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先生って呼ばないでくださいっ!  作者: 矢崎慎也
第2章 ライバルは増える?
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Ep.4 心機一転?形勢逆転?⑦

すみません、体調がいまだ優れないのですが、ひとまず完成していた分だけ投稿させていただきます。今日の22時に後半部分を更新させていただきますので……!



「ところで、なんで瑠美ちゃんってこんなに勉強が得意なの?」



 解いていたページの丸付けをしながら、飾森さんが瑠美にそう尋ねた。そちらをチラリと見やると、大したことでもないかのようにぼそりと瑠美は答える。



「……別に、勉強は嫌いじゃなかったので暇な時間にやってたらできるようになっただけですよ」

「うーん? でも、まだ2年生なのに私達3年生が勉強しているような問題も簡単に解けちゃうなんて。それも先生みたいな解説までしてくれて……」



 あっ、と思った瞬間には時すでに遅し。俺が止める前に、飾森さんの発言は彼女の口から飛び出ていた。



「(しまった、肝心なこと伝え忘れていた!)」



 こういった勉強会になった以上、問題の解説を(嫌そうにはしているが)している瑠美に対して「先生」という言葉を用いることは容易に想像できたことなのに。どう切り出せばいいのか、どこまで話しても大丈夫なのか分からなかったから敢えて飾森さんにも伝えずにいたが……



「……」



 瑠美は口を真一文字に結び、何かをこらえるように下を向く。こうなることを予測して、ちゃんと言っておくべきだった。後悔で胸が締め付けられるような思いになると同時に、この場をどうしたらいいか分からず変な汗が出てきた。



「え、二人ともどうしたの?」



 突然様子の変わった俺と瑠美を交互に見て戸惑った表情になる飾森さん。無理もない。「先生」という言葉が瑠美にとってどんな意味を持つのか、俺だって彼女に話を聞くまで知らなかったし。



 しばらく無言でたたずんでいた瑠美は、「ふぅ……」と小さく息を吐き出し飾森さんの方に体の向きを変えた。座っている俺から彼女の顔を伺うことはできない。どうすることもできないまま、俺は緊張感が一段高まったのを感じごくりと唾を呑み込む。



 小さく息を吸って、再び小さく息を吐きだした瑠美はその桜色の唇を少し動かして、はっきりと言葉を紡いだ。



「勉強が好きというより、自分の知っていることを教えるのが好きなんです。お母さん、先生だったので」

「……そうなんだね。道理で教え方が上手だと思ったよ」



 瑠美の回答を深く掘り下げることはせず、飾森さんは「まぁ、皐月くんにばっかり構って私には全然教えてくれてないけどね!」と恨みがましく瑠美を軽く、冗談めかしてにらむ。瑠美も、心なしかほっとした様子で「教えて欲しいなら職員室で先生に質問してきたらどうですー?」とあおる。



「(危なかった……)」



 俺はというと、緊張がほぐれた安堵の余り椅子の上で崩れ落ちそうになった。飾森さんも、さっきの微妙な空気は感じ取っていただろうから冗談っぽく振舞ったのだろうし、瑠美だって内心ではまだ動揺が続いているはずだ。



 こんなことが二度と起こらないようにしようと決意し、ひとまず残りの昼休みの時間で目の前のページだけでも読み切ってしまおうと俺は意識をそちらへ傾けた。




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