12 学校生活が始まりました。前編
「マッチャー、おっきてー! 」
「マッチャ、初日から遅刻はまずいわ」
「もう6時半だよぉ、準備しなきゃだぁ」
………………んんん。
あれ? 外が明るい……………。さっきまで暗かったのに。
もしかして、いわゆる二度寝と言うやつか?
誰も起きてなかったから寝てしまったのか……!
「おはよー、さっきマッチャのクラスがわかったよー! 1ーHだって! 」
「私Eだよぉ、別々だねぇ……」
「私もEよ、残念ね……。」
「マッチャのクラスって誰がいたっけ? ちなみに私Gだけど」
「うーん、覚えてないなぁ」
「それよりも準備しましょう、誰も制服を着てないわよ」
「そうだねぇ」
抹茶のクラスは1ーHらしい。
……結局どこなんだろう?
「今日はマッチャの教室とか必要なところを改めて案内するね! そのためにちょっと早めに登校しよう」
「賛成だよぉ。」
「そうね、それがいいわ」
「ありがとう! 」
とってもありがたいが、今日は試験だった気が。
いいのか?
「そういえばみんな試験は大丈夫なの? 」
抹茶の問に、ルームメイトの反応は三者三様。
レイシアは顔面蒼白だし、シェリーは笑顔で頷いてるし、キャメリは微妙な顔をしている。
「試験なんていらないよ……ていうか、マッチャは大丈夫なの?」
「さっぱり」
「だよね。期待を裏切らない」
それから、制服に着替えて、バックに筆箱とかノートを入れて、学校の案内図に目を通して、いろいろしているうちに部屋のインターホンが鳴った。
なんだろう?
…………ん? なんかいい匂いが!
これってもしかして……!
「朝ごはんだよぉ」
やっぱり!!
「うちの学校はねぇ、朝ごはんは部屋に届けてくれてぇ、昼ごはんは買ったりして、夜ご飯はビュッフェスタイルなんだよぉ」
「そうなんだ! 今日の朝ごはんはなに? 」
「マッチャって結構食欲旺盛よね……」
本日の朝ごはん。
白米、ワカメ……とかいううねうねした海藻の味噌汁、サラダ、よく分からない食べ物、りんご。
抹茶は食べられないものが多いから他の人とは内容が違う。ちょっと悲しい。
「ではでは早速……」
「「「「いただきまーす! 」」」」
んんっ! 美味しい!
りんごとサラダ以外食べたことの無い味だけど、どれも違った味で美味しい。
…………他の人の朝ごはんも、美味しそうだな……。
抹茶は朝ごはんを食べながら、超属性習得を改めて誓った。
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「ここが1ーH! ここまでの道、覚えた? 」
「えーと、寮の七階から一階に下りて、中庭通って正面玄関から入って、うーんと……」
「右に曲がって階段で2階に行って、まっすぐ進んだ2番目! 」
「なんか、れいちゃんスパルタだねぇ」
「だってさ、覚えないとマッチャが迷っちゃうじゃん? 」
「まあそうね、この学校は広いから」
「でしょー? 」
ここまでの順序は、寮のどこかから一階におりて、どこかを通って左に曲がって下がって上がって……んん?
全然違う気がする。
気のせいか。
「講堂とかはさっき案内した通りよ。じゃあここで私達はそれぞれの教室に行くわね」
「試験頑張ってねぇ」
「うん、ありがとう! 」
目の前の教室が1ーHなことを確認して、中に入る。
………………………………。
…………知ってる人がいない。
と言っても抹茶が知ってる人はアーザース、レイシア、キャメリ、シェリー、ウルしかいない。
それに対してクラスは12クラスあるから、いなくて当然なんだがな……。
なんかたくさんの視線を感じる。怖い。
ひええ、抹茶の席はどこだ……?
「おはよう! もしかして噂のかわいい編入生? 」
「は? 」
あなたは誰ですか?
そして抹茶は噂のかわいい編入生なのか?
人間の感覚はイマイチわからないな。
「驚かせてごめんね、私はアリア! 編入生ちゃんは名前なんて言うの? 」
「抹茶です」
「マッチャちゃんか、よろしくねー! 」
「よろしくお願いします」
「席はね、私の隣だよ! こっちー」
「あ、はい」
抹茶の席は窓際の一番後ろ。
いかにも編入生というイメージの席だな。
「マッチャちゃんは何属性? 私は火属性なんだー、ありきたりだけど便利だよ」
「属性はないけど、抹茶は水属性を頑張ってます。まだ一つしか使えないけど……。」
「? てことはマッチャちゃん転生者?」
「はい。前世はうさぎでした」
「うさぎ? ……よくわからないけど、転生者って私はじめてみた! 確かかなり長い間人間の転生者っていなかったんでしょ? 」
「前そう言われたかも……。」
転生者がどうとか、抹茶がどうとか、色々話してもらっているうちに、先生(?)らしき人が教室に入ってきた。
「皆さんおはよう。朝礼を始めます。礼。」
『お願いします! 』
「今日は大事な知らせが二つあります。一つ目は、新たに編入生が加わりました。編入生のマッチャさん、その場で簡単な自己紹介をお願いします。」
「は、はいっ」
自己紹介って、何を話せばいいんだ!?
と、とりあえず、適当に……!
「え、えっと、編入生の抹茶です。よろしくお願いします。」
何とか乗りきった! 我ながら雑だ。
朝礼ってなんだか大変だな。
「二つ目は試験のことです。今から実施教科を発表します。一限目数学、二限目天文学、三限目歴史、四限目物理、五限目経済、六限目地学、七限目魔法です。各教科試験時間は50分です。私からは以上。連絡のある方はいますか?」
クラスメイトがざわつく。
試験の実施教科は12教科中6教科をランダムで実施、当日まで教科は知らされないシステムだって言ってたな。
「朝礼は以上です。礼。」
『ありがとうございました! 』
教科は何をするんだっけ?
もう忘れた……。
別に忘れたところで支障はないが。
「マッチャちゃん? 魂抜けてるよ? 」
「アリアさん……。試験って得意ですか? 」
「中の中かなー。というかテストあと10分で始まるよ、予習とかトイレとか平気?」
「大丈夫」
悪い意味で大丈夫。
慌ただしいクラスメイトをよそに、あっという間に試験開始時間がきた。
「一限目数学、チャイムがなったら開始してください。問題と解答用紙を配ります。」
前の人から二枚の紙が裏返しで回されてきた。
後ろに回しそうになるが、後ろに人がいないことに気づいた。
ちょっとして、チャイムがなる。
周りから紙を裏返す音が聞こえてきた。
抹茶も問題用紙を見るが……うん。
式が長すぎて、見るのも疲れる。
そして何一つ理解できない。
もういいや、寝ちゃえ!




