コクハク
「あ、あわやぎくん私に用があるって……ぐはっ!!」
ひいぃー、噛んじゃったぁー!
よりによって青柳君の名前を噛んじゃうなんて……
私、死にたい……
死んでお詫びをしたい……
「ふふっ、僕の名前は青柳だよ? 初めましてだね、日笠つぐみさん!」
そんな私を前に青柳君は白い歯をきらりと光らせて、王子様のようなさわやかな笑顔で私の名前を呼んでくださった。
「キミもここに座りなよ」
「は、はいっ、失礼します!」
「ぷっ……キミは本当におもしろい子だね。僕の前ではそんなに緊張しなくてもいいんだ。楽な姿勢で座っていいんだよ。」
「で、でも……青柳君は……特別な人なので!」
私は正座の姿勢で天井に向かってそう叫んでしまった。
……あれ?
なんか私、告白したっぽくなっていない?
顔がかーっと熱くなり、めまいがしてきた。
もう彼の顔を見ることができない。きっと青柳君はあきれている。怒っているかもしれない。今すぐにでも逃げ出したい!
「光栄だね。じゃあ、僕もつぐみちゃんを特別な人にするよ。これでお相子だね!」
「ふわぁっ~!」
変な声が出た。後ろにのけぞった勢いで後頭部をぶつけそうになった。
パンツ……見えなかった……よね?
「ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします」
私は深々と頭を下げる。これって、土下座しているみたいになっているけど、これで合っているよね?
「こちらこそよろしくお願いします」
王子様スマイルで軽く頭を下げる青柳君。何をやっても完璧なの。
「ところで今日の放課後は時間あるかな?」
「はい、私はいつでもフリーです!」
青柳君のためなら、たとえ地球が滅亡しようとも私は駆けつけます!
「なら、僕の家に遊びにおいでよ」
「ひえぇぇぇ~!」
万歳するような姿勢で変な声で叫んでしまった。
そんな私を見ても青柳君は王子様スマイルを崩さない。
「えっと、それって、オッケーということで良いのかな?」
「もちろんです!」
「良かった。じゃあ、夕方の4時を目安に僕の家に集合だよ。あっ、ブレストとVRゴーグルも忘れちゃだめだよ?」
「……え!?」
彼の口から出たその言葉に、私は息を飲み込んだ。




