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19.厨二病は誰にでも訪れる

 



 誕生日パーティーから数ヶ月がたち魔法の勉強も始まり魔法の講師がついた。

 うちが支援してる教会の神官様が週に一回実技を見てくれる。光の魔力は稀なので普通の講師では実技の教えられる事が少ないのだ。

 しかし神官様も忙しいので実技以外の基礎的な事は別の講師に来てもらう事になった。お父様が張り切りすぎて国有数の魔導師を選んでおいたぞ〜と言っていたがたかが5歳の少女1人に大げさすぎる。

 それだけの魔導師ならば神官様と同じくらい忙しいはずなのに週に3回も来てくれるらしい。

 どんな手を使ったんだお父様…


 そして5歳の祝いに魔道具を貰った。

 光の魔力の為の特注品で魔力の扱いに不慣れな内はこれを媒介として具現化するらしい。

 見た目は某丸眼鏡の少年達の冒険で使うような手に収まるサイズな杖だ。

 私のは木ではなく聖獣のツノから削り出されており水晶のような素材でキラキラと輝いている。光の魔力と相性がいいらしい。

 持ち手には綺麗な銀の装飾が施されていてこれだけで1つの作品の様に美しい。

 まだ神官様には魔力の込め方しか教わっていないのでまだこの杖の本領は発揮されていない。

 でも魔力を込めると暖かい光がともってすごく綺麗なのだ。

 いったい幾らするんだろうこれ…

 恐ろしくて誰にも聞けないでいる。


「ルル、いるかい?」


 部屋の外からお父様の声が聞こえる。


「お父様!」


 急いでドアに向かおうとするとすでにジルがドアを開ける所だった。

 ガチャリと音がしてお父様が入ってくる。


「新しく講師になった人が来たから紹介しておこうと思ってね!授業は明日からだが私の知り合いだから少し話をと思って今日は来てもらったんだ」


 お父様の知り合いだったのか。

 それで融通して来てくれる事になったのかな…?

 どんな人なんだろう。

 お父様の知り合いだからかなりのゴリマッチョである事は想像がつく。

 後は人柄だな…

 どうしよう、こんなガキに勉強なんて教えられるかー!って思われたら私の素敵な魔法ライフが終わりを迎えてしまう。

 余計な事言わないように大人しくしておかなきゃ…。


「お父様のお知り合いだったのですね!どんな方かしら…?」


「ちょっと変わっているが魔法の腕はこの国で3本の指に入る傑物だよ。ルルなら大丈夫だろうと思って頼んだんだ」


 何が大丈夫なの?

 ちょっと変わってるってお父様のちょっとは信用ならない。

 どうしよう相当変な人だったら。お父様が連れてくるんだから危険人物ではないんだろうけど…。


「は、はい…。すごい方なのは分かりました。そんなにすごい方なのに私なんかの講師をして頂いて大丈夫なのですか?お忙しいのでは?」


「あ〜うん。ちょっと事情があって彼は有事の際にしか仕事をしない。普段は研究職についていて部屋にこもりっ放しだからたまには外に出た方がいいさ」


 研究職か…。

 たしかに研究職の人って変わってる人が多いイメージあるもんね。

 いや、悪口じゃなくてなんかこう…ね。

 メガネかけてて頭が良さそうで研究以外に興味がない!って感じでこんな子供の相手なんて嫌なんじゃないかなって。


「了承して頂いてるなら良いのですけれど…お待たせしては悪いですからそろそろ行きましょうお父様!」


 お待たせして機嫌を損ねて教えてくれなくなったら困る!

 これはお母様の病気を治す為にも大事な勉強だ。そんな凄い人に教えてもらえるなら願ったり叶ったりである。


「そうだね、おちおちしてると帰ってしまうかも知れないから」


 や、やっぱり!気難しい人なんだ。

 急がなきゃ!!!


「そ、それはいけません!早く行きましょうお父様!」


 お父様を急かして部屋を出る。客間に向かってレディギリギリの形相で競歩の如く急いで歩く。まぁそれでもお父様の普通の歩く速度と同じくらいなんだけど。

 ドアの前についてゼエゼエと肩で息を切らして汗を拭った。

 ギルバートがノックをして訪問を告げると中のメイドがドアを開けてくれる。


 中に入ると想像とはまったくもって別の人物が立っていた。

 ローブに隠れているが体型はすらっとしている。その時点でイケゴリ要素が見当たらない。

 そして何より異様なのが顔につけてるお面だ。目と鼻の所に穴が空いているだけで異様な雰囲気を醸し出している。

 コダマか!!今にもカタカタ首を揺らしそうだ。

 こ、こわい。

 髪の毛は真っ白で歳をとっているのか若いのかもわからない。

 体型からして老人ではないだろうが…


「遅くなってしまってすまないね、この子が私の娘のルルノアだ」


「お初にお目にかかります、ルルノア・リンドバーグと申します」


 動揺を悟られないようにカーテシーをしてお面の穴を見つめる。


「俺はルドルフ・アーレンだ」


 いや、え、それだけ?

 自己紹介ないの?それともこんなガキと話すのも嫌なの?そうなの?

 内心だけでオロオロしているとお父様がね?大丈夫でしょ?とルドルフ先生に話している。

 いや、全然大丈夫じゃないです。

 めっちゃ怖いんですけど?この人なんでこんなお面してるんだろう。

 酷い怪我でもして隠しているのだろうか…?

 いや、邪推はいけないな。

 本当にただの趣味かもしれないし。ファッション的な。

 それか厨二病拗らせてここまで来てしまったのかもしれない。これは触れると右目が疼いて物理的に爆発するかもしれない。言われるまではあえて触れる事はしないでおこう。


「仮面が気になる?」


 やめてお父様!!!

 彼の右目が疼いて爆発したらどうするの!闇の化身とか呼び出すかもよ!マジのやつ!

 失礼な事を考えながらもこの動揺は見せてはいけない。なぜなら何が導火線になるかわからないからだ。


「いいえお父様。ルドルフ先生には必要な物なのでしょう?」


 そう、きっと仮面をしていないと先生は爆発してしまうんだ。そうに違いない。


 完全に私の中でルドルフ先生が厨二病患者で定着してしまっている。

 先生は少したじろぐとはぁ、とため息をついた。

 え、何か駄目だった?

 知った様な口聞いて右手も疼きだした!?


「気にならないのなら構わない。俺はこれを外す気はないからな。ロベール、本当に俺で構わないんだな?」


 衝撃で気にしていなかったが声を聞くと老人ではなさそうだ。むしろバリトンの聞いたいい声で前世でなら相当いい声優になれただろう。

 い、イケボ!こうなると仮面の中が一層気になるがいつか先生の目が醒めるまで見る事は叶わないだろう。

 彼の黒歴史になるであろう仮面を見て心が痛んだ。というか私の前世の黒歴史が思い出されて壁に頭を打ち付けたくなった。

 私の少ない闇の歴史だけでこんな気持ちになるのだから先生はどれほどの衝撃をおうのかと思うと同情すら覚える。

 優しくしてあげよう…。


「あぁ、君程の腕のある魔導師は中々見つからないからね!あ、ルルが可愛いからって何かした…らわかってるだろうな…?」


 ま、まさか先生の病を晒しものに!?

 お父様…!恐ろしい子…!!


「はぁ…俺を何だと思ってるんだお前は。とにかく明日から始めるからよろしく」


 私の方を向いて軽く頷く。

 それに私も会釈をした。

 その後は大人の話があるからと追い出されてしまったので部屋に戻る事にした。


 はぁ…明日から大丈夫かな本当に…。







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