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初めてのHUB接続

 10分程経って、青柳君は部屋に戻ってきた。お盆に2つのカップをのせて。


「ホットミルクティーだよ。飲めるかな?」

「うん。もちろん!」


 あなたの入れてくれたものなら、たとえ泥水でもおいしくいただきます!


 ソファーの前の小さなテーブル置かれたティーカップは、花柄のおしゃれなものだった。高級な香りが漂ってくる。というか、私が普段紅茶と呼んでいるものとは全く別物の香りなの。


「で、ではいただきます……ぅあちっ!」

「あはは、慌てなくていいんだよ。時間はたっぷりあるんだら」

「う、うん。そうだよね……」


 唇と舌の先がヒリヒリする。けど、そんな私のドジにも青柳君は王子様スマイルで対応してくれるの。


「フーフーしてあげようか?」

「はわぁ~!?」


 さすがにそんなことまでされたら、私のなけなしの理性が爆発してしまいそうなので、それは断った。

 自分でフーフーしながら飲んでみると、やはり私の家の紅茶とは全く違う味がした。何というか、まろやかさの中に苦みを感じる……高級な味がした。


「どうかな。僕の入れたミルクティー、口に合うかな?」

「う、うん。とても美味しいです!」

「そう、よかった。全部残さず飲んでね」

「もちろん!」


 苦い薬のような味が舌の奥で感じるけれど、それはきっと私の口が庶民の味に慣れてしまっているからだ。これからは私の口の方を彼に合わせるように努力しなくちゃ!


 私が紅茶を飲み干すまでじっと見守ってくれていた青柳君は、空になった2個のカップを後ろの机に置いて、代わりにゲーム機と電源タップをテーブルに置いた。


「さあ、つぐみちゃんも用意して。電源はここに挿してね」

「あっ、はい……」


 ランドセルからゲーム機とVRゴーグルを取り出すと、急に不安になってきた。魔王に会ったら私は何て話しかければいいんだろう……。きっと魔王は怒っている。いきなり殴られたらどうしよう。


「つぐみちゃん大丈夫?」

「はっ、はひっ!」


 青柳君は私の顔をのぞき込んできた。憧れの王子様の顔が急接近して私は慌ててプレスト6を落としそうになった。


「あれ? この機械は何?」


 それは初めて見る機械だった。青柳君のプレスト6に繋がったそれは、LANケーブルを6個つなげるソケットが付いている。


「これはHUB(ハブ)という機器だよ。プレストを6台まで接続することができるんだ」

「へえ……私、初めて見たかも。一本のケーブルでダイレクトリンクしかしたことがなかったから……」

「えっ!? ダイレクトリンクの経験はあるの?」


 青柳君は目を見開いて固まった。私、何かいけないことを言ってしまったのかな?


「……まあ、いいか。じゃあ、このケーブルを使ってHUBに繋いで」

「う、うん……」


 雨霧とやるときは『ダイレクトリンク!』と彼が叫びながらだったから、何だか拍子抜けというか物足りないというか……


 えっ、何で私、そんなこと思っちゃってんの~?

 しっかりしなさい、私! 

 

 青柳君に貸してもらったLANケーブルをハブという機械に差し込んで、反対側を私のプレスト6に接続した。 

 

 VRゴーグルを持つ手が震えている。これは青柳君の世界と繋がることへの緊張感なのか。それとも魔王に会うことへの恐れなのだろうか。


「大丈夫だよ。僕を信じて」


 王子様スマイルで言う青柳君。

 うん、信じているよ。あなたの優しさに包まれて、私は旅立ちます!

もうちょっと読んでから評価を入れようと考えてここまで読んで下さった読者の皆さん、今がそのタイミングです! な~んて。

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