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先生って呼ばないでくださいっ!  作者: 矢崎慎也
第2章 ライバルは増える?
40/72

Ep.4 幕間

ちょっと短め。瑠美サイドからのお話しです。



「ん……これでいい、のかな」



 試行錯誤すること30分。ようやく整え終わった身だしなみを鏡の前でチェックしてみる。



「おかしいとこ……ないよね……」



 右に、左にと体を動かして……よし、服装の乱れはない。続けて髪型を整えてみます。いつもは無造作に後ろで一つ結びにするか、そのまま結ぶことなくストレートに流しているだけだからとっても楽だけど、今日はちょっぴりってみたいのです。



 日曜日の朝6時台になんで私がこんなことをしているのかというと、今日は、



「悠馬先輩とジェラートを食べに……」



 口に出してみただけで、なんだか頬が火照ほてってきてしましました。



 悠馬先輩とお出かけするのは、なにも今日が初めてではありません。ゴールデンウィークにも、二人で「レインボーコットンキャンディ―パフェ」を食べに行ったし、そもそも平日も休日も図書館で勉強しているのでほとんど毎日一緒にいます。



 そういう点では、今日もいつもと全く変わらない日曜日のはずなのですが、



「(なんででしょう……あの時以来、なんだか変な感じです……)」



 なんだか落ち着かなくて、今日は早くに目が冴えてしまいました。勉強をする気分にもなれず、結局ただ鏡の前で自分の身だしなみを整える作業に時間を費やしていたのです。



 友達になりたい。私の中学時代の出来事を受け取めた上で、私が頼れるような友達になりたいって。そう言って抱きしめてくれた感触は、今でも時折思い出し、その度に決まって恥ずかしさやら気まずさやらで悶えてしまいます。



 悠馬先輩と私の関係は、当事者の自分もよく分かっていません。最初はただの先輩と後輩だったけど、今は勉強を一緒に頑張る友達、だと思います。



 でも、友達相手にもこんなにドキドキするものなのでしょうか。



 友達になったことを形で表したくて、私を名前で呼ぶようにお願いしたし、自分も「悠馬先輩」と呼ぶことにしたけど……正直、とっても恥ずかしいです。決して嫌な気持ちにはならないけど、呼ばれるたんびに実はくすぐったい思いをしているのです。



「(ほんとは、少し分かってます。自分の持っているこの気持ちは……)」



 たとえそれが正しかったとしても、それは絶対バレちゃいけないものなんです。先輩は、今年がとっても大切な時期だから。



 もうすでに、私のせいで先輩の勉強時間は幾分か削られてしまっています。この前のパフェとか、今日のジェラートに息抜きになるならまだ……ううん、これも言い訳ですよね。



 私はこれからも友人・・として、悠馬先輩の受験勉強を全力でサポートします。先輩が「分かった!」って顔をするのが。先輩が良い成績を取れて嬉しそうに微笑むのが。先輩が「ありがとう」って言ってくれるのが。全部全部嬉しいんです。



「え、もうこんな時間⁉」



 ぼーっと考え事をしている間に、時計の短針は7にだいぶ近づいていました。そろそろ朝ごはんを食べ始めなければ、図書館の開館時間に遅れてしまいます。



 一階に降りて、自分で簡単な朝食を作って口にします。日曜日ですが、今日も家には私以外誰もいません。父親の出張に、再婚相手の人はいつものように付き添っているのでしょう。



ちょっと前までは寂しく感じたこの時間も、最近は不思議と気になりません。むしろ、この後のことを考えるだけで心がぽかぽかします。



「(先輩、今日は何を勉強するのかな)」



 トースターから取り出したパンにマーガリンを塗りながら、私はぼんやりと始まったばかりの一日に思いを馳せるのでした。


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