強制終了
「こっ……これは……!」
お兄ちゃんが動揺している。もう魔王に会ってしまったの?
しかし、私の予想に反してお兄ちゃんはそれ以上何も言わずにゴーグルを外した。
あれ? 自分で外せたの?
お兄ちゃんはゴーグルをパソコンラックに置いて、サッと振り向いた。
その顔はオジさん魔王よりも恐ろしい、鬼のような顔をしていた。
「全部消えているじゃないかー! おまえが消したなぁー!?」
「ひえぇぇぇー、なっ何をですかぁー!?」
「何をって……あれを……だー!」
「あれを?」
お兄ちゃんは急に目を逸らして押し黙った。
えっと……もしかして……
「ミルクさんのこと?」
「うおぉぉぉぉぉぉー!」
お兄ちゃんが頭を抱えて絶叫した。
茹でダコのように顔を真っ赤にして。
次にお兄ちゃんはパソコンラックに頭をガンガンぶつけ始めた。
「お、お兄ちゃん、しっかりしてぇー!」
私はお兄ちゃんがどうしてそんな反応を示すのかが分からず、狂ったように頭をぶつけるお兄ちゃんをただ見ているだけだった。
VRお姉さん、そんなに大事だったのかな?
ごめんねお兄ちゃん。
でも、妹としてお兄ちゃんを犯罪者にはしたくなかったんだもん。
仕方がないよねっ!
ぐわんぐわんと揺れているパソコンのモニターには、魔王が書き込んだ掲示板へのコメントが続々と入っている。皆おもしろがって勝手なことを言って騒いでいるみたい。
あーあ、これは見なかったことにしよう。
私はお兄ちゃんに気付かれないようにパソコン本体の電源ボタンを長押しして、強制終了した。
これにて第一幕完結。
次話から舞台を小学校に移して、第二幕がスタートします。
引き続きお楽しみください。
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