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幸せで平和な世界を  作者: ナザラ
第1章  魔法少女と惑星の終止符
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四話 初日4

装甲車に乗った四人は運転を千香に任せて車庫から出ようとしていた。

青を基調とした装甲で全体を強化魔法で守っている。

その証拠に緑のエネルギーの線が車体全体を駆け巡ってるのがわかる。

これにより大抵の攻撃は防げるという。


「では、出発しますよ」


千香の合図と共に車庫から出た装甲車はそのままゆっくりと直進し、ダイダン通りの壁元へ前進する。

そこの壁は他とは少し違う作りとなっており、なんと外へ出れるゲートの役割を担っている。

車体がゲートに前進するのを見計らってゲートが開かれる。

ゆっくりと開く自動ドアのように左右のドアが動きその切れ目から瞼を閉じてしまうほどの光が差し込む。


光に目が馴れ、四人を乗せた車体はゲートが完全に開ききる前にそのゲートを抜けた。

その辺りからスピードを一気に上げて外の世界へ車を動かす。


「うははっ、いつ見ても外の世界は綺麗だなぁ」


後部座席ではしゃぐシルビィは窓に顔をくっ付け外の景色を眺める。

シルビィの隣に座る私は耳にヘッドホンをつけて音楽を聴きながらもちらりと外の景色を窓越しから見た。


天候は良好。

天気は晴れ。

雲ひとつなく、太陽が真っ正面に見える。

そして曇る窓を拭き取ると見える全体が真っ白な世界。

雪などは降っていないがその景色は見渡す限りの雪だった。

キラキラ光る地面は雪が太陽に反射して光ってる。

シルビィの言う通り綺麗だ。


「こんな状況じゃなかったら素直に楽しめるのに…」


前席に座るアンリをチラッと見る。

先程の件からずっと話してない、私のせいだけど。

少し見える顔からは何とも言えない表情が窺える。

怒ってるのは間違いないが、それ以外に何か思ってることがあるのではと考えてしまう。


「………っ」


ジロッと目を向けてきた。

半目のその瞳は完全に怒ってる感じでそれ以外の感情は窺えない。

やっぱり怒ってるだけだったと咄嗟に目を反らす。

そして見える白い大地を眺めてヘッドホンの音量を少し上げた。


「……あっ、ガイアント」


シルビィのその言葉に皆反応する。

窓の外を眺めていたシルビィは此方に向かって走ってくる数体のガイアントを目視していた。


「シルビィはそのままガイアントを見て、アンリと黒江は射撃、運転は私に任せて」


千香の指示に一瞬戸惑ったが直ぐに従った。

ただいま喧嘩中の私とアンリを協力プレイさせるのはと思ったが今はこれが最善策とすぐにわかった。


「シルビィは上から監視お願い、私達で殺すから」


「わかったよん!」


ふざけ半分の元気のよい返事をしたシルビィは上のハッチを開けて上半身を外に出す。

場所を入れ替わった私は数本の緑の線が迸っている四角いキューブを手に取る。

それはカナリアに預けていた武器だ。


「よっと…」 


そのキューブを握りながら魔力を込めた。

これによりキューブは武器に変わるのだ。

ガチャン!と音が鳴り一秒で小さなキューブが青銅色のサブマシンガンに変わる。


それを両手で取った私は窓を開けて銃を構える。

ヘッドホンを外して戦闘体制に入った私は一度大きく息を吐く。

幸い今のところは右側からしか来ていない、このうちに少しでも数を減らすと引き金を引いた。

ババババッッ‼️と銃声が響き渡り、耳を刺激する。

しかし、魔法使いはありとあらゆる所が人よりも頑丈なため直で銃声を聞いても何ら問題はない。

というかヘッドホン着けてたのにシルビィや千香の声が聞こえたの凄くないと思いながら敵と対峙する。


狙う先は五十メートル先にいるガイアント。

二足歩行のそのガイアントは全身白い毛で覆われ、尻尾の先は剣の様な鋼色をしており実際これで攻撃をしてくる。

顔も毛で覆われているのでよく見えないが口元は毛がないので尖った歯がよく見える。

そして毛が全くない小さな手は獲物を抑える為にある。

そのシルエットはラプトルという恐竜にとても似ている。

全長も三から五メートルと同じくらいだ。


「まぁ雑魚だけど」


そんなガイアントが一体血を流して転がり倒れた。

サブマシンガンの銃弾が当たったのだ。

私の得物は刀だけどターゲットが自ら来るのだから外す訳がないと数体いたガイアントに銃弾を当てていく。

反動で身体が少し動くがきちんと頭を当てる辺り自分でも凄いと思う。


「…一体取り逃がしてる」


ダァン!!と先程の銃声の何倍も大きな音がなり、近づいていたガイアントを頭を貫く。

後ろから来ていたと思われるガイアントは頭から血を流し反り返りながら白い地面に血潮をぶちまける。

その後に聴こえるリロード音と薬莢が落ちる音はまさしくアンリが使っているセミオート式スナイパーライフルの物だ。


「ありがとう」


一応のガイアント殲滅を確認した私は前座席にいるアンリに礼を言う。

ハッチから上半身を出しているアンリは此方に顔を向けずに無反応。

未だスナイパーライフルを構えていた。


(ちょっとくらい反応してくれても…)


正直落ち込む…が今は油断しては行けないと再度銃を構える。


「両側からガイアント来たよぉ」


監視していたシルビィは双眼鏡を覗きながらに言った。

それに従うように私は右側、アンリは左側に銃口を向ける。


「シルビィ!!何体いる?」


「うんとねぇ……右側二十四体、左側十六体」


運転中の千香からの質問に左右を向きながら数を正確に伝える。

了解!、と気合いを入れるようにアクセルを思いっきり踏みこんだ千香はそのままスピードを上げていく。


「シルビィの洞察力は凄いや」


ガイアントの数を正確に数えて見せたシルビィに独り言の様に称賛しながらガイアントに銃弾を浴びせる。

ものすごい風が髪を靡かせる。

冷たい風が肌を乾燥させ、白い吐息を発生させる。

弾数に気を付けながら迫り来るガイアントを確実に殺していく。


乱雑的に聴こえる銃声と単発的に聴こえる銃声が白い大地に響く。


『グルァァァァァ!』


それに負けずとガイアント達も雄叫びを上げる。

加速していくその足は装甲車のスピードに並ぶものだ。

それはつまり並列されたら終わりという事。

尻尾に付いている刃に切り刻まれて装甲車はお釈迦……まではいかないけど引っくり返されるだろう。


「だからその前に仕留める」


強い冷風にさらされながらも射撃はやめない。

迫り来るガイアント達を片っ端から殺していく。

通常の弾ならここまであっさりと倒せないが対ガイアント用の魔力弾を使えば通常の弾の五倍は速く倒せる。

しかし胸、頭、足と確実に当てていくがリロードをするとどうしても距離を詰められる。

一度に百発程撃てるが敵の計算しきった動きが標準を迷わせ相当外してしまう。

そんなことがあり残り十体という中でその距離四十メートル前後、結構ヤバい。

ガイアント達が発する白い息が見えるほどの距離、さらに言えば足音も聞こえてくる。


アンリも確実に一体ずつ殺してはいるがそれでも私より数は多い。

血塗れの死体が増える、しかし私達がその一つになってもおかしくない状況に冷や汗を流す。


「シルビィこれ」


「うおっとと!………これは?」


「手榴弾、魔力付きの」


サブマシンガンを乱射しながらシルビィが覗いているハッチの足元に合計六つの手榴弾を転がせる。

足に当たり驚きながらもこれが何なのか気付いた瞬間、OK!まかせてと手榴弾を拾い上げてピンを一つ外す。


「いっくよぉぉ!」


時速160キロで走行している車から手榴弾を思いっきり投げる。

まず、普通なら当たらない爆撃もシルビィのコントロールなら用意に当たる。

放物線を描くように涎を垂らしながら着実と距離を詰めていたガイアントの足元に手榴弾が落ちる。

カチッ!と小さく音がなり、着弾場所から粉雪が空に舞い上がった。


そして訪れたのは巨大な音に煙幕。

魔力付きにより通常の手榴弾の数倍の威力を発揮したその一帯は小さなクレーターが出来るほど。

煙幕が晴れるとそこには死屍累々が転がるガイアントの死体。

十体はいた筈のガイアントのうち、八体まで数を減らすことに成功した。


「後はまかせて、シルビィはアンリの援護」


「了解だよ!」


元気よく返事をし手榴弾を投げる様はガイアントからしてみれば悪魔だろうなと思いながらも残りの二体に銃口を向ける。

仲間が目の前で殺されてもその走りを止めず獲物を殺そうとする。

その行動に恐怖すら感じることがある。

奴等をそこまで駆り立たせる物は何だと質問したくなる程に。

だが奴等には言葉が通じない、ので殺すしかない。


二体のガイアントに向けてサブマシンガンを発砲する。

無数の弾が飛び、白い毛に覆われた身体に穴を開ける。

噴水のように穴から血が噴射され口からも同様に血を流す。


『クブゥア……』


弱々しい声と共に倒れる二体のガイアントにさらに数発ぶちこむ。

念には念をというやつだ。

痙攣をお越しながら雪の大地に赤い血を浸透させるその骸を後に装甲車は走行する。


「こっちは終わった、そっちは大丈夫?」


「こっちも難なく終わったよ黒江!」


「……」


車内に落ちた薬莢をかき集めながら左側の状況を聞く私にシルビィは両手に一つずつ手榴弾を持ちながら此方に手を振る。

顔はハッチの外に出ていて表情は掴めないが恐らく笑ってるだろう。

手榴弾を持ちながら笑顔と考えるとガイアント側はもちろんのこと此方側も恐怖を覚える。


一方アンリは何も答えずに前座席にどっかりと座り込む。

その座り方は疑いようもない怒ってますよアピールとなり、ここまでの本腰の怒りは見たことがなかった。


「目的地に着きます」


千香の目の前に見えてきたのは雪などで白くなった廃墟の町。

数百年使われていない町は老朽化や崩れ等はあるものの人が暮らしていた形跡は残っている。


そうかつて私達が暮らしていた外の町だ。

ガイアントが出てくる前は外に危険な生き物は居なく、平和的に暮らしていた。


「いつ見てもここは好きになれないですね」


町に入った装甲車を運転する千香はそう言いながら目的地へ。

町の中は民家と言うよりビルやマンション等が多数あり、近くに駅も見られる。

壊れた数多くの車を避けながら道路だった道を行く。

そのため比較的ゆっくりの走行となるがその間もガイアントの襲撃がないかシルビィがしっかり監視している。


「…アンリ、外で暮らすってどんな感じなのかな」


開いた窓から外を眺める。

決して目を合わせず、ただ廃墟と化した町を、もし私達がここで暮らしてたらどんな感じだったのかを想像しながらアンリに問うた。


「し、知らないわよそんなの!」


突然振ってきた問いに戸惑いながらも答えてくれたアンリに顔の下半分が緩み少し笑顔を溢す。

それでも顔は合わせずにそのまま会話を進める。


「ごめんねアンリ、あんなエロいことして」


「何よ急に……」


「別に……ただね、喧嘩したままは嫌だったから」


アンリと話すためとはいえあんなエロい事は嫌だったと思うから謝った。

その時、顔を合わせようとしたがちょっと恥ずかしいと外を見たまんまになる。

顔が少し赤い。

真面目に謝るのはやはり恥ずかしいと赤面してしまう。


だがこの景色を見ていて思った。

このまま謝らないでアンリが死んだら恐らく心の中にポカリと黒い穴が空くだろう。

それは喧嘩したまま別れたという一生背負っていくだろう穴。

廃れてボロボロになったこの町を見て、いつ死んでもおかしくないこの現状を感じて、謝らずにはいられなくなった。


「もう、良いわよ別に…」


そしてアンリもまた顔を赤くしていた。

彼女もまた同じ考えだったのか、はたまた違う考えなのかは定かではない。

だがひとつ言えるのはこれで仲直り出来たと言うこと。


そんな二人の会話を聞いていた千香も顔を少し緩めてアクセルを少し踏み込んだ。

その後の車内は四人の話し声が響いていた。




「着きました、ここです」


私達は車内から降りて目的に目をやる。

地下鉄の入り口。

一人入るのがやっとの横幅、周りにはデパートビルが二つ並び洋服や定食屋がデパート内にあったと思われる。


「皆さん、準備は良いですか」


千香の問いかけに頷く私達は各々の武器を持ちながら一人ずつ階段を下っていった。

複数の足音と水滴が落ちる音が地下鉄に響き、不気味な感じを醸し出している。

中は言うまでもなく暗く、明かりが無いと前も見えないのだが魔法使いは五感が鍛えられている為暗闇でもはっきり見える。


踊り場を越えて下った先にはまるで氷の洞窟かのように氷柱や雪などが存在する駅のホームと錆び付いた電車が止まっていた。

外よりも数度寒いホーム内は『温帯』というサポートアイテムと魔法使いが自動で発動している魔法の一つ、弱冷気バリアを用いても少し寒い。


「確か五人程の魔法使いがここにいます」


タブレットの画面を見ながら千香は冷気が漂う地下鉄の線路の先を見やる。

外に出る魔法使い等はGPSを付けられ、仮に遭難しても助けに行けるようにしてある。


タブレットを見るとどうやら三百メートル先に五人の魔法使いがいることが分かる。


「では、行きましょう」


「了解!」


「わかりましたわ」

 

「じゃあいつも通り殿(しんがり)やってます」


前はこの中で一番身体能力が高いシルビィが、中央には援護とサポートでアンリと千香、そして余った私は殿をやる陣形で行く。

コツコツと地下鉄に響く靴音が地下鉄に潜むガイアントを目覚めさせたのを彼女らはまだ知らない。















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