I love Choco 番外編『ハートのパンケーキ』2019/04/20 21:54 ver
Q.進捗どうですか。
A.迷走中です。
昨日は、ふわふわしたネタが2つくらい増えて、あとカジサックが面白すぎて進みませんでした!
なので、更新止まってる、I love Choco の番外編ネタをあげてみます。
過去話
そんな頃に、あの兄妹と出会った。
香は「良いお兄ちゃん」で、あの頃から、妹の千代子のことを第一に考えていた。嫉妬とあんな風になれなかった罪悪感とぐっちゃぐちゃになっていた。
「んーん ちいーがねー わるいの。」
甘めのレモンティーを片手に舌っ足らずな声がする。
ああ、あの時か……礼人は思い出していた。
当時、礼人にはまだ弟がいた。
優人は生まれた頃から体が弱かった。いつも病院いっていて、母親もつきっきりだった。しょうがないと思いつつも、寂しい思いをしていた。
ある日、教室で
「パンケーキ作れる?」
突然聞かれる。隣のクラスの羽仁香だった。
「はぁ? まあ作ったことあるけど。」
むしろ、ここのところ、朝はパンケーキばっかり食べてる。
作れるのそれくらいしかないから。
「作って。」
「えっ」
「明日の朝。」
「はぁ?!」
そんな訳で、朝から他人の家に行くことになった。まぁ、お隣さんだけどさ。
「お邪魔しまーす」
うちの親もいなかったが、こっちの家の親もいなかった。どうやら、仕事、らしい。
ドアを閉めた瞬間、ててててーと音がして、何かが飛びつく。
「れいちゃーん、パンケーキ作ってー」
なに! このかわいい生き物! 初対面からあだ名呼びとか、知らない人に飛びついてくる無警戒さとか常識的なことが全て吹っ飛ぶかわいさ。
ホワイトチョコレート色の肌に、ミルクチョコレート色の髪、ダークチョコレート色のうるうるの目で頼まれて断れるだろうか、いや断れるわけがない。
「いいよ、どんなのがいい?」
抱っこしながら聞いていた。
「えっとねー! チョコのー!」
無邪気な笑顔で言う。ぎゅーっと絞る仕草からすると、チョコレートソースを天使はご所望のようだった。
「ちいがごめん」
パンケーキを強請る天使の後ろから現実に引き戻すような低めの声がする。
「大丈夫。材料は?」
あらかじめ伝えておいた材料は香が揃えてくれていたようだった。
足りなかったら、うちに取りに行けばいいやと思っていたが、思いのほかきちんと揃えてある。てか、これ、高いやつ!
「いいの?」
「何が。」
「パンケーキに使っちゃって。」
香は首をかしげている。まあ、いいならいいんだけどさ。
作業をしていると、またててててーと現れて
「ちいもやるー!」
と一々天使は啓示を与えてくれる。
「じゃあこれ混ぜ混ぜしてー」
目をキラキラさせて真剣に混ぜる。
実は生地はもうダマにならないように丁寧に攪拌済みだった。天使の愛おしさについつい負けてしまう。香が、こぼさないように見張っているのを確認して、他の材料を揃えていく。
天使が見つめる、フライパンの上に、じわぁと生地を落とすのは、一人で焼く時の数百倍楽しかった。
それ以降、休みの日は天使にパンケーキを捧げる日となった。次はどんなのを作ろうかと考えて1週間を乗り切る。
そんなある日、弟が死んだ。
礼人にとっては、突然のことだった。
気が付けば、何もかも終わっていた。母親の憔悴はひどく、父親は逃げるように仕事へ打ち込む。4人家族が1人減って、1人と1人と1人の家族になっていた。
そんな日も緩やかに歪な日常へと戻っていく。
羽仁家には随分と行っていなかった。自分の家でもパンケーキを作ることはなくなった。
朝、行かなければ、あの兄妹にも特に合わない日々が続く。
やがて、母親は思い出したように、礼人に向き合うが、向こうからすると、赤ん坊が急に大きくなっていたように感じるらしく、礼人の方にも隔意があってぎこちない関係が続いていた。
その関係に終止符を打ったのは、やはりチョコレート色の天使だった。
ある日、”うっかり”3人がそろってしまって、ぎこちない休日を過ごしていた。話題を探すものの、相手の地雷を踏むのを恐れ、相手の挙動を観察し合っていて、気まずいものの、席を立つのは負けのように思え、半ば意地になっていた。そんな時に、福音の鐘のように、玄関のチャイムがなる。救われたように席を母親が立つ。
しばらくして、
「れいちゃーん!」
と突然冷戦状態のリビングに天使が舞い降りた。
案内してきた母親も、座って新聞を読んでいる振りをしていた父親も疑問符を頭に浮かべている。
「ええと、隣の羽仁さんちの」
「ああ」
という感じで納得していた。
「ちいです!」
済ました感じでスカートをつまむお辞儀をする。おしゃまなお辞儀で全員完敗。天使の一人勝ち。全兵士は白はたを掲げていた。我々はなぜ戦っていたのか、なぜ人は争うのか、そもそも、戦いに意味などあるのかと。須賀家に平和をもたらした天使へ信者が増える増える。
「まりこママって呼んで!」
「ずるいぞ、ひろとパパって呼んでね」
「えっと、まりこママさんに、ひろとパパさん?」
「かーわーいーいー! やっぱり女の子いいわー!」
ぎゅーとする。よく考えると息子の前でひどい発言だが、天使の前では全てが許せていた。
「れいちゃーん」
と手を伸ばす。
「はい、なあにー」
と抱き上げると花が開くように微笑む。
お菓子が準備され、突発的にお茶会が開かれる。
「ちいちゃんは何が飲むー?」
牛乳と、ジュースは何があったかしら、と冷蔵庫の扉を開けながらいう母親の問いに
「うーんとねー! れいちゃんのレモンティー!」
またもや両親の頭に疑問符が見えたので、
「わかったよ、ちょっと待ってて」
とダークチョコレートの髪をひとなでして席を立つ。やかんを温めながら準備する。
「あなた、紅茶なんて、いれられたのね」
感慨深そうに言う。「私たちもそれで。お願いしていい?」
「いいよ」
と頷く。多めに沸かしていた。
フレッシュレモンで、砂糖は少し多めが天使のお気に入りと香が言っていた。苦味はあんまり入らないように気をつける。
最近はこればかり飲んでいる。
「れいちゃんはねー パンケーキも作れるんだよー!」
と紅茶を蒸らしていると、キッチンの向こうで次々と話題の花を咲かせていた。
「あらぁ、朝からお邪魔してたのね」
と母親が少し咎めるような目線をこちらに送る。それを感じ取った天使が
「んーん、ちいがねー わるいの。」
と首を横に振る。
「いつもはお兄ちゃんが朝ごはん作ってくれるの。でもね! パンケーキ食べたいっていったらね! 朝から甘いの食えるかっていうんだもん、じゃあ、ちいがつくるって言ったら、危ないからダメっていって、喧嘩になって。お兄ちゃんが正しいのはわかってるんだけど……」
なるほど、それでこちらにお鉢が回ってきたわけか。
「れいちゃんすごいんだよー! ハートのとか作れるの!」
ああ、最初のいびつになっちゃって誤魔化すように「ハート型だよ」って言ったやつかぁと懐かしく思い出す。
あとねー、と過去の作品を次々と上げていくのを母親も父親もなんだか楽しそうに聞いていた。
その目の前にそっと普通より明るい色の紅茶を置いていく。天使にはいつも通り少し冷ました物を。
両親とも、何だか不思議そうに飲んでいた。
「ちいちゃんは、レモンティがすきなのね。」
と母親が言うと、少し考えて「えっと、ううん」と首を横に振る。
「れいちゃんのレモンティが好きなの! ほかのは違うのー」
と答える。
「礼人は好かれてるのねえ……」
と何だかしみじみと言っていた。
ご機嫌で喋り倒して、疲れてすこしうとうとしている。
大物だなぁと思いながらケータイで香を呼び出す。すぐに迎えやってきてうちの両親に礼儀正しく挨拶し、世話になったことに礼を言い、妹の非礼を詫びて、おぶって外に出る。
天使がうちにいたことに驚きもせず、慌てたり、怒っていたりしないところをみると、どうやらこいつの差金のように思えていた。
「ありがとう」
と言うと、少し驚いた表情をしていた。「千代子ちゃんがいて助かった」
と伝える。
「別に」
と無愛想な感じでいう。「ちいが、行きたがってたから」と付け加える。その一言で、この無愛想な友人も、天使のようなその妹も心配していたのだろうなと感じる。急に、朝、行かなくなって。
「ありがとう」
と重ねていう。何となく、羽仁家まで一緒に歩く。といってもすぐそこだが。
「むしろ、世話になったのはこっちだ」
と礼を言う。
「あれからさ」
少し躊躇いがちに言う。
「うん?」
「ちいに、パンケーキ作れって言われてさ作ったんだけど。」
渋い顔をしている。察して、微笑ましい光景を想像する。天使もお兄ちゃんには容赦なく言うんだよねー。
「美味しくないだの、れいちゃんのと違うだの」
しっかたねーよなあ って言葉とは裏腹に愛情たっぷりの口調で言う。
「次はどんなのがいいかなぁ」
自然と出ていた。
もう二度と作りに行かないつもりだったのに。自分の弟には一回も作ってあげたこともなかったのに。作ってあげようと思ったことだってなかったのに。
そんな罪悪感がちらりと頭を巡る。
「どんなんだっていいんだよ。」
呟くように香はいう。「朝、ここの窓開けるとさ、いい匂いがすんの。」と須賀家側の窓を開けると、ふんわりと玉ねぎを炒める香りが漂ってきた。
ああ、それで。羽仁家にてパンケーキ戦争が起こった理由も、あの日、あんまり話したことがない香が急に話しかけてきた理由もわかった。
少し笑ってしまう。
「ひっどいよなぁ…… 一生懸命色々考えてのにさー。」
ぼやくようにいう。れいちゃんがいるだけで、良い子になっちゃう。と
「やっぱり、香はいいお兄ちゃんだねー。」
不器用ながらも慰められてるのを感じながら言う。
「ぜんっぜん、喧嘩してばっか」
「そっかぁ」「喧嘩もできなかったなぁ」
と呟くようにいうと少しはっとした表情をする。「何もできなかった。」
「そっか。」
とだけ呟く。そして、香は、妹を寝かせに行く。
この家も親がいるのを見たことがなかった。前に聞いたら、仕事が忙しいらしく夜遅く帰ってくるらしい。その他、出張も多いのだとか。
「香みたいにいいお兄ちゃんだったら死ななかったのかな。」
とか考えてしまう。気が付くと、後ろに香の気配を感じる。呟き聞かれたかなぁと思いつつ、ごまかすように、
「後悔ばっかりしちゃう。」
と呟くと、しばらくして、
「おんなじだよ。」
香はオレの好きなストレートティを前に置きながら言う。
「ずっと、お前ならすっげえ良い兄になのになぁって思ってた。」
「ちいの扱いも俺より上手いし、言うこと聞かせられるし、喧嘩しないし……」
はあとため息をつく。
そんなことを考えていたとは、と少し驚く。一方で、なるほど、と納得していた。それで、いつも渋い顔をしていたのかと。
「そういうもんかぁ。」
とつい呟く。
「てか、香よく知ってたよね。オレがストレート派だって。」
すると、少し驚いて
「俺が、好きなんだよ、ストレート。」
すると香がしばらくして一人で何か笑っている。
何だか、すこし物足りない想いでストレートティを飲みながら不思議な感じがしていた。
そして、だいぶたってから知ったんだよね。
天使が酸っぱいのはあんまり得意じゃなかったってことを。
こちらには嫌がらせ半分、あと、天使に苦手を克服させようとしていたことを。
つまりは、香はひどい奴で良いお兄ちゃんだってことを。
普通にあげりゃーいいのにー って私も、思うんだけど何か違うって思ってしまったのでしたー……。
3話目でもう番外編って! て思っちゃって…………。で、もうちょっと話数増えてからアップしようと思ったんだけど、今思い浮かばず、止まっているので……。
これを機に気持ちが乗って動き出したりするといいな、という目論見があったりもします。