤミト達に付いていくこと数分。

町はずれの公園へとやってきた。


「ここも人があんまり来ないから、撮影には向いてるんだよねぇ」

「こういう感じの公園、全国どこにでもあるんだねぇ~」

「ボク達みたいな人が修行で使えるような場所が、町の近くにあるのはありがたいけどね」


ヤミトが連れてきた場所に、香澄と裕も感想を加える。

住宅街からもやや離れている場所であり、周囲を木々に囲まれて自然と公園内が見えにくくなっている。


町の中にぽつんとある、ちょっとした自然公園。

僅かな街灯だけが明りの頼りだが、ライトとしてはかなり明るいので、お互いが見えないということは無さそうだ。


「さて…

表社会だからね。あまり時間はかけられない。

大山ちゃん、覇氣も王羅も全部使っていいから、最初から全力で来てね。

その代わり……僕も最初から全力で行くから」

「おうっ!」


構えを取る大山を前にして、ヤミトは初めて戦う構えを見せた。



そして……










「がはっ……馬鹿な」


大山は、あっけなく負けた。


「まー、そうなるよねー」

「ふふん、ボクらがなんでヤミト君に連れ添ってるか、理解できた?」



……強い。

今まで会ってきた奴らよりも、ずっと。


「いやいや、僕にこれを出させただけでも大したものだよ、うん。

さすが、ピース5に見込んだ甲斐はあったよ。

大山ちゃんもここまで強くなってるなんてね」


ヤミトは素直に賞賛してるが、大山からすれば嫌味にしか聞こえない。


倒れ伏したまま顔を上げると、ヤミトの手から光が溢れていたのが見えた。

それは徐々に弱くなっていき、やがて霧散していく。


「てめぇの今の、力……ありゃ真樹の……」

「まぁ、神氣の一種みたいなものだね。

それ以上は……」


にこやかな笑顔のまま、ヤミトは赤い首輪を取り出すと、ぽんと倒れてる大山に投げて寄越す。


「ベッドの上でなら、教えてあげるよ」

「くっ……!」


悔しいが、今の自分ではとても敵わない。

この男が、本当に只者ではないことは理解できた。


そして、裕と香澄がこの男と共にいる理由も理解できた。

カラダの関係と引き換えに、この強さの秘密を教えてもらえているというのなら、裕たちが最近急激に戦績を伸ばしていたのも納得はいく。


「大丈夫だよ。ボクもヤミト君と濃密な時間を過ごして強くなったから」

「にひひ、大山ちゃんもウチらと一緒に、楽しく夜を過ごさない?」


裕と香澄が優しく声を掛けてくる。

危険で魅惑的な夜のお誘いを前に、悔しさと恥ずかしさで、顔を真っ赤にして唸る。


「って言っても、別に強制はしないよ。

大山ちゃんがその気になったら、来てくれればいいからさ」

「えー、大山ちゃん連れ込むチャンスなのにー?」


だが、なぜかヤミト自身は積極的に勧誘はしてこなかった。

香澄は彼の意外な行動に驚く。


「裏社会の人だからね、騙しの1つは起きるさ。

負けたら僕の元に連れ込むってのは、裕が勝手に言ってたことだしね」


確かに思い返してみると、負けたらホテルに連れていくという話に、ヤミト自身は何も返事をしていなかった。

裕が勝手に言い出しただけだ。

大山はそれに乗ったが、ヤミトは特に承諾はしていない。

ただ彼は、大山の挑戦を受けただけだ。


屁理屈に近いが、ヤミトはここで強制的に大山を連れ帰る気は無いようだ。


「それに、これだけじゃまだ納得できないでしょ?

実際に僕のおかげで、裕や香澄ちゃんが強くなったってところを見ないと、大山ちゃんだって納得しないでしょ」


そう言って、ヤミトは視線を裕に移す。


「てなわけで、裕。

大山ちゃんが納得するような戦果、期待してるよ?」

「ふふ、了解。

見ててよ~?

えっちな女の子だって強くなれるってこと、今度はボクが証明してみせるからさ」


ヤミトに期待の目を向けられて、裕は燃えるのだった。


「実は、とある人との試合を打診してあるんだ。

さっき返事が来て、ぜひともって勝負を受けてくれたよ。

裕、その試合でキミの本気を見せてあげるんだ」

「えへへ、任せてよ!」


びしっと敬礼する裕。

自信満々な裕を見て満足そうに頷くと、ヤミトは腰を下ろす。


「どうせなら、次の裕の試合を一緒に見に行かないかい?

そして、もし裕の強さに納得がいったなら、その首輪と一緒に僕らを訪ねておいでよ。

僕らが見てる世界へ登ってくる気があるのならね」


ヤミトは意味深に語り掛けるのだった。

頭に首輪を乗っけたままの大山は、悔しさで顔を滲ませながらも、試合の観戦に同行することを承諾するのだった。



…そして、2日後。

一行は、とあるコロシアムを訪れた。

そこで裕は宣言通りの結果を出し、ヴァルキリーゲームズ界隈を沸かせることになる。



そして、彼女の強さを目の当たりにした大山は……



ヤミトの誘いに乗ることを決断したのだった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます!

これにて10章は終了となります。

いやー、長かった!


次章はピース5の回…の予定です。

エキスパートクラスへと昇格した彼女達に、危険なお誘いが…

それぞれに決意を固める少女達、バトルもエロもマシマシでお送り出来ればと思います。


最近になってランキングに載ったり、読んでくれる方が増えたりしてありがたいことです。

筆者の執筆意欲が続いているのは、皆様のおかげでございます。

今後もゆるゆると続けていければと思います。


以下、テンプレ。


面白いと思っていただけたらぜひ、いいねやブックマーク、評価やコメントを残していただけると大変喜びます。


【2025/12/31 追記】

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今年中は次の更新が出来なそうなので、この場を以て年末のご挨拶といたします。

今年もヴァルキリーゲームズを読んでくださり、ありがとうございました!


お仕事忙しくて、約半年更新が止まってますが、

ネタは書き溜めておりますので、気持ちが「書くぞ!」と向いた時に、また更新が始まると思います。

完結までの意思はありますので、気長にお付き合いいただければ幸いです。


それでは、良いお年を。


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