1 この世界にうさぎの抹茶は存在しない。
……………………なんでこうなった。
俺……いや、私……?
めんどくさいから固有名詞の抹茶でいいか。
なんでかは知らない。
…………信じられないが、前世うさぎ(♂)の抹茶は、見たことも無い世界で人間(?)(♀)になった。
テーマパークという可能性も無きにしも非ずだが、本能がここは前居た世界とは違うと告げている。
まあ確かに人間らしきものになった時点で前居た世界とはちがうはずだが…。
とりあえずここはどこだ?そしてなんでこうなったんだ?抹茶の飼い主はどこだ?そして、抹茶は死んだのか…?
混乱して頭がおかしくなりそうだ。
ここはどこぞの森の入口。森の反対側に家や人が見えるから街も近いだろう。
とりあえず行ってみるか。
何かわかるかもしれないし。
✳ ✳
本当に数分で着いた。…にしても、誰に話しかければいいんだ?
人なんて沢山いるが、悪党がいるかもしれないし。
それにまず、この服?とやらがとにかく暑い。
街ゆく人みんな半袖だぞ?
下手したら上半身裸だぞ?
……よし、脱ぐか。
まずうさぎって裸だし。毛皮は着てるけど服を着ることに死ぬほど抵抗あるし。まず長袖暑いし。
ボタンから外して…人間の手って便利だな。うう、上手くできない。くっそぉ…おお、外れたっ!
この調子だ抹茶!このクソ暑い服をどうにか…!
「おおおおおおおいぃおまええええええ!!!!」
…いや誰!?
うわうわわわひっぱるなって!
この体慣れてないんだから!転ぶ!
「いやお前も走れよ!半裸女!!」
誘拐犯、その名前どうにかしろっ!!!
半裸女とかふざけんな!
抹茶は走りたくても上手く走れないの!!
なんやかんや犯罪まがいに誘拐されてもう一度最初の森の前。
「いや待って、お前頭大丈夫!?馬鹿なの?阿呆なの?脳みそ無いの?人前で服脱ぐとか!しかも女子!しかも絶世の美少女!!!」
マシンガン罵倒。いやオイ、なんでこんな罵倒されるんだ?後半褒められた気もするけど!
そんな怒られる筋合いないんだけど!
「いやあの、急になんですか?あなたは誰ですか?」
敬語になってしまう自分が情けない。もっと強気に生きないといけな…
「急に何ってこっちが言いたいよ!!!僕はアーザース!お前こそ誰っていうか存在がなんなんだよ…!!」
うっわあ、急に叫ぶなって!耳がキーンってなる!
アーザースって情緒不安定か?
「というかお前、もしかしてだけど。異世界から来てたりする?」
あっそうだ!そうだそうだ、抹茶はこの世界について聞くために街に出たんだ!
「あっはい…、そうです」
「やっぱり…。だからこんなに常識知らずの変なやつだったのか。なるほど…。……ん?……ええ??転生者!?マジで!?」
勝手に納得して、驚いてやがる。
「いやあの、これどういうことですか?抹茶全く理解できないんですが。」
アーザース、考える。考える考える、考えて。
「とりあえずシルドニア政府異世界移住局に行こっか。」
また抹茶は連れていかれた。




