11.女神の加護と私の運命
執務室の奥の部屋は全てが大理石のような素材で出来ており13畳ほどの空間しかない。
部屋の角全てに太い柱が立っていて、それに沿って上を見上げると丸い天窓があり光が降り注いでいる。
部屋の中央は少し高くなっておりそこに天窓からの光がちょうど当たっている。
よく見るとその台座の様な床には古代文字が刻まれているが私には読めない。
なんだか空気が澄んでいる様な気がする。神社の境内の様な感じ。
「では魔受の儀を始めさせて頂きます。リンドバーグ卿は執務室の方にてお待ちくだされ。ルルノア様はどうぞ中央の台座へお進み下さい。」
お父様は私を見て頷いた後部屋を出て行った。
言われた通りに光のあたる中央へ進む。
「それでは膝をつき目を閉じてウェルシア様に祈りを捧げるのです」
言われた通りに膝をつき先ほど聖堂で見た通りに手を胸の前で組む。
司祭様が呪文の様な言葉を発し始める。
すると目を閉じているのに感じるほどの光が辺りを包むのがわかる。
『ルルノア…貴方はなにを望みますか…?』
急に綺麗な声が頭に響いてきた。
な、なにこれ…?
私の願い…
お母様の、お母様の病気を治したい。
ウェルシア様私の声が聞こえているならお母様の病気を治してください。
『…私は直接世界に干渉は出来ません。貴方には私の光の魔力を授けます…貴方に加護を授ける代わりにお願いがあります』
私の光の魔力…?
それに願いって…
『…私の持つ癒しの力の一部です。この力があれば母の病気はきっと治すことができるでしょう…そして私の願いはこの世の不条理な運命にある者を1人でも多く救う事。善を行えば貴方の力は増して行くでしょう…頼みましたよ…』
お母様の病気が治せる力!!
本当に…本当にありがとうございます…!
不条理な運命にある者って何の事だろう…?お母様の命の恩人の願いならなんでも叶えたいけれど…
ウェルシア様…私に救えるでしょうか…?
『…貴方は不思議な魂を持っています…きっと、貴方の記憶は助けになるでしょう…さぁ、目を開けなさい!いつでも見守っています…!』
そしてゴリ…イケ…ン…救…
という謎の残響を残してウェルシア様のお声が遠のいていった。
いや、ゴリって言ってたよね。
完全にゴリに不満のある声だったよね!!
いや、女神様がそんな事を言うはずが無いよね。
目を開けると先ほどと変わらない光景が広がっている。
何だか白昼夢でも見たような気分だ。
でも…今のが本当なら、お母様の病気が治せる…!!
ウェルシア様の言う不条理な運命の者を救うというのが未だによくわからないが、きっといつかわかる日が来るだろう。
「…終わった様ですな。調子はどうですかなルルノア様」
体の調子は変わらない。
でも何だかお腹の辺りを温かい何かが巡っている気がする。
これが魔力なのだろうか…?
「体は何ともありません。光の魔力を授かりました…!」
「なんとも!それはめでたい!ウェルシア様は光を司る女神であらせられるので魔受の儀で光の魔力を宿した者はウェルシア様の加護付と呼ばれ尊ばれているのですよ」
「ち、ちなみに皆この儀式の際にウェルシア様からのお声掛けがあるのですよね…?」
「そうでございます。ウェルシア様より一言どのような魔力授かるかお声掛け下さるのです。ルルノア様もお聞きになったでしょう?」
あ、危ない…!
一言どころじゃなくてめちゃくちゃ話したよ私。
絶対この事言っちゃいけない奴だと判断した。
「え、えぇ。」
「さ、リンドバーグ卿に早くお伝えせねば!行きましょうルルノア様」
司祭様がドアを開けてくれたので部屋を出る。
お父様は今か今かと楽しみに待っていたようで私が戻ってくると駆け寄ってきた。
「ルル待っていたよ!どうだったんだい??」
「光の魔力を授かりました!!お父様!」
お母様を助けられるのよ、お父様。
きっとこの言葉は言ってはいけない。
でもこの喜びだけは共有させて欲しい。
お父様にギュッと抱きついて嬉し涙をかみ殺す。
「凄いじゃないかルル!パトリシアにも早く教えてあげよう!」
「いやはや久々に良い経験をさせて頂きました。ルルノア様にウェルシア様のご加護があります様に…おっともうあるのでしたなぁ!」
ホッホホッホと異世界ジョークでお父様と笑い合っている。
笑い事じゃないくらいの加護を多分頂いてしまったのだが何も言うまい。
このウェルシア教一色の世界でいらぬ波風を立てるのはよくない。
私は静かに、幸せに暮らすのだ!
ありがとうウェルシア様!!
このご恩は必ずお返ししますからね!




