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10.街と教会と私

 


 なれない馬車に揺られながら窓の外を眺める。

 ほとんど屋敷から出た事がない私にとってこんな道中ですら物珍しい。

 煉瓦造りの建物がならんでいる。

 街を歩く人々は多種多様な人種が入り混じっている。

 ゴリ率は低めで薄めのお顔の人や私にとってイケメンの部類に入る人もちらほらと見かける。


 そう、世の中にはゴリ以外も存在していたのだ!!

 それを確認できただけでも街に出た甲斐があると言うものだ。


 走り回る子供達をみてふと思う。

私って友達とかいなくないかしら…?

 メイドの子供と遊んだ事はあるがやはり立場が違いすぎて友達という感じではない。

 今夜のパーティーで出来るかな…お友達…。



「ルル、そろそろ着くよ。」


 私が邪な事を考えて外を見ていたとは思ってもいないお父様に言われて反対側を見れば丘の上の教会がもう目の前まで迫っていた。


「わぁ〜〜」


 思わず声が漏れる。

 この辺りの街の中でも一番大きな教会で美しい彫刻が壁を飾り立てており華美ではないが神聖な雰囲気を醸し出している。


「おいでルル。」


 教会の前に止まった馬車から先にお父様が降り手を差し出してくれる。

 その手を取って降りると目の前の教会は更に大きく見えた。


 お父様にエスコートされ教会に入る。


 中は聖堂となっていて奥の祭壇にはウェルシア様の像がステンドグラスの光を浴びて七色に輝いて見える。

 ただ前世のようにイスはなく皆膝をついて手を組んでウェルシア様の像に祈りを捧げている。

 私達は入り口の左側にあるドアに向かう。ドアを開けると司祭様であろうご老人が机を挟んで向こう側に座っていた。


「おぉ、お久しぶりでございますリンドバーグ卿!して、そちらのお嬢様が魔受の儀をお受けになられるのかな?」


 白いローブに豊かなヒゲの好々爺である。

 何だか司祭と言うより魔術師のような出で立ちである。


「あぁそうなんですよ。ほら、ルルノアご挨拶を」


 お父様が私の肩に手をのせる。


「お初にお目にかかります、ルルノア・リンドバーグと申します。本日は宜しくお願い致します」


 淑女然としたカーテシーに司祭様が目を丸くする。


「流石リンドバーグ家のお嬢様でいらっしゃいますな、聡明そうであらせられる」


 ホッホと口髭を揺らして笑う。

 ゆったりとした雰囲気を持つ人だな。


「では早速始めましょうか。ウェルシア様もきっとお待ちですよ」



 そうして3人で執務室の奥の扉に向かった。





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