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幸せで平和な世界を  作者: ナザラ
第1章  魔法少女と惑星の終止符
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十三話 プルシュガーの討伐4

「ここが第四倉庫…」


第二倉庫を抜けた私達は第四倉庫へと続く大きさ十メートルの鉄の両開き扉の隙間を覗いた所で足を止めていた。

アンリが呟いた声が小さく反響する中で目の前の光景に大きく唾を飲み込んだ。


「多すぎる」


反射的にそんな言葉が口から漏れ、瞳はその先にある光景に嫌気が差したかのように細くなる。

感染者の数が異常なのだ。


「「アァァァァァァァァ」」


何人、何十人、何百人という声が重なり第四倉庫全体に響き渡っている。

多少大きな声を出してもバレないくらいその数は多かった。


「第四倉庫は恐らく居住区か何か…」


「にしても多すぎじゃない?」


第二倉庫とはまた違った構造の第四倉庫はだだっ広い正四角形の空間に簡易的に作られた四畳程の生活スペースが無数にあった。

生活スペースはプラスチックの仕切りで決められてその中で暮らしているような何とも余裕のない状況だろうか。


「まぁ、避難倉庫だから贅沢言ってられないか」


と言うことはやはりあのタンクの中は水なのかと考えだが過ぎたことを考えるのはあまり得策ではないと思い至る。


「感染者の数はおよそ100、それにあれ……GA(ガイアント)です。感染してますが」


アンリの指差す方向に目を向ける。

そこには感染してないとあり得ない人とGAが同じ空間に一緒にいる光景、もちろんGAにも感染者の証の白い膨らみはある。

うめき声やら獣の声やらが聞こえる中でどうにもならない状況に襲われている私達はその場で停滞するしかなかった。




その後も色々案を出していた。


「……そうだ、姿を消す魔法を使えば」


「ごめん黒江、私使えない」


「安心して…私も」


案は出るがどれもが使えない案だった。


「そうだわ黒江、火炎放射機を使えば」


「数百いるんだよ、何体かは突破してくる」


かれこれ十分は経過している。


「浮遊魔法使うのはどうかしら?」


「使えるの?」

 

「使えない…」


解決の道筋が見えないまま、時間だけが過ぎていく。

気付けば時刻は6時45分に行こうとしていた。集合時間は7時5分のため後二十分しか時間がない。

こうして二人肩を並べて話してるだけでは到底時間には間に合わない。


「私の雷鳥(らいちょう)を使えば…なんて」


そう私が引き気味に提案したのは愛刀、[雷鳥]で感染者を一網打尽にすることだった。一応やろうと思えば殺れるが…さてアンリの反応はと言うと。


「ふーん、黒江は約束破るんだぁ」


眉を細めて真横から顔を覗いてくるアンリは鼻息が当たる距離でずっと睨んでいる。それに対して目を会わせることが出来ず、ただ冷や汗をかいて顔を背ける私は大きく息を吐いてバッと勢いよく顔を向ける。


「じゃあどうするの?他に策はあるの?」


ぎょっとするアンリを後に二人の距離は一センチというお互いの吐息が混じり会う間だ。

じぃーとキョロキョロ動くアンリの瞳を見つめながら問いかける。


「ど、どうってそれは策はないけど……黒江が一人で何でもやろうとするのは駄目なの!!」


瞳を閉じて顔を赤くしながら大声で言ったアンリは周りに感染者がいるのもお構いなしだ。

もちろん私は感染者がこちらに気付いて今にも来ているのは分かっていたがアンリにはきちんと言わなくてはいけなかった。


「なら足手まといにはならないように」


言いたいことは言ったのでとりあえず立ち上がる。

後ろからくる数十体もの感染者に背を向けてアンリと視線を混じり会わせる。

アンリは驚いた顔をしていた。私の口からそんな言葉が出るとは思ってもいなかったのだろうか、いつもの私ならなんて言ってるのか分からなくなるが今は関係ない。


「それじゃ行くよ」


サブマシンガンを構えて迫り来る感染者に向けて乱射する。

まずは真っ正面にいた三体を撃破、続いて斜めから恐ろしい形相をした奴の顔面にハイキックを決めて首を吹き飛ばす。飛んだ首は見事真横にいた感染者の顔に当たり破裂。

そして反対側にいる複数の感染者に銃弾を振り返り様お見舞いした。


「今ので十一体、何とかなりそうだね」


尻餅をついて動かないアンリに私は透かした顔をして一言いった。


「どうした、一緒に戦うんでしょ?」


挑発にも取れるその発言にアンリのやる気スイッチにもオンが着いたのか鋭刺棒を片手にゆっくりと立ち上がる。

その顔はやる気に満ちていた。


「当たり前でしょ、見せて上げるわ!私の強さ!」


そう宣言したアンリは早速接近してくる感染者の後頭部に一刺加える。さらに迫り来る感染者にはハンドガンをお見舞いする。


「よし、これで三体目」


「遅いなアンリは。これで十九体目」


サブマシンガンを脳天に思いっきり叩きつけて頭蓋骨をかち割る。

顔を赤くしてあからさまに悔しがっているアンリを見て私も微笑が漏れる。

流石にここまで騒ぐと第四倉庫にいた全感染者が私達の存在に気付いて襲いかかってくる。

波のように迫ってくる感染者に私とアンリは武器を構えた。











一方第六倉庫でも同様に複数の感染者の相手をしている千香とシルビィがいた。

お互いに背中を合わせて襲いかかってくる感染者と対峙する。


「急がないと二人が危ない、第五倉庫の事を二人は知らない」


あの一面雪の世界で遭遇したラプトル型のGAが感染者となって襲いかかってくる。

シルビィは手に持った己の得物を思いっきり振りかぶった。





集合時間まで後十五分。









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