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13.お母様は女神確定

 


 メイド達がふぅーと額の汗を拭ってやりきった顔をしている。の横で白目を剥く私。


「お嬢様、終わりましたよ!!かんっぺきに!この世にお嬢様より美しいご令嬢はいらっしゃいませんよ!」


 ジルが美しい笑顔をこちらに向けて褒めてくれと言わんばかりである。

 他のメイドたちも歴戦の冒険者の様な顔でこちらを見ていた。


 私はやっと終わったのか…と鏡に目を向ける。


 プラチナブランドの髪はシルクの様な光沢で天使の輪が輝き、飾られた白いバラが美しい髪を彩っていてる。

 5歳のパーティでは白いドレスを着るのが慣例とされている。何枚もチュールを重ねたドレスにはキラキラと宝石が散りばめられ、デコルテの出たデザインなのだがその周りを繊細な金糸の刺繍が飾り立てている。

 そして何より着ている本人が妖精のように愛らしかった。

 空色の瞳は驚きに目を見開いているが誰がみたってルルノアは完璧に美少女である。


「み、みんなありがとう!自分で言うのも何だけどとーっても素敵よ!」


 鏡の前でクルクルとドレスを翻すたびに緩く巻かれたプラチナブロンドがさらさらと音をたてるようである。

 先程までの疲れも忘れ嬉しくて微笑んだ。

 その様子をメイド達は尊いものを見るように仰ぎ見てほぅ…と息をついた。


「いえ、本当に美しゅうございますお嬢様!ウェルシア様のご加護も御座いますし、お嬢様は聖女でいらっしゃるのでは?!お嬢様の像を建ててみなで崇め奉りましょう!!」


 そうだそうだと周りのメイドまでもが賛同し始める。

 やめてよ!私の像なんて出来たらお父様がウホウホその周りを踊り続けるわよ!

 いや、彼女達にとってはそれすらも美しく見えるんだろうけど…


「や、やめてよ…!絶対!!そんな事より早くこの姿をお父様やお母様にお見せしたいわ!」


 残念そうな顔をしたジル達がそれではこちらへ、と声を上げ私をティールームへ案内してくれる。

 お父様とお母様はここにいるようだ。


 部屋に入るとお父様とお母様がパァっと顔を輝かせてこちらを見る。


「まぁ!とっても似合っているわルルノア!」


「ルル…言葉がでないよ!君が…君が5歳になっただなんてーー!」


 ウワアアと泣き出したお父様。

 や、お父様、朝からお会いしていたではありませんか!!

 そんなお父様も今日はビシッと貴族らしくベルベットの襟のテールコートを着ている。

 この世界の紳士服はイギリス風らしい。

 体ががっしりとしているせいで中のサテンのベストのボタンが今にも弾け飛びそうだ。

 対してお母様はモスグリーンのイヴニングドレス。上品に開かれたデコルテを繊細なレースの襟が飾り立ててお母様を更に美しくみせている。

 亜麻色の髪はつやつやと波打っている。うっすらと施された化粧で普段より華やかな印象を受け子供がいる様には見えない。

 お母様こそ女神なのでは?


「お、お父様泣かないで下さいませ!」


「あらあらロベールったら!ずっとこの調子なのよ」


 お母様がはぁー、と呆れたようにため息をつく。


「だってパトリシア!あんなに小さかったルルがこんなに素敵なレディに…」


 と言ってまたオイオイと泣き始める。

 ちょっと恥ずかしくなってきた…

 ここまで成長を喜んでくれると育ちがいがあるってものだ。


「もうロベール!今日はルルノアのお披露目でもあるんだからしっかりしてちょうだい」


「ぐすっ…そうだね…皆んなにも美しいルルノアの姿を見てもらおう」


 鼻をすするお父様の顔がとんでもないことになっているが大丈夫だろうか。


 少し引いた顔でお父様を見ているとドアがノックする音が聞こえる。


「旦那様、奥様、ご歓談中申し訳ございませんがそろそろお時間でございます」


 ドアの向こうにはギルバートが立っているようだ。


「さ、ロベールも顔を拭いてちょうだい!ルルノアも準備はいいわね!」


 ジルの出したみずで顔をあらったお父様はキリッとしたイケゴリの顔に戻りお母様に手を差し出す。

 スマートなエスコートは紳士然としていて素敵なのだが…


 うん。何も言うまい。


 さて、初めての社交場だ。

 気合いをいれていかなくては!!





中世ヨーロッパ風、風なので細かいディティールの違いはお気になさらず…へへ

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