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幸せで平和な世界を  作者: ナザラ
第1章  魔法少女と惑星の終止符
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十話 討伐前のお約束

「第八倉庫への道のりは二つあります」


千香はそう言うとタブレットの画面を見せてきた。

現在第一倉庫の入り口、眠っていたシルビィを叩き起こしてそこに集まっていた。


「第一倉庫から枝分かれするように第二と第三があります。そこで二つに別けて行こうと思います」


「なるほど、第二からは第四。第三からは第六へと行けてどちらとも必ず第七へと続いてる訳ね」


「わかった、それでいこう」


黒江、アンリ、千香はタブレットを見てこの作戦で実行すると決めてる中で一人ポカンとしてるシルビィがいた。


「あのぉ…、目的はプルシュガーの討伐だよね?どうしてわざわざ別れるのさ」


「プルシュガーの胞子を浴びた人間は何年もして同じプルシュガーへと変貌する。それを阻止するため」


私が説明するとどこか驚いた顔をして見開いた瞳を向けてくる。


「まさか黒江に教えられる時が来るなんて」


「殺すよ?」


プルシュガーに射つ前にこいつに射ってやろうと火炎放射機を本気で展開しようとキューブを握りしめた。


「はいはい、シルビィは黒江をバカにしない。黒江は火炎放射機を使おうとしない」


その発言にキューブを握っていた手が強ばる。

淡々と話を切り上げる千香はまるで神通力でも使ってるかのように私の行動を読み取っていた。

目をそらして冷や汗を流す私に対して鋭く疑った目を送る千香だったがすぐに話を戻す。


「では、チームは黒江とアンリ。私とシルビィにします」


了解と各々が返事をした後、第一倉庫の中へと歩いていく。

途中までは同じ道だが中間からは二つに別れることになるため、一応四人で装備や移動の確認をとる。


「ー第七への待ち合わせは一時間後、遭遇した感染者は全員倒すということで。くれぐれも噛まれないようにしてください」


第一倉庫中間地点に到達した私達は最後の確認を終える。

千香による完璧な荷物チャックや二重チャックによる作戦の説明により、嫌でも頭に全て入った。


「んじゃ、また後でね」


「アンリ、黒江、頑張ってね!」


「シルビィ…あなたもです」


「黒江の事は私に任せてください」


そして少しばかしの別れを惜しみながら私達は二つのチームに別れて行動することになった。





「どうやら第一倉庫にはいないそうね」


別れてから少したった後、私とアンリは第一倉庫の終着点まで来ていた。

第一倉庫はどうやら何かを保管してた場所らしく周りは鉄で出来たコンテナが吊られてあったり置いてあったりと様々で一言で表すならコンテナの迷路みたいな光景だ。

大きさが十メートルを越えているため、飛んで上に登るのは難しい。

倉庫の両端側面には窓が複数枚並んでおり、少なからず室内を照らしてはくれている。


「魔法を使えばコンテナの上まで上れるけど…」


「駄目よ黒江!、上に登るまでに魔力使うし、なによりコンテナが脆かったら着地した拍子にコンテナが抜けてしまうわ」


「そんな大丈夫だと思うけど」


右往左往している迷路に少しの苛立ちを覚えていた私は上から行くという案を出したがきっぱり断られた。

先頭を行くアンリは後ろを向いて注意をしてくる。

過保護かと思うほどの光景に少し笑いそうになる。


そんな彼女が持ってる武器は警棒に似た物のようだが、先が尖っている。

鋭刺棒と言うらしい、読み方はわからない。

いつもはスナイパーのアンリだが今回は二人行動のため断念。それにプルシュガーのゾンビ化にかかるのは何でも人だけではない。

同族のガイアントでさえゾンビ化してしまう。

数がどれだけいるか分からないのに大きな音を立てて呼んでしまうのは愚策だ。


「でもいいなぁ…私も刀とか使いたい」


親に懇願する子供のように少し控えめにお願いする私は現在装備しているサブマシンガンに不安を持つように眺める。

でかい音を出す銃は今回あまり使わないがもしも用で持っている。


「駄目、黒江の刀は胞子防具を斬りかねないんだから」


これまたきっぱり断られてしまい、残念とため息と共にマシンガンを肩に乗っける。

しかし、アンリに刀を持たせない理由はきちんとあった。

それは今回の防具に関係してくる。

前回とさほど格好は変わってないが、膨らんだ胸を抑えるように上着の上から装着した白色の胸当てをしている。

これにより自分を囲むように魔術結界が施され、胞子から身を護ってくれる。


そしてこの胸当て、打撃には強いが斬撃には弱いという欠点を持つため今回は刀は無しとなった。

なお、胸当てによりアンリの胸はさらに強調されてる。羨ましい。


「それにしてもこの胸当て便利よね、サポートアイテムを装着出来るのだから」


そう言うと胸当ての中央にある数個の窪みに小さなチップを入れる。

サポートアイテムはそれを装備するだけで耐熱性を持たせたりすることが出来る優れものだ。


「ちなみに政府から配布される胸当てには窪みはないよ」


胸当てに感心しているアンリに皮肉にも聞こえるような言葉で言ってみる。

別に何かを言われたい訳ではないが、政府がどれだけ腐ってるか知ってほしいだけである。


案の定アンリは足を止めてゆっくりとこちらに振り向く。

何とも言えない顔に、後ろ向いてると敵に襲われるぞと言葉を走らせようとしたが、出来ず下を向いて停滞しているアンリを追い抜こうとした。


「ねぇ黒江、政府と……司令部と何があったの?」


腕を掴まれ、強制的に立ち止まる。

アンリの顔を見ずに私は答えた。


「何でも…」


「それにあの男の事も知りたい。どうゆう関係なのか、いつから知り合いなのか付き合ってるのかとか」


最後のはどうでもいいだろと思いながらも話を切り出したのは私だ。

だから、少しは話そうとゆっくりとアンリに顔を向けようとした時、


「アァァァァ……………!」


突如として聞こえたうなり声に私とアンリは背筋を震わせながらも聞こえた方向に顔を向ける。


「急に来たから驚いた…」


「そうね、危うく変な声を上げる所だったわ」


筋肉が強ばってるのか呼吸が少し荒くなる二人は直ぐに息を整えて各々の武器を構えて進む。

どうやら第二倉庫から聞こえてきたうなり声で、それは人のような声だった。


「…アンリ、話すのはこれが終わってからでいい?」


それは単純に今は話してる余裕がないからだが、アンリはどうやら私の事を気に悩んでいるらしいので戦闘に集中してくれるのか心配になった。

だが、そんな心配をよそにアンリはグリーンの瞳を私に向けて微笑んだ。


「ええ!良いわよ。だって黒江の驚く顔が見れたから」


「へっ?」


「普段顔色変えないから違う顔を見れた時は何かレア感があるのよね」


あの時かと記憶を遡って少し顔を赤くした。

何かすごく恥ずかしいと思いながらも悟られては、また変な事を言われるとアンリの前を歩く。

その仕草を見てかさらに笑うアンリはより一層黒江を好きになり、より一層不安にもなった。


「でも、これが終わったら話してくれるから」


そんな事をおまじないのように呟き先を行く黒江に駆け足で追い付く。





先程の緊張はどこに行ったのか、ここから先はバイオ◯ザードだと言うのに。




















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