12.もしかしてもしかするかも
屋敷に帰ってすぐお母様の所へ走った。
普段は淑女しからぬ事はしないので、ジルやギルバートも反応が遅れて私に着いてくる事が出来なかったようだ。
ノックもせずにお母様の部屋のドアを開ける。
息を切らした私をみて驚いた顔をしたお母様だったが次の私の言葉でまぁ!と声を上げて花が咲くような微笑みを浮かべる。
「お母様!!私、私!光の魔力を授かりました!!!」
「あぁ、ルルノア!素晴らしいわ!ウェルシア様にご加護を頂けるなんて!」
自分の事の様に嬉しそうにしているお母様をみて私ももっと嬉しくなってくる。
でも今朝よりもお母様は顔色が良くない。
ウェルシア様にご加護は頂いたけれどきっとすぐにお母様を治せるわけではないだろう。
それでも少しでも良くなりますようにと願いを込めてお母様の手をギュッと握りしめる。
まだ魔法の使い方など知らないので完全に精神論だけれど、お母様が良くなりますように!と心の中でめいいっぱい叫ぶ。
少しだけお腹の辺りが温かい気がする。
握っていた手の力を緩めてお母様を見上げると何だか驚いた顔をしている。
「お母様どうなさったのですか…?」
「ルルノア、今貴方…」
何か思案気な顔をしているが先程よりも顔色は良くなったように感じる。
「いえ、何でもないのよ…でも何だかルルノアが手を握ってくれたから元気が出てきたみたい!さ、この後のパーティーも楽しみましょうね!」
本当に効果があったのかは分からない。
でもお母様の気分が少しでも良くなるのなら毎日続けようと思う。
「はい、お母様!」
「貴方がウェルシア様にご加護を頂いたなんて言ったらきっと皆んな羨ましがるわよ〜!ふふっ」
先程まで青白かった頬に少し赤みが差している。この調子ならパーティーもきっと出られるだろう。
これが本当に私の力なのかは全くもって分からないけれどお母様が楽しそうなのが一番である。
「そうだと良いのですけれど…」
「大丈夫よ。初めての社交場で緊張するかもしれないけれど貴方と同じ年頃の子供達も来るしきっと楽しいわ!素晴らしい力を頂いたのだから堂々としてらっしゃい」
この後のパーティーには我が家に親交のある他家の人達も招待されているようなので、お母様に心配を掛けないようにビルマー夫人に教わったことを遺憾なく発揮しなくては!
「はい!お友達も出来るように沢山お話ししたいです!」
「その調子よ!さ、それなら今日はとびっきり可愛くして貰わなくっちゃね」
お願いね、とお母様が私の後ろに向かって話すのでえ?と振り向くといつの間に来たのかジルがドアの前に控えて微笑んでいる。
いつ来たのか全くもって気づかなかった…。
私がドアを開け放ったまんまなのが悪いんだけど。
「それではお嬢様、参りましょう。奥様、失礼致します。」
お母様がにこにこと私を送り出してくれる。
「それじゃあお母様、また後程お会いしましょうね!!」
私も元気よく大手を振って部屋から退室した。
お母様の体調も良いみたいだしきっと今日はいい日になるわね。
「ご機嫌がよろしいですね、お嬢様」
「そう見える?ふふっ!私今日はお友達が欲しいの!だからとびっきり可愛くしてちょうだいね!」
「勿論でございます!お任せください!大切なお嬢様の5歳のお誕生日ですもの私達全身全霊をかけてお手伝いさせて頂きますわ!」
私達?
と思っていると何処からともなくメイド達が現れてあれよあれよと言う間に私は浴室に吸い込まれていった。
そして5歳に対してやり過ぎなくらい磨きに磨かれた私は頭の先から爪先までピッカピカになって鏡の前に立たされている。
この時点でクタクタなのだがもうどうにでもなれと白目を向いている間にもやれドレスだのアクセサリーだのとメイド達が躍起になっているのを見て、さっきのとびっきり可愛くって言うのを今すぐ撤回したくなるのであった。




