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幸せで平和な世界を  作者: ナザラ
第1章  魔法少女と惑星の終止符
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十四話 プルシュガーの討伐5

第四倉庫、居住区。

鼻に来る生臭い異臭と広がる血だまり、辺りには手やら足やらが転がり、臓物や目が壁にへばりついていた。

そのほとんどが人だったものの死体でゴミのように転がる。

しかし、まだ二人の死体はどこにも転がってはいなかった。


「ファイヤ」


火の玉を投げ飛ばし感染者の顔に当てた黒江は後ろにいた感染者に銃弾をお見舞いした。

負けずとアンリも鋭刺棒を脳天に突き刺し、絶命させる。


現在、7時ちょうど。

かれこれ十分は戦闘しており、以外にも感染者の数を大幅に減らしていた。

二人の荒い吐息が室内に広がる。流石の数に疲れが見えてきたが残りの数も二十体前後というのもあり二人の気持ちは良い方面に傾いていた。


「ガァァァァ!!」


上から雄叫びと共に急落下してくるGA、バルバダの群れが二人に襲いかかる。

コウモリ型のGAで全長は四メートル、翼を入れると七メートルにはなる大型。体の至る所に毛が生えており、暗闇だと何処にいるのか分からなくなる。

そして、コウモリには絶対にないとても長い尻尾がとても特徴的だ。

全長の四分の一を締めているがそれを使って何かをするわけではなく、ただの飾り程度の物だ。


「上から四体のバルバダが接近!」


「コウモリは私に任せて、アンリはゾンビお願い」


私は飛来するバルバダにサブマシンガンを構える。どうやら感染はしていないがその大きく開かれる口にある牙と鋭い足爪を食らえば人溜まりもない。

バルバダの急落下攻撃はとても速く、気付いたら殺されていたなんて事もある。

それゆえカテゴリー3に分類されている。


サブマシンガンではせいぜい一体倒すのが限度となってくる貧弱な武器を持つ私はすぐさま右手でキューブを握り締める。

すると空気が抜ける音と共に愛刀[雷鳥]がその姿を現し、青色の筋が通った刀身が暗闇の倉庫の中で輝く。


「ガァ?」


バルバダは標的を黒江に絞り、風を切りながら迫る中で戸惑いを見せていた。

それはサブマシンガンを地面に置いて、両手で柄を握り締めて屈伸の様に膝を曲げるというよくわからない行為をしていたからである。


だがその行為はいたって真面目だ。瞼を閉じて大きく息を吸って思いっきり吐くと次には地面を半壊させる程の跳躍を見せてバルバダを正面から迎え撃つ。


「一体」


刀身に雷を靡かせながら大口開いてるバルバダの口内に一刺。そのまま体内を通り大きな風穴を開けることでバルバダは絶命する。


その後ろにいた自分の身体に返り血が着いたがそれ以上の血を吐きながら落下していく仲間を見て怒涛の雄叫びを上げる。

レールガンのごとき黒江の速さは涎を撒き散らす二体目のバルバダの首を身体を捻りながら横に一回転することで切り伏せた。

綺麗に胴と頭が斬れて痛みも感じず絶命する。


「二体」


黒江の周りに刀の動きが分かるような青色の光が円を描いていた。

雷を纏う雷鳥はその斬る速さで斬った後も刀身が通った所は雷が帯びていた。

それが青色の光の正体だ。


「ガァァァァ!!」


仲間を二体も殺されたバルバダは己の最大の武器、足爪を私に向けて狩り殺そうと向かってくる。

すかさず迎撃しようと刀を構えるが、流石に勢いも尽きたかそのスピードは落ちて今にも落下しそうになる。


しかし、そうはならなかった。

自分の足元に自ら作った風を圧縮させて固定。

その上にゆっくりと乗って迫り来るバルバダを見据える。

タイミングは大事だ。間違えると形勢は一気に逆転する。

私は集中した。正直ヘッドホンは邪魔だがお気に入りなのでそのままで。


「グガァァァァ!!」


バルバダの足爪が迫る中で雷鳥を居合いの構えでしっかり握る。

腰の位置まで落とされた刀はバチバチと雷を靡かせ、今か今かと急かしてくる。

心の中で「まだ」と言い聞かせ、そのタイミングを測る。

そして目の前が足爪しか見えなくなった時、動く。


「三体」


圧縮させていた風を一気に解き放して爆進。

爆発音と共に少々の痛みを足裏に感じながらバルバダの足爪を切り伏せ、身体を両断する。

何か起きたのかわからない様子のバルバダはそのまま地面に二つの落下音を響かせて絶命。それでも風の勢いは止まらず、仲間の死に戸惑っていたバルバダの頭部に雷鳥を突き刺す。


「四体」


刀を引き抜き落ちていくバルバダを追うように自分も落ちる。

白目を向けて力なく落ちたバルバダの頭の上に着地して刀をキューブに戻した。

 

「そっちは終わった?」


「これで最後よ!」


鋭刺棒を頭に突き刺し、最後の一体と思われる感染者を倒したアンリは返り血を結構くらっていた。

恐らく感染はしていないだろうが念のため十秒の間はアンリに近付かない。


「うん、感染していない。よかったぁ…」


アンリも自分が感染してないか不安だったのかその確認が取れて安堵のため息を漏らす。

十秒間に何かしらの変化がなければ感染していないという判断が持てる。プルシュガーの感染者は十秒以内に全身に激しい激痛が襲い、低体温症に陥るためすぐわかる。


「とりあえず休憩は第七倉庫で…」


「…了解」


アンリは疲れているのか息を荒らして額から汗を流す。

私に関しては雷鳥を使って素早く倒したのでそこまで疲れてはいなかった。

血で染まった第四倉庫を歩いていく。


「あぁ、そういえば雷鳥使っちゃった」


「別に良いわよ、空中戦で服が切れる心配もなかったし」


刀を使ってしまった事を謝った私を簡単に許してくれるアンリはやはり優しくてついつい意地悪したくなる。

と言うわけでこの任務が終わったら虐めてやろうと思った。



なんやかんやで7時ちょうど。もうすぐ待ち合わせ時間になってしまうが、このまま行けば充分に間に合うと二人は第七倉庫へと続くと思われる扉の前にたった。


鉄扉は小さく一般的に使われる物と大差はなかった。

しかし、どうやら鍵がかかってるらしく力ずくでは開けられなかった。  


「仕方ない、雷鳥で壊すか」


「そんな感じに使っていいの?愛刀…」


愛刀を普通の道具のように扱う黒江に対してアンリは少し困り顔を見せるがお構い無しに鉄扉に二撃もの斬撃を加えた。

その瞬間、切り目の入った扉の一部が突然ぶっ飛んで白い霧のような物が瞬きのうちに私達を覆った。


「アンリ…アンリ!」


反射神経が働いて扉を回避した私は見失うアンリを呼んだがどうも返事がない。

白い霧に阻まれて視界が広がらずアンリを見つけることが出来ない私はすぐに腕に仕込まれているモニターを起動させる。


「いた」


画面には仲間の姿がオレンジ色で示されるため、どこにいるのか一目瞭然だ。そして、どうやらアンリは私の後方三メートルにいるらしい。


「アンリ、大丈夫?」


その場所に向かうと頭から血を流したアンリが地面に横たわっていた。

気を失ってるのか全身が脱力状態になっている。きっとあの鉄扉に当たってしまったのだ。

すぐにでも千香達と合流したい所だが視界に広がるこの白い霧を私は知っていた。


「プルシュガー」


プルシュガーは自分の仲間を増やすために白い霧を放出して感染させるという習性がある。これは恐らくその白い霧であろう。

とすると、この中に長居するのは危険であり、アンリも弱ってるのでいつ感染するかわからない状態だ。


「一応防具服は着てるけど、持って五分」


制限時間を確認した私は雷鳥をキューブに戻して、代わりに火炎放射機を出した。プルシュガーには炎系の物しか効果がないので直接焼きにいく必要がある。


「待っててアンリ、すぐ戻るから」


そう言った私は扉の先にいるプルシュガーの元まで走っていった。











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