16.友達100人できるかな
全話で獣人の青年が暴走していますが、完全にルルノアはただただイケメンに邪な事を考えていただけですね!
「皆様!お騒がせ致しましたな。この後もご歓談をお楽しみ下さい」
にこっ!(ウホッ)とお父様が笑顔で乗り切ると来客達、特にご婦人達はその笑顔にポーっとしてそれぞれ会話に戻っていった。
それを見てやっぱりお父様はこの世界でかなり見目麗しい存在なのだと再認識する。
でもやっぱりさっきの犬耳お兄さん…かっこよかったわ!!!!
私は間違ってない。私の中のイケメンはやっぱりああゆうジャニー◯顔なのだ。
「怖がらせてしまったねルル。そろそろ疲れただろう。何か食べてくるといいよ!」
「そうねルルノア。あちらで子供達用に用意したお菓子があるから食べていらっしゃい」
パチリとお母様がウインクをする。
その可愛らしさにお父様がデレデレし始めたので逃げるように子供達の元へ歩いていく。
先程の事については後で確認するとしよう。
パトリシアったらー!ロベールったらー!と甘々の声が後ろから聞こえたが無視してお菓子の置いてあるテーブルまでやってくると美味しそうなお菓子が沢山並べてあり、一口サイズのタルトや色とりどりのマカロンが目を楽しませてくれる。
そばに立っている下僕にマカロンとクッキーを取ってもらい紅茶を用意してもらう。
本当は自分で沢山取りたいけれどはしたない事らしいので仕方がない。
壁際に用意されたふかふかのソファに腰掛けて子供達を眺め、淹れてもらった紅茶を一口飲んで息をついた。
はぁー今日は色々とありすぎた。
少し疲れたので話しかけたそうにしている子供達の事はもう少し気づかないフリをさせて貰おう。
みんな小さくても貴族だなー、走り回るでもなく大人しくしている。
しばらくそうしているとバリバリのイケゴリに話しかけられた。
「やぁレディお疲れの様子だね」
にこっ(ウホッ)と爽やかな笑顔で話しかけられる。
顔を見るが見覚えはない。
こんなイケゴリみたら忘れるはずがない。クルクルとした柔らかそうな栗毛にガッシリとした体格。
お父様と同類だ。
「私の事は…覚えているわけがないよね。君が赤ちゃんの時に会ったっきりだものね!私はエステル・ビルマート。君のお父さんとは学生からの付き合いなんだよ」
「そうだったのですね!今日は来て頂いてありがとう存じます」
急いで立ち上がってカーテシーをする。
「うんうん、パトリシアに似て本当に可愛らしいなあ!私の事はエステルおじ様とでも呼んでおくれ」
お母様似っていうのがポイントだ。
ありがとうイケゴリおじ様。
間違ったエステルおじ様。
「はい!イケ、エステルおじ様!あの…後ろにいらっしゃるのは…?」
そう先程からおじ様の後ろに隠れるように男の子が立っているのが見えていた。
「そうそう!この子は私の息子のディルベッドだ。さぁディルベッドご挨拶を」
恥ずかしそうに現れたのは小さいイケゴリだった…!
お、おおう…似ている…
完全にエステルジュニアだ…!!
クルクルとした柔らかそうな栗毛までそっくりだ。
「は、初めまして!僕はディルベッド・ビルマートです!!!」
緊張したようにディルベッドくんが腰を折る。
子供なのでそんな姿は可愛らしくて笑みがこぼれる。
「ふふっ、私はルルノア・リンドバーグと申しますわ!宜しくお願い致します」
小さくカーテシーをして挨拶を返すとディルベッドくんは頬を赤らめてニカッと笑った。
うん、子供は可愛いね。
とっても素直そうな子だ!
「さて挨拶も終わった事だし私は少しロベールと話をしてくるよ。ディルベッドはここでレディのお相手をしておくれ」
キランッとはを輝かせてエステルおじ様は去っていった。
ディルベッドくんを見るともじもじと恥ずかしそうにしている。
「ディルベッド様はおいくつでいらっしゃるのですか??」
「ディルベッド様なんて!僕の名前は長いしディーって呼んで下さい!僕は先月5歳になりました!」
いきなり愛称呼びを求めて来るところも 可愛らしい。
しかも私と同い年だ。
「えぇ、では私の事もルルノアと呼んでちょうだい!同じ年なのだからもっと気軽にお話ししましょう!」
「う、うん!ルルノアってお姫様みたいに綺麗だから緊張しちゃって…」
へへっと照れたように笑うので私まで恥ずかしくなる。
「そんな事ないわ!このドレスのおかげよ。今日の為にお母様が選んでくださったの」
「そんな!ルルノアはきっと何を着ていたって可愛いよ!」
おじ様に似てとても紳士だ。
この子が将来は見た目もおじ様に似てガッチガチのイケゴリになると思うと微妙な気持ちになる…
いや、希望は捨てないでおこう。
こんなに可愛いのだから。
「ありがとう、ディーはどんな魔力を賜ったの?」
「僕は風の魔力だよ。ルルノアは光だよね!すごいなぁ〜」
風、か。
お父様も確か風だったな。
でも爽やかなディーに似合っている。
「風の魔力だって素敵だわ!私のお父様も風の魔力持ちなの。空を飛んだりだって出来るんだから!」
「そうなんだ!!じゃあルルノアは空を飛んだ事あるの?」
「ううん、お父様が危ないからダメだ!って言うのよ!すっごく楽しそうなのに…」
「じゃあ…僕がいっぱい練習するからいつか一緒に空を散歩しよう!」
キラキラと目を輝かせている。
「まぁ!それは楽しみだわ!私もそれまでに癒術のお勉強を沢山するわ!そうしたら落ちて怪我をしたってへっちゃらだもの!」
2人でニヘラッと笑いあって確かに友情が芽生えた事を感じた。
これは!!初めての友人と言えるのでは!?
可愛いし私の癒しの1つとなるだろう。
「あーーーー!ディーったらこんな所に居たのね!探したんだから!」
声のした方に振り向くと気の強そうな可愛らしい女の子がいた。
つり目がちの瞳はワインレッドでドリルの如く巻かれたブロンドが特徴だ。
ドレスは燃えるような赤色で派手だが彼女にはよく似合っていた。
「グレース!ごめんね、お父様と挨拶に回っていたんだ」
「もう!一緒にマカロンを食べようって言ってたのに少し目を離したら居なくなってるんだもの!」
ごめんごめんと仲良さげにディーが謝る。
「あら?まぁ!ルルノア様いらっしゃったのね私ったらぜーんぜん!気づきませんでしたわ!」
ツンッと可愛らしい鼻を私に向けて言い放つ。
完全にチラチラとこちらを見ていたのは知っていたが…
恐らく仲のいいディーを盗られて頭にきているのだろう。
美少女だ…。
しかも黄金ドリル…。
めちゃくちゃ可愛い…!
私はどちらかというとヒロインタイプよりこういう気の強そうな美少女が好きだ。
仲良くなれないかなー…
「ごめんなさいね、エステルおじ様が気遣ってくださったの。貴女もお茶をご一緒なさりませんか?」
「ふんっ!よろしくてよ!わたくしはグレース・エルグランド。エルグランド公爵家の薔薇とは私の事よ!おほほほほ」
言葉とは裏腹にカーテシーをする姿は彼女の言う通り薔薇のように美しい。
「ふふ、宜しくお願い致しますわ。ご存知の通り私はルルノア・リンドバーグと申します。」
私もカーテシーで返すと彼女はギリッとこちらを睨みつけてディーの隣に腰かけた。
何とか話はしてくれるらしい。
すぐ様メイドがやってきて彼女の分の紅茶を用意する。
美しい所作でソーサーを持ちカップに口をつけ、口を開いた。
「ルルノア様は婚約者はいらっしゃいますの?」
「いえ、私はまだ」
「おほほ!まだまだお子様ね!私はディーが婚約者ですの!」
勝ち誇ったようにグレースちゃんは机にカップを戻した。
「グレース!それは母上とグレースの母上が勝手に盛り上がってるだけで…」
「ディーったら酷いわ!私と結婚して下さると約束したのに!!」
「そんな約束してないよ〜」
したわよ…
とグレースちゃんが俯いてしまう。
あわあわしているとエステルおじ様がやってきてディーを連れて行ってしまった。
ディーは何か言いたげだったがあれよあれよと居なくなってしまう。
「あの…グレース様、マカロンは如何ですか?とっても美味しいですわよ」
沈黙がいたすぎて話しかけるが地雷を踏み抜いてしまった様だ。
「それは!!ディーと一緒に食べるって…約束したのよ!!!」
グレースの瞳にジワリと涙がにじむ。
や、やばい!こんな美少女を泣かせてしまうなんて!!
「ご、ごめんなさい。グレース様はディーの事が大好きなのね…」
「な!違うわよ!!婚約者の私を差し置いて他の女と話しているからムカついているだけ!!!」
そらを好きって言うのでは…
あ、アオハルかよ…
眩しすぎる。イケメンで鼻血だしてる私とは大違いである。
「グレース様の様に可愛らしい婚約者がいらっしゃるんですもの他の方に目移りなんてなさらないわ。私は本当におじ様が気を使って下さったからお話していただけなのよ」
泣かないで…とハンカチを差し出すとボソッとグレースが小さな声で話しだした。
「…ディーったら前に私と結婚するって約束したのに覚えてない、っていうのよ。私以外の女の子ともすぐに仲良くなって私の事なんてすぐに置いて行っちゃう…本当にバカみたい…」
なるほど。
それはディーが悪いな。
「まぁ、それは酷いわ!ディーってば意外とプレイボーイなのね…」
「ち、違うわ!誰にでも優しいだけ!でも…」
うんうん、わかるよ。
「好きな人には自分だけに優しくして欲しいわよね、わかりますわ」
ギュッとグレースちゃんの手を握る。
「…貴女って変わってるわね。」
「そうかしら?」
「そうよ…でも、気に入ったわ…私の事、グレースと呼んでもいいわよ」
私の渡したハンカチで涙を拭うと照れた様に顔を背けた。
「ふふ、ありがとう。私の事もルルノアと呼んでね。私グレースの事応援してるわ!」
「る、ルルノアの応援がなくたって私はディーと結婚するわ!!」
元気を取り戻した様で今度は勝気に笑って見せた。
うん、やっぱり美少女は笑顔の方がいい。
「そうね。グレースなら誰にも負けやしないわよ!」
そしてもう1人私に女の子のお友達ができた。
こうして私はやっと同年代の友達をゲットしたのであった。




