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(勘違いもの)2020年4月3日バージョン

 やっべーです! 長編書かなすぎて、次話投稿の仕方忘れてた!


 頑張って無事思い出しました、お騒がせ致しました。


 制作途中をアップ! なのですが、しょっぱなですが、ほとんど完成してます。

 ちょーど、今考えている作品が、ほぼほぼ完成手前だったからなのでした。

 私にとっての完成は、物語の結末が決まることなイメージです。そこまで行くと、逆に、ふー終わったあー そのまま未完成end なパターンになるです。


 なので、これ後回しにしてー 投稿用に、新しいヤツ考えてーとかすると……エタ……えっとさくふぁみってしまう可能性があるのでした……。


 仮題は(勘違いもの) 正式タイトルは考え中。

 前回のは、古典的な恋愛ストーリー、「ヒーローがヒロインのことを誤解して嫌っていたが、結婚後、誤解が解けてハッピーエンド」となる予定でした。


 あ、前回もそうでしたが、私は、大体、短編方式で作ってます。構想では大体短編で終わる予定なのです。

長かったら、途中でぶった切ってナンバリングします。そこで修正したりします。


 1話ずつ作る派もツイッターで見たことあるです。むしろ、そっちのほうがメジャーっぽい? どうかしら? 長編派はそっちなのかなぁと想像してるです。

 「大変です! お嬢様がおりません!」


 蒼白な表情で飛び込んできた侍女がそう告げた。

 部屋の空気がぴしりと凍り付く。

 母親である夫人は、ふらりと座っていたソファで気を失い、父親である伯爵の顔色が変わる。


「探し出せ! 何としてでも!」


 そう使用人達に命じ、彼らは了承の意を返し、バタバタと出て行った。


 なぜ、と頭の中が真っ白になりながら、思考回路を動かす。


 これは彼女が望んだ婚約であったのに。

 突然、「彼に見初められた」とまるで妄想のようなことを嬉しそうに語ったのが少し前のこと。


 彼は有名な方だった。一度だけ何かの折にちらりと見たことがあった。確かに見た目が良い。男性的な格好の良さというよりもまず、美しいという感想を持った。

 程々に筋肉のついている細身の長身、それから男性にしては長めな髪型。顔の作りなども、男女ともに目を奪われてしまうような中性的な雰囲気があった。服装を見て、男性であるとわかった。独特な心の内の読めない優雅な笑顔を浮かべていた。


 ところどころで女性たちが囁く。家柄もよく、頭もよく、知略に富んでいて、将来有望であると、女性の人気は高いようだった。しかし、皆、残念そうにため息をつく。「心に決めた方がいるんですって……」と。


 素敵と思う女性でも無謀な行動を抱かせない、独特の雰囲気をまとっていた。

 それでも、勘違いをしてしまう人というのはどこでもいるようで、


 「その女性はきっと私だったのね!」


 と自信満々な笑みを浮かべて姉は語った。

 しかし、家格から考えてあまり実現は難しいのではと思っていた。


 が、その後、とんとん拍子で婚約が結ばれる。


 彼は、心の内が読めない優雅な微笑みを浮かべて、家族の前に立つ。その彼を姉は、情熱的な目で見ていた、のに……。


 じりじりと時間ばかりが過ぎていく。


「お前が代わりに行け」


 その声に思考が現実に戻される。

 それに対して、夫人からの反応がないと不思議に思う。彼女がいたら絶対に反対し、騒ぎ立てて面倒なことになるはずだった。

 見回せば、気が付いたら部屋からいなくなっていたようだった。

 返事すらする間もなく、父は外に出て行く。


 広く無機質な部屋に一人取り残された。


 が、考えたり、感情にひたる暇もなく、侍女たちが飛び込んできて、支度用の部屋に引っ張られるように連れて行かれる。


 なんて無茶なことを……


 鏡の前の自分の顔を見ながら思う。

 代役にしようとしても違う人物であることは絶対にわかってしまう。


 姉とは言っても血は繋がっていない。そもそも、この家にきちんと出入りできるようになったのも最近の話。

 薔薇色のような髪の色にローズティのような色の瞳をもち、薔薇と呼ばれる姉に対し、自分は。

 ぼんやりとした金髪にありふれた黒っぽい目。ちっぽけな姿が鏡に映る。


 化粧を施されながら考えてしまう。鏡には、侍女たちの蒼白な表情が映る。

「どのように致しましょう」とこそこそと頭上で相談する声を聞きながら見下ろす。


 姉の着るはずだった服を着ていた。

 色は伝統的な白一色。姉のよく好んで着る色、真紅でなくてよかったと胸をなで下ろす。自分には全く似合わないので。

 だが、体格が全然違うので、合わないところが出てきてしまった。体中に布を巻きつけて、補正をして、アイテムで誤魔化して、裾がつかないように通常よりも高い靴を履く。


 完成した姿はさすが職人技、想像したより見られない格好ではなかった、が、やはり姉とは全然違う。被り物などで、髪色や目の色は見えにくいように工夫をしているけれど……。

 緊張と動きづらさで、気を引き締めていないと、つい、ふらふらとしてしまいそうになる。

 そこへ、扉が開き、彼が入ってくる。

 この日の為に、しかも、彼の為だけに誂えた正装は、絵にして残したいくらい素敵だった。

 けれど、見とれているような場合ではない。


 当然、彼は一目で姉ではないことをわかってしまったようで。

 

「どういうことだろうか。」


 心の内が読めない優雅にも見える微笑みを浮かべて、静かに、しかし、威圧的に問いかける。


「それはその……」


 と父親のしどろもどろの説明を私は身を縮めながら聞いていた。

 一言で言えば、「姉がいなくなった」ということを、回りくどく、わかりにくく、不必要に時間をかけて説明する。その中で、自分の責はないということだけはしっかりと強めに主張していた。


 その言葉を聞きながら無言で考え込んでいた。


 彼の表情を伺うと、婚約者に逃げられた悲しみや怒り、それとも、目の前の我々への蔑み、どれも読み取れない。

 やがて、視線に気付いたように、顔を向ける。

 父は慌てて私を立たせて紹介をする。


「こちらは妹のティアです。」


 ちぐはぐな格好をじっと見られ、羞恥で震えそうになりながら礼を取り、挨拶を述べる。


「つまり、私の結婚相手は彼女ということだろうか?」


 念を押すように


「それでよろしければ。」


「ならば、それで」


 意外にもあっさりと決まる。もうすぐ大勢が集まる、その直前になって中止という事態は避けたかったのだろう。


 同じ思いであった父親が大きく安堵の息を吐くのを聞きながら、私は内心震え上がっていた。

 色々な問題があるのでは!

 姉が見つかった後のことはどうなるのだろう。今回だけの代役だと思っていたが、どうやらこのまま結婚ということになるようだった。

 しかし! 私には婚約者がいるのだった。でも、この雰囲気では言い出すことなど出来なくて、必死に父親の顔を見るが、こちらを一瞥すらしない。

 すぐに、そのように書類を修正されていくのを見ながら、今後のことを考えると、涙が出て来てしまいそうになっていた。


 きっと、何の準備も出来ないまま家を出ることになるのだろう。心の準備もだが、多くはない私物などはどうなってしまうのか。


 先程、その変更を告げるために使用人が走って行った。

 既に、色んな方々が変更のために奔走していることであろう。

 今更、やはり、などと言うことは難しい…………。


 姉の代役ではなくなり、不自然に髪や顔を隠すような物はなくて良いだろうと直す。が、衣装などはどうしようもなく、そのままだった。


 そんなことをしているうちに、あっという間に、開始の時間になり、会場に向かう。


 天井から床まで、豪華な派手な装飾、眩しい程の灯り。

 伝統的な建物だ。ここで、誓いを交わせば永遠に幸せになれると、女性の憧れの場所だった。実に姉らしい選択である。

 

 気後れしてしまうが、足を踏み出す。


 儀式のため、一旦彼と離れた隙に父に小声で尋ねる。


「オーク様のことは。」


 元々の私の婚約者のことだ。

 やっと震える声で聞き出すと


「解消をすればいい。」


 とあっさりと言う。

 そんな…………。私の婚約は姉のよりも長く続いていたもの。関係はあまり良好ではなかったとはいえ、家同士の政略が絡んでいるものだったはず。悪く言えば、娘を売り渡す代わりにメリットがあるというものだったと認識している。

 何より、あともう少しで結婚の予定だった。


 それをこちらの勝手で終わらせるなど……。

 そのために用意していた色んな物を想像して、どのようなことになってしまうのか、自分はどんな代償を払うことになるのか、考えるだけでも恐ろしかった。


 しかも私は…… 姉の本当の妹ではなく……


 皆、不自然さにはあまり気が付いていないかのような雰囲気だった。

 特殊な空間ということもあるのだろう。


 荘厳な音楽が流れる中、我々の動きを皆、静かに見守っていた。


 暗雲立ちこめた将来に向かって、震える足をゆっくりと運んで、彼の隣に並ぶ。


 ああとうとうこの瞬間がやってきてしまった。

 皆の前で、誓うのである、彼と共に楽しみ、共に悩み、共に道を歩むと。その思いを違えることのないという、永遠の愛を。


 実際は、愛などない、一定期間経てばすぐ離縁となるのだろう。


 しかし、彼は何事もなかったかのように、平然と永遠の愛を誓う。


 直前になって、相手が違ってしまっているのに! その演技力に感嘆してしまった。

 その横顔は、怒っているのか、悲しんでいるのか、全くわからなかった。まるで、心から喜んでいるようにも見える優雅な笑顔だった。


 これでよいのか、考えてしまっている所を、即されて、私は罪悪感でいっぱいになりながら、同様に永遠の愛を誓った。


 その後、皆の歓声を聞き、めでたく儀式が終わる。


 まるで、普通の幸せな夫婦になったかのような錯覚に陥るが、我々は全く違うのだ。


 それでも、皆に見守られながら、全く機能的ではなく、ただ周りに幸せをひけらかしたいという為だけに作られた馬車に乗り、新居へと向かう。


 石畳を揺れながら走る。道行く人々が何事かと見上げる。姿だけみて、わあと歓声を上げる。もし、私の表情が見えたなら、そうは思わなかっただろう。きっと、悲壮感が漂っているだろうから。


 恐らく、不安と緊張と罪悪感でいっぱいになっていたから。

 

 結局、真実を言い出せないまま、ここまできてしまった。

 そもそも彼とは一言も話せなかった。

 常に、周りに誰かがいたから。それは言い訳かもしれない。言える状況を作れなかった自分が悪いのだ。


 今も……。石畳を走る馬車では、音がすごくて、会話どころではないということを知る。


 門を入り、よく手入れされた広い庭を駆け抜ければ、お屋敷が見える。


 扉の前に馬車がつくと、使用人達が揃って出迎えていた。


「お待ちしておりました」と。


 一同礼儀正しく頭を下げる姿をみて、またちりりと心が痛む。

 申し訳ないと、思いながら、先に降りた彼の手を取り、馬車を降りる。が、既に疲労などが溜まっていたのか、足が縺れそうになる私を、彼はさっと支え、流れるように自然と横抱きにする。


 何が起こったのか。


 祝うような歓声など、全く耳は入らず、彼の意図がわからないまま、新居に入り、気が付けば、部屋に着いていた。


 ソファにゆっくりと下ろし、侍女達に指示を出して、彼は去る。


 重石のように乗っていた装飾品をじゃらじゃらと外し、拘束のような衣類を全て取り除いて、やっと息が出来るようになった。


 その様子をベテランの侍女が


「まあ」と驚いたような声を漏らす。貧相な体が出て来て驚いているのかと思ったが、


「お辛かったでしょう。」


 労るように肌を撫でる。ずっと布を巻いていた場所は色が変わり、痕がついていた。


「服は、ゆったりとしたものにしましょう。その前に、マッサージも致しましょうね。」


 と微笑み、他の侍女に、あれこれと命じる。


 既に用意されていたようで、すぐに暖かいタオルなどが運ばれてくる。

 布団に横たわり、全身を暖かいタオルで暖められる。

 ものすごく気持ちがよかった。

 疲労が溜まって、しかも、緊張の糸が切れたこともあるのだろう。

 眠気に逆らうことなど出来ず…………。


☆☆☆


 「挨拶をしなさい」と言われ、おしゃまにスカートをつまんでお辞儀をする幼い少女。

 対面する大人に、歳を聞かれ、自分は自然と「~歳!」と元気よく答えた。


 見覚えのある庭だった。大きな木があり、大きな池があり、花が咲く場所がある、この広い庭は、どこだっただろうか。


 ああ、そうだ、昔よく遊んでいた場所だ。どこかの貴族のおうちの庭だった。


 大人に「遊んでおいで」と即されて、自分よりも大きい少年と一緒に遊びにいく。


 花を摘んで花冠をもらっていたと思えば、

 冷たい水飛沫の飛ぶ池を覗き込んで魚の名前を教えてもらっていて、

 手からこぼれ落ちる程いっぱいカラフルな葉っぱと木の実を集めて、

 積もった雪をまるで芸術家が作品を作るように真剣に固めていた。


 また、季節が巡り、二人で、花を真剣に選んでいる。

 彼は少し不格好な花冠を頭に乗せながら、


「君は僕と結婚するのだからね。忘れちゃ駄目だよ。」


 と幼い私の頭に綺麗な花冠を乗せて…………


☆☆☆


 はっと目が覚めると、見慣れない天井。


 ここは………… そうだ昨日からこの家に住むのだった。


 しっかりと布団がかかっていた。


 さきほどの夢のことを思い返す。


 あれは……… 確かに、昔、そんなことを誰かと話した覚えが薄らとあった。


 この状況になってから思い出すなんて。


 子供の約束だから、向こうも忘れているだろうけれど、あれはどこだったのか、彼は誰だったのか、今どうしているだろうかと思いを馳せる。


 あれだけ立派な庭はきっとすごい貴族の方なのかも知れない。

 子どもの彼の身なりもとてもよかった。子どもながらすらりとした長身、そのまま成長しているならば、きっと、周りの女性が放って置かないだろう。


 名前もちゃんと聞いたはずだけど、何と呼んでいたのか、思い出せなかった。


 それにしても幸せな夢だった。


 現実を振り返る。

 恐らく、しばらく一定の期間を置いて、認められれば、すぐに離縁することになるのだろう。

 その後は、実家に送還されるのか、身分を失うのか、それとも別な道があるのか……。


 実は、私はローゼンキャッスル家の人間ではなかった。


 私の父はロックハンド家の当主だった。しかし、父が亡くなり、家は別な方が継ぐことになった。

 母と私は行き場を失う。


 突然、全てを失った我々に、手を差し伸べたのが、姉の父親だった。

 しかし、この国では重婚は認められていない。立場は愛人ということになる。姉の母親はもちろん良い顔はしなかった。

 館の隅の方でひっそりと暮らす。

 姉の父親が欲しかったのは母であり、私ではない。

 知らないうちに、政略的婚約〈行き先〉が決まっていた。私も一応貴族の娘である。だが、相手の彼は、有名な薔薇ではないと知り、すぐに興味を失ったようだった。

 

 やがて、母が亡くなる。


 姉の家族とは、保護者という立場ではあったが、血縁上も書類上も全くの他人であった。


 しかも、婚約者は他の複数の女性と交際しているという噂を聞く。


 それでも、私の成人を待って、結婚するはずだったのだが、急遽、姉の結婚の話が沸き上がり、そちらを先行させることになって…………。


 こんなことになってしまった。




 朝、食堂で事情をお話しして、謝罪をしようと決めた。が、既に出かけられたと聞く。


 あまりの申し訳なさに涙が出そうになる。


 美味しいはずの食事の味もせず、喉も通らず、ほとんど残してしまった。


 夜も

 昨日、休みを取った分、仕事が溜まっていたようで、帰って来られないと知らされる。

 申し訳なさそうに告げるのが余計に心苦しかった。


 ここの人達は皆優しいのに、騙している状況が苦しかった。


☆☆☆


 もう、耐えきれなかった。


 夜、暗い部屋で一人になり、布団に入って、しくしくと涙を流しながす。

 

 泣き疲れて寝てしまうが、人の気配で起きる。

 目をあけると、驚いたような目と合う。ふんわりと灯りが揺れて、


「起こしちゃったかな。」


 と苦笑する。


「いいえ」


 と答える。ベッドに腰掛け、


「ごめんね寂しい思いをさせて」


 と髪を掬う。


「違うのです。私が、私が悪いのです。」


 思いつくままに、事情を説明する。婚約者がいたこと、自分はローゼンキャッスル家の人間ではないこと、こんな風にしてもらえる人間ではないということ…………。


 彼は静かに頭を撫でながら聞く。


 やがて、泣きながら謝罪し、


「どのような罰でも受けます。離縁を望むなら受け入れます。全てあなたの望むことに従います。」


 と言うと、困ったように微笑む。


「ごめんね、知っていたんだよ。」


 し、知っていたって!


「君がローゼンキャッスルではなく、ロックハンドであることも、婚約者がいたことも。」


「ならば、なぜ……」


「君が好きだから。」


 突然の言葉に思考が止まる。そんなはずは! 冗談なのだろうかとまじまじと顔を見つめると、優しく微笑む。


「そうだね、どこから話そうか。」


 視線を逸らして、思案するように首を傾げる。


☆☆☆


 夜空のような紺碧の大きな瞳の中に、星がきらめくように光が揺れて輝く。

 それから、月光を想わせるような暖かい金色の髪。

 この瞳に自分の姿を映し、この髪に触れたいと、どれだけ願っていたことか。

 きっと、彼女は知らないのだろうなと思う。


 元々、あの婚約はこの為に遂行してきたものだった。


 幼い日、暖かい太陽の下であまりの明るさに、この夜の妖精がどこかへ行ってしまわないように、追いかけた日々。

 ようやく、父達を説得し「好きにしなさい」と許しを得て、幼い約束を交わした後、この妖精は突然、曇天に覆われてしまったように姿を消した。


 父が、ロックハンド家の当主が亡くなったと告げた。若く働き盛りだった彼の突然の死。それだけでも、事件性を感じていたが、更に、その家族である夫人と娘の行方もわからないのだという。


 後を継いだものは、決まり通りに継いだだけだと主張する。

 埋葬後、既に、日々が経っていたこともあって、調べることが困難であった。

 

 その後も探し求める。母親は呆れていたが、父親は止めなかった、止めても無駄だと知っていたのだろう。


 執念か。やっとの思いで探し出す。貴族の家に隠すように住まわされていた。しかも、別な男と婚約をしていると聞く。


 愕然とするが、それが彼女の望む幸せならば、と、諦めようとする。


 しかし、どうしても気になるのか、噂が耳に入ってきてしまう。

 相手の男のよくない話が。

 ある集まりで、彼らが話す声が耳に入る。


「婚約しているんだろ」


「でも、残念ながら薔薇の方じゃないんだ。オレが結婚してやるんだ、それまでの間は自由にさせてもらうよ。」


「ひどいなぁ、俺だったら絶対にお前にはやらないよ。」


 と彼らが話しているのを聞き、それならば、と密かに計画を立てる。


☆☆☆


「それでは、幼い頃、あの約束をしたのはソルト様だったのですね。」


 聞かせられる所だけを抜粋して話す。詩人が歌うようなロマンチックなストーリーに仕立てあげた。


 嬉しそうな彼女の笑顔を見て、安堵する。前の男に全く気持ちを残してなどいないのが見て取れて。


 ふと思いつき、


「しかし、姉は」


 彼女とは似ても似つかないあの女を思い浮かべる。

 薔薇とは呼ばれてはいたが、それほど魅力を感じなかった。普通の女だ。私の妖精を奪った家族だと思うとより憎く感じた。

 それでも作戦のためだと、一声かければ簡単に靡く。あまりの要求に辟易したが、適度に叶えてやり、一方で徐々に忙しいことを理由に距離を置き、代わりに別な男を斡旋すれば、簡単に心の天秤は彼に傾いたようだった。

 その男に、駆け落ちするように焚きつければ、簡単に、自分の前から去っていった。


「彼女には、他に愛する人がいたのだよ。」


 しれっと言うと彼女は少し考えて、


「そうだったのですか。それは、申し訳ないことを」


 何の繋がりもない者の代わりに詫びるのを、


「いえいえ、お互い様だったのだからね。私にも他に想う人がいたのだし、あなたという。」


 薄らと染まった頬を撫でれば、ますます、色づく。


「ね、誰も不幸な人などいない。私たちも幸せになろう。」


 おずおずと伸ばす手を取り、その指に本物の永遠の愛を誓う。


☆☆☆


 全てを父に報告すると呆れたように、しかし、良かったと笑う。


 事前に、計画を話した時と、呆れていたが、「好きにしなさい」と言った。


 ロックハンド家の元当主は、父の親友だった。



☆☆☆ 番外編


 扉を開けると、謎の緊張感が充満していた。

 その先は、一人の男。彼が威圧感を発していたからだった。


 「それで、私の妖精が逃げたらどうしてくれようか。」


 歌っているようにも聞こえる口調で、微笑みにすら見える表情だったが、激怒していることは誰からでもわかるという状況。


「ソルト、そのくらいにしておけ。」


 苦笑しながら言うと、彼の視線の先の伝令役の部下は、明らかに助かったという安堵の表情を浮かべた。

 舌打ちせんばかりの顔でこちらを見る。一応、立場が上だし、一応、この国の王家に属しているのだが。まあ、彼の気持ちもわからないでもない。


 彼の言う、妖精をようやく捕まえた所だったのだ。しかも、その翌日。普通の関係であれば、数日間は、急用でも邪魔はしてはならぬという時期。

 だが、


「この忙しい時期に急に結婚をぶち込んできたのはお前だろう。昨日1日休みをやっただけも感謝しろよ。」


 自覚をしているのか、ちっと舌打ちをして横を向く。

 珍しい光景だった。

 普段はあまり感情的にはならないこいつが、駄々っ子のような行動をするとは。


 この部署は機密を扱っている関係でどうしても人手不足になりがちだった。しかも、国を揺るがす程の事件となりそうな案件を追っている今、時間も人も足りないのだ。


 それは彼にもわかっているだろう。つまり、単なる八つ当たりなのだ。

 彼の不機嫌さを無視して、指令を出す。


「」



☆☆☆番外編


 パーティーに出席をすると、彼女の元婚約者の姿が目に入る。彼女は全く気付いていないようだったが、彼は、二度見、三度見して、驚く。それはそうだろう。あの家に隠されて居た頃とは、全然違うのだから。


 何か言いたげな顔で、こちらに来ようとするので、共にいた両親に目配せをする。


 彼女に、


「少々知人に挨拶してくる、ここにいて」


 と言い残して彼の方に向かい、意気込み彼を別室に連れ込む。

 バタンと扉が閉まるか閉まらないかのうちに、


「奪うとは卑怯なのではないか!」


 挨拶もなく、そう言い放った。


「奪う、とは?」


 首を、傾げてみせる。さらりと髪が揺れ、中性的に見せる。


「ふざけるな! ティアのことだ! ずっと婚約をしていたのに、直前になって、取り止めになり、あなたと結婚したという!」


 怒鳴る彼にそっと近付くと、彼は怖じ気づくように後退する。


「それは、だいぶ前のことだがね。」


 そう、既に何ヶ月も経っていた。お互い書面上で、折り合いをつけた、解決済の話である。


 今更惜しいと言われても、婚約解消の賠償金を受け取っておいて、としか思わない。


 更にずいっと一歩踏み出す。


「それに、彼女は元々私の物だ。ちゃんと、婚約済みの証明書もある。しかし、長いこと行方がわからなくなっていて、ようやく再会できたのだよ。」


 やがて、彼の背後は壁となる。追いつめられた彼の耳元に唇を寄せて、そう囁くと、はっと顔色を変える。


「あなたは! まさか!」


「薔薇が欲しければ首都の花屋に行けばよいだろう。だが、私の妖精は渡さない。」


 そう断言し、背を向ける。


「そうだ。それと、あまり素行の悪い連中と連むのは辞めた方がよいだろう。」


 彼の胸元のポケットから抜き取った薬包を揺らして、そう警告すると彼はガタガタと震え出す。


 そのまま放っておいて、扉を閉める。


 外で見張っていた警備に無言で手渡す。

 騒然とするのを背中で聞きながら、また、賑やかな会場に戻る。


 遠くからでも妖精はすぐに見つかる。

 眺めていれば、羨望の眼差しがいくつも飛んでいた。何だか不愉快に思い、彼らに見せつけてやるかように、ぎゅっと抱き締めて、「ただいま」と耳元で囁く。


「お、おかえりなさいませ」


 と顔をほんのり染めて恥じらいながら、呟く。それで、先ほどのことはすっかり吹き飛ぶ。

 どうでしょう! 結構変わりましたよねっ えっへん☆

 多分、大筋は変わらないで、このままいくのでしょう。ただ、人生何があるかわかりません。ストーリーも同じです<キリッ>

 

 今は、足りない部分をふーふーって膨らませてる感じです。容姿とか。足りないエピソードとか。

 既に番外編があるのは、本編に組み込めなかったけどこういうことがあったんだろうなぁ というやりとりです。そーゆーのめっちゃ増えません?

 番外編の謎の王家の人は……今後を楽しみにお待ちください。私も待ってます。


☆☆☆ は ☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・ になる予定。なぜ☆☆☆なのかというと、ケータイで書いてる時で、ここで区切る、という目印なだけです。

 あ、普段はPCとケータイ両方で書いてます。

 ケータイでは、ぱっと思い浮かんだのをそのまま書けるのが良いのです。けど、誤字りやすいのでした。

 PCではチョキチョキぺったんしたり、ルビ振ったり、置き換えたりする作業もしてます。

 両方でやると文章の見え方が違って面白いのです。


 タイトルはまだないです。前回のはあれは前回のです。書いててピンときたフレーズパターン<前作の「キスくらいで」とか>、元々決めてるパターン、面白いフレーズが思い浮かんでそっちに引っ張られるパターンもあります<これがエタ……えっと、さくふぁみる原因の1つだ!!!>


 名前はめでたく昨日決まりました。その前は<主人公><ヒーロー><姉>でした。

 表記・一人称の揺れは後で直す予定……。


 今必死に悪役が何してたか考えてる所。悪いこといっぱいやってます<多分>。どこまで書けるか、書くかはわかんない。ふんわりする予定。


 次の更新の仕方は明日考えます。てか今日だ!

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