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10-6:神氣VS鬼氣

「さぁいくぞ!!」


黒紫の光に包まれた鬼が飛ぶ。

雅は凄まじい跳躍力を見せて、観客席から直接ステージへジャンプしていく!


そのまま空中で空を蹴ると、真樹のいるところまで急降下!

渾身の飛び蹴りで突っ込んでくるのを、真樹は間一髪で避ける。


どごおぉん!!

大砲でも撃ち込まれたのかと思うような、大きな衝撃音がライブ会場に響く。

派手な音を立てて、リングの床に大きなヒビが入った。


「はーっはっはっはっはっは!!」


リングに帰還した雅は、高笑いしながら真樹に向き直る。

そして、臨戦態勢の少女に対し駆け出していく。


「ふははははは!!」


笑いながら向かってくる雅は、文字通り鬼気迫る迫力を醸し出していた。

気配だけでなく、見た目さえも鬼のような黒紫の王羅を纏っている。


「ほらぁっ!!!」


雅がブンっと大振りの拳を振るえば、それだけで風圧が飛ぶ。


「っと!?」


余裕を持って大きくステップして距離を取っても、その風圧だけで真樹はよろけそうになる。


「ほらほらほらぁっ!!」


鬼の力を纏った恐るべき女警部は、なおも拳と蹴りを次々と繰り出してくる。

その一発一発が恐ろしい威力のパンチとキック。

ただのムエタイ使いではない、悪魔のような力を持つ凶悪な女戦士ヴァルキリーであった。


とてもこの攻撃は受けられるものではない。

真樹はステップを繰り返しながら避け続ける。


(ヤバいなぁ…!)


間近で感じる、凶悪な攻撃の数々。

今、確実に自分はヤバい相手と戦っている!


(雅さん、凄い!……強い!……凄い!)



…だというのに、笑みが消えない。

必死に攻撃を避けながらも、不思議と恐怖心は無かった。


この戦いを、楽しもうとしている自分がいる。

この凶暴な鬼に、勝ちたいという気持ちが溢れていく。


戦いたいという衝動が溢れてくる。

それがどんどんと高まっているのが、自分でもわかる。


「うおおおおおおおっ!

神氣・神耀獣!」


気持ちの昂りを抑えもせず、真樹は力を込めて咆哮した。

途端、ぶわりと真樹の体から光が溢れ出てくる。


「うおおおおおおおおおおおっ!!」


その見た目とは裏腹に力強い声を上げる、可憐な少女。

彼女から溢れ出る金色の光は、真樹の叫びに応えるように、とある形を成していく。

光の爪を纏うような両手両足に、たてがみのように後ろ髪へと流れていく光の王羅。


かつてカグヤと戦った時に見せた、獅子のような獣の神氣を展開していく。


「はっはっはっ、ついに出したな!!

いいぞ、それを待っていたのだ!!

さぁ、もっと熱くなろうぜぇ!!!」


ついに神氣を使った真樹を見て、雅は実に楽しそうに向かってくる。


「はーーーっはっはっはっはっはっは!!!」

「うおおおおりゃああああああああっ!!」


ステージ上でぶつかる雅と真樹。

黒紫の鬼の腕と、黄金の獣の腕が互いにぶつかっていく。


どごおおおおおおおんっ!!


ステージのど真ん中で生まれたその衝撃は、まるで爆発でも起こしたかのよう。

神氣同士のぶつかり合いによる強烈な衝撃は、爆風となって飛び交い会場中に飛び交っていく。


「「「おわあああっ!?」」」


戦いを間近で見ていた周囲の観客も吹っ飛んでいく。

男達が周囲からいなくなったステージの上では、真樹と雅が互いの拳をぶつけ合ったままの姿勢で止まっていた。


「ふはははっ、やるなっ!

そうこなくてはなぁっ!!」


拳をぶつけ合ったままの雅と真樹は、互いに身体から神氣の光を溢れさせ続けている。

互いに身体から力を振り絞り、ぶつかり合っているのがよく分かる光景だった。


だが、少しだけ真樹の身体から溢れる光が小さくなった。

いや、雅の方が大きくなったのかもしれない。


「くっ…!」


真樹の表情が少し歪む。

今この瞬間でも、雅は腕に神氣を込め続けている。

少しでも気を抜いたら、このままぶち抜かれかねない。


「素晴らしい!!

まるで子猫のような愛らしさなのに、戦士としての魂には獅子が宿る!!

ここまでオレに立ち向かってこれた者は、そうはいないぞ!!」


拳を向ける雅が、ニタァと笑う。


「実に、実に食い出があるではないか!!」

「っ!?」


どこか恍惚とした表情で笑いかけてくる雅。

その意志を感じて、ぞくりと身体を震わせてしまう。

ただ強い者を打ち倒したいというだけではない、なんとも言えない身の危険を感じたのだ。


その一瞬を見逃すほど、元マスタークラスは甘くない。


「ふっはははぁっ!!」


雅はさらに一歩踏み出し、強烈な蹴りを放つ。

鬼の王羅で包まれた脚は、見た目以上の質量を持って真樹に襲い掛かる。


「うわっと!」


受け止められないと判断した真樹は、すぐさま避ける。

拳のぶつかり合いを止めて、大きく後ろへと跳躍する。


だが、雅の蹴りは空振るも、思った以上の風圧が放たれていた!

着地しようとした真樹は、その風圧によってよろけてしまう。


「っははぁっ!!」

「くっ!」


鬼が、向かってくる!


このままではまずいと判断した真樹は、よろけた体勢にあえて身を任せ、ころりと床を転がる。

そのまま、ステージの外へと落ちていった。

そう、観客席へと降りていったのだ。


このキョウト・コロシアムにリングアウトルールは無い。

一度リングから降りたところで、負けることは無い。

そのことは事前に確認していた。

いったん仕切り直しを……


「ぅ甘いわぁっ!!」


雅は再び跳び上がり、そして急降下してくる。

観客席に降りた、真樹へ向かって。


どごごおおおんっ!!


「「「どわあああっ!!?」」」


周りの男達が、神氣の衝撃で吹っ飛んでいく。

だが、そんな観客席の間を、真樹は駆け抜けていく。


「いいぞぉ、今度は鬼ごっこか!?

ならば、避けてみるが良い!!」

「いっ!?」


後ろを見た真樹の目には、脚の光を輝かせる雅。


乱虐ランギャク!!」


雅は神氣の光で輝いた脚で、その場で思いっきり蹴り上げた!

すると、黒紫の光が竜巻となっていくではないか!


「吹き飛べぇ!!」


もう一度、蹴り!!

すると、ライブ会場内に突如現れた竜巻が、移動し始めたでは無いか!


「「「おわあああっ!!?」」」


観客の男達が、竜巻に吸い込まれ、巻き上げられ、そしてぶっ飛ばされていく。

観客も機材も巻き込みながら、暴虐の竜巻が真樹へと向かっていく。


「くっ、黄松葉破!!」


逃げきれないと判断した真樹は、堂々と構える。

軽く深呼吸をした後、腕に力を溜めて振るう。

神氣を込めた気弾を撃ち込んだ。


どぱあああっんっ!!


乱虐の中へと撃ち込まれた氣弾は、竜巻の中心へと吸い込まれていくと、大きな光となって破裂していった。

派手な爆発を伴って、紫紺の竜巻は消えていく。

その衝撃で会場内に風が吹き荒れる中、悠々と雅は歩いていた。


「っははぁ、なんだ!

まだまだやれるではないか!

これを打ち消せるほどには、まだ力があるのだろう!?」


鬼がまた、飛んでくる。


百鬼夜光(ヒャッキヤコウ)!」


ステージに飛び込んで来た時と同じ技だ。

鬼の神氣を纏った脚で飛び蹴りをかましてくる。


真樹はすぐにその場を離れる!

そこへ、鬼の脚が降ってくる!


とごおおんっ!!


「「「うわああああっ!!?」」」


またしても、爆発が起こる。

観客席に巨大な穴が開き、爆風で観客の男たちが吹き飛ばされていく。


「はははっ、逃げるだけでは勝てんぞ!!」


雅は実に楽しそうに叫び、再び飛び上がる。

観客席を走り抜けていく真樹へ向かって、飛び込んでいく。

真樹は真樹で、獣の神氣を保ったまま走り抜けていく。

雅の気配を感じ取りながら、瞬間的に加速して雅の飛び蹴りを避けていく。


どごおおおんっ!

どごおおおおんっ!!


結果として残るのは、雅がぶち壊していく会場。

そして、その攻撃に巻き込まれていく観客達。


ライブ会場のあちこちに大穴が開き、巻き込まれた男達が吹っ飛び倒れていく。

2人が動き続けるたびに、死屍累々の会場が出来上がっていくのだった。


真樹はステージへと飛び乗った。

観客席では結局避けづらいのだと思ったからだ。



…そこで、自分の判断の結果に気付いた。


観客席に逃げ込めば雅は手を緩めるかと思ったのだが、甘かった。

あの鬼は本当に容赦なく、今は自分と戦うことだけに集中している。

周りさえも全てぶち壊すことを厭わず、ただ自分を倒すために全力で襲っている。


「くくく、どうした?」


ステージ上に上がってきた雅は、動きの止まった真樹を見てニヤリと笑う。


「本当に、周りにも容赦ないんですね?」


雅の問いに、真樹は素直な反応を示した。

周りを巻き込んだことに、流石に罪悪感を感じてしまっていたのだ。


「くくく……くっはっはっは……

はああーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!

周りの心配か!?

この期に及んで、己の身体を性的に狙っている、下衆な男どもの心配か!?

あぁ面白い!!!」


今まで以上に高笑いする雅。


「いいな!!

平和ボケの世界にも、これほどの逸材がいるとは!!」


高笑いを続ける雅。




だが、突然にその笑いを止めた。




「笑止!!

ここは戦場!!

覚悟なき者は倒れるのみ!!」



凄まじい気迫が放たれる。


「今重要なのは、己が倒れるか、相手が倒れるか!!

ただそれだけを考えればよいのだ!」


オッドアイの目がギラリと光り、真樹を真っ直ぐ見据えている。

鬼の女警部が拳を握り、再び構える。


「さぁ!!

その闘志を、意志を、覚悟を!

オレにぶつけてこい!!」


雅の身体から、更に黒紫の光が溢れていく。

雅を纏う鬼のカタチが、更に大きくなっていく。



改めて見せつけられる、進化した人の力といえるかもしれない強さ。



これが、神氣。

全ての意識を、戦いのために変える力。



凄まじい。

強い。




(だけど……)




真樹はすっと目を細め、雅を見据える。

その表情は、段々と無になっていく。


全力の神氣を引き出さなければ、この人には勝てないかもしれない。

彼女のように、全てを戦いのために集中しないと、勝てないかもしれない。


雅が身に纏っている鬼の神氣は、彼女が思い描く力のカタチ。

あれも確かに、力の在り方なのだろう。



だが……




(……私が、私が目指しているのは!)


真樹の身体から、光が溢れていく。

だがそれは、獣の形から変化していく。



この力は、ただ敵を倒すための力にあらず。



真樹の中で、1つのカタチが定まりつつあった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

大変お待たせいたしました。

真樹VS雅戦の続きです!


ようやく執筆するだけの時間と元気を取れましたよ。

まだまだ不定期だとは思いますが、色んなものが少し落ち着いてきたので、ちょっとずつ書いていきたいと思います。


…と言いつつ、今年の投稿はこれが最後ですけどね。

来年もどうか気楽に読んでいただけると幸いです。

良いお年を。

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