09.妖精とイケゴリ
教会で儀式を行う為準備をする為部屋に戻った私はとりあえずベッドにダイブした。
バフンッと綺麗に整えられたシーツが波打ち体が沈み首元で揺れるネックレスが光を浴びてキラリと光る。
自分の手をみればまだ小さい子供の物で自分に出来る事など限られている。
それでもやれる事をやるしかない。
ノックの音と共にジルが入ってくる。
「失礼致します。お嬢様!はしたのうございますよ!…何かおありになったのですか?」
ジルには私のこの様子だけで何かあったのだとバレてしまったようだ。
「…なんでもないのよ。ただ世界の理不尽さを嘆いていたの」
「なにを老人のような事を…何処から覚えてくるのですかそんな言葉!そんな事より早くお着替えをしなくてはすぐに出発の時間になってしまいますよ!」
呆れた顔のジルを見ていると力が抜けてきた。
私に今できる事は少なすぎる。
もっと力をつけなくちゃね。
「はぁい。」
ジルの他にもメイドがやってきてドレスに着替えさせ髪をセットしてくれる。
ドレスはこの日の為にオーダーしたふんわりとしたシルエット。ピンクとラベンダーカラーのまざった紫陽花のような可愛いドレスだ。
髪の毛は編み込みのハーフアップで、ドレスと同じ素材で作った花のコサージュを付けている。
「まぁお嬢様!!大変お似合いでございますわ!まるで妖精のようだわ〜」
メイドのルーナが鏡に映る私をみて目を輝かせている。もちろん隣でジルも頬を染めてクネクネとしている。
自分で言うのもなんだけど鏡にうつる私は本当に妖精のようだ。
これで耳が尖っていたら前世で見たエルフという種族に見えるだろう。
この毛穴のないほっぺたなんかはずっと触っていたくなるぷにぷにさである。
子供なので化粧という化粧はしておらずうっすらと塗られた色付きのグロスがぷるんとした唇を演出しているのみ。
それでもそれだけで充分すぎるほどの完成度だ。
「それではお嬢様、参りましょう。旦那様がロビーでお待ちですよ」
ウホウホしてるお父様が眼に浮かぶ。
早く行かなきゃドラミングでも始めてしまうかもしれない。(いや、しないけど)
ロビーに降りる階段をゆっくりと降りていくとギルバートと話していたお父様がゆっくりとこちらに振り向く。
「ル、ルルノア!なんて美しいんだ!まるで妖精のようじゃないか!」
お父様が両手を広げるので私も駆け寄って抱きつくとそのまま私を抱き上げてくるくると回り始める。
アハハハ、アハハハと微笑ましい家族の風景であるが私にはゴリラが円盤投げをする直前のようで少し恐怖を感じ始めていた。
そんな事は気づかない周りは微笑ましげに私達を見ている。
「お、お父様〜そろそろ行かないと間に合わなくなってしまいますわよ!」
目をグルグルと回した私が言うとやっと落ち着いたようだ。
「そうだね。可愛いルルを見ていたら時間なんて忘れてしまうよ」
ハハッと爽やかに笑って手を差し出して私をエスコートする。
お父様の事も見慣れたものでこんなスマートな姿に少しイケゴリの良さをわかり始めてしまっていた。
女の子がよく言うお父さんと結婚する〜っていう一過性の気の迷いだと信じたい。
この後わたしは本当に気の迷いであった事を身をもって実感する事となるのであった。




